氷河期 3 ラれまで強いインフレを経験し が上がらなくてはならない。ただ C-—た時期はない。 1990 年代初 現実には消費の盛り上がりに欠け 5 る。全体を大きく押し上げるほど めにバブルがはじけたときは高校 4 生だった。将来への楽観度、明る にはなっていない。少なくとも 1 人 当たりの年収べースで 2 ~ 3 % 上が い見通しを持てているかと聞かれ の れば、バブル期や高度成長期を経 っていないと、給料が増えたとい 験した人たちと比べて悲観的だと う実感は持てないと思う。それ以 成 ′し、う。最近は、ほとんどが GDP 成 下だと、節約志向の意識のほうが 長 長率 0 ~ 1 % 台の低成長期なので、 強く出てしまう。消費者の意識か この経験は一つの基準にはなって 変わるには大きな変化が必要だ。 景気判断を確認するため、タク いる。 3 ~ 4 % の予測を出すのには、 シーに乗ったときには必ず運転手 心理的な抵抗が非常に大きい。 この先 5 ~ 10 年の潜在成長率は、 に経済状況の感触を聞く。具体的 しよ 0 % 台後半と予測した。人口減少が には、タクシーチケットを使う企 加速し、労働力のマイナス分を補 業は増えたかどうかだ。チケット うのは並大抵ではない。 0.5 ~ 0.6 使用の動きから企業が交際費を増 理 % を維持するには、労働者や設備 やしているかどうかが分かり、景 的 の質といった生産性を上げる必要 気の実態が分かる。我々が実施し な がある。 ている景気動向調査の回答でもチ 物価上昇率の予想は 1 % 台後半。 ケット使用の増加傾向は表れてい 物価に関しての注目点は賃金の動 る。先入観を排して統計を分析し 抗 向だ。景気が良くなるには消費の ているが、自分の生活者としての 回復が必要で、そのためには賃金 感覚は生かしたい。 窪田剛士 ( 帝国データバンク産業調査部係長 ) くぼた つよし が日本興業銀行 ( 現みずほ銀 成長そのものに対して、ネカティ ブな先入観も手伝い、 1990 年のバ 行 ) に入行したのは、 2000 ブル崩壊以降としては、日本経済 年。就職氷河期と言われ、日本経 シ 済がデフレに突入していった時期 は久々の好循環に入ったと認識で だ。学生時代を含め、高い経済成 きなかった。このときの反省を生 長やインフレというものを経験せ かして、今後は予断を持たずに景 イ ずにエコノミストになった。 気判断・予想をしていきたい。 そんな人生経験が景気判断や予 12 年末にスタートした第 2 次安 サ 倍政権によるアベノミクスは、強 想にも一定の影響を与えているか もしれない。景気が良くなってい 力な金融緩和と機動的な財政政策 イ るときに経済統計を見ていて、バ によって、一時、物価が上がり景 ブルや景気の好転のメカニズムが ン・ 気も上向いた。しかし、 4 年半が経 過した今、政府・日銀の物価目標 分からなくなったり、そのサイン を を見過ごしそうになることが時々 である 2 % は達成できず、経済成長 ある。そういうのはテフレ定着後 率も 1 % 程度にとどまっている。成 長戦略がうまく機能せず、生産性 のエコノミストが陥りがちだ。 そう強く思うのは、 05 ~ 06 年に の向上につながっていないからだ。 す かけて景気は相当に強かったにも このままの状況が続けば、 10 年 かかわらず、ポジティブなサイン 先の物価上昇率はせいぜい 1 % 程度 リ を見逃し、正当に評価できなかっ で、企業が生産性の改革に取り組 ス んでいなければ、潜在成長率も 0.4 たからだ。当時、円安を追い風に 外需主導の 3 % 程度の経済成長を実 ~ 0.5 % 、よくて 1 % に達する程度 現していた。しかし、外需主導の となるだろう。 にしおか じゅん 西岡純子 ( 三井住友銀行チーフ・エコノミスト ) 工コノミスト 2017.6.13
