「そうだね。地球の表面は、ほとんどが水たまり、ってことだ」 よ おおごえ ジャックも大声で言って、つづきを読みあげた。 、つみ うみふか 人間は、むかしから、海と深くかかわってきた。 しお かいすい 、刀し 、刀いユ、、つ たとえば、魚や貝や海藻をとってきたし、海水を干して塩をつくった 、も A 」 とち りしてきた。また、新しい土地や、めすらしい産物などを求めて、船で 海をわたった。 りようしふなの 。か / 、。ん こうした漁師や船乗りとはまったくべつに、学問として、海や海にすむ ひとびと せいぶつかんしん 生物に関心をもち、海を調べた人々がいた せんすいてい はつめい にじっせいき 二十世紀になって、潜水艇が発明されると、それまで人間がもぐること しら ふか うみ のできなかった深い海にも、調べに行かれるようになった。 そのおかげで、いまでは、海のようすがかなりわかってきた。 にんげん ちきゅう さかな ひょうめん あたら 、つみしら 、つみ みず さんぶつ にんげん うみうみ ふね 2 ・・・・・巨大ダコと海の神秘
ひろ チャレンジャ 1 号では、たたまれていた帆が、つぎつぎに広げられている 「さようなら、チャレンジャー号 : ! 」と、ジャックがつぶやいた。 そのとき、アニ 1 が、あわててさけんだ。 「たいへん ! わたしたち、〈幸せのひけっ〉を、見つけなかったわー えがお 「ちゃんと見つけたよ」ジャックは、笑顔でこたえた。 もの おも 「すべての生き物に、思いやりの心をもっこと : ? なんだか、あたりまえすぎるわ」 「それが〈幸せのひけっ〉 ひと ご、つひと 「でも、それに気づかない人もいる。チャレンジャ 1 号の人たちだって きようじゅ くち あのトムソン教授でさえ、大ダコが口をきいて、はじめて気づいたんだ」 きせき 「奇跡を、目の当たりにするまで、気づけなかったのね」 きせき 「でも、考えてみれば、タコがタコであることだって、奇跡だ」 にんげんにんげん 「人間が人間であることも、ね」 ちきゅうじよう きせき 「地球上に、こんなにいろんな生き物がいることは、ほんとうに奇跡だよ」 かんか しあわ おお しあわ こころ もの 149 ・・・・・巨大ダコと海の神秘
、それって : もしかして、サメかなにかですか ? 」 「あの : きょだい 「サメ ? ああ、そ、ついえば、体長三メートルもある巨大サメが、ここなん日 かいぶつ ふね か、船のあとをついてきているか、いやもう、その怪物ってのは、サメなんて もんじゃない。それよりもずっと大きくて、おそろしいんだ ! 」 「三メートルのサメより : : : 、大きくて、おそろしい : くわ さらに、ジョ 1 がつけ加えた。 あくま もの おお 「そうさ。大ヒトデの化け物か、さもなきや、龍か、悪魔か、ってもんだ」 およ 「『なん匹もの海へビが、巣ごと泳ぎまわっている』、なんて言うやつもいるぞ。 きみ : ああ、気味がわりいー トミ 1 は、身ぶるいしなから、つづけた。 しつびきいっぴき 「なんでも、その一匹一匹が、つぎつぎと人間のからだに巻きついて、片つば しから、海の中へ引きずりこむんだってよお」 にんげんうみなか 人間を海の中へ : 「海へビが巣ごと : うみ びき うみなか 、つみ たいちょう おお おお にんげん りゅう
うみ でも、わたしのような人間がやってきたら、海にすむ生き物のほうは、もっ うみ とこわかったでしようね。そのことに気づいたのは、おとなになって、海につ ちしき いて知識 を得てからでした。 、つみ 子どものころ、海がこわかったのは、海のことを知らなかったからなのです およ いまでは、スキュ 1 ハダイビングもするし、イルカといっしょに、水いだことも かんレ」、つ しせん 、つみ あります。海のことを知れば知るほど、そのすばらしさに感動し、自然の驚異 かん 知ることは、好きになること。みなさんも、この本を読んで、そう感じてく ださったらうれしいです あたま うみ メアリ 1 ほん ・ポ 1 プ・オズボ 1 ン もの きよう
からだしす それだけ言うと、大ダコは、ふたたび、水中に体を沈めた。 こ、んた かんばんにんげん 甲板の人間たちは、だれひとり、声も出せない。 こ、ん ちんもく おもくる 重苦しい沈黙をやぶって、アニ 1 の声がひびいた。 「みんな、聞いたでしよう ? あのタコは、こう言ったわ。 かえ ぶつ 物じゃないうちへ帰りたい』って」 かおみあ のりくみいん 乗組員たちは、顔を見合わせた。 「たしかに、そう言った。おれは、聞いたぞ」と、ひとりが言った。 のりくみいん 「おれにも、聞こえた」と、べつの乗組員も言った。 「おれも、聞いた」 「おれもだ」 くちぐち みんなか、口々に言いはじめた。 うみぬし 「あいつは、海の主かもしれない・ しんび 「これは、神秘だー おお すいちゅう 、刀し 『ばくは、屋 1 36
