会社更生法 - みる会図書館


検索対象: 「デパートを税金で救う国」の行く末
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1. 「デパートを税金で救う国」の行く末

民事再生法 民事再生法とは、この四月に施行されたばかりの法律だ。企業の法的整理の一手 ージョンである。 法のニュ 1 法であった和議、 従来、会社を法的に整理する方法としては、「会社更生法ーと「和議法ー ( 民事再 生法の施行に伴い廃止 ) などによる方法があったが、「会社更生法ーでは裁判所が再 建の見込みを調べるため相当時間がかかるうえ、更生開始が受理されない場合もあ る。再建計画についても旧経営陣は排除され、裁判所が選任する管財人が行なうこ とになっている。一方、「和議法」は、和議計画の認可に債権者の四分の三以上の賛 の成 ( 金額で ) が必要で、和議手続きの開始まで長い場合は半年ほどもかかる 城 これに対して民事再生法では、再建手続きを約一か月程度で開始できるうえに、 落 、つ 再建計画の提出は再建手続きの開始決定後でもいいことになっている。また経営陣 そ がそのまま残り、再建計画を作ることも許されるし、その再建計画も和議法の場合、 章 債権者の四分の三以上の賛成が必要だったのに対して、過半数の賛成で済む。より 第 再生へのスタートを切りやすい制度なのである。 そもそも、民事再生法は、本来、会社更生法などを利用できない中小企業や個人

2. 「デパートを税金で救う国」の行く末

流通業については八九年分の借金を抱えている。つまり事実上返済不能なのである。 したがって、これからは債権をどうやってカットしていくかということを考えなけ ればならない。 裁判所に業界再編はできない それにはいろいろな方法がある。殺して ( 倒産させて ) カットする。切腹して ( 自 ら破産して ) カットしてもらう。一回死んで蘇るという形でカットしてもらう。そ して、今回のそごうのように、延命措置を施して一部カットしてもらう。どのやり 提方がいいか我々が考えたのが、そごうが申請した民事再生法だった。これは中小 人企業向けの " 一度死んで蘇る。方法であった。 以前にも会社更生法という法的整理のやり方があったのだが、これは中小企業向 けには使えない代物だった。会社更生法よりもっと簡単便利に、破産管財人を置か ずに、今の経営陣に再建の方法を模索させるということを認めるという制度を取り 五入れたのがこの民事再生法である。そのほかにも、会社更生法よりも強制的な手続 きを少なくすることで使い勝手をよくしている。たとえば、群馬県の第三セクター は民事再生法を申請して三か月で結論が出た。もう一つは我々が議員立法で作った しろもの よみがえ ほどこ

3. 「デパートを税金で救う国」の行く末

なかった」 「七月に入り、売り上げが前年比八五・九 % まで落ちた。このまま債権放棄を求め ていくと、企業イメージが傷つく。信用は百貨店の存亡にかかわる。国民の皆さま へいしゃ をお得意さまとする弊社にとって、決定的な打撃になると判断した」 じんそく 「 ( 民事再生法の適用を選んだのは ) 迅速な手続きができるという判断からだ。会社 更生法では、更生計画の認可が出るまで数年かかることもある。民事再生法なら六 けねん か月程度で認可される。信用不安の懸念もあり、迅速性を優先させた」 「 ( 最初から法的手続きをとらなかったのは ) 債権放棄という方法が、取引先への損 と思ってい 害が最も少ないだろうと判断したからだ。今でも債権放棄のほうがいい る。苦渋の選択だ」 城 落 午後四時の電話 かめいしずか そ 会見の中で、この決定が自民党の亀井静香政調会長の電話によるものだったこと 章 も明らかにされた。亀井政調会長から山田社長のもとに電話があったのは、一一日 第 午後四時だったとされている。 「客商売なのだから、国民の理解を前提にしないといけない。債権放棄の要請を自

