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検索対象: 「デパートを税金で救う国」の行く末
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1. 「デパートを税金で救う国」の行く末

総額は約一兆八七〇〇億円。一九九八年の日本リース、負債総額約二兆一八〇〇億 円に次ぐ、史上二番目の規模のものとなった。 そもそも会社の経営が行き詰まった場合、対応策としては「私的整理ーと「法的 整理」という方法がある 私的整理とは、債務者である会社が債権者 ( 多くの場合は金融機関 ) に再建計画 を示し、同意を得て行なうもの。そごうは、金融機関に債権放棄 ( 借金のほば半分 を帳消しに ) してもらうと同時に、リストラを行ない、自力で生き延びる「私的整 理」を目指していた。 、民事再生法の適用を申請し、財産保全命令が出されると、その段階で裁判 所を通じての「法的整理」に入ることになる。財産保全命令が出ると、もはや裁判 所の許可なく、自由に会社の資産を運用したり経営したりすることは許されない 事実上、倒産したのと同じことになるのだ。 午後八時すぎ、東京・丸の内の東京商工会議所で行なわれた記者会見で、そごう / 、じゅ、つ の山田恭一社長、名取正副社長らは苦渋に満ちた表情でこう語った。 「 ( 六月末の時点では ) 旧日本長期信用銀行にお願いした債権放棄が、新生銀行を経 て預金保険機構に移るとは予測できなかった。国民の皆さまからの批判も予測でき

2. 「デパートを税金で救う国」の行く末

の債権放棄要請を受けることを了承した》 苦渋が滲む文面といえる。そして金融再生委員会は、債権放棄了承の理由として、 そごうが破綻すれば、損失発生を避けられないこと、法的処理となれば、そごうの 取引先や消費者にも負担が波及し、雇用にも影響が及ぶことによって社会的な混乱 が生ずる恐れがあることをあげた。 谷垣金融再生委員長は、今回、買い戻しに応じた背景について、 「債権放棄しないとそごうの再建計画が行き詰まるのか、債権放棄に応じた場合は 法的整理よりも債権回収額が多くなるのか、法的整理を選んだ場合の連鎖倒産など 社会的影響はどうか、旧経営陣の責任をどう考えるか、の四点から委員会で議論。 結局、法的整理に追い込むよりコストが安くつくと判断した」 コストの算出の根拠もろくに説明できす、その後、問題を先送り と説明したが、 しただけだ、という批判が高まることとなった。 それにしても、旧長銀が譲渡され、新生銀行となる際、新生銀行と預金保険機構 の監査法人が、それぞれそごう向け債権の資産査定をしているが、そのとき「適」 資産と見なされていた債権が、今回の債権放棄の際には「不適ー資産となっており、

3. 「デパートを税金で救う国」の行く末

国会議員がみんな選挙で忙しいときを狙ったかのように、行政が " 費用の最小化 , という理屈で決めてしまった。 その費用の最小化というのは、金融再生法第三条に書いてある決まりに則ってや ったということだった。確かに、その範囲内では間違いではない。問いたいのは、 費用の最小化というが、どういう費用を最小化するのか、なせそれが最小なのかと い、つことを説明できるのか、とい、つことだ。 れつか 企業の倒産というのは、資産の劣化状態が不明でどれだけの債務超過なのかわか らないときに起きる。銀行が中心となって「そごうの資産はこれだけだから、これ くさ だけの借金を棒引きしてくれ」と言ってきたものの、本当はどれだけ腐っているか 提 人もわからないのだ。それは法的手続きに入って精査した結果初めてわかることであ 員る。今回、民事再生法に則ってそごうを整理するにしても、最終的に国民が負担し 和なければならない額は一四〇〇億円と言われているが、それが本当のことかどうか 若 は、事前には誰にもわからないはずなのだ。 章 五 第 再建できるという保証はなかった 結局、そごう問題は、わけもわからずに債権放棄をして再建するという道を行く ねら のっと

