財務諸表の注記 1 . 重要な会計方針 ( 5 ) 施設の提供等の物的サービスを受けた場合の会計処理 施設の提供等の物的サービスの受入れは、活動計算書に計上し ています。また、計上額の算定方法は、「 3. 施設の提供等の物的 サービスの受入の内訳」に記載しています。 ( 6 ) ボランティアによる役務の提供 ボランティアによる役務の提供は、「 4. 活動の原価の算定にあ たって必要なボランティアによる役務の提供の内訳」と・して注記 3. 施設の提供等の物的サービスの受入の内訳 しています。 内容 金額 〇〇体育館 8 2 8 , 0 0 0 の無償利用 算定方法 〇〇体育館使用料金表によっています。 4. 活動の原価の算定にあたって必要なボランティアによる役務の提供の内訳 内容 A 事業相談員 金額 算定方法 単価は〇〇地区の最低賃金によっ ています。 7 2 , 0 0 0 48
くボランティアによる役務の提供を受けた場合 > ①原則的な処理 ボランティアによる役務の提供については、特に会計上の処 理や財務諸表への表示は行わない。 ( ※しかし、事業報告書等にボランティア参加の事実等を表示する ことでより活動の様子を伝えることができます ) ②ー 2 必要な受入額である。 そのボランティアによる役務の提供が、活動の原価の算定に ②ー 1 ②会計処理が容認される場合 : 46 ろん、注記だけにすることも選択できる。 ) ( ※活動計算書に計上するか、しないか、を選択できる。もち とができる。 できる場合」には注記に加えて「活動計算書に計上」するこ そのボランティアによる役務の提供の金額を「客観的に把握 ②ー 3 ( ※注記するか、しないか、を選択できる ) できる場合」には「財務諸表に注記」することができる。 そのボランティアによる役務の提供の金額を「合理的に算定
ボランティアによる役務提供を受けた場合は ? NPO 法人はボランティアによる無償や著しく低い価格での労力に 支えられている部分が非常に多く、これは営利企業などには見られ ない特色です。一方で、ボランティアの労力を金額評価しないこと で、 NPO 法人の真の活動規模が過小評価されている問題も指摘され ています。営利企業では事業の実施に必要な労力は金銭を支払って 調達するしかないので人件費の金額が大きくなりますが、 NPO 法人 の場合には、ボランティアで労力が提供されると人件費の金額が出 てこないため、比較ができず、そのことが行政との契約などで NPO 法人に不利に働く場合があります。 こうした点に対応しようという理由から、 NPO 法人会計基準では、 ボランティアによる労力の提供を金銭換算して財務諸表でも表現す ることを可能にすることにしました。ただし、財務諸表に計上でき るのはそのボランティアによる役務の提供が、「活動の原価の算定 に必要な受入額」である場合だけです。この取り扱いは適正な活動 のコストを表示するためにおこなうので、その活動が必要とする本 来の労力を超えてボランティアを受け入れた場合に、その超えてい る分まで活動計算書に計上するのはおかしいのです。 ボランティアによる役務の提供も、無償の施設の提供等と同様 ①財務諸表の注記だけに記載し、活動計算書には計上しない ②活動計算書に計上し、注記にも記載する一一という 2 つがあります。 45
無償等で物的サービスの 提供等を受けた場合は ? NPO 法人は、支援者等の好意で、無償又は著しく低い価格で土地 や建物等の不動産やパソコン・車などの動産を使用しているなどと いった「物的サービス」の提供を受けることがよくあります。この ようなサービスも、現物寄付を受けた場合と同様に現金による受取 寄付と変わらないので、金銭換算して財務諸表でも表現したい、と いう理由で、それを可能にすることとしました。ただし、これは、 金銭換算して財務諸表で公表したいと望む法人の任意であり、望ま ない法人は、従来通り事業報告書に記載するだけで構いません。 財務諸表に計上する方法としては ①財務諸表の注記だけに記載し、活動計算書には計上しない ②活動計算書に計上し、注記にも記載する という 2 つがあります。 ②の活動計算書に計上するためには、お金で寄付を受け取ったの と同レベルの「客観的に把握できお」必要があります。一方、①の 財務諸表の注記だけに記載する場合は、「合理的に算定できる」レベ ルで構いません。 何らかの形で金銭換算して財務諸表でも公表したいと考える法人 は、提供を受けた物的サービスの重要性と金銭換算のための手間を 勘案して、事業報告書に記載することに加え、財務諸表に注記した り活動計算書に計上することを検討してください。 43
