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検索対象: 角川短歌 2016年10月号
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1. 角川短歌 2016年10月号

道すがら蕨手折れば瑞瑞し忍捩摺みちのく道の辺の萩・秋桜と藤袴とんほ飛び来てま の旅 神奈川県岡本弘道だ梅雨明けぬ 静岡県吉田美保子 ねむる眠るネムル六人前髪に顔うづめつつ少年に取り囲まれたシオマネキ干潟の窪み 電車に睡る 栃木県茂呂田誠 千葉県渡辺真佐子に身を潜めたり 亡き友の名が次々と顕るるフェイスブックスポーツの不得手な孫が白球をカ 1 ンと打もくもくと塗装っづける若者の自信が光る の「いいね」開けば東京都池田祥子った暁の夢 愛知県村田尚子男のピアス 香川県松本由子 捨てるべし過去完了となりし日の細きジ 1 東京のビルの谷間の校庭を電子のように駆歌一首詠めぬ日のありあたたかき土を弄り 千葉県片井俊一一て菜の種子を播く 福岡県花田浩子 パン太宰の文庫 北海道垣田郁子けまわる子ら 大空が雹をばらまく午後にして伊藤若冲のルビ 1 婚に至れなかったわが指にせめても夏休み明けのわたしが黒ちゃんと呼ばれて 岡山県滝ロ泰隆赤いリングを瞋める静岡県中川陽子いたころ夏は友だち千葉県岩田マキエ 孤独を思、つ ざうびはい ハンのみで人生きざると主は言へりパンさ大腸のポリ 1 プ切除のモルモット医者の卵 後楽園に象鼻杯とふ水をのみ天を仰ぎてあ あと言ひたり 神奈川県大和嘉章 岡山県安藤兼子へ食めず逝きたる子はや埼玉県中門和子に凝視されおり 明け方の夢のごとくに君とわれ乗せ一そううすれゆく記憶の中にいる人よ今もひとりアポカドを半分に切って種つるりきれいに 静岡県高田光恵 の川舟はゆく 兵庫県野添一男出れば今日は大吉 千葉県清水重男の朝食ですか 寝ころびて振り子見てをり不要なるものこ川縁の桜並木に木洩れ日を受けつつ妻の車哀しみは暴動と銃殺に始まりき窓を閉ざし 佐賀県野中曉 東京都高須敏士てひかり失ふ そ愛しなどと思ひつつ京都府丸山順司椅子おす 空き缶を奪い合うとう飢えの絵よシベリア非正規の非と名付けし人どなた咎める声無同窓を見送りたるやばちばちと喪服すがた よったり 宮崎県本部殷國 東京都堀川三夫の四人が行く 抑留生還者の筆 東京都楠木繁雄く既に蔓延 ゅうパックに届きし卵三日経て三種のメダ南武線トレンディーなる街を持っ昔は砂利 記されし「期間限定「増量にスーパー 神奈川県篠窪信政 大阪府西谷佐和子の運搬路線 の籠また膨らみぬ 兵庫県佐野武力ピキピキ泳ぐ くすし 山鳩の啼き声ひびく朝の空ホルンの音にもあじさいの毬はるり色虹の色良寛さんの手麻酔かけ前歯ガリガリ削り抜く医師真剣吾 兵庫県藤原孝雄 静岡県鈴木菊江は涙、汗 まさりて深し 東京都田村一男毬にも似て 居場所なく車に戻り待ちをれば雨に濡れゆここですとコンクリートの割れ目から声か胸でなく耳へこばしてくれないか涙で光る 岡山県小橋辰矢 栃木県曽川文昭けてくるニオイスミレが茨城県小野瀬壽愛の言葉は く里山の木々 ・ ) 佳作・ 220

