ー 90 たん 用ということになったのだから、そごうは「未来につながる」決着をつけることか できたのではないか。すでに客足が戻ってきている、という情報が入ってきている 今回の騒動でそごうを救済する、という方向で話が固まっていた時点では、根拠 として「費用の最小化原則」を関係者は挙げていたが、大体そのこと自体が非常に 疑わしいものだった。 銀行が見切りをつけている会社を助けても債権回収など望めない そごうから提出されていた「再建案」はまったく合理性のないものだったし、債 権放棄の額も新生銀行の関係者によれば「六〇〇〇億円では到底追いっかない額ー というのが実状のようだ。内部の関係者からそういう声が拾えるくらい、そごうは ひどい状態に陥っていたわけだから、税金を投入していたとしても近い将来結局破 綻するのは目に見えていた。 は他のデパートも含めて数店のそごう店舗を直接見てきたが、たとえば再建計 画の一つにあった東京の有楽町店を売却するという可能性についても、現実の問題 として売却益を高額に見込むのは難しいのではないだろうかインテリジェントビ ルにするには天井も低いし、再開発するコストを考えると、買い手は簡単に見つか
際に長銀債などを所有している債権者を保護するために、その『穴があいている部 分』を公的資金で埋めざるを得ませんでした。そごうで言えば、引当金分の一〇〇 〇億円は長銀のそごうに対する債権の価値の劣化によるもので、長銀の債務超過の 一部ということです。つまり、公的資金はそごうを救うためではなく、預金者保護 かんげん のため、長銀の処理の一環として投入したわけで、換言すれば金融システム安定化 のために使った資金であると言えます。そしてこのことは、長銀を譲渡した段階で 終わった話です。 譲渡後発足した新生銀行としては、体力的にまだまだ『病み上がり』の状態であ るので、そごうに対する債権放棄には応じられないということで、譲渡契約による 瑕疵担保の解除権を行使したのです。 城 新生銀行にしても、預金保険機構にしても、そごうからは一〇〇〇億円くらいし 落 か回収できないという考え方で進んできました。とすると、回収可能性のない一〇 そ 〇〇億円の範囲で債権放棄するならば実損はないのではないか、という考え方が成 章 り立ちます。 第 もちろん債権放棄をむやみやたらにすることは許されませんが、ただこの場合は、 もともと回収の見込みが一〇〇〇億円しか立たないわけだし、仮に再建計画がうま
のものが無理というもの。それでは、、 ノイそうですか、とは言えるはずがない」 東京・大手町の銀行街からは、不満の声がそこかしこから上がったのである 六三九 0 億円の債権放棄要請 四月七日、そごうは「そごうグループ抜本再建計画」と題する七ページの再建計 画を発表。史上最大の借金棒引きの要請が行なわれたのだった。 この発表では二〇〇〇年二月期の決算で五三〇〇億円の債務超過に陥ったことを 明らかにしたうえで、経営悪化の打開策として、取引金融機関のうち七三行に対す る総額六三九〇億円の債務免除を柱とした再建計画が打ち出された。 債務免除とは、″借金の棒引き〃に他ならない。要するに、借り手が「借金の一部 をチャラにしてほしい」と要求することであり、貸し手にとっては″債権の放棄〃 を意味している。 バブル崩壊以後、著しい経営悪化に瀕した企業は少なくない。それらの会社が生 き残りを賭けた再建計画を実施する際には、取引銀行による債権放棄が前提となる なぜかー ″日本企業の三つの過剰″という言葉がある。債務、設備、雇用の三つの過剰が企 いちじる ひん
