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検索対象: 「デパートを税金で救う国」の行く末
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1. 「デパートを税金で救う国」の行く末

ことが決まった。早々、そ ) 」う幹部は、その日の夕刻興銀が作成した再建計画案を そのまま丸写しする形で、有力取引銀行を訪問した。 突然の訪問を受けた大手都市銀行の融資部幹部は、当時をこう述懐する と、つとっ 「あまりにも唐突というか、無責任というか。興銀からは何の連絡もないし、持参 した資料は五判二枚の " お願い書 % 二ページ目には申し訳程度の再建計画書。 この資料で六三九〇億円の債務免除をしてほしいというのだから、開いたロがふさ がらなかった」 また、ある上位信託銀行の幹部は、憤懣やるかたないという表情でこうも言う 「たった二枚の " 紙。で債権放棄を要請してくるとは何事かと言いたかった。訪問 を受けたことは認めるが、債権放棄の要請を正式に受けたわけではないと相手に伝 え、早々、お引き取り願った。それにつけても腹立たしかった。あの突然の訪問は いずれの取引銀行も、そごう幹部の訪問に驚き、またたく間に金融界に衝撃が走 った。 従来、この種の債権放棄は、メイン銀行から事前の説明があり、あうんの呼吸で おきて 対策案がまとめられるものだ。その掟を興銀とそごうは破った。大手都市銀行が怒 ふんまん

2. 「デパートを税金で救う国」の行く末

だが、そごうは当初から水島氏の責任問題をはっきり示さず、さらに債権放棄要 請のわずか三週間後に発表した二〇〇〇年二月期の決算では、債務超過額が一気に 五〇〇億円も拡大するなどして、取引金融機関の不信感を大いに募らせてもいた。 しかも、そごうの再建計画について「百貨店経営が不振の中で、リストラしても 再建は難しい状況」 ( 大手都市銀行審査部 ) という見解だった。 関西系都市銀行の融資企画部幹部は言う。 「興銀は再建を進めるために人材を新たに派遣するとは言わないし、誰が全体の指 揮をとるのかもまったく不明。だいたい債務超過を何年にもわたって容認してきた ことがおかしい。普通なら三年間続けた段階で第三分類で処理することが金融界の 常識。二次ロスが出るのをわかっていて債権放棄をするというのは住専問題と同じ で、抜本的改善にはとうていならない。単なる問題先送りの再建案ととれる」 興銀が「断固として ( 再建案を ) まとめる」と大見得を切っても、取引銀行は冷 やかな態度を崩さなかったのである。 前後したが、興銀のシナリオは、そごうの有利子負債一兆七〇〇〇億円のうち、 興銀を含めて計七三の取引銀行が約六三〇〇億円の債権を放棄し、一一一年間でそご うの経営を正常化させるという内容だった。 つの

3. 「デパートを税金で救う国」の行く末

も、おいそれと債権放棄に応じられるはずがなかったのだ。 こんな推理をする向きもあった。 「そごうの第一次再建案は興銀の西村 ( 正雄Ⅱ現・頭取 ) さんが、うちと旧日本長 期信用銀行でなんとかするから協力してほしいと言ってきた。だからこそ、我々は 信用して融資を続行してきた。しかし、そごうが債権放棄を要請する前もそれ以降 護も西村さんは電話一本よこさない。九月にみずほフィナンシャルグループが発足す 業るので、自ら傷を負いたくないという意志が働いているのではないか。興銀の内部 企 事情もそご、つの債権放棄問題に複雑に絡んでいると思う」 ( 大手都市銀行企画部 ) いずれにせよ、債権放棄要請を受けた取引銀行は、納得できるまで債権放棄を受 借 を け入れられないという姿勢を打ち出していた。 名 済 救 募る不信感 行 業界の空気を察知してか、メインバンクの興銀は「合意をとりつける期限を当初 章 の五月末から一か月延長する。債権放棄にかたくなな銀行もあるが、断固としてま ひぜに 第 とめたい。流通業は日銭が入る。債権放棄なら、そごうは再建できる」と言い続け、 取引銀行の説得を事務局レベルで始めた。