2. 角川短歌 2016年10月号

夜蜘蛛をそっと逃がした爪の先今宵の月は目も鼻もおほろとなりし野仏に願ひはあら ほばオムレット 岡山県妹尾寛子 長野県小山美由紀ず唯掌を合はす 白い花咲かせるごとく枇杷の実に袋かけす運命のいたずら者めこのわれを引き込みや るころか郷里 広島県松浦美枝子がって短歌なんぞに 北海道松木秀 あした 手を引いた夏もたくさんあったはず老女が紫陽花の葉に抱かれたる雨粒は明日を映す孫が法りいつもの日常戻り来てテレビの相 埼玉県植田眞純 息子に手を曳かれ行く兵庫県甲斐直子水晶の珠 兵庫県佐野武撲楽日を終える 屋号だけ残る故郷となりにけり鍛冶屋麹屋若き医師は「自信を持て」とわれに言ふ本当あかときの湖面に滑る一艘のポ 1 トは点景 茨城県郡司一美 塩屋醤油屋 茨城県小野瀬壽の老いをまだ知らぬ医師京都府長岡洋子となりて定まる ひと 夏なのに素足が渇いた砂のよう少し悲しい有精卵生み落とされて鳥の巣はゆうべ聖な囚人なれど激しく揺れる地震あれば助け呼 熊本県吉田耕一 女と思、つ 静岡県高田光恵る器となりぬ 長崎県田中光子びたき大声だして 1 リップ色の魅せられし者の仕業かダ・ヴィンチの画集よ 休日の息子の淹れるコーヒ 1 に婚を促すこ帰り道仕事疲れで重い足チュ とば溶けゆく 千葉県黒澤信子君に逢いたい 広島県夏川ゅ、つり切られしページあり東京都伊藤加代子 ノイヒールは高きものから捨てゆきぬ女の 自転車に乗った未来が駆けてゆく制服を着苦しみを今朝も話しに人は来るビルの谷間、 北海道垣田郁子 た未来 2 ほど 大阪府五宝久充階段おりゆくように 高知県亀尾美香の薬師観音 大きめにひらがなだけで書きすすむ待って初浴びの光りを翅にきらめかせ羽化の蜻蛉思い出を解きほぐしたる毛糸玉それをまた 神奈川県渡辺勲 るだろう母への手紙青森県澁谷善武らいま空に発っ 東京都大村森美編む妻黙々と 白波のリズムに乗りて神主のバリトン響く少年の漕ぐ自転車を大きなるタ陽の腕がそ幾人ものピアニストの指触れたらむ象牙の 青森県猫田馨鍵盤のやはらかな凹み青森県堀内育子 海開きの日 東京都松川益成っと抱けり すみません娘を呼んで下さいと父に言わる人間はあの世へいけば風になる「この歌本日常の些事の話に七人で笑ひ合ひたり女の 神奈川県三井せっ子 北海道手塚春世昼食 る深夜の病室 千葉県石橋佳の子当 ? 」八歳が問ふ 見つめ合う恋人同士やがて手話で会話始め十軒が寄り添ひ暮らす海の村坂を越ゆれば花まとう高木の名は知らねども己を見せて 北海道橋本とおる 福井県谷口正枝風に立つなり る地下通路端 大阪府今野沙弓原発のあり みごもりて夫と選びし胎教の「アイネクラ丁重に退職願い書き終えて全身初期化せしひとっすっボタンを瞋めるとりあえず心鎮 秋田県天野美奈子まるまでゆっくりと岐阜県田中幸子 静岡県海山綾子日のありき ィネー今琴でひく ・佳作・ 2 1 6