こ、んき そのとき、アニ 1 の声が聞こえた。 「お兄ちゃん : 、つ ちゅう かえ ふり返ると、アニ 1 のからだも、宙に浮いていた。 あんしん ばあい よかった ! 」だが、安心している場合ではない。 「あ、あ : ころ はや お化けダコに殺される ! 早く逃げようー ひっし ジャックはそう一一一一口うと、必死で、タコの足にパンチした。 すると、アニーがさけんだ。 「お兄ちゃん、やめて ! このタコは、わたしたちを助けてくれたのよ ! 」 「なに言ってるんだー ばくたち、お化けダコにつかまってるんだぞ ! こい あくま にんげんうみそこ つは : こいつは、人間を海の底に引きすりこむ、悪魔なんだ ! 」 み 「ちがうわ ! よく見て、お兄ちゃん ! このタコは、わたしたちを、水中か ら引きあげてくれたの ! 」 「な、なんだって : ひ ひ あし たす すいちゅう 109 ・・・・・巨大ダコと海の神秘
ぜんしん ジャックの全身から、血の気が引いた きょだい ふたりは、巨大なお化けダコにつかまってしまったのだー 「ア、アニイ こ、んかぎ ジャックは、亠を限りにさけんだ。 し力い だが、すぐにジャックの視界からアニ 1 か消え、そのかわりに、黄色くる、 ぶきみがんきゅう 不気味な眼球がせまってきた。 うみであ しぜん そのタコは、以前サンゴ礁の海で出会ったタコよりも、はるかに大きく、お かお そろしい顔をしている 「は、はなせええっ ! 」 あし ジャックは、タコの足をふりほどこうと、めちゃくちゃにあばれた。 あし しかし、もがけばもがくほど、太いゴムチュープのよ、つなタコの足は、ます ます強くしめつけてくる。 あくま あくま にんげん、つみなかひ こいつは、人間を海の中に引きずりこむ、悪魔だ : ( 悪魔だー つよ しよう ふと おお 108
しまじようりく 、力し われわれは、めすらしい貝や植物をさがしに、この島へ上陸したんだが、まさ あし にんげん ものはつけん か、足が二本に、手が二本の、人間のことばを話す生き物を発見するとは : : : 」 おも わら それを聞いて、アニ 1 は、思わず笑いころげた。 「あはははは。わたしたちも、ここで、ヘンリ 1 っていう名まえの生き物と会 ゅめ おも えるなんて、夢にも思わなかったわ ! 」 「ヘンリーという名まえか、そんなにおかしいかい ? 」 きようりゅう よノ \ りゅう じだい であ 「ええ ! だって、わたしたちが恐竜の時代で出会った翼竜と、おなじ名まえ なんですもの ! あ、もちろん、わたしが名まえをつけたのよ」 きようりゅう 「恐竜の時代 : : : ? 」 かお ヘンリーか、 けげんな顔をしたので、ジャックがあわてて言いわけをした。 そ、つぞう A プ、し 「あ、あの : 、妹は、いろいろ想像して話すのが得意なんです」 じよう 「ほ、つ : なかなかューモアのあるお嬢さんだ」 ヘンリーは、目をキラキラさせてつづけた。 じだい 0 め て いもうと しよくぶつ ものあ 0
せんすいてい 「えっ ? それじゃあ、ヘンリ 1 さんたちは、潜水艇を持っているのね」 かえ それから、ジャックをふり返って言った。 しんかい せんすいてい 「お兄ちゃん、わたしたち、潜水艇を借りて、深海へ行けるかもしれないわ ! 」 かお おどろ ところか、ヘンリーは、驚いたよ、つな顔をしている にんげんうみ せんすいてい それは、もしかして、人間が海にもぐるための : 「潜水艇 : にじっせいき はつめい せんすいてい ジャックは、はっとした。潜水艇が発明されたのは、二十世紀になってから わだい じだい で、この時代には、まだない。そこで、ふたたび話題を変えた。 さいしゅうあみも 「あっ、あの、どうしてヘンリーさんは、採集網を持っているんですか ? 」 めずらしい生物が見つかれば、昆虫でも植物でも、鳥や獣 「ん ? ああ : ひょうほん かえ おも さいしゅう でも、採集して、標本として持って帰りたいと思ってね」 、力い ? て、つ 「そういえば、さっき、海草をつついていましたね」 あれは、貝をさがしていたんだよ」 「ああ、見ていたのか : ひら ヘンリ 1 は、手に持っていたノ 1 トを開いて見せた せいぶつ こんちゅう しよくぶつ けもの ・・・・・巨大ダコと海の神秘
きょだい さぎよう じみち しこ AJ か いう、地道な作業のくり返しでした。そのため、ネアース艦長は、い、 のりくみいん あるとワインをふるまうなど、乗組員がいやにならないよう、気を配りました。 たんけんちょうさせいか 探険調査の成果 ) 」、っちょうさ けつか 、んカ せかい 、つみかいていちす チャレンジャー号の調査の結果、世界の海の海底地図が、ほば描けるまでに ひょうほん はつけん やくいちまんさんぜんしゅ なりました。集めた動植物の標本は、約一万三千種。そのうち、はじめて発見 じよう よんせんしゅ ふか せいぶっそんざい されたものが、四千種以上ありました。また、どんなに深い海にも生物が存在 ふか せいぶっそんざい すること、たとえ離れた海域でも、おなじ深さにはおなじような生物が存在す じゅうよ、つ 、か′にん ることなど、重要なことが確認されました。 巨大ダコ きろく これまでに、体長九メートルのミズダコが発見された、という記録が残って こ、つきしんつよ にんげん 廿一い・か′、 います。ミズダコは、好奇心が強いものの、おとなしい性格で、人間をおそっ きろく たという記録はないようです。 あっ たいちょう どうしよくぶつ ・刀しし かえ はつけん かんちょう 、つみ のこ 157