4. 「デパートを税金で救う国」の行く末

を問う声も上かった。 融資は、興銀が約三六〇〇億円、日本長期信用銀行 ( 現・新生銀行 ) が約二〇〇 〇億円。その二行に続く大手都市銀行の融資額は、多くてもわずか五〇〇億円レベ ルにすぎない。興銀と長銀が突出していたのだ。そして、その二行のうち " 生き残 っている〃のは興銀だけだったからである。 そもそも、そごうが経営不振に陥ったのは、興銀である水島氏が拡大路線を 護 業取り続けたためだと言われている 企 水島氏が、興銀行員から、経営危機に陥っていたそごうの副社長に転じたのは、 一九五八年のことだった。その後、六二年に社長に就任してから三二年間にわたっ 借 名てそごうのトップとして君臨、店舗拡大路線をひた走ることになった。その拡大路 測線を可能にした一つの要因は、メインバンクの興銀、準メインバンクの長銀という 救 二つの長期信用銀行が抱えていた″お家の事情〃だった。 行 長期信用銀行という金融業態は、第二次大戦後の経済復興、さらには高度経済成 一長を金融面で後押しするために創設された経緯がある。 第 全国各地の地元金融機関が集めた個人預金を、地元金融機関に金融債を発行・販 売することによって吸収し、それを原資にして、復興・高度成長の原動力となる基

5. 「デパートを税金で救う国」の行く末

の″怪商″″フィクサー〃と親交があった。 政財界の黒幕だった児玉誉士夫や小佐野賢治とも懇意だった。児玉誉士夫と水島 氏の親密ぶりについてはこんなエピソードもある。語るのは、大手都市銀行の審査 部である。 「大和銀行、東海銀行が主力銀行だった三光汽船が興銀主力のジャパンラインの株 を買い占めた事件で、調停役として水島さんがかかわり、最終的な和解に貢献した。 社内では役員同士がスパイ合戦を展開してもいた。その後、謝礼の意味を含めて、 挫相当額のダイヤを児玉さんから贈られていたことが発覚、国税当局から大目玉を食 ったという経緯がある」 光 栄 こうした政官財との関係はその後も続き、ごく最近では自民党の木村義雄衆議院 の 会議員が、破綻したそごうから最近一年間で計一四〇〇万円の顧問料を受け取ってい 前 たことが、国会議員の所得公開で発覚している 島 水 同議員が顧問をしていたのは、横浜そごうをはじめグループ六社。一九八六年に = 一初当選し、千葉そごうの顧問に就任したことがきっかけだという。 てきぎ 第 そごう関係者は「流通業界に明るい木村議員から適宜、顧問として助言を得るこ とが目的」としているが、同議員との間で、定期的な会合が開かれることはなかっ はたん よしお

6. 「デパートを税金で救う国」の行く末

がひしめく中での再生のハードルは極めて高いと言わざるを得ない ところで取引先とは異なる視点で、そごうを見守る企業がある 民事再生法による再建を打ち出したそごうに米大手投資ファンドのサーベラス ( 本 部・ニューヨーク ) をはじめとするいくつかの外資ファンド、アジアの資本家や国 内大手百貨店などが、グループ店舗の買収を持ちかけているという。 「そ ) 」うが法的整理に入ったことで、今後、債務が大幅に免除されることになる。 買い手からすれば、買いたたくことも可能になる」 ( 大手都市銀行総合研究所 ) そごうが今後、店舗の切り売りをするのか、一括して買収するスポンサーを探す のか、結論は出ていない。 きゅうたいいせん しかし、そ ) 」うの旧態依然とした営業スタイルや、旧経営陣を残したままで再建 を進める民事再生法が障害になるという見方も一方にある。 そごうの再生は前途多難である。 このままでは第ニ、第三のそごう問題が / 六月一一一日付の日本経済新聞一面で「新生銀行、そごう向け債権一一〇〇〇億円を 預金保険機構に買い取り請求ーという記事を読んだ瞬間、私は、「これで日本は破滅

7. 「デパートを税金で救う国」の行く末

に救ったところで、最終的には再建できず、より大きな損失を被る可能性が大きい というのである。 ところで、日本の場合、債権放棄をまとめるのは非常に困難である。通常、企業 は複数の銀行から融資を受けているからだ。融資を行なっているすべての銀行が再 建計画の実効性を認めれば、債権放棄の合意はなされるが、一行でも「法的処理に 護踏み切ったほうがその銀行の損失が少なくて済む , と判断すれば、債権放棄は合意 。こうした日本の特殊性は、債権放棄の経済合理性について難しい問題を 業されない 企 提起することになる 仮に、ある企業の債権放棄要請に、一〇行からなる銀行団のうちの一行だけが反 借 名対した。ところが、その企業の再建計画には実効性があり、どう見ても残り九行の 判断のほうが正しく思えるとしよう。それでもこのケ 1 スでは債権放棄は認められ ふくら 行ないので、結局損失は膨んでしまうということになるのである。個別行にとっては 最適な行動でも、銀行全体にとっては最適ではないというケースである。こういう 章 ケースをどう受け止めるべきなのだろうか 第 私は、これは市場型経済における「ル 1 ル・オプ・ザ・ゲ 1 ム、であり、「時とし て支払わなければならない代償」として、割り切るしかないと考える。そして、こ