3. 角川短歌 2016年10月号

全曲で一度だけ打っシンバルを構えて待ちふるさとは帰還困難のレッテルを貼られ記ああつひに死を売る国となりにけり七十二 奈良県笹川裕史憶に帰るしかない 茨城県志賀和彦位のメディアも悲し福井県竹原千家夫 ぬタクトの合図 ゾンビゆく銀座通りの千年後息するものの置物のように佇む白鷺がなぜか大好き青田大いなる欅の切られ幸不幸あやなすごとき 千葉県富岡勝 にさがす・ 福島県安江令子年輪の見ゅ 東京都金子大二郎 消えている街 梅仕事姑より吾は受け継がず水無月の午後餅つきの機械は休まずに動く大福を待つ行花まとう高木の名は知らねども己を見せて 北海道橋本とおる 神奈川県杉山太郎風に立つなり 東京都豊田薫子列の向こう をやりすごすのみ 黙々と仕上げるビルの清掃婦はつなつの風切株となりて初めて年輪を現わすヒバの樹風に咲くあおむらさきのクレマチス九年共 青森県中里茉莉子に夏をむかえた 新潟県腰越広茂 大阪府鬼龍院でんのうめき声聴く 頭上を渡る 湯を注ぎダージリンの葉躍らせむけふの予髪を切りバイクに二人乗りしてもヘップバやり場のない深い怒りは沈黙のデモでにら 北海道本永静義 北海道後藤明美んだ基地の金網 北海道吉田桜子 1 ンに誰もなれない 定をあれこれ浮かべ 自転車を囲みておみらの立ち話籠の蛙さん君だらけだった心に雨が降る水玉もように紫の雨やさしただ濡れていたいできれば 埼玉県小田三奈君に見つけられたい東京都澤かほる 聞いているのか 富山県西藤光美穴があいてく へその緒のごとき花殻つまみとり胡瓜齧れ東の間の昼寝のような平和から覚めて悲劇秋ひと夜さへぎるものは何もないここまで 愛媛県柳原栄三おいですっぴんの月和歌山県澄田広枝 神奈川県川辺一穂を好む世界史 る大河童われ 流星のやうにするりと抜けてゆく猫のしつ賑いは過去となりしゃ我実家一人帰省に台だまされちゃ駄目だョ ! ときつく念押して若き 兵庫県黒木章子布団売りは帰り行きたり山口県森藤佳江 新潟県有村桔梗風の風 ほの描く残像 公園のジャングルジムを這い登り一人演じ猫の春しみらになけど届かぬかうるさくも点滴をうけつつ思いぬ雨漏りにバケッ並べ 兵庫県桜田一夫 大阪府本村則子し小学校を るグレゴールザムザ山形県島田高志あり切なくもあり 草の穂に触れては揺らす白き蝶こんな力をあじさいを手折ってみれば葉の裏にクオ 1 マイストレスの欠片も見せぬ獺はのびのび泳ぐ 北海道伊藤哲 福井県杉崎康代ハウスクと蜘蛛は巣を張る熊本県堤よしみアクアリウムで どこに秘めもっ うっせみの世の深き森さまよへば葉洩れ日人はみな心に妖精住まわせて秘かに夢を食空の蒼風の香りを感じつつ芝生に憩ふ靴脱 神奈川県松村保男壇 大阪府田中伸子ぎ捨てて 佐賀県北祐一一郎べさせている のもと熱もっ翼 夏がきた僕はここだよ早く来て日に日に激喜寿祝ふ同期の友の集まりを企画せるわがあかときの湖面に滑る一艘のボートは点景 角 茨城県郡司一美 青森県平井軍治となりて定まる 愛知県安藤欽子こころの虚ろ し皹の求愛

