自分たち - みる会図書館


検索対象: あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ
51件見つかりました。

1. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

う投資ファンドグループのかねての主張と符合することであり、彼らの本音で表現す れば、自分たちのビジネスの競合的な存在であるの不良債権買い取りという仕 組みは、一刻も早く消し去りたかったということだ。あるいは、すらも自分た ちのビジネスが有利に進むための材料にするということか : しかし、その XOO をターゲットに一気に攻めようとすると、「投資ファンドが我田 引水的にビジネスを独占しようとしている」という批判を生みかねない。そこで、知 ろうらく 識の乏しい有力政治家たちをもっともらしい説明で籠絡した。この戦略は見事な成功 理を収めて、の不良債権買い取り構想は、彼らの狙い通りに骨抜きとなっていっ 処 債 しかも、投資ファンドグル 1 プは戦いの手を緩めなかった。の買い取り構想 良 不 では十分な成果を上げることは期待できないという情報宣伝活動を積極化させるとと る 走もに、自分たちこそ、不良債権処理の救世主であるというイメージ作りに奔走したの 迷 だ。彼らは日本のマスコミにしばしば登場して、不良債権処理のエッセンスを語った。 章 不良債権処理に関する提言を打ち出すことで「経済通」という評価を得たかった政 第 治家たちは投資ファンドを呼び寄せて、彼らのアドバイスに基づいて独自の不良債権 処理案をぶち上げた。微妙に内容が異なっていたが、浮上したすべての構想の骨子は シミュレーション

2. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

る。しかし、事ここに及んで、ようやく一部の金融庁官僚は自分たちが政府部内の主 導権争いや、省庁間の対立劇という、いわば単なる身内の争いの中に置かれたのでは ないことに気がっきはじめた。精緻な戦略性を伴った勢力が、流通大手 < 社の経営破 綻を起点にして、自分たちの足元をすくおうと押し寄せていることを実感するに至っ たとい、つ一言い方もできる 一方は、隠れた不良債権が巨額の損失となって発生することを恐れていたのに対し て、もう一方はその不良債権を収益源にしているのだから、これは絶対的な対立構造 だった。しかも、後者にとって、最も利益の源泉となりうるのは、不良債権処理のた めに費やされる公的資金にほかならなかった。 これは、経営破綻を来して国有化された後、投資ファンドによる買収で生まれ変わ った銀行のビヘイビア ( 行動 ) をみれば、十分に理解できる。国有化後の譲渡に際 して、政府は莫大な公的資金を持参金としてこの銀行に積んだ。それは、この銀行が 保有する資産の将来的な焦げつきリスクに備えるための貸倒引当金であった。 しかし、買収されて以後、銀行は既存貸し出しの回収を率先して行う一方、公的 資金で積み立てられた貸倒引当金を取り崩し、自分たちの利益として吸収していた。 その動きが激化するにつれて、投資ファンドによる銀行買収の目的が、この公的資

3. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

4 始まった。 財投機関債の導入は、財投改革論議の中で改革派と反改革派が調整を詰めていく過 程で生み落とされた妥協の産物だった。その決定を行った際に、当時の官房長官は「発 行主体である財投機関は市場の機能でふるいにかけられることになる。発行した財投 とうた 機関債が市場で受け入れられなければ、その財投機関は資金調達面で淘汰されざるを えない。 これによって、財投問題は市場経済のあるべき方式で解決する」と自画自賛 していたが、これもまた、事実上の問題先送りでしかなかった。 政府は、財投機関、つまりあまたある特殊法人の存廃を個別に決定するという当然 の責任を、調整に難航した末に放棄したということが、この財投機関債の導入にほか ならなかった。しかも、この先送り政策は、市場機能がときとして狂暴さをむき出し にするということに考えが及ばないからこそ導入されたものだった。財投機関債導入 たなごころ の立役者だった官僚たちは、管理経済の発想で「市場は自分の掌の内にある」という 意識から抜け出せなかったし、不勉強な政治家たちは、本当に市場機能が理想的に自 分の仕事の代役を果たしてくれるものと思っていた。しかし、本来、市場とは、政策 の柔軟さとは真っ向対立する性質を有している。それは、郵政事業庁幹部の「財投機 関債引き受け見直しー発言後の市場の反応で、十分に学習できた。

4. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

ったのだが、 貸出資産の劣化がそのシフトをフリーズさせてしまった。 いずれにしても、首相の謳い文句のように、それを改革しなければ新たな経済的発 展は叶わない状況になっていたことは間違いないしかし、改革派にも抜け落ちてい た部分があった。抜け落ちていたものは、大別すると二つあった。 もろ る ひとつは、国民の支持というものの脆さについての認識である。国民は単に自らの れ 行生活を脅かさない範囲での改革に賛成したに過ぎない。「三年間に一五万 5 二〇万人の 失業者が発生する」という改革の痛みも、自分をその一人として勘定に入れずにいる からこそ、多くの国民は支持していたのだ。自分が失業者予備軍であることが濃厚に カ 鎖 なれば話は別だった。 封 金 そして、もうひとっ欠落した部分は、経済現象が有機的なつながりを有していると 預 いうことに対する認識だった。とくに、マーケットに隣接する領域では、すべての改 て 革が市場の反応を生む。その反応の多くは、決して好ましいものではない。なぜなら 、つ ば、マ 1 ケットすら、既存の社会・経済的な枠組みを前提にして成立しているからで 章 ある。そんなマーケットに改革の振動が伝わった場合には、アナリストたちが唱える 第 「マ 1 ケットは改革を支持している」「市場は改革を促している」といった素朴な予一言 は、しばしば覆される。国民心理と同様に、マ 1 ケットも移り気なのである。 シミュレーション かな

5. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

のが金融庁の官僚だったが、金融担当大臣には最後まで連絡しなかった。この事情を 知ったマスコミ関係者が「金融問題処理の主導権は、金融庁から経済財政諮問会議の ほうに完全に移った」と直感したことはいうまでもない。以後、首相、経済財政担当 大臣、某民間人というラインが不良債権処理の中軸として認識されるようになってい これが新たな混乱を生むことは、その後の展開をみるまでわからなかったが、兆候 がなかったわけではない。たとえば、金融庁を旧大蔵省の一派として対抗勢力と見続 けていた経済産業省が、中軸ラインに急接近したのもそうである 理 権経済産業省の基本的な考え方は、大手事業法人の倒産回避、自らの主導による産業 良再編にあった。ところが、金融庁主導の不良債権処理になると、自らの監督領域であ 不 る産業界の生殺与奪が金融庁の判断ひとつにかかってしまいかねない。そう考えると、 る 経済産業省の官僚は居ても立 0 てもいられない気分だった。 イライラが募っていたのは、経済産業省を支える旧通産族議員も同じである。自分 章 たちの支持母体である中小企業群はどうなるのか。貸し渋りどころか、銀行が融資を 第 打ち切ってしまえば、中小企業はバタバタと倒れてしまう。そうした事態は是が非で も避けたかったが、銀行監督権は金融庁が握っていて、自分たちは中小企業保護を要 シミュレーション

6. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

③株式・投信などについては、証券会社や銀行を通じて、保有額・銘柄をただちに申 告。 ④預金は、第一預金、第二預金に分類する。第一預金は、一預金者当たり上限二〇〇 万円までで、それ以上は第二預金に振り分けられる ⑤第一預金については、翌日以降、生活費等の関係で引き下ろしが可能。しかし、第 一一預金は対象外。 ⑥銀行による預金払い戻しは新円で行う。旧円は預金預け入れ以外には使えない。預 け入れは、本日から二〇日以内を猶予期間とし、以後は旧円の預け入れは禁止 ( 旧 円は通貨として完全に失効する ) 。 預金カットによるバランスシート調整 国民はようやく、自分が直面している状況を理解しはじめた。国民の間に混乱が起 きたことはいうまでもなし 、。ペイオフは二〇〇二年四月にすでに解禁されていたので、 経営が悪化している金融機関からの預金解約などの動きは、とうに山を越えていた。 安全な貯蓄方法として、上限を一〇〇〇万円とした預金の分散も、国民の間では随分

7. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

136 企画部長は入行以来感じたことがないような種類の恐怖感を感じていた。 倒産銀行の亡霊か徘徊する その恐れは決して杞憂ではなかった。実際、政界では、このレポートをはじめとす る投資ファンドグループのアドバイスが、次第に浸透しはじめていた。不良債権問題 になす術を見つけ出せず、しかも、そのとき開かれていた臨時国会が終わると解散風 が吹くかもしれないと焦り出していた与野党の議員たちには、そのレポ 1 トに隠され ている本当の意味を考えるだけの余裕はなかった。不良債権処理のための提案であれ ば何でもよく、要するにそれを独自の案としてアピールし、自分の名前を売り込むこ とのほうが重要だった。 それは、閣僚たちも同じだった。中でも、経済分野の閣僚たちは、不良債権処理問 題を主軸とした閣内での主導権争いの真っ只中にあった。これは、二〇〇一年一月の 省庁再編がもたらした部分もある。経済財政諮問会議と財務省、金融庁、さらには経 済産業省の間で、それぞれが対応すべき行政領域に明確な一線を画すことがむずかし くなったからだ。それを助長させたのが、不良債権問題にほかならない。 きゅう

8. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

て、場合によっては、銀行の融資引き揚げが導火線となって、地銀などまでが次々 と貸し剥しに参戦するかもしれない。そうなれば、メインバンクの自分たちに取引先 そ、つい、つシナリオ を維持する負荷が増して、最後は取引先と共倒れしかねない : を頭に描いたメガバンクの頭取は「まるであの倒産した銀行の亡霊が道連れを探しに 徘徊しているようだ」とうめいた。その果てに高まったのが「不良債権の最終処理ス キームのさらなる整備」の要望だった。 激 「市場メカニスムの活用」か混乱を深める 混 め 二〇〇一年一二月に金融庁の特別検査が始まると、その声はヒステリックというほ 初 一一どに高まった。特定企業向け融資を狙い撃ちにしたような厳しい検査と、の不 〇良債権買い取り手続きのわずらわしさの板挟みという状況がそうさせたのである それにしても、特別検査は異常なほど厳しかった。あたかも、検察庁のガサ入れの 章 ような雰囲気で行われた。経済財政諮問会議による検査内容のチェックによって、自 第 らの結果責任が問われるという中では、金融庁は自己保身のためにひたすら犯人捜し のような金融検査を続けるしかなかった。 シミュレーション

9. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

Ⅷし剥し」を激化させるだろうことを、政府、金融界が思い知らされたほうが、衝撃度 としては大きかった。しかも、政府が最終処理の旗を掲げている中では、「リスクのあ る先から融資を引き揚げるのは企業防衛上、当然の権利を行使しただけ」という銀 行のコメントには説得力があった。 しかし、「不良債権は粛々と処理する」と言い続けていたとはいえ、やはり突発的な 企業倒産の影響は少なくない。政府与党の中では、倒産したこの銀行を金融再生法に 基づいて米国投資ファンドに売却することを決定した当時にさかのほって、「金融担当 大臣に落ち度があった」と批判する声が上がったが、これには多分に守旧派による現 政権への揺さぶりの狙いもあった。それよりも、この事件で強まったのは「 xoo の 買い取りだけでは不十分ではないのか」という見方だった。 これは政府部内だけではなく、金融界からも沸き起こった。金融界としては、貸倒 引当金を十分に積む余裕すら与えられずに、不意を突かれるような形で取引先企業が 倒産することは恐ろしかった。とくに、大企業のメインバンクである大手銀行は、メ イン先企業がどの程度、銀行から借り入れているかを調べて震え上がってしまった。 メインバンクは通常、取引先企業の生殺与奪の権を有する立場にある。ところが、 ßQ 銀行と競合していると、その権利はむしろこの銀行が握っていることになる。そし

10. あなたの預金が消えていく! : 「預金封鎖・カット」のシナリオ

金にあることを否応もなく認識せざるをえなかった。そして、今回も自分たちを包囲 する勢力は、異ロ同音に銀行に対する公的資金注入を唱えている。 金融問題処理を巡る政府部内の主導権争い、省庁間の本能的な争い等々、日本的な 対立軸を巧みに利用して、自らに有利な流れを作り出す勢力が眼前に迫っている実感 ある日、金融庁上層部のひとりは「アジア危機のさなかに、アメリカ的な処理 を強要されて反発したマハティール・マレ 1 シア首相の気持ちが、痛いほどわかって きた」と苦笑いした。しかし、それはカない笑いだった。 理 処 権 投資ファンドグループの動きか活発化 債 不 セミナーが開催されたころから、金融庁はいよいよ追い詰められた。実際、セミナ る す 1 では経済財政担当大臣が「金融庁の検査には結果責任を求める」と発言した。さら 走 迷 に、政府の会議の場でも、「金融庁の一斉検査の妥当性は、経済財政諮問会議でチェッ 章 クする」という言葉を金融担当大臣の目の前で放った。金融庁に対する強烈な挑戦状 第 だった。 国家機構のそれぞれの役割は、法律で明確に規定されている。しかし、金融庁の仕 シミコレーション