潜在成長率って何 ? ー国の実力べースの実質成長率 引き上げは最優先課題の一つ ー国の労働力や資本といった生産に使う経済資源の量と質で決まる潜在 GDP ( 国内総生産 ) 。その伸び率である潜在成長率を Q & A で解説する。 月、王ネ右ーー ( 明治安田生命チーフェコノミスト ) いを下回り、働く意思と能力のある人 大きさは、一国の労働力や資本と 潜在はどうやっ った生産にっ経済資源の量と質でがすべて就労している「完全雇用」 て推計するのか 決まる。実際に観測できる数値ではの状態に近づいている可能性が濃 もっとも簡単なは、過 ないため、後述するなんらかの手法厚。したがって、マイナスの需給ギ ャップも解消に近づいているという 去ののトレンドに統計 で「推計」する必要がある 的手法を用いた近似曲線を当てはめ 生産力を示す潜在と、需要ことになる。 つまり、日本経済は 0 % 後半の成る手法。シンプルだが、成長の源泉 の強さを示す実際のの差が需 給ギャップだ。潜在が現実の長でも「絶好調」と考えなけれよ ( いを要因分解できないため、分析には を上回る状態がマイナスの需けない時代になっていると言えるか否きである。より一般的な手法は、 給ギャップ ( デフレギャップ ) 、現実もしれない。多くの人が景気回復のと主要経済資源との関係式で のが潜在を上回る状態実感を得られない要因はこうしたとある生産関数を使う手法。これによ ころにあるかもしれず、潜在成長率り成長率を、主要な経済資源 がプラスの需給ギャップ ( インフレ ギャップ ) 。マイナスの需給ギャップの引き上げは、日本経済の最優先課である労働と資本、およびこれらを いかに効率的に使用しているかを示 の状態ではデフレ圧力がかかりやす題の一つと一言える。 く、プラスの需給ギャップの状態で す全要素生産性の三つに分解できる 潜在は一国の はインフレ圧力がかかりやすくな ( 図 1 ) 。この時、労働や資本の稼働ス 生産力 ( 供給カ ) の る。 率に、フル稼働と考えられる稼働率 上限を示すのか を代入すれば、潜在は限界概コ なせ濳在に 潜在にはさまざま念に近くなり、過去の平均水準の値工 着目するのか な推計手法があり、その手法 成 現実の成長率が、長次第となる。以前の日本では、経済 とを 命 るロど 生 期にわたり潜在成長率を超資源がフル稼働した場合のをま人な 安 治 明 え続けることはできないから。つま潜在とみなす概念が一般的だで働進 所 り、潜在成長率を高めないことには、 った。この場合、現実のが計っ労術る 出 高い現実の成長率を望めない 算上の潜在を上回ることはなの く、需給ギャップは必すマイナスと からである。日本の潜在成長率は、 産資加で なる。だが、 2000 年代以降は、生「働っ 内閣府でも、日銀の試算でも 0 % 台 本どの 後半となっている。マイナスの需給国際的な潮流に合わせ、景気循環を 資なる」 そ 0 国が本来持 0 てる、ギ ~ , プは、供給力に余裕がある状ならした平均概念として推計するケな 実力べ 1 スの実質成長率を態を意味するため、これが残ってい 労使間る 指す。実力べースの ( 国内総る間は潜在成長率を上回る高めの成上の需給ギャップがプラスになった に時す 生産 ) が潜在で、その伸び率長も理論的に可能である。しかし、 からといって、即インフレ圧力が高図産働映 生労反 まることを意味するわけではない。 が潜在成長率となる。潜在の足元の日本ではすでに失業率が 3 % 潜在成長率とは どんな指標か ゆういち 3 潜在成長率、 生産性 労働力ー資本 8 2017.6.13
み / ミストアント 表の見方 ] 耳。・ 6 ~ 1 ・ 4 % 。詈以下 概況 社会人に なった年 所属 向こう 1 0 年の物価上昇率生鮮食品を除く総合 ) と潜在成長率 に 00 、て、一 , = デ不況・ゆ族 0 らな号 Q 代 0 若羊がラ 0 ~ 00 代 の中堅、バ ? 上昇率 潜在 成長率 物価上昇率 潜在成長率一洋 一《物価上昇率 】高 物価 氏名 概況 潜在成長率 安定成長期世代 ( 1985 年以前就職 ) の まさあき かん 真 1974 年 フィナンシャル ホールディングス 世界景気が回復を続ければ、 2022 ・ 23 年ごろ 2 % インフレを 達成可能。だが、世界景気は 5 年以内に後退する可能性が 高い。その場合、日本は再び円高、テフレに戻る可能性が高 い。中長期的には 0 ~ 1 % 中心に推移するだろう . 、今後 5 年間は 0.7 % 程度、 10 年後はゼロに接近。当面の寄 与度は、資本ストック 0.3 % 、労働ゼロ、 TFP ( 全要素生産性 ) 0 ~ 0.7 % が 0.4 % 。労働は、当面は労働参加率の上昇に依存できる が、その後は労働の寄与はマイナスに。海外労働者の活用 が喫緊の課題 物価上昇率 0 ~ 1 % 1982 年 みずほ総合 研究所 第 - -1 世界的にみて 2 % は高い水準であり、なかなか到達しづらい状 1 % 前後 況。