く財務諸表への表示の具体例 > * 施設の提供等の物的サービスの受入については、客観的に確 定できるため活動計算書に計上し、ボランティアによる役務の 提供は合理的に算定できるため財務諸表の注記に記載する場合 活動計算書 金額 ( 単位 : 円 ) 科目 I 経常収益 1 . 受取会費 2 . 受取寄付金 施設等受入評価益 Ⅱ経常費用 1 . 事業費 ( 1 ) 人件費 ( 2 ) その他経費 施設等評価費用 8 2 8 , 0 0 0 を 同計 8 2 8 , 0 0 0 47
く無償又は著しく低い価格で施設の提供等を受けた場合 > ①原則的な処理 : 無償又は著しく低い価格で提供された物的サービスについて ②ー 1 ②会計処理が容認される場合 : 等にその事実等を表示することが望ましい ) ( ※財務諸表への金銭的な表示は必要ないですが、事業報告書 は、特に会計上の処理や財務諸表への表示は行わない。 44 注記だけにすることも選択できる。 ) ( ※活動計算書に計上するかしないかを選択できる。もちろん、 注記に加えて「活動計算書に計上」することができる。 その物的サービスの金額を「客観的に把握できる場合」には、 ②ー 2 ( ※注記するか、しないか、を選択できる ) 「財務諸表に注記」することができる。 その物的サービスの金額を「合理的に算定できる場合」には、
目次 第 1 章 N PO 法人会計基準とその位置付け NPO 法の目的は何か ? ・ NPO 法人にとって会計の役割は ? ・ NPO 法人会計基準とは ? ・ NPO 法改正と NPO 法人会計基準の位置付けは ? ・ 情報開示・発信基盤のあり方との関係は ? ・ 第 2 章 NPO 法人会計基準 財務諸表の体系は ? ・ 活動計算書とは ? ・ 貸借対照表とは ? ・・ 財務諸表の注記とは ? ・・ 収支計算書と活動計算書の違いは ? ・ 勘定科目の設定は ? ・・ 事業費と管理費とは ? ・ 共通経費の按分は ? ・ 複数の事業を行っている場合の表示の方法は ? ・・ 使途が制約されている寄付等の扱いは ? ・・ 無償等で物的サービスの提供等を受けた場合は ? ・ ボランティアによる役務提供を受けた場合は ? ・ 8 0 ワ 4 1 1 1 / 8 0 ワ朝 4 っ 6 8 ワ朝 0 l-n 1 1 っ 0 ワ 0 ワワなワっ 0 4 4 4
事業別の内訳は、「財務諸表の注記」に、「事業費の内訳」を記載するか、あるいは、下記のように、収益を含めて「事業別損益 事業別損益の状況は以下の通りです。 2. 事業別損益の状況 の状況」を記載します。 ( P36 ~ P39 参照 ) 1. 受取会費 2. 受取寄付金 3. 受取助成金等 4. 事業収益 5. その他収益 当期経常増減額 経常費用計 その他経費計 雑費 消耗品費 支払寄付金 減価償却費 施設等評価費用 地代家賃 通信運搬費 旅費交通費 印刷製本費 ( 2 ) その他経費 人件費計 法定福利費 給料手当 ( 1 ) 人件費 Ⅱ経常費用 経常収益計 828 , 000 4 , 000 , 000 2 , 000 , 000 6 , 828 , 000 3 , 500 , 000 300 , 000 3 , 800 , 000 L800 , 000 850.000 0 , 000 200 , 000 828 , 000 500 , 000 4 , 328 , 000 8 は 28 , 000 6 , 000 , 0 圓 2 , 000 , 000 5 , 000 , 000 5 , 100 , 000 300 , 000 200 , 000 350 , 000 6 , 650 , 000 650 , 000 6 , 000 , 000 13 , 000 , 000 12 , 600P00 を 950 , 000 5 , 500 , 0 圓 6 , 500 , 000 950 , 000 500 , 000 200 , 000 250 , 000 5 , 550 , 000 550 , 