4. 「デパートを税金で救う国」の行く末

まにしているのとまったく同じ状態にある。つまり、不動産業界の資産一六五兆円 と、建設業界の資産一二七兆円のほとんどは「簿価ーであり、その後の不動産価格 の下落によって生じた膨大な含み損を開示していないのだ。 これら二つの業界の不良債権総額は、不動産業界でおよそ四〇兆 5 五〇兆円、建 設業界で二〇兆 5 二五兆円という試算が弾き出されている。仮にこれらの大半が回 収不能だとすれば ( もちろん、その可能性は決して小さくない ) 、不動産業界の自己 権資本は五〇兆円近くの債務超過ということになり、一方、建設業界の自己資本一一六 良兆円は、そのほとんどが消滅するという恐ろしい結果になるのだ。 不 る 眠 金融自由化のインバクト 不良債権問題の真犯人がこうした「借り主」の企業であることは歴然としている。 弾 こうした企業が不良債権問題における諸悪の根源であるとしても、貸し続けた側と 限 きゅうたん 時 監督者の責任も当然ながら糾弾されるべきだろう。すなわち、銀行と大蔵省である。 章 現在「不良 . となっている債権をどんどん生産したのは一九八〇年代であった。 四 第 ちょうどこの時期は世界全体が金融の自由化を迎えた時代で、たとえば預金金利に 対する規制が緩和あるいは廃止されることによって、預金金利をベ 1 スとした預金 ほ、ったい

5. 「デパートを税金で救う国」の行く末

資産合計 流動資産 ( 内、棚卸資産 ) ( 内、その他 ) 固定資産 ( 内、有形固定資産 ) ( 内、投資その他の資産 ) 繰延資産 合計 160 168 68 100 165 不動産業界のバランスシート ( 従業員 105 万人 ) ( 単位・兆円 ) 不動産業界と建設業界のバランスシート 165 68 35 97 75 20 0.1 165 負債合計 流動負債 固定負債 ( 内、有形固定資産 ) 資本合計 合計 ( 出所 : 大蔵省「法人企業統計年報」 ) 建設業界のバランスシート ( 従業員 670 万人 ) ( 単位 : 兆円 ) 資産合計 流動資産 ( 内、棚卸資産 ) ( 内、その他 ) 固定資産 ( 内、有形固定資産 ) ( 内、投資その他の資産 ) 繰延資産 合計 ( 出所 : 同上 ) 127 89 27 38 27 11 0.1 127 負債合計 流動負債 固定負債 ( 内、有形固定資産 ) 資本合計 合計 101 76 25 2 26 127

6. 「デパートを税金で救う国」の行く末

・国はフェアに競争するための土俵を用意するのが仕事たアそこで 「がんはったところは生き残る・ ( がんばらなかったところは倒れる 明確なルールなき債権放棄 今回のそごう問題の根底には、バブル崩壊後、銀行が抱えた不良債権の拡大化と いう問題が横たわっている。この問題を解決しない限り、日本経済の再生はありえ 提ないと常々思っていた。だから、四月、最初にそごうの債権放棄の話が出てきたと 人き、すぐに自分のホームページを通じて「これはおかしい」と声を上げた。 五 そもそもバブル崩壊の結果は、企業の資産 ( 主に不動産資産 ) だけが大幅に価値 員 が下がったことにある 若 銀行の不良債権というのは、要するに帳簿上は資産があるように見えるけれども 五実は返ってこない、価値が下がった資産のことだ。一方、銀行は預金という借金を 第 持っている。ところが資産価値が下がったために、その借金を返せない。そこで、 そうした状態を未然に防ぐため、「健全銀行への資本注入」というレトリックで七兆

7. 「デパートを税金で救う国」の行く末

ー 08 そごうを救済する合理的な理由など、どこにも見当たらない。預金保険機構の場 当たり的な迷走ぶりだけが目につくのである 銀行の責任 それにしても、興銀がそごうの放漫経営を " 黙認。してきた責任は重い。 西村正雄頭取は七月一七日の衆議院大蔵委員会の席上、水島廣雄そごう前会長の 給与 ( 報酬 ) が一〇年間で四四億円にのばっていた問題についてこう述べている。 「残念だが、再建にあたっていたそごうの経営者としてもモラルが問われる。報酬 はあく については、新聞などで知ったことで把握していなかった。びつくりしている」 興銀の貸し手責任はないとする発言である。しかし、金融界の常識では、経営者 の財産の内容を調査し、万が一の場合はその資産を押さえるのはしごく日常的なこ とである。「知らなかった」で済まされる問題ではないし、メインバンクの頭取が知 らなかったとは常識では考えられないことである。知っていたが手を下さなかった だけなのではないか。 そごうの拡大路線を後押ししてきたのは興銀だ。 資金需要の盛んなそごうは興銀にとって級の客だった。興銀が主力銀行で