4. 角川短歌 2016年10月号

著 安 「短歌研究」九月号 表通りの家に「売家ーの札はあり老いの 佐藤通雅 気配のいっしか消えて 三人の作品連載が最終回を迎えた。それぞれ読み応え があるが、佐藤作品から引く。 老人が暮らしていたときも、その姿を見かけることは 滅多になかったのだろう。しかし今や真に空き家となる とともに、人の「気配」がごっそり消え去ったこと、そ れとともに「気配ーという見えざるものに確かな実在感 があったことをあらためて感得している。〈フィギュア の選手がアップさるるとき肌色の衣と肌のさかひょ〉も そうだが、それぞれの作品に繊細な感覚が活きている。 短歌研究新人賞は武田穂佳「いつも明るいーが選ばれ た。候補作から注目した作品を引く。 名現代短歌用語考 短歌の世界で不思議な〈日本語〉 が増殖している / 「おい母」「お 林 〔父」「夜の更け・生きの身」「ご歌こ」 , ) ば 古語でもなく日常語でもない、現とかり , など用例多数。 代短歌に多用される特殊な〈文語〉一一千年初版税込一一千五十七円安生 表現三十二例に着目、解剖する。 いりつ日」「あま酸ゆきー 一一千年再版税込一一千五十一一円 歌ことば事情邑 コピー機を腑分けしてゐる一枚の詰ま 門脇篤史 りし紙を探しあぐねて 〈地下道の過剰なひかりちらちらと金持ちの着る服を照 らせり〉もそうだが、生活のなかから意味ある具体を鷲 掴みにし、要点を押さえた文語表現で提示する。 「歌壇」九月号 長崎の聖人像の足の甲五十二すべて垂 れをりしこと 寺松滋文 「路」、を「露」に「下」を「雫」・に変えてゆくあ めかんむりの雨季が来ている 鈴木加成太 寺松作品は、舟越保武による二十六聖人像について、 五十二の足がみな甲を向けて垂れている点に注目する。 Tel 06-6423-7819 兵庫県尼崎市 南武庫之荘 3-32-1-201 younohon@fancy.ocn.ne.jp 1 / 0

5. 角川短歌 2016年10月号

働ける自信を持って寝た夜は暑苦しくて足選挙中襟元白き候補者が当選すれば衣をば がはみ出る 宮城県小川窓子変ふ 福島県児玉正敏 出身を福島と言へどこのごろは原発事故を水品体入れ替へてみる万緑はみどりの宝石 聞く人のなし 神奈川県三井せっ子ことばに余れり 岐阜県鈴木光男 ナンタイ 徴用馬送りたる日の想い出は父のみやげの錦繍の男体山そのまま映したるタづく湖のピンカ 1 トンのうすい心が真剣な蝶々夫人 肉桂水の赤 山口県重田正一波の穏やか 栃木県船田喜一のいのちを裂いた神奈川県告村一 出産に立ち会う男は要らないと鵯は巣に尾通学路にくちなわを見て少年は「高野聖」現実がどこか架空のすじめいて地球に潜む を上げて生む 長崎県田中光子の蛭を夢見る 青森県小野一男核ゴミの嵩 秋田県天野美奈子 両の手を空に伸ばして雨粒をあつめるよう枯木より飛び立っ雀は何処にて拾ふやくは神の名のもとに無差別テロ続く瓦礫の街の にあなたは走る 青森県猫田馨へる青草を 東京都深津栄美薔薇はくれなゐ 青森県木立徹 えな 切株となりて初めて年輪を現わすヒバの樹おほぞらは胞衣のごとくに限りなき星をいヒルガホの伸びゆく蔓のたくましさ術後七 のうめき声聴く 青森県中里茉莉子だきて今宵も更くる福岡県山﨑碧年などは甘しと 青森県大串靖子 君を見て苺大福連想す苺部分が私の気持ち一重なるわれの瞼が三重になり母の介護コスプレの少女一人が乗りくれば皆息を止 兵庫県荒川としみは二年目に入る 宮城県坂本捷子め異界となりし 千葉県花澤冨美雄 しあはせはきりがないから出かけずに今宵川音につつまれていて川になりわたしのな一粒の砂が詰まりて止まりたる砂時計あり は雨の音を楽しむ 広島県熊谷純かの川岸に立っ 新潟県腰越広茂時進まざれ 大阪府永山誠也 曇天は山の若葉をにごらせる去るマンショ魅せられし者の仕業かダ・ヴィンチの画集よねむれない夜をねむらない夜にする午前三 ンの窓に凭りたり和歌山県中村英子り切られしページあり東京都伊藤加代子時に読む「郷隼人鹿児島県久長幸次郎 振り返り振り返りして進みゆく半返し縫い幼子が羽化の途中の皹さんをいぢくり回し走り来る車のナンバ 1 寄せ算すわびしきく で綴じるほころび東京都飯坂友紀子声を奪へり 東京都小笠原啓太せを彼の遺せる 東京都三谷安代 炎天下白きパラソル回しつつ幼児とっとこすみません娘を呼んで下さいと父に言わるとうきびもトマトも熟れたものからと啼き 陸橋わたる 秋田県下村清る深夜の病室 千葉県石橋佳の子合いて鴉の群が下りくる静岡県阿部俊子 こんなにも疲れてしまった木曜日布団の波青すすきそよぐ道辺をタ立のごとく駈けゅ畑中に祈るがごとき向日葵の顔は実りの黒 にのまれてしまう 大阪府田中伸子く柔道部員 東京都齋藤洋子 秋田県石井夢津子き種充っ スズメい 224

