「ど、つもありかと、つございました」 のりくみいん ジャックが、ふたりの乗組員にお礼を言った。 すなはまある ヘンリ 1 は、ジャックたちといっしょに、砂浜を歩いていたが、砂丘にさし かかるところで、足を止めた。 力、ん 「わたしは、ここまでだ。ふたりだけで、帰れるかい ? 」 「はい、だいじようぶです。キャンプしているのは、すぐそこですから」 かえ はや かぞく 「ご両親によろしく。わたしも、早く、家族のもとに帰りたいものだ」 たの 、」、つ、力し 「楽しい航海をしてね」と、アニー せいか 「よい成果を、お祈りしています」と、ジャックも一言、つ 「それじゃ、さようなら」 ある いちどこえ ふたりが歩いていこうとすると、ヘンリー か、もう一度声をかけた。 「ちょっと待って。きみたちに、わたしたいものがある」 力い、刀ら ヘンリーは、上着のポケットから、美しいオウム貝の貝殻を取りだした。 りようしん 、つ、わぎ、 あし うつく が し、 さきゅう 1 45 ・・・・・巨大ダコと海の神秘
・カし ・刀い・刀、ら 「こんなに美しい貝がいることも、ね」アニ 1 が、オウム貝の貝殻をさし出す と、ジャックはそれを、リュックにしまった。 みつ 「うん。ヘンリーさんのおかげで、三つめの〈幸せのひけっ〉を見つけられて、 よかった」 しめいかんりよう かえ 「使命完了、ね ! それじゃ、フロッグクリークに帰りましよう」 アニ 1 か、ペンシルべニア州のガイドブックを手に取り、フロッグクリーク もりしやしんゅび こ、ん の森の写真を指さすと、大ダコの声をまねて言った。 、カ 1 工 「ウ 1 チ 1 へ ーリ 1 ターイ ! 」 わら しゅんかん かいてん ジャックが笑った瞬間、ツリ 1 ハウスが回転をはじめた かいてん 回転はどんどんはやくなる おも ジャックは、思わず目をつぶった。 と しす やがて、なにもかもが止まって静かになった。 き なにも聞こえない うつく め おお しゅう 0 しあわ て と み 1 50
つぎに、ヘンリ 1 は、大きなスケッチブックを見せてくれた。 きろく さいしゅう 「採集したものは、標本にするだけでなく、こうして、絵に描いて記録してお ちょうさ せんもんがか くんた。一 = 調査チ 1 ムのメンバ 1 には、スケッチ専門の画家もいるんだよ」 えが ペ 1 ジをめくると、魚や貝のみごとなスケッチが描かれていた おお 力いカらめ ? 」アニーか、ふと、木箱にはいった、大きな貝殻に目を止めた。 「あら : ーもよ、つ しろじ あかちゃいろ 、力し 白地に、赤茶色のしま模様のある、美しい巻き貝だ。 「これは、さっき、ヘンリ 1 さんがさがしている、と言っていた貝ね」 それは、オウム貝というんだよ」 「そ、つ : 「これも、アルコール浸けにするの ? 」 「いいや、それは標本じゃない。わたしが、水そうで飼っていたんだが、先日 から 死んでしまってね : それはもう、殻だけだ」 ー刀し 「どんな貝だったの ? 」と、アニ 1 しよくしゅ じつばん およ 「なん十本もある触手を、ひらひらさせながら、うしろ向きに泳ぐんだよ」 ひょうほん ひょうほん さかな おお せんじっ ・・・・巨大ダコと海の神秘
、刀い、カ、り アニ 1 は、ヘンリ 1 から、オウム貝の貝殻を受けとった。 「わたしたち、大事にするわ。どうもありかとう」 「わたしのほうこそ、ありがとう」 、つ めなみだ おも てりようめ ヘンリ 1 の目に涙が浮かび、ヘンリーは思わず、手で両目を押さえた。 たの 「それじゃあ、さようなら。キャンプを楽しんでくれたまえ」 あしばや ヘンリ 1 は、ふたりに敬礼すると、足早にボ 1 トへもどっていった。 そのうしろ姿を見送りながら、ジャックが言った。 「ばくたちも、行こ、つ」 さきゅう ジャックとアニ 1 は、砂丘をこえ、シダのしげみを歩いて、マジック・ツリ ハウスかある木にもどった。 なわばしごをのばり、ツリ 1 ハウスの中にはいる。 まど そとみ ゅうひ かかやかいめん 窓から外を見ると、夕日を反射して輝く海面を、ヘンリ 1 トが、チャレンジャ 1 号に向かってもどっていくのが見えた。 すかたみおく けいれし はんしゃ なか たちを乗せたボ 1 148