8. 「デパートを税金で救う国」の行く末

53 第一章銀行救済に名を借りた企業保護 ③解除の場合、機構は当該資産の返還と引き換えに当該資産の当初価値 ( 当初 引当金控除後べース。以下、同じ。 ) に相当する金額 ( それまでの間に返済額 があれば、その額を控除した額 ) を新生長銀に払い戻す。 ④②の「ニ割以上の減価」とは、同一債務者に対する全貸出関連資産のその時 点での現在価値 ( その時点での引当金控除後べース。以下同じ。 ) の総額が、 それら貸出関連資産の当初価値の総額に比しニ割以上減額していることを = = ロ ⑤②の「瑕疵」とは、当該資産に関し金融再生委員会が「適」と判定した根拠 について、長銀買収時から三年以内に変更が生じたか、又は真実でなくなっ たことが判明したことを言い、変更又は真実でなくなったことがクロージン グ後の専らパートナース社又は新生長銀の責めに帰すべき事由によって生じ た場合は「瑕疵」に含まれない。 ⑥金融再生委員会が「適」と判定した根拠が明示されていない場合 ( 例えば正 常先の債権は原則として「適」と判定されている ) 等において、当該債務者 に一定の客観的な事実が発生した場合には、新生長銀はそれを「瑕疵」と推 定することができる

9. 「デパートを税金で救う国」の行く末

ともに劣化していくと考えられる 不良債権の塊の所在は ? それでは、今日の銀行は「生命維持装置のスイッチを切るべきなのかどうかーと いう核心的な問題について考えてみたい。その前に、問題企業とはいったいどうい う産業に集中しているのかを明らかにしておこう。 それらは、圧倒的に不動産業界と建設業界である。次ページの表は、不動産業界 権 良全体、および建設業界全体のバランスシートである。まず、不動産業界だが、資産 不 一六五兆円に対して、負債は一六八兆円。資産が負債を下回っている状態であるか る 眠 ら、資本の部はマイナス三兆円 ( 債務超過 ) となっていることがわかる。つまり、 弾不動産業界は、業界全体として見れば、すでに破綻状態にあるということなのだ。 爆 一方の建設業界は、資産一一一七兆円に対して、負債は一〇一兆円。資産が負債を 限 時 上回っており、資本の部はプラス二六兆円になっている。自己資本比率は約二〇 % 四で、一見問題ない状態のように見える。 けつかん 第 ところが、これら二つのバランスシートは、重大な欠陥をはらんでいる。 これは、先ほどのワンルームマンションの例で、含み損一〇〇〇万円を隠したま

10. 「デパートを税金で救う国」の行く末

130 ていただきました。長い間のご愛顧を心から感謝申しあげます》 残された社員たちの努力が実を結ぶ日は来るのだろうか 次も火をつける新生銀行、そして日債銀 再生直後に新生銀行を退社した元幹部は、そごう問題の経緯を見ながら、こんな ひろう 話を披露した。「新生銀行の最大の収益インセンテイプは資産劣化にあります」。こ の言葉は重要である。旧長銀からの譲渡を受けた資産が劣化するほど、新生銀行は 収益が増すというのは、通常の銀行行動とは別のものを新生銀行に起こさせるとい 、、 0 言うまでもなく、この言葉は瑕疵担保責任条項の効果を指している。資産が譲渡 時点に比べて、三年以内に二割減価すれば、新生銀行は預金保険機構 ( 国 ) に対し て、当該資産の簿価による買い戻しを請求できる。しかも、貸出債権には金融再生 委員会が公的資金を原資として貸倒引当金を積んでいる。その総額は五〇〇〇億円 程度である。 劣化した貸出債権から生じる損失を預金保険機構による簿価べースの買い戻しで