000 5 , 0 圓 , 000 5 , 500 , 000 ll , 228 , 000 27 , 228 , 000 6 , 828 , 000 6 , 000 , 000 12 , 500 , 000 25 , 328 , 000 14 , 500.000 1 , 500 , 000 1 000 , 000 1 , 800 , 000 1 , 450 , 000 550 , 000 1 , 000 , 000 828 , 000 5 , 000 5 は 00 , 000 250 , 0 200 , 100 , 000 250 , 000 1 圓 , 000 900 , 000 3 , 000 , 000 5 , 850 , 000 3 , 500 , 000 150 , 000 9 , 500 , 000 2 , 000 , 000 100 , 000 2.100 , 000 ( 単位 : 円 ) ロ 5 , 850 , 0 16 , 500 , 000 34 , 828 , 000 150 , 000 12 , 500 , 000 6 , 000 , 0 10 , 328 , 0 12 , 128 , 000 100 , 000 250 , 000 5 , 100 , 000 600 , 000 828 , 000 1 , 200 , 000 800 , 000 1 , 450 , 000 乢 800 000 18 , 100 , 000 L600 , 000 30 , 228 , 000 無償等で物的サービスの提供等を受けた場合や、ボランティアによる役務の提供を受けた場合で、活動計算書に計上する場合 あるいは財務諸表の注記に記載する場合には、重要な会計方針にその旨を記載するとともに、以下のような内訳を記載します。 ( P43 ~ P49 参照 ) 3. 施設の提供等の物的サーヒ・スの受入れの内訳 00 体育館の無償利用 ( 単位 : 円 ) 828 , 000 〇 0 体育館使用料金表によっています。 4. 活動の原価の算定にあたって必要なボランティアによる役務の提供の内訳 弁護士 10 時間 ( 単位 : 円 ) 日本弁護士連合会から出されている「市民のための弁護士報酬の目安」から、 1 時 間の法律相談の料金を 1 万円として計算しています。 20 , 000 72 000 の こっし、 使途が制約された寄付等については、原則として、受け取った事業年度に活動計算書に収益として計上するとともに、「財務諸表 の注記」に、以下のような内訳を記載します。 ( P40 ~ P42 参照 ) 5. 使途等が制約された寄付等の内訳 使途等が制約された寄付等の内訳は以下の通りです。当法人の正味財産は 15 , 000 , 000 円ですが、そのうち 13 , 000 , 000 円は〇〇援助事業と〇〇基金事業に使用される財産です。したがって、使途が制約されていない正味 財産は 2 , 000 , 0 円です。 〇〇援助事業 0 〇基金事業 〇〇助成団体助成金 〇 0 自治体補助金 合計 0 10 , 000 , 000 0 10 000 000 0 5 , 000 , 000 0 4 , 000 , 000 2 000 11 000 000 2 , 000 , 000 0 4 , 000 , 000 2 000 000 8 000 000 ( 単位 : 円 ) 0 13 000 000 0 B 事業の補助金 上しています。 前受助成金として貸借対照表に計 期受入額との差額 1,000 , 80 円は 助成金の総額は 5.08.08 円。当 10 , 000 , 000 A 事業のための基金 3 , 000 , 000 翌期に使用予定の支援用資金
財務諸表の注記とは ? 「財務諸表の注記」は、「活動計算書」や「貸借対照表」を補足す るものですが、 NPO 法人会計基準では、この「注記」を非常に重視 しています。「注記」により、「活動計算書」や「貸借対照表」では 表すことができない有益な情報をたくさん表すことができると考え ています。注記に記載する項目は、以下のものです。 ( 1) 重要な会計方針 ②重要な会計方針を変更したときは、その旨、変更の理由及び当該 変更による影響額 ③事業費の内訳又は事業別損益の状況を注記する場合にはその内容 ④施設の提供等の物的サービスを受けたことを財務諸表に記載する 場合には、受入れたサービスの明細及び計算方法 ⑤ボランティアとして活動に必要な役務の提供を受けたことを財務 者表に記載する場合には、受入れたボランティアの明細及び計算 方法 ⑥使途等が制約された寄付等の内訳 ⑦固定資産の増減の内訳 ⑧借入金の増減の内訳 ⑨役員及びその近親者との取引の内容 ⑩その他 NPO 法人の資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産 の増減の状況を明らかにするために必要な事項 一三ロ 22
