245 第 4 章おかしいそ ! カラクリがあるはすだ 各年の花粉量と 3 月の消費支出 ( 東京都 ) 3 月の消費支出 花粉量 んによると、同年二月は、花粉の影響が 支 小さかった前年の同じ月に比べて、消費 支出 ( 年平均支出額に対する倍率 ) が落 8 国 ち込んだ。年平均に対する倍率に注目す 2 全 四蕉局ることで、好不況の影響を除いたその月 の生 衛特有の要因が測れる。 表京 「すべてが花粉の影響とは言い切れませ 公東 はんが、消費全体にも大きな影響を及ばし デ花ているのは確実です。強力な別のデータ 5 費 9 消 + 査もありますよ」 の言調 「ほお、これは」。とんば返りして訪ね のし分 明計た東京都庁でみた資料は、孝造の目から はび都 一瞬、痛みを消し去った。 年申京 年 8 例東 毎年の都内の動向をみると、特に飛散 出斤 6 4 2 。駐量の多かった九一、九五、二〇〇〇年 花粉量 ( 万個 / 平方センチメートル ) は、やはり、三月に消費支出 ( 同 ) がピ 消費支出 ( 全世帯、年平均に対する比率・倍 )
いまどきコメ消費が回復している ? おいしい米飯給食で育った若者が " 味力。見直す 「隣の娘さんが米飯ダイエットを始めたらしいわ」。所長夫人の円子がつぶやい た。最近、体形が気になりだしたので、興味がわいたらしい。外食業界も、和食 プームだという。「コメ消費に復活の兆し ? 食の多様化が進む中で、何が起き キ ているんだ」。所長は探偵、加江田孝造に調査を指示した。 間牛どん、コンビニのおにぎり、ファミレスでもご飯を注文 の コメの消費量は回復ー・・・・。孝造は食糧庁計画課を訪ねた。同庁 ( 「米の消費動向等 調査」 ) によると、二〇〇〇年度のコメの消費量は、前年度比〇・一 % 増加した。一 れ カ月の一人当たり消費量 ( 精米べース ) が全世帯平均で、五千百四十七グラム。前年 章 度実績に比べて月平均五グラム増えている。 第 「増加率はわずかですが、その意味は大きい。消費拡大に取り組んできた者には、 久々の明るいニ = ースです」。同庁消費改善課課長補佐の中野米司さん ( ) は声を
ことで、多様化への欲求が募ったんじゃないかしら」 ーパーなどのバック詰めに満足できなくなった消費者は、 孝造が付け加えた。「ス 多少、割高でも自由に量を選べる量り売りに注目、百貨店などに足を運ぶようになっ たわけだ」。 最後に二人が訪ねたマーケティングが専門の早稲田大学教授、恩蔵直人さん ( ) が解説した。「売り手が今まで以上に消費者のニーズにこたえる努力をすれば、消費 を喚起する力になる」という。 事務所では所長がうなずいた。 「なるほど、給料が増えないので節約かと思ったが、それだけじゃなくて消費動向 に、もっと大きな変化が起きていたんだな」 孝造が事務所を飛び出した。 「あれ、まさか、また買い物じゃあ」。明日香が袋をのそくと、ワインの容器が消え ていた 「まあ、ほんとに量り売りの消費刺激効果は大きいわ」 ( 二〇〇二年二月二十四日 )
120 月は、前年比四ー一九 % の来客増となった。 「そうか。外食のバターンに構造変化が起きて、米食が見直されているのかもしれな い ! 」。孝造はファミレス「 O 」をチェーン展開している西洋フードシステム ズの広報担当、八角義明さん ( ) が「洋食セットでも、ご飯を注文する客が九割を 超えています」と話していたのを思い出した。 料理の一品として食味を楽しむ 「コメの消費回復は、外食がけん引しています」と二人は報告した。ところが、所長 は渋い顔をした。「そう思って調べたら、コメの家庭消費量は外食の四倍もあるんだ。 構造変化はむしろ家庭で起きているのかもしれないぞ」。 再調査を指示された二人は再び食糧庁へ急いだ。 「米の消費動向等調査」の未公表データから、家庭でのコメの消費動向を計算しても らった。それによると、消費世帯 ( 非農家 ) が家庭で食べているコメの量は、ここ数 年、前年に比べた減少率が小さくなる傾向をたどった後、九九年度には〇・四 % 増と プラスに転じていた。明日香は感、いした。 「うーん、さすが。所長が言っていた通りだわ。家庭がカギね」
246 タリ落ち込んでいたのだ。 二〇〇〇年三月は、前年より〇・〇三ポイント下がった。消費額に直すと、三 % の 減少で、単純に全国に当てはめると、一カ月だけでべースの名目個人消費はお よそ七千億円目減りした計算になる ( 二〇〇〇年三月の個人消費は約二十三兆円 ) 。 証拠を握りしめて戻った二人の報告を聞いて、所長がつぶやいた。 「きっちりその通りかどうかは別にして、消費の目減りが薬品・グッズなどの支出増 加分を大きく上回るのは確かだろう。花粉症の影響はじわっと膨らんできたなあ」 孝造が付け加えた。 「九割の患者は毎年発症、しかも高齢者は季節に関係なく症状が続くそうです。花粉 症への理解と対策をもっと促さないと、社会的、経済的に、影響がより深刻化しかね ません」 「 / 、ー ) ゅん」 「あれつ ? 」 孝造が振り向くと、明日香が鼻を押さえた。 「私もかかったのか、し、ら、らー、くしゅん」 ( 二〇〇一年三月十一日 )