プライスダウンしたとき、努力して元のプライスに戻そうとは思わない。むしろ、 あと一割落として金が返ってきたほうがいい、と考えるのは当然だ。うがった見方 をすれば、新生銀行には「そごうは潰れたほうが得だ」と思える材料があったわけ そんなむちゃくちゃな話はない。当然、瑕疵担保責任条項という契約を結んだ金 融再生委員会の責任は問われなければならない。しかし、今のところ、それが具体 化されるという話は聞こえてこない。今頃になって「特約がなければ九〇〇〇億円 余分に必要だった」などと釈明している。それであれば、もともと九〇〇〇億円を 足した金額が本当のプライスであり、その価格を前提とするべきであった。その金 額をベンチマ 1 クとしてもっと値切る交渉をするべきだったのだ。 さらに預金保険機構の問題もあった。瑕疵担保の契約を結んでしまったものは今 更仕方がないから、預金保険機構は新生銀行からの申し出を受けるしかない。そこ まではわかる。ところが、それだけにとどまらず、債権放棄する道を安易に選択し 説てしまった。 解 放棄する債権の中身はそもそも税金である。債権を放棄するということは、そご うに税金をタダでくれてやるようなものだ。ならば、税金を使う以上一般財政と同
るとは考えられない。 合理性がない再建計画を鵜呑みにすることはできないし、第一、再建計画に合理 性があるくらいなら新生銀行が債権放棄に応じていたはずだ。一番内部にいて、そ ごうの経営状態を知りうる立場にある銀行が ZO を出していることすなわち、再建 案を「うさん臭いーと判断するのは妥当なことであろう。 ゼネコンはさらなる淘汰の時代に突入した そごうの次はゼネコンが債権放棄の順番を待っている、と言われる。デパートと 提ゼネコンでは業種も違うし、倒産した場合に見込まれる失業者数もはるかに多いと 人言われはするが、ゼネコン業界についても危機に瀕している会社を安易に救済すれ 五ばよいというものではない。公共事業の予算が一〇兆円あるからといって、いつま 笋でも赤字国債を発行し続けて、いらない道路やいらない公民館をつくり続けるわけ いやおう 若 にーいかない不必要な公共事業をやめていけば、否応なく厳しい競争にさらされ たたか 、ま経営状態が厳しいゼネコン会社が、その中を闘っていけるかと 五さるを得ないし 第 いうと、極めて疑問である。ゼネコンは、合併によるスケ 1 ルメリットもなく、生 き残りをかけた激戦が繰り広げられるだろう。 ひん
凵 2 ところが、それから七か月後、そごうの信用不安が広がることを不安視した興銀、 長銀は融資再開を表明し、出店計画は再びスケジュール化させたのである 墨田区関係者によると、水島氏は、「なんとしても出店する。銀行はとやかく言っ ているが金利はきちんと払っている」と出店意欲は衰えることはなかったというか ら、裏で水島氏のツルの一声が予定を変更させてしまったのである この見幕に、興銀も長銀も、水島氏の拡大均衡路線にストップをかけることがで きなかったのである そごう副社長の自殺 二〇〇〇四月二六日、水島氏が会長を辞任した。それまで組織を挙げて水島氏の 会長辞任をかたくなに拒んでいたそごうに何が起こったのか 実は、四月一六日、都内のホテルで行なわれた水島氏の米寿の誕生パーティーに、 突然訪れた興銀幹部の「会長の辞任がないと、債権放棄ができなくなる」と強く働 むね きかけていたのである。興銀側はその場で一一」ハ日の会長辞任を確約させ、その旨を 記した水島氏名の文書を一七日、各銀行に送った。興銀としても、ここで手を打た なければすべてが手遅れになるというギリギリの選択だったに違いない。
会長に退いたあとに、そごう全体として債務超過になっていることがわかった」 一〇〇〇億円単位の資金を融資していたにもかかわらず、主力銀行の席にある興 銀がそごうの財務状況をそれまで把握していなかったというのだ。到底信じられる 話ではない。 そして、こうも答弁している。 「そごうの再建で税金を使った債権放棄計画を作ったつもりはまったくない」と責 任の追及をかわしたうえで、水島前会長が興銀のそごう向け融資などに一〇〇億円 の個人保証をしている点には「預金保険機構と協議し、厳正に対応する」と、水島 前会長の私財差し押さえも視野に入れていることを明らかにしてもいる。 この一連の西村発言をつぶさに観察すると、まず、興銀の貸し手責任の追及をか の 落わし、同時に、今後、再建に向けての他の債権者の協力を取りつけるには、水島前 、つ 会長の責任追及を厳しくすることが得策、との思惑が見える そ 先にも述べたように、そごう関係者によれば「興銀は以前から民事再生法を視野 章 に入れた再建案を検討していた」という指摘もある。事の真相は闇の中だが、そご 第 う問題は、政治も主力銀行も " 責任。をあいまいにしたまま、幕か引かれようとし ていることである
