単身世帯のごみは四人家族の一 ノイ 孝造は後輩の深津明日香と東京都東村山市に向かった。「これを見て下さい」。ごみ減量 推進課主査の江川誠さん ( ) は「家庭ごみ排出源実態調査」を示した。 排出量を世帯別にみると、四人家族では、一人一日当たり五百三十九グラムのごみが出 る。ところが、二人世帯だと九百十七グラム、一人世帯では九百五十四グラムと増える。 単身世帯のごみは、四人世帯の約一・八倍にもなる。 けげん 「どういうことですか ? 」。明日香が怪訝な顔をした。 「家族の人数が減るほどごみが増える。一人暮らしの家から出る量が一番多いということ 「なぜ、一人だと増えるんでしよう」 「確かに、四人家族と一人暮らしでは買い物の量は違うが、包装の量にはそれほど違いが ないからね」 「先輩、ナゾは解けましたね。最近は一段と核家族化が進んでいます。二十年前に約二〇 % だった単身世帯の比率は、現在二七 % ( 推計 ) まで上昇しています。ごみを多く出す世 帯が増えた結果、増えたんですよ」 そのまま大和総研に回った明日香は、有力な状況証拠をつかんできた。経済調査部の岡
て新ミレニアム ( 千年紀 ) 記念で建て、二〇〇〇 年二月に稼働した。観覧車の高さ百三十五メート ルは世界一。一人一回八・五ポンド ( 約千四百 ~ 界円 ) 。三十分で一周する。 は搭乗口まで数百メートルの列。孝造は二時間待 ちでやっと乗り込んだ。セントボール大聖堂、ロ ンドン塔も一望のもとにある。同乗した英国人も 町「この街には珍しい近代建築。鳥になった気分」 一高と話した。 の 同社の担当、ポール・バクスターさんは「週末 ・ " は一日一万五千人が乗り、予想を一五 % 上回る大 ヒット。街の新しい " 顔みです」と自慢した。 ド孝造は帰国後、資料を集めた。大観覧車は前世 ロ紀末、米技術者フェリスがシカゴ万博に出品した 直径七十五メートルのものが最初だった。直後に 欧州でも登場した。 「流行は世紀末現象なのか。日本の現場も見てみ 物第物・をを第
57 第 1 章あなたのフトコロの中の日本経済 「一等賞金は上がっても、賞金総額は同じだそうだ。競争が始まったといっても、消費者 にとってどこまで魅力が高まったかは疑問だ。まだまだ努力の余地がありそうだね」 二人が事務所にたどり着くと、所長と夫人の円子が争う声が聞こえた。 「この人、私が当てた宝くじの賞金を横取りしようとするのよ」 「違うよ。競馬で増やすんだ。確実な投資さ」 「賞金はいくらなんですか ? 」 「千円よ」 この分ではまず冬のポ 1 ナスは期待できそうもない。二人は顔を見合わせた。 ( 二〇〇〇年十一月五日 )
っている。つぶれるおそれのある企業などに貸すのと違って、相手が国なら安全だからだ。特に 郵便貯金は「安全・確実」な運用を求められるので、大量に買っている。郵貯にお金を預けると、 その何割かは国債に変わっている。つまり、間接的に国債を買っていることになる。 少年が不安げに聞いた。 「それで、いくら借金してるの ? 」 「国と地方の借金を国民の数で割ると、一人当たり五百万円ほどになるらしいよ」。孝造の答えに、 少年は目をむいた。 「ええつ、そんなに ! ちゃんと返してくれるのかな」 孝造は少年の肩をポンとたたいた。「僕たちが返すんだよ。国が借りたということは、言い換え れば、僕たち一人一人が借りているのと同じだからね」。少年が憤った。 「大人たちが勝手に借りたお金を、なんで僕たちが返さなきゃいけないの ! 」 孝造は言った。 「確かにそうだね。気持ちはわかるよ。まずは僕たち大人が少しでも借金を減らすように努力しな ム 「ふーん。それで思い出したけど、さっきアイスクリームを買うときに貸したお金、ちゃんと返し コてよね」