6. 角川短歌 2016年10月号

せな ほっこりと落し文あり夫は吾を妻か母かと六月の雨やはらかく庭おほひ精励恪勤日日子を持たぬ我の背掻く孫の手よ百円ショッ 東京都齋藤洋子のぶる草 香川県藪内眞由美プに買える孫の手東京都菊間まさお 迷いて逝きし てか 史さんに「そりゃああなた」といわれそう「嫌われる勇気をもとう」アドラーに教え孫ひ孫手下とし初夏のバーベキュー機嫌良 近ごろ腰痛八十なかば神奈川県堀井淳一られてもやつばり無理だ静岡県中川陽子きかなははそはの母神奈川県間瀬茂 多分もう帰ることなき故里の無人駅舎は静「ゆや様」と言ひたる人を思ひつつ能楽堂 いつだって一羽で啼いてるカワラヒワ孤独で 止画の中 京都府長岡洋子に「熊野」を観てゐる東京都小松安彦あれば詩人になれるよ千葉県岩田マキエ おぎじま 女性化に傾れる国の北端に男を魅せるばん雨やみて庭にのそっと猫のかげ風をきくら男木島を出でしかっての新妻は浪花の街に たべん 大阪府北浦太朗 神奈川県松本明子染まりて多弁 えい競馬 山形県村上秀夫し耳を動かす カーテンのすき間明るく満月の懸かるが見一一十万人の名前彫らるる沖縄の石碑の上を引揚げの船より見たる祖国なり朝の対馬は 佐賀県野中曉 埼玉県中門和子むらさきに盈っ ゆる目を閉じてなお福岡県立石正司戦闘機飛ぶ 故郷の闇やわらかし川音のしじま深めてホ信長も孔子も想定しなかった長寿の世界にテロのごと黄斑変性眼に迫り闇の領土の日 千葉県栗原行雄 埼玉県長嶋隆ごと拡がる タル飛び交、つ 東京都久保親一一我は生きてる 動員の少女は老いてしかと見ぬ七十年消傘寿での免許証替え今日終えぬ県北村上過落ち梅の熟れたる匂ひ草にたち古木は長き 埼玉県神辺幸夫 新潟県須貝正美休眠に入る えぬ戦争のつけ 埼玉県小林栄子疎地に住みて 鏡の中に紛ふかたなき老婆をり前歯の抜け短歌とはつれない恋人のようだ詠んでも詠鍵掛けに下がりしままの夫の鍵六年間も定 富山県岡田淑枝 東京都古賀公子位置にあり 神奈川県牧野艷子んでも心とどかず しわがまぬけ顔 菜種殻に蛍追ひたる故郷の水辺も今は草深七名の熊本の家族が同居するひとりの我に夥しき敗残の死を見るごとし樹下を真白に 青森県赤坂千賀子 熊本県岩田久子染めて沙羅散る からむ 長崎県奥平とみえ楽しき日々よ 放哉の句を繰り返し読む吾もこの家に一人ひとりでは寂しいからと投票に十八の娘に自画像を六枚捨てる大中小の古いわたしを 兵庫県原田洋子 咳をしてゐる 大阪府有馬あき子重ねて縛る 北海道松野育子誘われて行く あんなにも憤りたる腹の虫二日過ぎたり淡読む速さ鈍くなりゆく物語の平家やぶれて大判を振る舞ふごとき夏落葉泰山木の高き 高知県川渕湧一一一壇 千葉県山田好司枝より 千葉県角本静江のちのことども き合歓の花 たれもみな実物どほりに映ってゐるさらば持つ者の悩みと持たぬ人は言ふ借り手なき元気そうと言ってくれるな古傷を隠して知 角 長野県中山千津子らぬ地に生きている和歌山県西方耕三 わたしのこれが実物か石川県竹中玲子田に雑草茂る こ