く財務諸表の例示 > ( 名称 ) x x x x x x 年 x X 月 x x 日から x x 年 x x 月 x x 日まで ( 単位 : 円 ) I 経常収益く .. 1. 受取会費 正会員受取会費 賛助会員受取会費 2. 受取寄付金 受取寄付金 資産受贈益 施設等受入評価益 3. 受取助成金等 受取民間助成金 受取国庫補助金 4. 事業収益 A 事業収益 B 事業収益 C 自治体受託事業収益 5. その他収益 1. 事業費 Ⅱ経常費用 経常収益計 雑収入 受取利息 次期繰越正味財産額 前期繰越正味財産額 当期正味財産増減額 経常費用計 管理費計 その他経費計 雑費 減価償却費 地代家賃 消耗品費 通信運搬費 ( 2 ) その他経費 人件費計 法定福利費 給料手当 ( 1 ) 人件費 2. 管理費 事業費計 その他経費計 支払寄付金 減価償却費 施設等評価費用 地代家賃 通信運搬費 旅費交通費 印刷製本費 ( 2 ) その他経費 人件費計 法定福利費 給料手当 ( 1 ) 人件費 5 , 000 , 000 850 , 000 7 , 500 , 000 2 , 000 , 圓 0 828 , 000 4 , 000 , 000 2 , 000 , 000 2 , 000 , 000 5 , 000 , 000 5 , 500 , 000 101 , 0 ー・・ 49 00 14 , 500 , 000 1 , 500 , 000 16 , 000 , 000 1 , 800 , 000 1 , 450 , 000 550 , 000 1 , 000 , 000 11 , 228 , 000 5.100 , 000 500 , 000 828 , 000 900 , 000 100 , 000 100 , 000 200 , 000 250 , 000 250 , 000 2 , 100 , 000 100 , 000 2 , 000 , 000 5 , 850 , 000 10 , 328 , 000 6 , 000 , 000 12 , 5 , 000 150 , 0 側 34 , 828 , 000 27 , 228 , 000 3 , 000 , 000 経常収益は、「受取会費」、「受取寄 付金」、「受取助成金等」、「事業収 益」、「その他収益」の 5 つに分類し ます。補助科目などでさらに内訳を表 示できます。 ( P26 ~ P27 参照 ) 経常費用は、「事業費」と「管理費」 に分けたうえでさらに「人件費」と 「その他経費」に分け、形態別に勘 定科目を表示します。事業ごとの表 示は、「財務諸表の注記」で行いま す。 ( P20 ~ P21 参照 ) 財産の部」の合計額は一致します。 額」と貸借対照表の前期末の「正味 活動計算書の「前期繰越正味財産 ( P43 ~ P49 参照 ) ています ) 。 た場合」のみ活動計算書に計上し 等で物的サービスの提供等を受け 用」と計上します。 ( ここでは「無償 経常費用に「ボランティア評価費 ア受入評価益」と計上するとともに る場合は、経常収益に「ボランティ けた場合で、活動計算書に計上す ボランティアによる役務の提供を受 す。 「施設等評価費用」として計上しま るとともに、同額を、経常費用に 「施設等受入評価益」として計上す 計上する場合には、経常収益に を受けた場合」で、活動計算書に 「無償等で物的サービスの提供等 ( P26 ~ P31 参照 ) 30 , 228 , 000 4 , 600 , 000 ー 10 , 400 , 000 15 , 000 , 000 " 活動計算書の「次期繰越正味財産 額」と貸借対照表の当期末の「正味 財産の部」の合計額は一致します。 ( P20 ~ P21 参照 ) 60