「発声練習用の言葉がさー、妙じゃない。アレがなんか笑っちゃってー。それに女ばっかの中 で俺だけ男の声じゃん。やつばちょっとハズイよお」 と、あたりを見回せば、視界に映るのは、女、女、女。 さぎ ( これは詐欺だよ。有栖川部長以外、みんな女なんだもん、 ) じよう さくらこ なんと演劇部は、桜子様だのヴィヴィアン嬢だの、妖しげな芸名を名乗る女達の園だった。 瀬名を引き込もうという公平の計画に、二つ返事でノッてきたわけだ。凶悪な魔法使いロッ ト・ハルトを女が男装してやるのは、ちょっといただけない。 そのロット・ハルト役の瀬名は、一人離れた教室の隅っこで、ダラリと椅子に座って台本を読 んでいる。たぶんセリフを暗記しているのだろう。 「瀬名は、発声練習しなくていいの ? 」 「ああ。彼には必要ない。あいつは腹筋の強さが並みじゃないから。歌にしても、上手い下手 きた はともかく声はすごかっただろう。ケンカで鍛えた身体が、役に立ってるってわけさ」 「すっげえ強いって聞いたけど : ・」 子 「確かに以前は暴れてたね。でも、今は拳を封印してるから、心配はないよ」 な 「右手にプレスレットしてるの、知らない ? 」 105 こぶし からだ あや いす
250 ヒクリと、公平は口元を引きつらせた。 「おっ : ・女 どとう ズザーツと怒濤の勢いで後ずさるなり、後ろにいた瀬名に抱きついた。 「ウッソ ツにき ? ・聞いてない : スそんなの聞いてないよおっ ! 」 もう舞台の上だということも忘れて、叫ぶ叫ぶ。 「そこまで驚く ? 」 失礼なと言わんばかりに腕を組む有栖川は、 175 センチ近い身長に、広い肩幅に細腰と、 どこからどう見ても男だし、何より女ってのは胸がポョ、ンって出っ張ってるもんで、抱き合 っててもわからないほどなんて、あり、 ? そーいえば、女ばかり とは思うけど、この世には。へチャ。ハイの女はいくらでもいるし : のド真ん中で、有栖川は平気で着替えをしていた。 さらに、自ら言っていたではないか。 『私など、君の猫よりさらにタチの悪い、百獣の王ライオン級の皮をかぶっているぞ』 と、自信満々に あれは、性格のことではなく、男装のことだったのか ? 「き・ : きったねー ! 詐欺ゃあん、それえつ、 男同士だと思っていたからこそ、友達感覚で抱き合ったり、ラブシーン演じたりもしていた さぎ
わけで、でも女じゃ話が違、う。 女を抱くなら、やつばり好きな相手じゃなきやイヤ。 理想の相手じゃなきやイヤー : って、つまりは芳そっくりの女ってことなんだけど。 「う・ : ウソつきいっ 真っ青になってプンプンと首を振り回す公平に、瀬名は呆れ顔で訊いた。 「ホントに知らなかったのか、お前 ? 「知らない、知らないいいっ ! 知ってたら、抱き合ったりしな、い ! 」 ゅうゆう 夢中でしがみついてくる公平を、瀬名は悠々と抱き締めた。 真っ白な衣装に、ピンクの花の髪飾り。 瀬名の目にはやつばり女の子にしか見えない公平は、出逢いの時もそのままに可愛らしすぎ て、いつの間にか腕に馴染んでしまったこの感触を、手放すのはやつばりもったいない。 だから、耳元に小さな声で囁いた。 猫 子「じゃあ、こうしてるか ? 」 ン 「ヒック・ : ☆」 まん丸に見開かれた公平の目が、次の瞬間、フワッと細められた 9 ここは舞台の上。 251 ささや であ あき かわい