4. 「デパートを税金で救う国」の行く末

民主党が国会の特別審議に備えて準備していた質問主意書は、次のような内容だ った。そごう債権放棄の問題点を理解するうえで、参考になるので紹介しておこう。 《預金保険機構が株式会社そごうグループ向け貸出債権の一部を債権放棄する件に 関する質問主意書 預金保険機構は、新生銀行 ( 旧日本長期信用銀行 ) が有する株式会社そごうグル ープ向け貸出債権ニ千億円を買い取り、うち九百七十億円を債権放棄することを決 定、金融再生委員会もこれを承認した。本件は、結果として、税金をもって私企業 を救済するものであり、到底国民の理解を得ることができるものではない。 従って、次の事項について質問する。 一預金保険機構が一民間企業に対する債権を放棄することは、結果として税金を もって私企業を救済するものであるが、その理由と法的根拠は何か。 ニ仮にそごうグループを法的整理することとした場合、どのような影響が生ずる と判断するか。また、今年ニ月、会社更生法の適用を申請した長崎屋と比較し て、そごうグループを優遇することについて合理的な説明は可能か。 と - ってい

5. 「デパートを税金で救う国」の行く末

しようとした当初の意図が、経営破綻に瀕した中小企業の再建にあったからにほか ならない そんな中で、首相官邸や民事再生法の専門家を擁した興銀の準備のうちに、そご うという大企業処理のための民事再生法申請の地ならしが密かに行なわれていた。 見方によっては、そごう案件を契機にして、民事再生法の大企業向け利用の突破口 が開かれたとも言える おそらく、当初から民事再生法の申請となっていたら、「中小企業向けの破綻処理 方式を大企業に援用し始めた」というマスコミ論調が出ていたに違いない。しかし、 債権放棄を軸にした私的整理 ( 再建計画 ) が初めにありき、という中では、民事再 の生法は私的整理との比較上でしか捉えられなかった。それは、処理における透明性 落向上という尺度である。 じんそく しかし民事再生法は、迅速な手続きを主軸に置いている一方で、経営責任の追及 そ や資産・負債の洗い直しが会社更生法に比べて厳格性で劣りがちにならざるを得な いんべい 章 いという側面がある。「損失、あるいは利益の簿外処理 ( 飛ばし、隠蔽 ) は、経営悪 第 化した大企業では横行している」 ( 大手監査法人 ) という声に耳を傾けた場合、迅速 処理だけを優先すれば足りるわけではないことは明々白々である。 とら ひん よ、つ

6. 「デパートを税金で救う国」の行く末

民事再生法申請は結果オーライ とはいえ、私は、今回の民事再生法申請は、「結果オ 1 ライ」だと思っている。は じめから民事再生法で行くべきだった。会社更生法でも良い。国民のお金が関わっ ているのだから、裁判所が入ってオ 1 プンにしようということだ。ましてや資本注 入という形で国民の税金が預けられている銀行が債権放棄をするということは、間 接的ではあるけれども税金で債権放棄の穴埋めをしているようなものなのだ。そん なことをやっていいのか公的資金が注入されていない、まったく独立している一 提銀行が債権放棄するというのなら何の問題もない。そこの銀行が苦しくなるだけだ 人からだ。 五 しかし、現実的には、興銀をはじめ、ほとんどの主要銀行が公的資金の注入を受 員 議 けている。銀行が資本注入を受けているならば、その銀行が債権放棄をするときに 手 若 は法的に明確なルールのもとで金額を決めてもらう必要があるだろう。みんなで談 章 合のようなことをされては困るのである 五 第 それにしても、今、倒産させて回収をはかっていくのと、債権放棄をしてとりあ えず生き延ばしておいて二年後に倒産するのとでは、額が違ってこよう。あれだけ