弾ませた。 外食や、お弁当などいわゆる中食でのコメ消費拡大が影響しているという。二〇〇 〇年度は外食用のコメの消費量が前年度比七・七 % も増えた。外食店などが使う、値 ごろで食味の良いコメも、卸段階の取引価格が最近堅調らしい 孝造は、役所を出たところで、外食業界を調べていた後輩、深津明日香と落ち合っ 「先輩、コメの消費拡大は牛どんとおにぎりの販売拡大のおかげです」 明日香によると、激安商戦で来店客数を三倍に伸ばした大手牛どんチェーンがある し、刺し身を具に使ったおにぎりを発売するなどコンビニエンスストアの間でも、お にぎり新製品の開発競争がし烈だ。最近は緑茶を出すおにぎりカフェも登場した。 「だが、一時的な安値競争が理由なら、外食を通じた消費拡大は長続きせず、また消 費低迷に逆戻りしないかな ? 」。事務所に戻って孝造が腕組みしていると、食糧庁の 中野さんから追加の資料が送られてきた。 日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」だった。それによると、二〇 〇〇年度は、洋風ファミリーレストランで客足が伸び脳んだ半面、メニューにご飯が 付きものの和風・中華・焼き肉系のファミレスは、不況下でも好調で、二〇〇〇年三
ミネラルウォーターの年間消費量 人気の背景には水道水の安全性に対する不安 記録的な猛暑が続き、ペットボトルの水が手放せない毎日。少し前までは水道水が当 たり前だったが、最近はミネラルウォーターを買う人が目立つ。二〇〇〇年のミネラル ウォーターの国民一人当たり年間消費量は、輸入・国産品を合わせて八・五八 だった。コンピューターの二〇〇〇年問題で一九九九年に備蓄の需要が盛り上がった反 動から、前年比でわずかに減ったものの、過去十年間で約四倍という急増ぶりだ。 約五百の銘柄が売られており、その多くが、天然のミネラル成分を多く含むナチュラ ルミネラルウォーターで、人工的な成分調整はしていない。人気の背景には、消費者の 自然志向や味へのこだわりに加え、水道水の安全性に対する不安がある。 サントリ ーが最近実施した首都圏消費者調査 ( 五百人、複数回答 ) によると、飲み水 にミネラルウォーターを使っている人は全体の九〇・二 % 。浄水器の水 ( 四一・六 水道水 ( 四〇・八 % ) を大きく上回った。 一方、東京都が都内の三千世帯を対象に水道水に対する評価を聞いたところ、飲み水 として「満足」という評価は八・二 % にすぎず、「やや不満」「不満」との回答が合わせ
ミネラルウォーターの 1 人当たり年間消費量 91 年 て四二・九 % に達した。 国際的な環境保護団体である世界自然 保護基金が二〇〇一年五月、 ミネラルウォーターなどペットボトル入 り飲料水は、水道水に比べ安全とは限ら 協ないという報告書を発表するなど、安全 タ性の程度については議論が分かれてい ウる。だが、自然志向という大きな波に乗 5 ラ り、ミネラルウォーターの消費は当分、 ネ 今の増勢を続けそうだ。 日 利用範囲も、飲料用から調理や製氷、 仙洗顔にまで広がっている。メーカーや輸 入業者などで構成する日本ミネラルウォ ーター協会は「消費量は今後十年間で現 在の二倍になる」と見込んでいる。 ( 二〇〇一年七月二十九日 ) 99 2000 会
明日香が問題提起した。 「消費が伸びるのは旅行だけじゃないかもしれない。調べてみるわ」 でも有給休暇取得率は約 5 割 明日香は、自由時間デザイン協会に向かった。 「休日が増えると、どんな需要が拡大しますか」 研究主幹の丁野朗さん ( ) は「自由時間がないとできない " 時間消費。ですよ」 キ と答えた。 これには、若者の携帯電話やレジャー施設の利用なども含まれる。「別の経済効果 の もあります。サービス業など新分野の雇用が増え、産業の構造転換も進むでしよう」 間 のと丁野さんは付け加えた。 「そうか、消費が増えるだけじゃなくて、遅れている日本経済のサービス化も進むの れ 嶂明日香は思わす叫んだ。 第 米国では、一九九〇年代に農林水産業や製造業などの第一次、第二次産業の雇用が サービス業など第三次産業で大幅に増えたため、全体では雇用が拡大し 減ったが、
「どうやら、量り売りプームは、節約だけじゃなく、多品種消費とも関係がありそう ね。そういえば、専門店はどこも品ぞろえが充実していたわ」 その足で、三和総合研究所に向かった。消費動向に詳しい研究員の小林真一郎さん ( 肪 ) が説明してくれた。 「品そろえが豊富な百貨店が最近、一斉に量り売りを強化しています。量り売りがは やる背景には、多品種消費があるのです。ではなぜ多品種が広がるのか」 小林さんは説明を続けた。「データをみると、実はちょっと前まで、いくっ かの商品分野で、品種が減少していたのです」。バブル崩壊で、売り手が売れ筋商品 に品種を絞り込んだためだった。 「どうして拡大に転じたんですか ? 」。納得できない明日香に、ト林さんが推理を示 「品種が増えたのは、反動のようです」 「反動 ? 」 「百貨店の復調ぶりをみれば分かりますよ」。多品種の代表、百貨店の売り上げは、 過去三年連続で前年比減少率が改善し、二〇〇一年は〇・四 % 減にとどまった。半 パーは三年連続で悪化、最悪の五・二 % 減だった。 面、スー