デフレではなくなったが、「 3L ( 低成長・低インフレ・低金 利 ) 」の後遺症は抜け出しにくい 現在の 0 % 台後半の水準から資本要因と TFP ( 全要素生産 性 ) 要因で押し上げられるが、人口減少をカバーできず、 1 % 前 1 % 前後 後の水準にとどまると展望 わもと なお 低成長が続きそうなことや、欧米の物価との比較からみて 1 % 程度。労働力不足と賃金上昇、円安は押し上げ要因となる。 1 % 程度 他方、国際市場の不安定化を契機にデフレに戻るリスクがあ るほか、政府・日銀の連携が失敗すれば高インフレの可能性 労働力人口の減少はハイベースだが企業の生産性向上のた めの投資が加速し ( 女性や高齢者の活用も進む。中国の GDP は米国の 1 .5 倍以上になり影響力が増すが、日本は生 産、開発拠点として、また観光地として生き延びていく 根本直子 1983 年 アジア開発銀行 研究所 潜在成長率 0.5 % 程度 工コノミスト 2017.6.13
もっと知りたい 工コノミスト の本育 シナリオの実質成長率は筆 る。こうした見方を取る経済学者の を代入すれば平均概念に近似する。 0 ・ 8 % にとどまるのに対し、「変 このほか、人工衛星の位置の特定代表格が米ノ 1 スウエスタン大学の 革」シナリオでは同 2 ・ 0 % まで高 など制御工学に用いられる状態空間ロバ 1 ト・ゴ 1 ドン教授である。 基本的には経済の需要サまるとの試算を発表している。 モデルという手法を使う場合もあ『大停滞』がベストセラーとなった イドではなく、供給サイドを る。いずれの手法でも、推計にっ米ジョ 1 ジ・メイソン大学のタイラ トランプ米大統領の経 デ 1 タや推計期間の取り方、細部の ・コ 1 エン教授は、技術革新に加強化する政策が必要になる。需要対 済政策トランプノミク 調整次第で結果にはかなりの幅が生え、無償の土地や、未教育の賢い子策では、マイナスの需給ギャップを スは、潜在成長率の観点 じてくることから、これが正解といどもといった生産力が伸びる可能性解消できても、潜在成長率を引き上 からどう評価できるか う唯一無一一の数字はない。 を秘めた材料が枯渇したことを要因げることは基本的にできない。当初 トランプノミクスは、大型 に挙げ、「低い木の枝の果実が取り尽のアベノミクスに掲げられた「三本 主要国の潜在成長率は 財政と保護主義が一一枚看板 くされた」と述べた。また直接、潜の矢」で一言えば、 1 本目の矢の金融 なせ低下しているのか 在成長率を分析対象にしたものでは政策と 2 本目の矢の財政政策は需要だが、通常なら需要対策である財政 ( 経済協力開発機ないが、年に元米財務長官で米ハ対策、 3 本目の矢である成長戦略の政策が限られた条件下で供給サイド の強化、すなわち潜在成長率を引き みが供給力の強化策となる。 1 バ 1 ド大学のロ 1 レンス・サマ 1 構 ) の推計によれば、図 2 の 通り先進国の潜在成長率は中長期的ズ教授が、主として需要サイドの要供給力を伸ばすには労働力を増や上げる政策になりうるとの説があ すか、資本の量を増やすか、生産性る。これは「高圧経済」と言われ、ス に低下傾向をたどっており、今後も因で、米国が潜在成長率に届かない すうせい 低迷が予想されている。理由には諸長期的・趨勢的な低成長 ( 長期停滞 ) を上げるかのいずれかの手段が必要経済に本来必要とされる以上の景気 説ある。たとえば日本を代表格に、 を余儀なくされているとの説を展になる。労働力強化という観点では、刺激策を加えることで、普通なら仕 たとえば安倍政権は働き方改革の旗事が回らない長期失業者や、仕事探工 巻き起こした。 主要先進国では人口減や少子高齢化開、世界的な議論を 印のもと、女性の活躍や高齢者の労しを諦めて労働力人口から除外され の進展が労働力人口の制約要因にな 働参茄の推進、労働生産性の向上をた人々まで労働力化され、スキルも っており、結果として生産性の向上 目指している。 身に着くため、潜在成長率の上昇に につながるような設備投資も伸びに また、 ( 人工知能 ) が囲碁や結びつくというものである。 くくなっているという見方である。 将棋のトップ級に勝っ時代が来るな また、米国では老朽化が深刻なイ また、生産性の急速な上昇につな長計 成推 ど、成長戦略で掲げている「第 4 次ンフラの整備も潜在成長率の強化に がる技術革新が途絶えたためとの説在 8 産業美叩」も大きな可能性を秘める。 