こんなところで言い争えば、悪者にされるのは絶対に瀬名の方。 自分の優位を十分に承知した公平は、 ( やつばり可愛いって得、 ) きんちゃく と、心・で鬼畜に思いながら、子猫のアップリケのついた可愛い巾着から、でつかい弁当箱と デザート用の小さなタッ。ハーを取り出した。 : ってことで、はい、お弁当ねえ、」 自分の笑顔の効力を知りつくした公平が、ニッコリ顔で差し出すと、瀬名の視線が戸惑った ように揺らぐ。 ホントにもう、この顔は目の毒だ。 実は咋日、あれから 3 発も抜いてしまった。 あんまり気持ちょすぎて、どーにかなるかと思ってしまった。 もうわかっている、この顔がマズイのだと。 男のくせに花なんかつけて。 子男のくせにそれが似合って。 男のくせにメチャクチャ可愛いャツ。 ン でも、俺はホモじゃねー だから、その顔をチラチラと目の前にさらすなと、言いたいことはそれだけである。 かわい きちく
202 「瀬名のすごいところはね、親父さんの暴力で、身体だけじゃなく心にだってキズを負ったは ずなのに、強くなることでそれを克服したことさ」 これ以上聞きたくない。 自分がどんなにサイテーのヤツだったかってことは、もう十分わかったから : 「だからあいつは、自分と同じ境遇で苦しんでいる者を見ると、ほっておけないんだ。知らな い ? あいつ、けっこう虐められてる下級生なんか助けてるのー 有栖川も同じような話をしていた。 瀬名は、腕に覚えがあるから、他校生なんかに絡まれてる下級生を助けることがよくあるつ て。だから、瀬名を慕ってる下級生は多くて・ それを瀬名は、ひどくイヤがっていた。 ぎやくたい 「君も、あれだろ、里子に出された先で虐待されたとかって : ・。同情してたんだな。瀬名は」 端正な口元に見下したような笑みを浮かべ、鬼の首でも取ったように佐倉は言った。 「同病相憐れむってャッさ スウッと、頭から血の気が引い = ていく。 指先が冷たくなっていく。 あいあわ いし おやじ から からだ
178 「公平は、痛みを知ってる人間だ。他人をキズつけたりはしないよ。たとえしたとしても、そ れは何かやむを得ない事情があったからだろう ? 公平にかぎって、面白半分で他人をキズっ けることは絶対にない」 「芳・ : 、ウチの子にかぎってってのは、親バカの証拠だよ。俺は芳が思ってるほど、いい子じ ゃないよ」 「いいんだよ。いい子じゃなくても、愛してるから」 繰り返す穏やかな声。 髪を撫ですく温かい手。 「誰が許さなくても、俺が許すよ」 公平の手が、ギュウッと芳のスーツをつかむ。 こら おろ 涙を堪え、唇を噛む。愚かな自分を、叱咤するように。 雪のように、花のように、惜しみなく降り注ぐ愛。 あなたのくれた優しさが、いつも俺に教えてくれる。 本当に大事なもののこと。忘れてはいけない大切なこと。 俺は、愛されて愛されて育った幸せな子供だと。 ひと しった
「続ける気はないかな ? 」 でも、公平は静かに首を横に振った。 何かを信じたり、期待したり、ドキドキしたり、そーゅーのは自分には贅沢すぎる。 「 1 回きりって決めてたから」 もうこれで十分。 今はよくても、そのうちきっと邪魔になるから。 こいつなんかいなきやよかったって、思われるようになるから。 そういう星の下に生まれついたことは、もうずーっと前から気づいていた。 おとーさんにもおかーさんにも邪魔にされた子供。 父だって、引き取った当初は困っていた。そこに芳が現れて、ようやく居場所ができた。 マンションのあの部屋だけが、この世で唯一、存在を許された場所。 だから、それを守るために、ひたすら我慢し続けてきた。 好奇の視線を避けるために、言いたいことも言わず、したいこともせず、ひたすらいい子の 猫 子 仮面をかぶってきた。 な ン我慢して、我慢して、 8 年間 精一杯やったつもりだった。頑張ってきたつもりだった。 どんなウワサが流れても、・ハ力にされても、からかわれても、ちゃんと学校に通って、勉強 205 ぜいたく