8. 「デパートを税金で救う国」の行く末

91 第二章そごう落城の日 一三億円、保証予約五三億円の計一二八五億円をタレ流している。 少なくとも「そごうインターナショナルデベロップメント」は上場企業の関係会 社である。一〇〇〇億円を超える借入金がありながら、その内容が公開されていな い状況は″異様〃というしかない。 大手都市銀行審査部の幹部も 「債権放棄の要請がなされたあと、我々は興銀に関連会社の財務状況を説明するよ おとさた う申し入れた。しかし、何の音沙汰も興銀からはなかった。状況を把握していない ということはないだろうが、数字の中身は闇の中。これでは新しい再建計画を信用 しろとい、つほ、つが ~ 理とい、つもの」 と、同じ意見だ。取引銀行でさえ、情報収集にサジを投げた格好なのである。 さらに、そごうグル 1 プを覆っている深い霧は、巨額な有利子負債の内容だ。 九九九年、そごうは「グル 1 プ全体の有利子負債は約一兆四五〇〇億円ーと公 表した。ところが債権放棄を要請した時点での有利子負債額は一兆七〇〇〇億円に も達していた。これでは金融機関や投資家の信頼を得られるはずもない しかも、そごうの抱える負債は、表面に出ている金融機関からの借入金だけでは ない。隠れ債務の存在がそれである おお やみ はあく

9. 「デパートを税金で救う国」の行く末

あらわ りを露にするのも当然だった。 しかも、その債権放棄案はまるでラフ案。取引金融機関が腹を立てるのも、むべ なるかなである。 株式会社そごう会長・水島廣雄、同社長・山田恭一の最高幹部連名による「お願 い書」は、次のような内容だった。 いた 「お取引金融機関の皆様には大変ご迷惑をおかけ致しますが、約一万社に及ぶお取 業引先や、派遣店員等を含め五万人の従業員及びその家族、また社会・経済に及ばす 影響も踏まえてぎりぎりの判断でございます。どうか弊社グループのおかれました きゅ、つじよ、つ たまわ 借窮状、並びに将来への展望を是非ともご賢察頂きまして、何とぞ本計画にご理解賜 りますよう、伏してお願い申し上げます。尚、計画のご了解は五月末までに、また 合意書締結は七月中旬までにご対応頂きたく重ねてお願い申し上げます - だが、取引銀行の大半は、このそごうの債権放棄要請に「ノー」の姿勢を崩さな 行 かった。 当時を知るある大手都市銀行の融資部幹部が、苦り切った表情でこう話す。 「持参した資料は具体性に乏しかった。しかも、債権放棄額がケタ違いに多い四 月六日に債権放棄を要請し、それを五月末までに決着させるというスケジュールそ ひろお

10. 「デパートを税金で救う国」の行く末

せた責任は、大蔵省の監視の甘さによるところが大きいと言われてもやむを得まい。 銀行経営に対して大蔵省の監視がザルであったことを証明する事例は少なくない。 大蔵省は、銀行への監視が不十分であったばかりか、劣悪な経営状態が明らかに 露呈してしまった銀行に対してでさえ、けじめなく営業を続けさせる「先送り行政 を続けてきた。たとえば、一九九五年に経営危機が表面化し、翌年に東京共同銀行 じようと はたん に全業務を譲渡して破綻したコスモ信用組合は、破綻が表面化する数年前から経営 状態の劣悪化は進んでいた。だがコスモは、表面を取り繕うことと資金集めのため に、他行より有利な金利の商品を売り出して多額の資金を集め、結果的に傷口を広 げてしまった。 このとき、大蔵省が何をしたかというと、何もしていないのが実状である。信用 組合に対する監視が不十分な都道府県に監視を委任してしまい、挙げ句、コスモは 東京都と相談したうえで四年間にわたって赤字を隠し続けるという暴挙に出てしま ったのだ。総務庁が一九九六年に実施した行政監察で、金融検査のあり方に厳しい 見直し勧告が突きつけられた。本来、抜き打ちであるはすの大蔵省検査が金融機関 へ筒抜けになっていたとあっては、当然というほかない そもそも、大蔵省は伝統的に、銀行の不良債権の公表にはなはだ腰が引けていた。 つくろ