民主党が国会の特別審議に備えて準備していた質問主意書は、次のような内容だ った。そごう債権放棄の問題点を理解するうえで、参考になるので紹介しておこう。 《預金保険機構が株式会社そごうグループ向け貸出債権の一部を債権放棄する件に 関する質問主意書 預金保険機構は、新生銀行 ( 旧日本長期信用銀行 ) が有する株式会社そごうグル ープ向け貸出債権ニ千億円を買い取り、うち九百七十億円を債権放棄することを決 定、金融再生委員会もこれを承認した。本件は、結果として、税金をもって私企業 を救済するものであり、到底国民の理解を得ることができるものではない。 従って、次の事項について質問する。 一預金保険機構が一民間企業に対する債権を放棄することは、結果として税金を もって私企業を救済するものであるが、その理由と法的根拠は何か。 ニ仮にそごうグループを法的整理することとした場合、どのような影響が生ずる と判断するか。また、今年ニ月、会社更生法の適用を申請した長崎屋と比較し て、そごうグループを優遇することについて合理的な説明は可能か。 と - ってい
の債権放棄要請を受けることを了承した》 苦渋が滲む文面といえる。そして金融再生委員会は、債権放棄了承の理由として、 そごうが破綻すれば、損失発生を避けられないこと、法的処理となれば、そごうの 取引先や消費者にも負担が波及し、雇用にも影響が及ぶことによって社会的な混乱 が生ずる恐れがあることをあげた。 谷垣金融再生委員長は、今回、買い戻しに応じた背景について、 「債権放棄しないとそごうの再建計画が行き詰まるのか、債権放棄に応じた場合は 法的整理よりも債権回収額が多くなるのか、法的整理を選んだ場合の連鎖倒産など 社会的影響はどうか、旧経営陣の責任をどう考えるか、の四点から委員会で議論。 結局、法的整理に追い込むよりコストが安くつくと判断した」 コストの算出の根拠もろくに説明できす、その後、問題を先送り と説明したが、 しただけだ、という批判が高まることとなった。 それにしても、旧長銀が譲渡され、新生銀行となる際、新生銀行と預金保険機構 の監査法人が、それぞれそごう向け債権の資産査定をしているが、そのとき「適」 資産と見なされていた債権が、今回の債権放棄の際には「不適ー資産となっており、
年間で二八〇億円カットするという内容が明記されている それだけのリストラを実施するのでお願いします、というのが取引金融機関のう ち七三行に対する債権放棄要請である また債権放棄総額が六三九〇億円であることは四月以後変わらなかったが、その 内訳は微妙に変化した。当初の内訳に比べて六月の最終段階では、メインバンクの 興銀の負担割合が増えた一方で、新生銀行を除く七一行の負担割合が軽減されたか らだ。具体的には、興銀の債権放棄額が約九二億円上乗せされて、興銀の上乗せ額 を分配する形で新生銀行以外七一行の債権放棄額が微減している。 これは先に述べたように、四月以後、債権放棄の要請を受けた金融機関の中で、 興銀に対してメインバンクとしての責任を追及する声が上がったからである。実際、 地銀では「興銀を信用して融資していた」と言うし、地元にそごうが出店している 地銀では「地元のそごうは経営内容がいいので融資していた。当行は、地元のそご うに融資していただけで、他の地域のそごうの経営悪化のために債権放棄させられ るのは筋違いだ」という怒りの発言もあった。 それに対して、そごうは、「そごうはグループとして一体化している」という論法 で弁明したが、地銀は「それでは、グループ全体の実態を把握していたのはメイン