277 第 5 章日本のお先はまっ暗 ? 明るい ? 介護サービスの利用手続き 医 師 の 見 書 介護認定審査会による要介護認定 ( 要支援、要介護 1 ー 5 ) ケアマネジャーによる 介護サービス計画作成 サービスの利用 指定業者・施設との契約 市町村の窓口 申請 利用者 訪問調査 厚生省の老人保健福祉局人材研修係長、翁 川純尚さん ( 引 ) の答えは意外だった。 「不足とは思いません」 「きつい仕事を敬遠し、合格しても仕事に就 かない人も多いようですよ」。そう孝造が問 うと翁川さんは数字を挙げた。 「確かに稼働は四割弱の六万人。でも、一人 のケアマネジャーが扱うお年寄りは五十人と みています。五十かける六万で三百万人。要 介護認定を受けた一一百七十六万人に十分対応 できる数です」 「なぜ五十人なんですか」 「老人ホームなど施設に入っている場合は百 人ですが、在宅では訪問に時間がかかるので 半分にしました」 孝造は納得できず、役所を後にした。 「実態に基づく数字じゃないのか。計算上、
総務庁 ( 現総務省 ) によると、一九九九年の一世帯の教育支出は一カ月平均で前年比 七・五 % 減。最高の九四年から一四 % 減った。 「予備校や塾に通う人が減ったのかもしれない」 参考書の購入費も減った。出版科学研究所によると、九九年の新刊部数は前年比一一三 % 減。研究員、高橋史子さんは「景気低迷による収入減、少子化が原因」と推測する。 「それだけで急に売れなくなるかな」。孝造は明日香が入手したデータをみた。総務庁に よると、十九歳以下の人口は九四年から九九年にかけ一〇 % 弱減少。一方でサラリーマン 世帯の実収入は一 % 増えた。 「教育費の減少幅は、若年人口の減少幅よりも大きい。逆に収入は増えている。きっと何 さかあるはずだ」 二人は受験に対する考えを調べるため、旺文社の協力を得た。インターネットの高校生 情報サイト「ネット」で意見を聞いた。 孝造は三十四人の回答を読んで首をひねった。懸命に勉強していると思ったのに、ほば 半数は塾に通わず参考書も買わない " のんきな高校生。だった。 章 「、つこ、、ど , つい , っことた」 第 孝造は数人に電話した。「塾はお金と時間の無駄。特別な勉強をせずに入れる大学でい いわ」 ( 北九州市の私立高三女子 ) 、「高校も高望みはしなかった。背伸びせず合格できる
253 コラム がどの位いるか、その割合を示したものだ。 アンケートは、総務省が都道府県などを通じて委託した調査員が実施している。全国の四万世帯 ( 約十万人分 ) を訪問、同じ世帯に一一カ月間、調査票を配布する。月末の一週間に仕事をしたかど うか、職探しをしているかどうかなどを調べる。その結果をもとに全体の状況を推計する。 「なるほど。お役人が街角に立って数えているわけじゃないんだな」。孝造は納得した。 「失業率の定義にからんで、面白い話があるわ」。円子が二人に問題を出した。「失業率は不況の時 だけじゃなくて、景気が好転し始めた時期にも上昇することがあるのよ。なぜだか分かる ? 」 「えつ、景気が上向くときに ? 景気が上向けば、会社は人を雇おうとするから失業者は減るので は」。二人の探偵は考え込んでしまった。 「分かったわ ! 」。しばらくして明日香が手を打った。「景気が良くなりかけると、あきらめて中断 していた職探しを再開する人が出てくるからね」。円子がうなずいた。「そうなのよ。たとえば専業 主婦になっていた人たちが就職活動を始めたら、完全失業者が増えることになるの。働きたい人が 増えても、まだ企業も求人を増やしていないから職がない。それで一時的に失業が増えるわけよ」 「ところで」。孝造ががらんとした事務所を見回して言った。 「月末の一週間、事務所にいるだけで、仕事がない場合は失業者に数えるんですか ? 」 所長は渋い顔を新聞で隠した。