つながる可能性がある。ただ「高圧 もある。足元の革命にしても、 、—oe ( モノのネット化 ) 、ロ経済」はインフレリスクと隣り合わ 各向 美叩、モ 1 タリゼ 1 ションなどと比 7 傾 ポットといった技術革新の波が今後せでもある。トランプノミクスの場 2 押し寄せる中、政府も産業構造や就合は、これに保護主義が加わるので、 較すれば、インパクトは小さいかも しれない。この他、富裕層への富の図 ⅱ平励業構造の変化に対応した政策を打ち公約が実現した場合、モノ不足とイ 集中や教育費の高騰に伴う学歴格 2 均 8 出す必要性がある。ちなみに経済産ンフレ進行が同時進行的に加速する 平 8 1 っこ スタグフレ 1 ションを招くリスクも 差、政府債務の増大なども潜在成長 は、「現状放置」と「変革」の一一 所 出 つのシナリオを設定し、「現状放置」指摘できる 率の押し下げ要因となる可能性があ 5 0 5 0 5 0 5 0 5 0 3 3 2 2 1 1 0 カナダ 米国 英国 ドイツ 日本フランス イタリアーー " 潜在を押し上 げる政策はあるのか 2017.6.13 5
潜在成長率 物価上昇率 潜在成長率 ⅳ物価上昇率 バブル期世代 ( 5 年就職 ) もの よねやまひでたか 朝第デフレ脱却後は 1 ~ 2 % の範囲で安定。一定の物価上昇率 、を保たなければ政府債務の実質残高は低下しないため、国債 管理政策の観点からもこの程度の物価上昇率が必要とされ ロポット、 A Ⅱ人工知能 ) など省力化のための先端投資が進み 人手不足を補う。知恵を使う分野に集中することで TFP ( 全 要素生産性 ) も上昇。労働力不足の逆境が日本経済を覚醒 させる可能性に期待 米山秀隆 物価上昇率 潜在成長率 1 .5 % 程度 を 1986 年 富士通総研 経済研究所 4 1 % 程度 り ゆうたろう うの ゼロインフレ予想は根強い。世界経済の拡大局面が続き、原 油価格の上昇や円安の進行で、 1 % 程度の循環的なインフレ 上昇がみられても、トレンドはゼロのまま。世界経済が不況局 面に入れば、簡単にマイナスに陥る 現在は 0.5 % 程度。 1 0 年程度は労働力のマイナス寄与は深 ! 刻化しないが、懸念されるのは、極端な金融緩和の継続の副 0 % 未満 作用で TFP ( 全要素生産性 ) 上昇率が低下し、社会保障費 等の増大で貯蓄が食われ資本の取り崩しが始まること。この 結果、潜在成長率はマイナスの領域に 0 % 以下 1987 年 BNP/X リバ 証券 潜在成長率 1988 年 SMBC フレンド 証券 岩下真理 賃金上昇率が 1 % に満たない状況では、物価上昇率が 1 % 台 に定着できれば上出来。フィリップスカーブから、賃全 3 % で物 価 2 % が算出されるので、日本経済の実力より物価目標は高 1 % 台前半 少子高齢化による労働力人口の減少が続く以上、リーマン・ ショック以前のような 1 % 程度に引き上げるには、生産性の向 上と外国人労働者の増加 ( 移民受け入れ ) が伴う必要があろ つ 0 % 台後半 むらしま 村嶋帰一 賃金の伸びが高まれば、コスト面からインフレ率が高まるとの 意見もある。ただ、個人消費が強くならず、企業の価格決定力 が高まらなければ、インフレ率の高まりには結び付きにくいだろ 現在の潜在成長率を年率 0.9 % と推計。当面は、高齢者や 女性の労働参加率の上昇で、これに近い水準を維持すると みられるが、当該期間の終盤にかけては 0.5 % 程度に低下す るとみている 1 % 以下 1988 年 シティグループ 証券 0 る ~ 0.9 % 工コノミスト 2017.6.13
もっと知りたい 工コ 4 戔スト バブル期 アルタイムでバブルを経験し 銀行員時代の経験があるのかもし た世代だが、バブルやブーム れない。当時、自分自身がバブル に対しては常に冷ややかな目で見 醸成の片棒を担いでいるという認 ている。景気が良くても、それは 識はなかったが。 続かない。 1980 年代後半のバカレ 今は完全雇用の状態だが、潜在 成長率は低い。 0.5 % ぐらいだと思 では、日銀の金融緩和の長期化で 資金が不動産に流れ込み、楽観が う。逆説的だが、労働力減少など や 広がって、景気はかさ上げされた。 で潜在成長率が低いから、低成長 や バブルが崩壊したから、その後 の下でも、需給ギャップが改善し、 完全雇用がもたらされた。