7. 角川短歌 2016年10月号

かごしまのドライプインで出あひたる田の「深刻がらず気軽に動け」運勢欄に従うつ かんさあ 神様はほのとぬくかり山口県弘津敦子もりで妻と草刈る 千葉県今関弘 ていねいに添木当てられ包帯され君の贈り選挙中襟元白き候補者が当選すれば衣をば 物掘り立て自然薯 宮崎県猪俣和子変ふ 福島県児玉正敏 荒草を刈り終へ潤ふ土の面にほとほと梅のホトトギス我家の庭にやってきて「独居なちょっとだけ泣いて自分を甘やかす秋の夜 落つる音聞く 福井県谷口正枝れたか独居なれたか」千葉県野村桂子長があってもよいか広島県岩本幸久 手帖見て日程調整のふりをする空いてゐる朝顔の苗を買い来てこの夏の希望を二つ予運命のいたずら者めこのわれを引き込みや のはわかってゐるのに愛知県阿部啓子約せしかな 大阪府田中伸子がって短歌なんぞに 北海道松木秀 「生きるためカラスも食っていかんならん」夫は大いなる欅の切られ幸不幸あやなすごとき帰り来しタベの庭に灯るごと半夏草白き七 ミミズをほいと投げやる岐阜県大栗紀美子年輪の見ゅ 千葉県富岡勝月に入る 岡山県岸本睦美 日ざし濃き山路の草にうもれたる石仏の頭ほうれい線現われ白髪もシワも増えそんな節目とふ言葉うとまし不惑知命耳順にそれ に水供へけり 島根県花田敦子私をあなたに晒す茨城県木沢美千子ぞれ断念ありて 神奈川県清島俊雄 青すすきそよぐ道辺をタ立のごとく駈けゅ無人駅の留守番せねばと家作るつばくろ一一握力が少し弱いね幸せは掴んだ指をするり く柔道部員 秋田県石井夢津子羽が土運びいる 静岡県黒田幸子抜けてく 岩手県凪ひと葉 海見ゆる丘に漁師の墓並び遥かに沖の風光解放感は正直ありてショ 1 トスティに母がねむれない夜をねむらない夜にする午前三 る見ゅ 宮城県曽根博行く日を待っ吾がゐる宮城県坂本捷子時に読む「郷隼人」鹿児島県久長幸次郎 歯並びのきれいな頭蓋骨が見る千五百年ぶハイヒールは高きものから捨てゆきぬ女の走り来る車のナンバ 1 寄せ算すわびしきく りの青空 神奈川県浜本准階段おりゆくように 北海道垣田郁子せを彼の遺せる 東京都三谷安代 タイヤ替え上着を替えて半年を過ごしたら「おわりーの字浮かび上がって押し入れの防バスの席に女の敬語の快く父とおばしき人 も、つ雪がちらっく 北海道山内昌人虫剤にも一つのドラマ東京都小笠原啓太との会話 神奈川県梅沢多枝子 大方は鬼籍に入りぬどの顔も神妙だった卒溜まるもの解毒する日も火に油そそぐ日もとうきびもトマトも熟れたものからと啼き 業写真 千葉県菅谷修合いて鴉の群が下りくる静岡県阿部俊子 宮城県阿部堅市あり一杯の酒 東の間の昼寝のような平和から覚めて悲劇昨日けふ晴れ渡りたり鳶の輪のうち外いよ熊皹は挙り鳴き立ち里山に「第九ーの輪唱 兵庫県後藤政基 北海道石田志保美している如し を好む世界史 愛媛県柳原栄一一一よ秋天高し 圭乍 ( 6 ) イイ 212