だいす が大好きになったそうです しゅうり レ」、つ ごう お さがみわん せとないかし 修理を終えたチャレンジャー号は、相模湾から瀬戸内海へと移動しながら、 ちょうさ なんたん につほんきんかい たいへいようおうたん 日本の近海を調査したあと、太平洋を横断し、南アメリカ南端のマゼラン海峡 しゅ「こ、つ とお さんねんはんご きかん を通って、出航から三年半後の一八七六年五月、イギリスに帰還しました。 チャレンジャー号の苦労 ご、つ チャレンジャ 1 号は、出航した直後から大しけにあい、クリスマスのごちそ レ」 ちゅう けんきゅうしゃ ふなよ ふなで うは宙を飛び、研究者たちは船酔いし、たいへんな船出となりました。 ひ いちじかん しす また、ドレッジは、重りをつけて二千メ 1 トル沈めるのに一時間かかり、引 しよう」 さんじかん すいしんちょうさ きあげるには、蒸気工ンジンを使っても三時間かかりました。水深調査やドレ さぎよう のりくみいん ふねか ッジ作業があまりにもたいへんなので、いたすらな乗組員が、船で飼っていた きようド ) ゅ とど オウムに、「トムソン教授 ! 四千メ 1 トルおろしましたが、まだ海底に届き おは ません ! 」とい、つことばを、覚えさせたりしたそ、つです。 ちょうさ きよりすす ひろ すす 航海は、一定の距離を進んでは帆をたたんで調査し、また帆を広げて進むと 一」、つ力し ′、ろ、つ おも しゆっこ、つ 0 つか ちよくご ねんごがっ おお みなみ かいてい ・刀いきよう 1 56
、力し なかま 「わたしはすっと、この貝の仲間をさがしていてね : : : 」 、刀し、刀、ら そこには、えんびつで描かれた、貝殻のスケッチがあった。 み 力し 「きみたち、こんな貝を、見たことはないかい ? 」 ジャックが、首をひねっていると、アニ 1 がこたえた。 、刀し 、刀し 「その貝は見ていないけど、わたしたち、めすらしい貝をさがすお手つだいを するわ」 しかし、ヘンリ 1 は、ていねいに、だかきつばりとことわった。 しまじようりノ \ 「どうもありがとう。しかし、この島に上陸した目的はも、つはたしたから、わ ふね おも : それに、そろそろ、ドレッジを れわれは、ひとます船にもどろ、つと思、つ じかん 引きあげる時間だ」 「ドレッジって、なあに ? 」と、アニ 1 そ、っち 「海底の生物をすくいあげるための、網のような装置だよ。いろいろなものが かかるんだ」 ひ かいてし せいぶつ み くび あみ ・も / 、て一 て 7 5 ・・・・・巨大ダコと海の神秘
りようてむねまえ ヘンリ 1 か、両手を胸の前でひらひらさせて、うしろにさがってみせた。 「そのようすが、とてもユーモラスでね。吸いこんだ水を、ビュッとわたしに かな かけたりして : 死んでしまったときは、ペットが死んだように悲しかった。 うみかえ おも こんなことなら、海に帰してやればよかった、と思ったよ」 きばこなか 力いカらみ しす ヘンリ 1 は、木箱の中の貝殻を見つめて、静かにため息をついた。 、力し 「 : : : 貝のことをそんなふうに一一一一口うなんて、おかしいだろう ? 」 ー刀し かな 「ぜんぜん、おかしくないわ。わたしも、飼っていた貝が死んだら、悲しいと おも かお 思うわ」と、アニーかまじめな顔でこたえた。 カンカンカンカン : かねおと そのとき、鐘の音か聞こえてきた。 ちゅうしよく じかん かんちょう じかん 「おお、もう昼食の時間だー いそごう。艦長は時間にうるさいんだ」 ヘンリーは、あたふたと、ランプの火を消しはじめた。 ちゅうしよく ジャックは、昼食と聞いたとたん、ふたたび胃がむかむかしてきた。 みす