いずれ の潜在成長率が低下しただけでは か ない。元々、引動力の減少などで、 ゼロを割り込んでいくのだろう。 A Ⅱ人工知能 ) や loT ( モノのネ 収益性の高い投資機会が失われて 実 ット化 ) には期待しているが、 いたから、行き場をなくした流動 般企業が吸収し、経済全体の生産 性が不動産市場に流れ込んだので ある。潜在成長率が低下したから 性の上昇につながるには、もう 1 世 験 バブルが生じた、という逆の因果 代かかる。極端な財政政策や金融 関係も存在したと見られる。 2000 政策の長期化、固定イヒが資源配分 年代の米国の灯バブルや住宅クレ や所得の分配をゆがめ、全要素生 産性 (TFP) を下げているので、 ジットバブルも同様だろう。 潜在成長率を高めるには、早く手 こうした仮説の根っこには、卒 つ 業論文でバブル醸成のメカニズム じまいすべきだ。完全雇用なのだ を取り上げた学生時代と、不動産 から、追加財政や金融緩和を続け 関連融資の発掘に奔走した 2 年半の る妥当性はない。 良ミ 立目チ りゅうたろう の っ 同時に、今のような長期のデフレ コノミストが先行きを予測す に日本が陥るとも考えていなかっ る際に世代的な見方の違いが 代 た。今振り返って言えることだが、 入り込む余地は限られていると考 的 日銀の金融緩和が「 t00 little えている。 な too late 」となり、金融システム 例えば、潜在成長率を推計する 問題への対応が遅れ、 97 年に消費 場合、人口動態と生産性といった 方 税が引き上げられるなど、政策ミ 客観的なデータを共通の手法で分 の 析するアプローチを取るからだ。客 スもあったように思う。 この先 1 0 年の物価上昇率は 1 % 勺なテータを解釈する際には、世 以下と見ている。人手不足で賃金 代はあまり関係がないだろう。 上昇圧力が高まっているが、個人 ただ、我々の世代と若い世代と 消費が弱く価格に転嫁できない状 の消費行動の違いは感じる。私が あ 況が続くだろう。個人消費の力強 就職した 1988 年ごろは、入社した い回復は難しい。税や社会保障費 ばかりなのに高級車を買ったり、ク リスマスには高級レストランでご の増加で可処分所得が増えてこな かった。購買力が弱い年金生活者 飯を食べたりという人が多かった と思う。それに比べると今の若い の消費の比率が高まっていること 世代では、マイカーを保有する人 も一因だ。 な 潜在成長率も少子高齢イヒによる は少ないし、旅行で浪費すること 働き手の減少で上がりにくいだろ もない。 の 私はバブル期入社組だが、当時 う。移民受け入れの議論もあるが、 て 現実的な解決策になるか周到な検 の好景気が持続的なものとは考え レよ 討が必要になろう。 ていなかったように思う。しかし 工コノミスト 村嶋帰一 ( シティグループ証券マネージングディレクター ) きいち むらしま 2017.6.13
潜在成長率 ~ 物価上昇率 物価上昇率 、長期間続いた企業や個人のデフレ経済型思考パターンが変 わることは容易ではない。また、 1 人当たり賃金が伸び悩むな かでは、消費者の低価格志向、節約志向は継続する。金融 , 。緩和と財政支出の両輪が重要 人口の減少が潜在成長率を抑制する最大の要因となる。 方で、女性や高齢者などの労働参加、働き手の質の向上や 老朽設備の更新などを通じた生産性向上である程度補うこと ができるとみている きたおかともちか 時給が足元では前年比 1 % だが、失業率などからみて前年比 1 ~ 2 % 2 ~ 3 % 程度で上昇するのが妥当。この場合は前年比 1 ~ 2 % で、おおむねインフレ目標の 2 % と整合的だと考える 北岡智哉 河 西岡純子 窪田剛士 劔崎仁 2000 年 、 - 足元の労働参加率・資本稼働率の上昇トレンドが続けば、潜 在成長率は 1 % 強で、その程度が妥当 1 % 強 みずほ証券 為替や原油など海外市況の影響を一定と仮定すれば、 0.5 ~ 1 ℃ % 程度が平均的なインフレ率だと考える。 2 % を上回るほ 0.5 ~ 1 % 程度 どのモメンタムは、企業が賃金を毎年 3 ~ 4 % 上げ続けること、 積極的な販売価格の引き上げが前提 生産性向上とはいっても残業時間の圧縮での対応が先行し 04 ~ 0.5 % ていることから言うと、資本装備率の上昇をともなった本質的 程度 な生産性の改善と、それにけん引されるかたちでの潜在成長 率の上昇には期待できない 2000 年 三井住友銀行 ぐばたつよし 。