力の単位だ。平地での重力が一、横にかかる力が横 (-) 。カートの場合、横は、トップ クラスの全日本レベルで三から四 (..5 と言われている。 。五十嵐家の新居は、つい数カ月前に完 朝食をすませた二人が、ガレージに降りてい 成したばかりだ。外装、内装の基本設計は、すべて太右衛門が手がけた。すぐ目の前が、 かじよう 山形城跡の霞城公園のお堀。周囲は閑静な住宅街だ 巨大なガレージが、ちょうどリビングの下にある。奥の半分が、ちょっとしたカート用 の工具置き場のようになっていた。カート自体もここに並べて置かれ、壁に作られたラッ クにはヘルメットやトロフィー、走行中のフォーミュラマシンの写真などが並べられてい へプバーンの る。そのほかに目立つものと言えば、太右衛門がファンであるオードリー・ かポスターだ。 ま勇大は、太右衛門を手伝い、運搬用の白いハイエースにカートを積み込む。フレームと 幻エンジン、タイヤは別々。コースで組み立てることになる。百 00 エンジンは、まだ勇大 ラには少し重たい。太右衛門が一一台分のエンジンを軽々と両手で持ち、荷台に置いた。 一カート走行に必要な物は、まだまだたくさん運ばねばならない。ガソリンとエンジンオ イルの混合燃料を入れたタンク。エンジンから後輪を駆動させるチェーンに使うためのオ 工 チ イル、混合燃料の配合をするためのメスシリンダー、タイヤの空気漏れを防ぐシリコンス プレー、そしてオイルジョッキなどを入れた大きな箱。各種のドライバー類やプラグレン
も決まりつつあり、 から顔を上げた。レース第一戦は来週末に迫ってきている。エントリー スポーツランド cn>(.50 モータースポーツ課カート担当である目黒の忙しくなるシーズン が、、も、フ亠 9 み、始まる。 みぞれ 「まだ寒いわ。雨が霙に変わらなきゃいいけど。それにしても、がんばるわね」 自分の席から後ろを振り向いて、目黒も窓から見えるカート専用コースに目をやった。 東北特有のどんよりとした雲が低い。冷たい春先の雨の滴が窓を濡らしている。屋根を叩 く雨音に混しって、一台だけコースを走るカートマシンの甲高いエンジン音が聞こえてい すごう 仙台市の南方、宮城県柴田郡の菅生にあるスポーツランドには、国際規格のレ ーシング・サーキットに併設されて、国内有数の国際カート・コースがある。五十嵐親子 まがスポーックラブに入会してきたのは、つい半年前のことだ。がっしりとした体 幻格の色の浅黒い実業家タイプの父親。息子の勇大は、まだ小学五年生の身体の細い男の子。 プ最初に会ったとき、目黒は、勇大の強く輝いている目の光に驚い 一ちょうどプームが盛り上がってきていた。そのせいか最近になって、息子にカート をやらせたがる父親も多くなってきている。勇大と同年代の男の子たちも、カートを盛ん 工 に始めていた。 そうした少年たちを見てきた目黒だが、勇大の瞳のカ、鋭い視線は彼女の印象に強く残