デカイ身体、怖い顔。精力満々、体力十分、毎晩プイプイ言わせてますって全身で主張して インポ : るような男が・ 「ブッ : : : ☆」 悪いと思うけど、吹いちゃった。 「てめえ、 ! 」 「ご : ・ごめ、ん。でもやつば、プブッ : ・☆ちょっとねー。いやー、悪いことしちゃったわ。 そうだよねー、そのギンギンの頭でインボですなんて言えないよねえ」 「潰してやろーか、てめーのも ? 」 「はい。ごめんなさい : 公平、いきなりしゃんと正座。 確かに笑ってる場合じゃない。真剣に相談にのってやらねば。たぶんこの 6 ヶ月と日、誰 もんもん にも言えず、一人悶々と悩んできたのだろう、・ : ブッ : ・☆ 「え、と、女と試してみたわけだよね ? 」 子「するか。女前にして勃たねーなんて、そんなみつともねーマネできっかよ」 ク「じゃあ : ・、どうしてインポだってわかるわけ ? 」 「デートしててもその気にならん。キスまでいきゃあ普通反応するもんだろ ? 」 「反応なし ? 」
「そっかあ。そっかあー」 なぐ 初めて誰かを殴った記念の日。だから今日はパンチ記念日。 そりゃあ、あんまり褒められたことじゃないけど、失礼なャツをゴンってやって何が悪い ? 俺を女と間違えたヤツが悪い。 それ以前に、警察のカモフラージュになんか使ったのが悪い。 そう、俺はなあーんにも悪くない。 それにど 1 せ二度と逢うことのないャツだしね。あははははは、 「ああ、、なんかスーツとしちゃったー」 どうやら反抗期も吹っ飛んで、ランラン足取りも軽い公平ちゃんのその髪には、男が公平を げんきよう 女と間違えた元凶のお花が未だしつかり揺れていた。 公平自身はすっかり忘れていたけれどさ ついでに、とり残された男が、それから分あまりも立ち上がることもできず、 「・ : あ : ・あのガキ : : ・、覚えてろおおおお : うな と、胸にランラン怒りの炎たぎらせながら唸っていようとは、想像だにしなかった。
「女だって、こんないい匂いはしねーぞ」 あらわ ーカーの居をまくり上げながら、露になってくる肌に次から次へと唇を滑らせていく。 「お前は男だよ。その上、生意気で、わがままで、見かけによらずどーしょーもねー小悪魔だ けど、それでいいんだ俺はー 「チンポはぶら下がってるわ、胸はねーわ、こんなん女の代わりにするか」 悪戯な指が、公平のささやかな突起に触れる。 「点しかねーじゃねーか」 まだ柔らかいそれは、指先を押しつけると簡単に潰れる。 もてあそ つぼみ そのまま蕾を育てるように弄びながら、瀬名はもう片一方を口に含む。 ちくび こんな小さな乳首でさえちゃんと快感に反応するんだと、不思議に思いながら、丹念に舌を 絡ませ、ブッチリと立ち上がってくる感触を味わう。 猫 好「な : ・、なんかムズムズするう : ン「してろ。させてんだ」 チュウッと強く吸いながら、もう片方もきつく摘む。 「あんっ・ 271 から すそ にお つま つぶ
まさか、まさかと思うが、マジ、 じゃあ「その花はなんだ ? ロの悪い女なんか山ほどいる。ペチャ。ハイ女だって掃いて捨てるほどいる。 だが、ピンクの花を髪に飾って歩く男は、やつばりそうそういないはず。 だから一瞬も疑わず、ブッチュとキスなんかしてしまった。しつかり舌まで絡ませて。 し : ・舌まで・ 「ゲ : ・ゲロオ、☆」 思わず吐いた。 ズモモモモモモモ 怒りメラメラ公平ちゃん、べッドから飛び下りるなり、椅子にかけてあったジャケットと紙 袋をひつつかむと、 「おっ勃ててんじゃねーよ、いつまでも、。さっさと目え醒ましやがれえっ ! 」 行きがけの駄賃とばかりに、男のアソコを・ハスタオルの上から思いっきり踏んづけた。 くさ 「こんの腐れホモ つぶ グシャッと、足の裏にめいつばい潰れた肉感が残るほど、全身のカ込めて 「うぐうううつ こかん そうして、股間を押さえて床を転げ回る男を残し、意気揚々と部屋を後にした。 だちん ようよう から