イ % 台後半 2001 年 帝国 デタバンク 0 % 台後半 けんざき 足元では、グロー / ヾル化 SIT イヒが進み、労働組合の賃金交渉 力が低下する中、賃金の上昇は限定的にとどまっている。ま 1 % 前後 た、日本は長年、デフレを経験し、期待インフレ率が高まること も難しい。 5 年後でも、日銀が目指す 2 % の物価目標には達し ないだろう アベノミクスにより構造改革に取り組んでいるが、 TFP ( 全要 素生産性 ) の潜在成長率に対する寄与度は上昇するどころ か低下している。また、今後、高齢化の更なる進展により、労 働投入量の寄与度も緩やかに低下する可能性がある , 2004 年 ア -- ル・ビー・エス、 最大 1 % 証券 工コノミスト 2017.6.13
もっと知りたい 工コノスト の本育 星野卓也 物価上昇率 潜在成長率一一 ~ 物価上昇率 ほしのたくや 人手不足状態の継続の中、人件費 ( 賃金 ) ・サービス価格の 1 % 程度 引き上げ圧力が続く見込みで、デフレ脱却が定着していくと予 測している 生産年齢人口の減少が下押し圧力になる中で、省力化投資 の増加や企業の生産性向上努力が進んでいくと考える。日 本の T 投資は諸外国に比べて遅れているが、増加余地があ る分野ともし、える 、 201 1 年 第一生命 、冫 0 % 台後半 経済研究所 3 潜在成長率 物価上昇率 潜在成長率 物価上昇率 いのうえ ①労働力人口が本格的に減少し人手不足となるが、労働力が必 要な部門は、ヘルスケアなど労働生産性が上昇しにくいサービス 0 % 近儔 業に偏るため、賃金の上昇圧力が高まりにくいことや、②高齢イヒが 進むなか財政赤字の拡大が続き、勤労世帯の社会保険料等の 負担が増え続けるため、人々の購買力か高まりにくいことが背景 ①正規社員の労働市場が硬直的なため、労働生産性の高 い分野への労働移動が進まないことや、②人口が減少するな か、外国人の流入に消極的なため、家庭内労働の女性への 依存が残り、女性の家庭外労働市場への進出が頭打ちとな ることが背景 超 井上恵理菜 年 山口範大 201 1 年 日本総合研究所ぎ 潜在成長率 0 % 前後 やまぐちのりひろ すうせい 中長期的な物価に影響を与える消費者の期待インフレは、雇 用慣行上、賃金が構造的に伸び悩むなか、趨勢的な上昇が 1 % 程度 見込みにくい。循環的な景気回復や為替・原油価格の変動 等により、一時的な物価上昇局面はあるとみるが、ならせば前 年比プラス 1 .0 % 程度の低インフレが続くと予想 移民導入の議論が停滞するなか、人口減少に伴う労働力の 減少は今後より深刻化するとみる。ただ、 IoT や A などの新技 1 % 術の取り込みへ向けた企業の研究開発の進展を受け、生産 性が向上すると見込まれることから、潜在成長率はやや上向く と予想 ( 足元 : 十 0.8 % → 10 年後 : 十 1 .0 % ) 2012 年 明治安田生命 ひろのようた 物価は緩やかに上昇するが、日銀が掲げるインフレ目標 2 % の達成 は困難であろう。人手不足による賃金上昇が個人消費を浮揚させ、 1 % 台前半 需給ギャップが改善されることが期待される。一方、持続的な賃金 上昇には労働生産性の向上が必要だが、 5 ~ 1 0 年では大きな進展 は望めず、インフレ率の上昇も緩やかなものにとどまると予想する 潜在成長率は現状から大きく変化しないとみている。人手不 足の一方で労働時間短縮の流れが継続する可能性は高く、 0 % 台後半 時間当たりの労働生産性を高める必要がある。働き方改革な どが進むことで生産性の上昇はみられるだろうが、潜在成長率 を 5 ~ 10 年で劇的に向上させるほどではないと考えられる 2016 年 大和総研 工コノミスト 2017.6.13