くら しんかい 「ーーーということは、深海というのは、真っ暗で、つめたくて、すごい水圧が かかる世界なの ? それじゃあ、生き物は生きていかれないわね ! 」 「いや、それが、そうでもないみたいだよ」 しんかい 、か′ルきよう おお 深海がそれほどきびしい環境でも、魚や貝、ヒトデをはじめ、多くの生物 あさうみ もの せいぶつ かいることかわかってきた。それらの生物は、浅い海にすむ生き物とは A ア、ちょう しんかい かんきようあ からだ とくべっ ちがって、深海のきびしい環境に合わせて、特別な体の特徴をもってい おお ることか多い っぽ、つぎよほ、つはったっ かずかずしんかいせいぶつ 一方、漁法が発達したことにより、いまでは、数々の深海生物が、食用と して捕獲されるようになった。そのなかには、アマエビ、サクラエビ、 ズワイガニ、タラ、キンメダイ、タチウオ、アンコウ、メルル 1 サなど かある せかい もの さかな 、刀し しよくよ、つ せいぶつ すいあっ ・・・・・巨大ダコと海の神秘
しまじようりく 、力し われわれは、めすらしい貝や植物をさがしに、この島へ上陸したんだが、まさ あし にんげん ものはつけん か、足が二本に、手が二本の、人間のことばを話す生き物を発見するとは : : : 」 おも わら それを聞いて、アニ 1 は、思わず笑いころげた。 「あはははは。わたしたちも、ここで、ヘンリ 1 っていう名まえの生き物と会 ゅめ おも えるなんて、夢にも思わなかったわ ! 」 「ヘンリーという名まえか、そんなにおかしいかい ? 」 きようりゅう よノ \ りゅう じだい であ 「ええ ! だって、わたしたちが恐竜の時代で出会った翼竜と、おなじ名まえ なんですもの ! あ、もちろん、わたしが名まえをつけたのよ」 きようりゅう 「恐竜の時代 : : : ? 」 かお ヘンリーか、 けげんな顔をしたので、ジャックがあわてて言いわけをした。 そ、つぞう A プ、し 「あ、あの : 、妹は、いろいろ想像して話すのが得意なんです」 じよう 「ほ、つ : なかなかューモアのあるお嬢さんだ」 ヘンリーは、目をキラキラさせてつづけた。 じだい 0 め て いもうと しよくぶつ ものあ 0
せんすいてい 「えっ ? それじゃあ、ヘンリ 1 さんたちは、潜水艇を持っているのね」 かえ それから、ジャックをふり返って言った。 しんかい せんすいてい 「お兄ちゃん、わたしたち、潜水艇を借りて、深海へ行けるかもしれないわ ! 」 かお おどろ ところか、ヘンリーは、驚いたよ、つな顔をしている にんげんうみ せんすいてい それは、もしかして、人間が海にもぐるための : 「潜水艇 : にじっせいき はつめい せんすいてい ジャックは、はっとした。潜水艇が発明されたのは、二十世紀になってから わだい じだい で、この時代には、まだない。そこで、ふたたび話題を変えた。 さいしゅうあみも 「あっ、あの、どうしてヘンリーさんは、採集網を持っているんですか ? 」 めずらしい生物が見つかれば、昆虫でも植物でも、鳥や獣 「ん ? ああ : ひょうほん かえ おも さいしゅう でも、採集して、標本として持って帰りたいと思ってね」 、力い ? て、つ 「そういえば、さっき、海草をつついていましたね」 あれは、貝をさがしていたんだよ」 「ああ、見ていたのか : ひら ヘンリ 1 は、手に持っていたノ 1 トを開いて見せた せいぶつ こんちゅう しよくぶつ けもの ・・・・・巨大ダコと海の神秘