142 「ああっ : ・「犯して 欲情のままに訴える。 「いやらしい人」 久住は、満足げにほくそ笑むと、愛しい人の望みをかなえるために、それ以上に自分の快感 のために、無防備に開かれた太股の間に一気に腰を沈めた。 「ひ・ : あああああ 高々と差し上げられた両足が大きく湯を波立たせ、妙なる調べが夜の闇を震わせる。 根本まで埋め込んだモノを締めつけられて、久住は荒い吐息をついた。 しばしそのままビクビクとうごめく内部の感触を味わいながら、芳の胸元に指を這わせる。 すでに十分に立ち上が 0 ていた突起を摘み上げ、キ = ウッと胤る。 「やっ : ・ああっ 感じやすい乳首は、加えられる刺激をダイレクトに下半身に伝え、妖しい蠕動となって久住 んろう を翻弄する。 「ああ : ・、でも、ずっと感じやすくなった。それだけは変わりましたね」 「は・ : あんっ : お・ : お前は、相変わらず・ : 、スケベの変態大王だ、 ! 」 「そう思われているなら、やらなきゃ損ですね」 ふと、も・も つま たえ あや ぜんどう
たま それを見続ける勇気がなくて、公平は堪らず視線を背けた。 瀬名の言わんとしてることが、イヤと言うほどわかってしまった。 ひぼうちゅうしよう 同性愛者の背負うリスクを間近で見て育ち、いわれのない誹謗や中傷にさらされ、自らその 辛さを経験しながら、どうして同じ立場に他人を引き込むことができるのかと、瀬名は言って いるんだ。 自分が味わった痛みを、どうして他人にまで味わわせようとするのかと ( 俺なら許さない・ と、今さらながら公平は、自分のしたことを悔やんだ。 もしも、自分が瀬名の立場で、自分がしたようなことをされたら、たぶん許さない。 だからもう、謝っても無駄だとわかっているけど : 「言い訳はしないけど : 、でも・ : 、お願いだから、舞台だけはやって : : : 」 こうなったら瀬名の寛大さにすがって、つけ込んで、最後まで芝居を続けるしかない。 あと少し、もう少しだけ。 猫 子 「創立祭まで・ : 、お願いだから : : : 」 な ン瀬名は、かったるそうに立ち上がると、 「引き受けたからには最後までやるさー けんそう と、駅の喧騒の中でようやく聞こえる声だけ残して、去っていく。 185
公平の気持ちがついてこないままに抱いてしまっても、それは一方的に性欲を満たすためだ けの行為になってしまう。 互いに気持ちよくならなきやウソだ。 わざわざリスクを承知で男を好きになるなら、ともに欲しがらなきやウソだ。 だから、笑いたいャツは笑えと開き直る。 ひで 7 ヶ月の女日照りのあげく、ようやく一番欲しい者を腕の中に捕まえて、たぶん強引にやっ てしまえば相手だって泣く泣く承知するしかない状況なのに、それでも抱かなかったと知った ら、さぞや・ハンド仲間は大笑いすることだろう。 あき 自分でも呆れるが、それでもかまわない。 他の女なんか目にも人らないほど、愛しくて愛しくてしようがない相手をキズつけるくらい なら、大マヌケになった方がマシだ。 「顔、見せてくれ : ・」 肩越しに求める瀬名に、公平は夢中で唇を開く。 子 熱い舌を受け止めながら、せめて瀬名が感じるように、きつく太股を締め上げる。 な ンそんなことで満足するはずもないのに、それでも瀬名は、今はこれで十分だと、息荒く腰を 前後させる。 くき こす そうきゅう やわはだ 熱く太い茎が、双丘の谷間や、太股の内側の感じやすい柔肌を激しく擦る。 279