エコノミストの視点 人生経験は経済予想に影響するものか。バブル世代からデフレ世代のエコノミストに聞いた。 ( 聞き手Ⅱ浜條元保 / 米江貴史・編集部 ) あ日 安定成長期 は③だけ。 4 回の / ヾカレの経験 塊世代に属する私はこれ リ までに 4 回のバブルを経 から 5 回目もあると思ってい る。バブルは毎回、違う装い 験した。最初が、第 1 次オイ ル・ショック前 ( 1973 年 ) の でやってくる。どういう形で、 どこに発生するか、しつかり インフレ高騰と景気過熱だっ 見極めたい。 た。 2 度目は 80 年代後半の不 シ ' 動産、株式バブル。 3 度目が / ヾブル崩壊後の 90 年代初め ヨ の日銀時代、中堅幹部に私も 90 年代末から 2000 年にかけ ツ てのバブルで、 4 度目が 08 加わり、「日本はテフレになる か」を議論した。結論は「ノ 年リーマン・ショックまでの を ー」。インフレをいかに抑え込 米国不動産、信用パブルだ。 むかが、当時の中央銀行の命 見 工コノミストとして、リー 題。デフレ経験のない人間に マン・ショックを予測できな かったのか痛恨の極み。右肩 はテフレを予測できなかった。 け ひるがえって今は、まだデ 上がりの不動産価格を前提に ふっしよく フレマインドが払拭されてい したサブプライムローンやそ な ない。いくら日銀が強力な金 れを担保にした証券イヒ商品の か 異常なまでの拡大を踏まえれ 融緩和策を実施してもインフ レ、資産インフレは起こらな ば、十分に予測できた。 た バブルの条件としては①金 いと思っている人が多い。た 融緩和、②規制緩和、技術革 だ、そんな先入観を持って経 新、③過度な楽観論が同時に 済予測をすると、見誤るかも 起きることだ。今足りないの しれない。 団 かんの ( ソニーフィナンシャルホールディングス ・チーフェコノミスト ) ように長期テフレからまだ完 一手工コノミストが我々 全に抜け出せない経済だと、潜 経 60 代よりも景気見通し 在成長率以上に成長できるは が悲観的と言われるが、そう 験 ずだ。そういう意味から数年 した傾向はあると思う。 1980 年代後半のバブルの好調期と から 5 年単位で見れば日本経済 その後の「 20 年テフレ不況」 は 1 ~ 2 % ぐらい成長できる。 れ を経験していると、景気には 1 0 年先の潜在成長率は抜本 「両極端の可能性がある」と考 的対策を講じなければかなり 下がるだろう。人口減少が始 えるようになる。 見 まっており、潜在成長率を構 だが、 40 代以下のテフレ経 成する労働投入量はマイナス 済に慣れている人は、いくら 方 景気が良くてもデフレ経済の に働く。しかしこの先 10 年で、 中の景気浮揚と受け止めがち 外国人州動者を受け入れたり、 で、本格的なデフレ脱却につ A 凵人工知能 ) などを活用し た技術革新が進めば、 1 % そこ ながるかもしれないと素直に 面できないかもしれない。テ そこを維持できるだろう。 フレ経済しか経験していない 私は長年、日本に住み日本 人の勤勉さや高い技術力を知 ため、経済にはレジームシフ ト ( 体制移行 ) の可能性があ っている。デフレを脱却し、 と 1 ~ 2 % の経済成長は十分可能 ることを視野に入れない。 だ。こう予想するのも、バブ 潜在成長率は完全雇用の状 況でどれだけ GDP が拡大でき ル期を肌感覚で知っているか るかという概念。日本経済の らかもしれないが。 工コノミスト ポール・シェアード Paul Sheard ( S & P グローバル・チーフェコノミスト ) 0 2017.6.13
台 SMC はモーリス・チャン会長が 1987 年に創業 iPhone 心臓部を独占受注 絶好調台湾 TSMC にも死角 ム湾のファウンドリー ( 半導体 統合メーカーの多くは、製造の大半 最大のファウンドリーである中芯国 ロの受託生産 ) 「 TSMC 」が 3 月 際集成電路製造 ()M ℃ ) の成長率 を他社委託することで製造の負担を が 3 割超と驚異の伸びを示している 軽くし、秘密性の多い部分のみ自社 中旬に時価総額が 19 兆円強に達し、 生産する「フアブライト」からファ が、 TSMC に比べて技術レベルがは 半導体世界大手の米インテルを初め るかに低い。 TSMC は技術力を売り ブレスへと進む傾向にある。この結 て上回った。同社は韓国サムスン電 子を振り切り、今秋発売予定の米ア 物にしてシェア獲得を目指す。 果、ファウンドリーの市場規模が ップル社製スマートフォン「 iPhone 年々拡大している。 絶好調に見える TSMC だが、 4 月 ( アイフォーン ) 」新モテルに搭載さ に 2017 年 4 ~ 6 月期売上高業績につ 世界ファウンドリー市場は世界売 上高 505 意ドル ( 約 5.5 兆円 ) 規模だが、 いて、 1 ~ 3 月期に比べてマイナス 8 れるアプリケーションプロセッサー 工ーイレブン モ 壊 ~ 9 % と、伸び悩むとの見通しを発 「 AI 1 」の受注を独り占めにした。 