7. 「デパートを税金で救う国」の行く末

主的に取り下げて、自主再建の努力をする気持ちはないか」 亀井政調会長の要請に、山田社長は、そのとき即答を避けたという。債権放棄要 請が受け入れられてこそ、自力での再建の可能性も残されているのだ。その債権放 棄について、金融再生委員会もいったんは認めていた。すべてが私的整理へと向か っていた。 だが政府与党は、突然、その道を捨てることを求めてきた。 「自主再建の努力をーと言うが、そ ) 」うには債権放棄の要請を取り下げて、自力で 再建する力はもはやなかった。「会社更生法」あるいは「民事再生法 , という形で法 的処理をとるしか選択の余地は残っていない。とはいえ、その場で答えられること ではなかったのだ。 きゅうきょ 電話を受けた山田社長は急遽、代表権を持っ役員を集めた。 その段階で山田社長の腹は決まっていたようだ。協議が始まる前に、山田社長は、 亀井政調会長に電話を入れ、民事再生法を申し立てる手続きに入る意向を伝えた。 また、その動きと並行して、メインバンクである日本興業銀行にも連絡を入れた。 亀井政調会長から電話があったことを伝える山田社長に、興銀の西村正雄頭取は、 「そごうの意向にお任せする」と答えたと言われている

8. 「デパートを税金で救う国」の行く末

興銀の粘り勝ちである。 ニ人三脚の説得工作 この間、興銀はそごうに急接近し、二人三脚体制への説得工作をも進めていたこ とは意外に知られていない。 そ ) 」う関係者によると「水島会長が保有している全株式を手放すことが条件なら 法的整理と変わらないのではないか」と事実上の法的整理を望む声は内部にもあっ 」レ J い、つ ただ、会社更生法にしろ、民事再生法にしろ、事業の継続には興銀の支援は欠く ことのできない条件である。結局そごうは興銀のシナリオを受け入れるしかなかっ 興銀は取引金融機関の批判の中で、そごうと二人三脚体制を固め、その一方で新 生銀行にプレッシャーをかけ、預金保険機構にそごうの債権放棄を引き受けさせる よう政治的に動いたととれる。 こうした経緯を経て、ついに六月三〇日午後一時すぎ、金融再生委員会は預金保 険機構の申し出を承認した。債権放棄によるそ ) 」う再建が決定した瞬間である

9. 「デパートを税金で救う国」の行く末

208 のか、それともルールをもってやる道を行くのかということを選択することにほか ならない。会社更生法でも民事再生法でもいいのだが、いずれにせよルールに則っ てやることが必要だ。国民の税金を使うならば、今いくらお金がかかるかというこ とより、透明なルールに基づいて最終的にどう決着がつくのかということのほうが 重要だろう。 それはさておき、今回の騒動ではそごうを再建できるという前提のもとにすべて の話が進んでいたところが極めて滑稽だった。どれほど中身が腐っているかもわか らないのに、とりあえずこっちのほうが金額が少なくて済みそうだから、というの で債権放棄を決めたのだ。 その中で新生銀行は、放っておいてもそごうの債権が二割減価をすることはわか っていたのではないかと思う。そごうから出された再建計画で立ち直ることは簡単 ではないとわかっていたからこそ、「なぜ我々が護送船団みたいに付き合わなければ ならないんだ」と瑕疵担保責任条項を盾に預金保険機構に買い戻しを求めてきたの ではないだろうか。他のところも本当は冷静な目で見ているのだが「自分だけ乗り たくない」とは言えないものだから、きっとしようがなく付き合っていただけなの こつけい たて

10. 「デパートを税金で救う国」の行く末

224 制度で、特定調停制度というものがある。これは合意によって債権のカットができ るというものだ。もちろんこれには合理的な再建計画が裁判所によって認定されな ければならない。また、個人向けの再建型手続きも今年の秋までに作ることになっ ている。 こ、ついう制度作りをやってきたが、では裁判所に業界再編までできるのかという とそうではない。裁判所は法の適合性を判断する機関なので、合併や営業譲渡とい う形で結果的に行なうことはあるが、裁判所が意図して会社の数を少なくする、業 界を再編するということはできない。そうしたことは裁判所の能力を超えているの である。したがって裁判所に持ち込まれた法的整理であっても単体で蘇れば、業界 の再編につながることにならない。 たとえばゼネコンも、数が多すぎると言われて久しい。会社更生法適用の会社が ダンピングして受注するなど、モラルハ。 サードが現にも、つ起こっている。我々がこ こで考えなければならないのは、モラルハザードを回避しつつ、業界再編につなが る損失処理の仕方のルールを作ることである