と進んでくるのが感じられた。 恐れていた痛みは訪れない。それもそのはず。瀬名の楔は、ピッタリと閉じられた公平の太 股の間に捻じ込まれているのだから。 「そうだ。そのまま緩めるなよ」 再度念を押すと、瀬名はゆっくりと腰を前後に動かし始めた。 ( こ・ : これって、素股ってやっー ? ) みみどしま 耳年増の公平は、ようやく瀬名がしようとしてることに気がついた。 公平の足の間に自分のモノを挟んで、しごこうというわけだ。 「瀬名・ : 、いいの ? こんなんで・ : いいの : : : ? うる 肩越しに振り返ると、瀬名の欲情に潤んだ目に出逢う。 からだ 「いいも悪いも、このまま抱いたら、身体だけ目当てみたいじゃねーか」 「瀬名・ 「妙なもんだな。女とはもっと軽い気分で寝てたのによ」 つな 男同士だから、遊び気分なら女より気楽に身体を繋げるだろう。 でも、男同士だからこそ、ホンキなら簡単には抱けない。 受け人れる側の戸惑いも辛さも惨めさも、想像できすぎてしまって、無理強いはできない。 すまた ゆる はさ であ くさび ふと
しんし けっこう真摯な顔で言うと、男は立ち上がって床に転がったコップを拾い、 「しばらく休んでくか ? どーせ金払っちまったんだ、好きにしろ。俺はシャワー使わせても らうぜ。帰りたきや勝手に帰りな」 と、背中で声を送りながら、さっき出てきたドアの向こうに消えていった。 たぶんそこが洗面所と浴室なのだろう。 ( あ・ : 、そっかー。あいつ、妙に汗ばんでたの、演奏のせいだったのか ) と、気がついて、思わずクスッと笑ってしまった。 妙なことがおこる。 家に帰ったら、男とラプホに行ったんだって、言ってやろうか ? 芳、どんな顔するかな ? 父は、怒るどころか面白がったりしてさ。 そんなこと考えながら、探検気分でサイドテープルの引き出しを開けてみる。 「うわー、コンドーさんだあ ! 」 おおっと目を見張る。 子「それに、これはジェル ? 女には使わないんじゃない ? あ・ : 、そっか、・ハックが好きな女 クだっているかー。ホモってこともあるし : : : 」 ホントは帰るつもりだったのに、遊んでるうちに男がシャワーを終えて出てきてしまった。 「なんだ、まだいたのか」
公平の気持ちがついてこないままに抱いてしまっても、それは一方的に性欲を満たすためだ けの行為になってしまう。 互いに気持ちよくならなきやウソだ。 わざわざリスクを承知で男を好きになるなら、ともに欲しがらなきやウソだ。 だから、笑いたいャツは笑えと開き直る。 ひで 7 ヶ月の女日照りのあげく、ようやく一番欲しい者を腕の中に捕まえて、たぶん強引にやっ てしまえば相手だって泣く泣く承知するしかない状況なのに、それでも抱かなかったと知った ら、さぞや・ハンド仲間は大笑いすることだろう。 あき 自分でも呆れるが、それでもかまわない。 他の女なんか目にも人らないほど、愛しくて愛しくてしようがない相手をキズつけるくらい なら、大マヌケになった方がマシだ。 「顔、見せてくれ : ・」 肩越しに求める瀬名に、公平は夢中で唇を開く。 子 熱い舌を受け止めながら、せめて瀬名が感じるように、きつく太股を締め上げる。 な ンそんなことで満足するはずもないのに、それでも瀬名は、今はこれで十分だと、息荒く腰を 前後させる。 くき こす そうきゅう やわはだ 熱く太い茎が、双丘の谷間や、太股の内側の感じやすい柔肌を激しく擦る。 279