86 主な観覧車 設置場所 営業開始時期 直径 ゴンドラ台数 ( メートル ) 2000 年 2 月 ロンドン 25 人乗 X32 135 天保山ハーバービレッジ 97 年 7 月 8 人乗 X60 1 OO ( 大阪市 ) HEP ファイブ 98 年 11 月 4 人乗 X52 75 ( 大阪市 ) 99 年 3 月 8 人乗 X60 よこはまコスモワールド 1 OO ( 横浜市 ) パレットタウン 99 年 3 月 6 人乗 X64 1 OO ( 東京・江東区 ) モザイクモール港北 2000 年 3 月 4 人乗 X32 45 ( 横浜市 ) カーニバルバーク・ミハマ 2000 年 4 月 4 人乗 X32 45 ( 沖縄・北谷町 ) チャチャタウン小倉 2000 年 1 1 月 4 人乗 X36 50 ( 北尢州市 ) 葛西臨海公園 2001 年春 6 人乗 X68 1 1 1 ( 東京・江戸川区 ) っ業 近 も 阪は い月 さ は し、 確 得街うのた施 ビ 。昨 新 い 最 に遊孝 く か意 呂 。言殳の 日幹 近 / 一 ル ま 打 園 中 に 業頂 の線と 乗 か地は に け、 ず の 開上 H 華上研 夜 の 独 に観 か所 っせ 立説覧 始は E 街 に 究 。車を て ら長 て 感下独を で 地 。赤者君中上 し明 P 車 フ 孝 激 はでげ 、上 て し に い 並説 と き 観当 ま い た ア は 三孝 0 、ら ハ イ 覧た は し プ 衝車 0 メ で や っ も 撃 いは ロ て ゃ 月 の を、 く ト 。と り ナ ル上受 ろ 十 も れ い い ゖ 阪 ま ゾ 手 明 万 よ 。に や た急 日すを 伝 人九観 、ど 可 高 。解 わ香 何ん 八覧 が 梅 殿 能 せがぜく 乗年車複 でだ ヵ ム田 き る 十 も ひカ あ商駅 下私大キ と な ん な
孝造が明日香に頼んだ。 「名門スキー場がこの惨状だ。底流に何か経済の構造変化があるのかもしれない。所長た ちと先に帰って調査を始めてくれ」 帰京した明日香は財団法人・日本交通公社を訪ねた。観光マーケティング部長、小林英 俊さん ( ) は「これは全国的な現象です」と説明する。全国のリフト利用客数は九〇年 代半ばから急減。九九年度は延べ五億二千万人で九五年度より三割も落ち込んだという。 明日香は中身を調べた。大手リフトメーカー、日本ケープルの昨年の調査ではスキー場 利用客の八割が二十代と三十代。自由時間デザイン協会の調査でも年一回以上滑った人の 比率は九〇年代半ばから若手を中心に低下している。 「やはり若者のスポーツなんですね。担い手の二十、三十代が離れるなんて、不況の影響 は深刻ね」 ウインターレジャー普及促進協議会を訪れた。「宿泊すれば一回五万円以上かかること もあります。不况下に高過ぎるのでは ? 」。 事務局長の坂倉海彦さん ( ) の答は意外だった。 「実は不況が原因とばかりは = = ロえないんです」 国税庁によると、九五ー九九年に民間給与所得は、二十代で二 % 前後下がったが、三十 代では一ー二 % 増。「特に懐がさみしくなった訳じゃない。別の理由があるのでは」。明日
港 ) に向かった。 パトリック・コリンズさん ( ) は、各国政府も観光に 客員研究員で英国人の経済学者 関心を持ち始めたと指摘する。 「米航空宇宙局 (Z<(-D<) が好例。宇宙産業は政府が顧客でしたが、冷戦終結後の予算 削減で事情が一変。商業化の動きが加速しました」 も数年前から観光産業との協力を推進。国際宇宙ステーションの利用でも企業 への研究室貸し出しや機体への広告掲載を検討している。中でも有望なのが市場規模の大 きい宇宙観光という。 済「宇宙観光ですって ! やつばり、可能性はあるのね」。明日香が目を輝かせた。コリン 本ズさんは言う。「世界の一億人が一人当たり二百万円払えば、二百兆円市場ができる。技 術先進国である日本は、新産業育成の観点からも積極的に取り組むべきですよ」 ろ 孝造が言った。「開発費が出てくれば、旅費も下がる。松本さんも旅費が一千万円まで 下がれば需要はあると言っていた」。三十年後ならロケット利用料が十分の一以下になる ん 可能性もある。 章 報告を聞いて所長が感心した。 第 「ほお、ロケットで失敗続きの日本が観光では先進国か。民間活力を集めれば庶民が行け る日も早まるかもしれんな」