8. 角川短歌 2016年10月号

短歌・俳句関連書籍 高知県金高堂 新潟県 : 萬松堂 売協力店 化海道三紀伊國屋書店札幌本店 : MARUZEN & ジュンク堂書店札視店 岩手県 ! エムズエクスポ盛岡店 城県三丸善仙台ア工ル店 : 紀伊國屋書店仙台店 山形県 . こまっ書店寿町本店 策城県 : 丸善水戸京成店 蛎木県三八重洲ブックセンター宇都宮パセオ店 # 馬県 : 紀伊國屋書店前橋店 奇玉県 ! 紀伊國屋書店川越店 : 紀伊國屋書店さいたま新都心店 : 須原屋コルソ店 モ葉県三浅野書店 ! くまざわ書店松戸店 : 東京旭屋書店船橋店 : 丸善津田沼店 三省堂書店そごう千葉店 : 未来屋書店マリンピア店 ! くまざわ書店稲毛店 三くまざわ書店四街道店 紀伊國屋書店新宿本店 袞京都 : 増田書店 : オリオン書房ルミネ立川店 ! ACADEMIA くまざわ書店桜ヶ丘店 : くまざわ書店八王子店 三久美堂小田急町田店 神奈川県三丸善ラゾーナ川崎店 : 有隣堂新百合ヶ丘工ルミロード店 三ブックポート 203 鶴見店 ! 有隣堂横浜駅西口店 . 有隣堂本店 : 有隣堂たまプラーサテラス店 三ブックファースト青葉台店 ・有隣堂戸塚モディ店 三くまざわ書店三ツ境店 三浜書房港南台バーズ店 三八重洲ブックセンター京急上大岡店 ! アシーネ金沢八景店 平坂書房 MORE'S 店 : 有隣堂藤沢店 三サクラ書店駅ビル店 : 有隣堂厚木店 ・有隣堂ラスカ小田原店 三丸善丸の内本店 : 八重洲ブックセンター : 教文館 ・丸善日本橋店 本店 富山県三紀伊國屋書店 石川県 : 紀伊國屋書店 山梨県 : 朗月堂本店 長野県 : 平安堂若槻店 富山店 金沢大和店 三省堂書店神保町本店 三ジュンク堂書店池袋本店 三省堂書店池袋本店 : 東京旭屋書店池袋店 ! くまざわ書店大泉学園店 : MARUZEN & ジュンク堂書店渋谷店 三省堂書店成城店 三紀伊國屋書店玉川高島屋店 三八重洲ブックセンタールミネ荻窪店 ! ブックファーストアトレ吉祥寺店 ・啓文堂書店三鷹店 ・紀伊國屋書店国分寺店 岐阜県 : 自由書房 EX 新高島屋店 静岡県三戸田書店静岡本店 谷島屋連尺本店 谷島屋浜松本店 愛知県・三省堂書店名古屋高島屋店 三重県 : 別所書店修成店 下記の書店様におきましては 当社の短歌および 俳句の関連書籍単行本を お取り扱いいただいております。 沖縄県三ジュンク堂書店那覇店 三紀伊國屋書店鹿児島店 鹿児島県三ジュンク堂書店鹿児島店 宮崎県 : 蔦屋書店宮崎高千穂通り 大分県三ジュンク堂書店大分店 熊本県 : 蔦屋書店熊本三年坂 : 紀伊國屋書店長崎店 長崎県三メトロ書店本店 佐賀県 : 紀伊國屋書店佐賀店 三ブックセンタークエスト小倉本店 : 紀伊國屋書店福岡本店 三丸善博多店 福岡県三ジュンク堂書店福岡店 愛媛県三紀伊國屋書店いよてつ高島屋店 香川県 ! 宮脇書店本店 徳島県三紀伊國屋書店徳島店 三ジュンク堂書店広島駅前店 広島県 : 紀伊國屋書店広島店 岡山県 : 丸善岡山シンフォニービル店 島根県 : 今井書店グループセンター店 鳥取県 : 今井書店錦町店 奈良県三啓林堂書店奈良店 : 紀伊國屋書店西神店 三ジュンク堂書店神戸住吉店 ジュンク堂書店芦屋店 兵庫県三紀伊國屋書店川西店 : 田村書店千里中央店 三紀伊國屋書店泉北店 : 紀伊國屋書店高槻店 三ジュンク堂書店天満橋店 三ジュンク堂書店大阪本店 三 MARUZEN & ジュンク堂書店梅田店 大阪府・紀伊國屋書店梅田本店 滋賀県三ふたば書房 京都府三三省堂書店 草津近鉄店 京都駅店 株式会社 KADOKAWA