274 ( どうしようもねーな、男ってのは : : : ) 股間では、 7 ヶ月以上もおあずけ食らってる息子さんが、獲物に飛びかかるコプ一フのごとく ギンギンに鎌首を持ち上げている。 実際やることやらないと、こいつは鎮まってくれないだろう。 にお こんなに滑らかな肌に触れて、甘い匂いに包まれて、他の女に目がいかないほど好みの顔が 泣き濡れるさまを前にして、もうマスターベーションなんかで満足できるわけがない 上目遣いでイヤイヤをする公平の顔を見ながら、たつぶりと舌を這わせ、埋め込んだ指先を うごめかせる。 「ひっ・ : ! 瀬名・ : 。や・ : やだあ おちい かん・ヘき 一方公平は、完璧に。ハニック状態に陥っていた。 ・頭で理解してはいても、実際にやられるのとでは大違い。 ( だ : ・だって、そんなとこ、やつばり触る場所じゃないよお、。 のは、芳のお尻だけだあ、つ ! ) . って、そーゅー問題じゃないのに。 自分のお尻だって、十分可愛くて、形良くて、真っ白で、現に瀬名をここまで狂わせている のに、公平の頭にはどうしても受けの図が思い浮かばない。 なにしろ 8 年間、目指せ攻めだったんだから、これはもう性転換するくらいのギャップがあ こかん かわい この世で男を受け人れていい 0
「コラ、ホンキにするだろ」 「いいよ。俺のせいだろう ? 聞いたよ。俺を好きな連中がやったんだって : : : 」 にら 瀬名は、よけいなことを言いやがってとばかりに、ジロリと有栖川を睨み上げた。 てんちゅう 「私に口止めしたって無駄だよ。『天誅だ』とか叫んでる声を聞いたヤツがいるんだから」 瀬名が殴られている現場を見たものはいなかったが、裏庭がら聞こえてくる声を聞いた者は けっこういたのだ。 おかげで公平は、地の底までメリ込んでしまった。 けさがた 今朝方ロッカーに人っていた例の手紙通りの展開を考えると、瀬名を襲ったのも同じ連中だ ろう。言葉の脅しだけだと思っていたのに、実力行使に出るとは : それも男子校じゃない。まさか共学の高校で、自分をめぐって男同士の暴力事件が起こるな んて、想像だにしなかった。 父と芳の苦労を間近で見て育った公平にとって、同性を好きになったことに後ろめたさも感 こし じず、それどころか、自分達の正当性を誇示するように『天誅』なんて言葉を軽々と口にでき 子 る連中なんて、存在自体が許せない。 な たてまっ ハラワタが煮えくり返る。 ンそんなャッらに、自分が奉られているかと思うと、 が、それ以上に、瀬名をこんな状況に引きずり込んでしまった自分が、許せない。 「ごめん : 瀬名 : : : 」 おど
272 どこで覚えたんだその声と、思わずムラッと嫉妬が湧き上がるほど可愛い声が漏れる。 ( どうかしてる、俺は・ あいぶ こんな小さな乳首を本気で愛撫してしまうほど、いかれてしまっている。 確かに男の身体なのに、不思議なほど嫌悪感が湧かない。 あと 甘い匂い、柔らかな感触、肌に残る小さなキズ痕さえ愛しくて、首筋から耳たぶへと夢中で むさぼ どくじようみつ 這い上がり、唇にむしゃぶりついて深く深く舌を差し込み、極上の蜜を思う存分貪る。 気がつくと、すっかり息の上がった公平が、涙目で訴えていた。 「瀬名・ : 、俺、アレが変になっちゃう こかん 言われて視線を巡らすと、公平の股間でさっきより育ったモノがピクピクと揺れている。 むしよう あかし それさえ自分に感じている証だと思うと、無性に愛しくて、 「変になるのはこっちだぜ」 と、躊躇いもせず握り込み、唇を寄せた。 きようがく 公平の驚愕の声を聞きながら、まだまだお子さまのソレに舌を絡ませる。 まさか、男のモノを咥えるなんて思ってもいなかった。 ダメだ、止まらねー ) ( クソ : ほんのおふざけ半分に始めたのに、あまりに美しい少年の裸体を前に、冗談抜きでやめられ にお ためら からだ ちくび くわ しっと から かわい