TSMC は 6 割を握る断トツだ。この 表している。今年 1 ~ 3 月期のパシ A11 はスマホの心臓部にあたるアッ 業界は 1 強多弱状態にある。 1 カレ独自設計のマイクロプロセッサ コンやスマホ市場がマイナス成長に プ も ( 演算機能を担う半導体チップ ) 中国でも足場固め 転じており、影響をもろに受けてい ル 成 る。さらに、 17 年のファウンドリ 0 は 長 ー業界全体の成長率の見通しを、従 TSMC の強みは、基板上にいかに TSMC が AI 1 を独占受注できたの 来の 7 % から 5 % に下方修正した。 は、積極的な投資による最先進製造 細い線で回路を描いて機能を集積す 地 多くの調査企業や工業会は、今年 は るかという「微細化」競争で、サム プロセスの導入が奏功したからだ。 じ の半導体市場を 2 ケタ成長と見てい スンやインテルをしのいでトップに アッカレだけではない。同社には先 立っていることだ。微細化に限らず、 る。半導体メモリーバブルによるも 進大手のモバイル端末、車載、 IoT 、 る のだ。ただ、メモリーは垂直統合メ 前工程 ( トランジスタ・配線形成 ) 通信向け半導体の製造注文が殺到し から後工程 ( 組み立て・パッケージ ーカーが自社で製造する。サムスン ている。このような好業績が、株式 ばくだい 電子などのメモリーメーカーが好業 ング ) に至るまで莫大な額の研究投 市場における TSMC の評価を押し上 る時 測 績を上げる中、 TSMC などのファウ げている。 資を行っている。 し 。期 し 得力 を ンドリーはその恩恵にあずかれない 。。半導体産業の業種には、①インテ 世界最大の半導体市場・中国本土 な し め ため、半導体好景気の中で沈む結果 でも独自の進出戦略を取っている。 ルのように企画設計から製造・マー ぐ か 中国と距離を置く台湾政府の政策に となってしまいそうだ。ただし、 ケティングまで全てを自社で担う垂 ノヾ つ つ た プ TSMC は自身については、新型アイ て 一直統合メーカー、② TSMC のように 同調することなく、天津に最先端の よ は ル フォーンの売れ行き次第で伸びるこ ・ - 製造を受託する、いわば下請けメー 巨大半導体工場を建設している。先 の 見 っ とを理由に年間 5 ~ 10 % 成長との見 、カーのファウンドリー、③米クアル 進製造技術を中国勢に盗まれぬよう 解 に始 中国勢との合弁を拒否して自己資本 通しを崩していない。新型アイフォ が コムのように企画設計は行うが製造 はファウンドリーに委託するフアブ ーンに採用された A11 のようなロジ での進出だ。来年以降、中国の顧客 か に接近して先端半導体の注文を独り ック半導体頼みでどこまで踏みとど 丿レス ( 製造工場 = フアブを持たない の誰 れ まれるかが注目される。 ( 服音阯毅 ) という意味 ) の重類がある。垂直 占めしようとしている。現在、中国 駆 も て け し、 スる年のうっ 増て会予が引 う、、スガ足かるて期転が 出しよ推意 しだレ、メ大需も つレだ、来さロだはだ産規いて 、たがしみや し 1 モ給メ が令技 アプが 、け業模る 図な をれポが 術 めドの激開るツ だに イ た 、メ がリ ノヾモ は のマ 2 い フ ス 彳麦 い し産く分 。し だク 1 モ ラリ フ 著い業知野 ロ況を世プ、実量工ン 1 ォ成 ・半、マ リ て 長かイ昨なな し今に感見界ル供現産場ス需 1 だっか時の言の A し 1 見あ て る 崩驍要 に ど が、築奛箚核な I ま ン か 勝大き変の造工ど 0 り は剰ばを計無変冗 モ成すでま じ た る にばき 残な燾彡行 ざ 産は 、目画視挈 リ 長べは 。入大な需 た の 栄必液指でし 1 をて終ま き波給 の は るチた備は業ン成自が くを変規至晶しはたるげだ需予のわな だヤなえこでと長動行 成乗動模退だデて、中だに 。要測調 要 ろンメたれあしが運き 急し査 本を 長り にのを イい 19 国ろよ 因 工コノミスト 2017.6.13 するのも、伸びが鈍化してきたスマ ホ向けから、車載・— 0 e 向けへと かじを切るための自己変革と言え る。 loomberg