9. 角川短歌 2016年10月号

夢にして夢にしあれば貌を見ず波打っ白き背中みしのみ 固き葉を好む虫ゐてさりさりとよるを噛みゆく音のはげしさ 京はおろか吉野はさらに得知らずとわが呟けば人のおどろく よそみ 万歩計手にひたひたと余所見せすをみなは過ぎぬ兵士のごとく 老人は時に白猫、黒き猫、はた茶の猫を抱きて坐る 耳孔の奥処 永田典子 ( 日月 )

10. 角川短歌 2016年10月号

艦に体当り攻撃をして死ぬという作戦である。 三ペ 1 ジ目の全紙面を使っての記事を読みながら、私は緊張で背筋が寒くなるような感動を 覚えた。軍神のすべてが二十代の青年たちである。軍神という言葉もはじめて知った。小学校 の頃、旅順港ロ閉塞の任務を果し、杉野兵曹長とともに戦死した広瀬武夫中佐の殊勲について 聞き、その唱歌を習ったことを思い出した。ふと、じっとしてはいられないようなふしぎな気 分が湧いた。 さらに三月十一日付新聞は九軍神の生い立ちゃ、日常などの取材記事を特集した。こういう 時、必ず短歌が紹介されるというのは短歌の宿命なのか、軍神の中にも辞世を残している人も あった。新聞に載ったものを二首紹介しておきたい。はじめに古野少佐 ( 現役は中尉で二階級 特進 ) 「君のため何か惜しまん若桜散って甲斐ある命なりせば」、次ぎに「九軍神を偲んで」と して新聞から求められたらしい歌人の松岡貞總の歌 ( 三首のうちはじめの歌 ) 「出で発つや艇 もろともに命死ぬその絶対にわれは泣きたり」。 女学生の私なども、この特集で明かされた九軍神譚にはいたく心動かされ、挽歌風の歌めい たものを作ってひそかに泣いた。しかしこの九軍神による心理的影響は大きかった。しだいに 軍国の銃後にある女性の責任について考えはじめるようになった。 しかし少女の心は幾重にも引き裂かれる。その頃同盟国の文学は読んでもよいということ で、私たち読書仲間はヘッセの『車輪の下』を読んでいた。小説の中の現実は、どこか九軍神 を生んだ国の現実と重なり、散華した若桜の誰かは、時代に押し潰されたハンス少年ではなか ったかと問いかける気持も湧いてきて、まことに悩ましいのであった。