プラトンは、観客席で立ちあがって、ふたりに大きく手をふっている おも そのすがたを見て、ジャックは、ふいに思いだした。 したしてつが / 、しゃ れきし ほん 偉大な哲学者プラトンーーその名まえは、歴史の本にのっていたのだー そのとき、戦車がガクンとゆれて、白馬が走りだした。 おも せんしゃ ジャックは、思わず、戦車の手すりにしがみついた さんか 気がつくと、白馬のまわりを、レ 1 スに参加していた戦車たちが、いっしょ よんと、つ せんしゅ に走っていた。白馬のスピードは、オリンピック選手たちがあやつる、四頭だ ての戦車にも、まったく引けをとらない っち まえみ 戦車ははげしくゆれ、土ばこりか目にはいって、前か見えなくなった。 ジャックとアニーは、その場にしやかみ、かたく目をつぶった。 だいち うまあしおとせんしゃ おと ふたりの耳に、大地をけって走る、なん十頭もの馬の足音、戦車がきしむ音、 観客の大かん声が、うねりとなって聞こえてきた。 しん このまま、どこへ行くのかわからない。でも、白馬を信じていれば、きっと かんきやく せんしゃ せんしゃ みみ せんしゃ かんきやくせき じゅっと、つ おお せんしゃ 136
うえみあ ハイキングたちは、崖の上を見上げながら、なにか言いあっている みち 「あの人たち、崖をのばる道を、さがしてるんじゃない ? アニ 1 がささやいた。 「じゃあ、こっちに来るかもしれないぞ。どこかにかくれないと : : : 」 ジャックは、あたりを見まわした。しかし、かくれる場所などどこにもない。 「お兄ちゃん、さっきのの中は ? ふねなか 「そうかー 船の中なら見つからない」 いわば せん ふたりは、ヾ ノイキング船がつながれている岩場へ、いそいでもどった。 ふね おルごじゅうす、つ 船をつないでいるロープは、沖に十数メートルも伸びていて、力いつばいリ ふねひ つばっても、船を引きよせられなかった。 うみなかある あさせ しかし、これくらいの浅瀬なら、海の中を歩いていっても、なんとか乗りこ めそうだ。 「お兄ちゃん、先に行って」 , ーし ひと さき か み の ちから の ひ
りゅうあたま ふね たか、よく見ると、竜の頭は、船のヘさきについた、木彫りのかざりだった。 りゅうあたまふね すいへいせんうえみ ふね 竜の頭の船 さっき水平線の上に見えた、ヾ ノイキングの船だ。 おお ふね ふね ふね 大きな船と、中くらいの船と、小さな船の、三そうが並んでいる。どのも ・刀い、刀′ル なみ 帆をおろし、海岸の岩にロ 1 プでつながれて、うちよせる波にゆれている とお ついさっき、あんな遠くに見えていたのに、し 、つの間にか島をまわって、こ ふね ふなの んなところに船をつけていたとは、おそるべき船乗りたち : ふね ジャックとアニーは、岩かげから、船のよ、つすを、つかがった。 せんいんしま だれもいない。 : ということは、全員、島にあがっているのだ。 ほんもの せん ジャックは、本物のバイキング船を、もっとよく見てみたかったが、ここで ぐずぐずしてはいられなかった。 「さあ、早く、ツリー ハウスを見つけなきや ! 」 力いかんそ ある そう言って、海岸に沿って歩きはじめ、大きな岩をまわりこんだときだった。 おおおとこ いちだん とっせん、大男たちの一団が、目に飛びこんできた。 はや ちゅう おお さん なら
ジャックも、いそいでノートと本をふくろにしまい、なわばしごをおりなか ら、アニ 1 に呼びかけた。 にんむ 「ばくたちには、大切な任務があることを、わすれちゃだめだよ ! 」 そう言いなから、ジャックも、はやる気もちをおさえきれなかった。 じめん ならひろば ある 地面におりたふたりは、テントがたち並ぶ広場に向かって、歩いていった。 おんがく -RJ 、つ医」 にぎやかな音楽が聞こえ、食べ勿の、 牛しいにおいかただよってくる。陶器のつ 、つ にんぎよ、つおりもの ひとあっ ばや人形、織物などを売るテントに、 たくさんの人が集まっている とっぜん、アニーが、たち止まって言った。 「お兄ちゃん、おかしいわ。女の人が、ひとりもいない」 「そんなはずないだろう ? どこかにいるよ」 「じゃあ、さがしてみて ? 」 ジャックは、あたりを見まわした。たしかに、おとなも子どもも、男ばかり で、女の人のすがたは見あたらない。 おんなひと たいせつ おんなひと もの ほん おとこ
なか 「方向が、わからなくなりそうだ」 「ツリーハウスは、こっちでいいのよね : ふたりがきよろきよろしていると、ふいに、上からなにかが落ちてきた。 「あっ、あぶないー おも あたま ジャックは、思わず頭をかかえた。 「お兄ちゃん、あのなわばしごよ ! 」 こ、え かお アニーの声に、顔をあげて見てみると、それはたしかに、マジック・ツリー ハウスのなわばしごだった。 医り - しかし、上のほうは霧にかすんでいて、ツリ 1 ハウスは見えない。 ふたりは、とにかく、はしごをのばってみることにした。 すこしのばっていくと、霧の中に、ばんやりとツリーハウスが見えてきた。 まど 中にはいると、窓のそばに、モ 1 ガン・ルー ・フェイがすわっていた。 にんむしゆっぱっ 「ジャック、アニー。よく来てくれました。すぐに、つぎの任務に出発でき ほ、つ一」、つ うえ み なか 、つ、ん み
ま みち 「待って ! それなら、まだ、すべての道が閉ざされたわけじゃないわ」 お アニ 1 が、とび起きて言った。 「」、つい、つこ A 」 ? ・」 「まだ希望がある、っていうことよ。船をこいで、ツリ 一丁ナよいいんじゃない ? 「むちゃだ ! できっこないよ」 「やってみなきや、わからないじゃない ! 」 て そう言って、アニ 1 は、オールに手をかけたが、ひとりでは持ちあげること もできなかった。 み ふね ょにんおおおとこひつよう 「ほら見ろ。いちばん小さい船でも、四人の大男が必要なんだ。ばくたちには、 むり とうてい無理だよ」 いちど 「おねがい、 もう一度だけ。ふたりでやれば、できるかもしれないじゃない ふねおきなが なみたか そ、つしている、っちにも 、八ロは冲へ流されていく。風も強く、波も高くなって ふね し」 かぜっよ 1 ハウスのある岸まで
こころそこ アニ 1 は、心の底からかっかりして、ため息をついた。 ふこうへ ふこうへ 「ほんとうに、この国は不公平なのね。ぜったい、ぜったい、不公平だわ ! 」 さんか おう こ、ってい しみんじゅう 「この国には、王も皇帝もいない市民は自由で、みな平等に、政治に参加す けんり おとこ る権利をもっているが、それは男だけなのだよ。女性や奴れいたちには、なん けんり よねん いちど の権利もみとめられていない。四年に一度の、オリンピックを見ることも」 ざんねん それなら、残念ですけど、ばくもあきらめます。妹と 「そうなんですか : いっしょに行かれないなら、しかたがない」 そのとき、丘のほうから、人々のどよめきが、風にのって聞こえてきた。 こ、ん おも あか ふいに、アニ 1 か、なにかを思いついたように、明るい声で言った。 「ううん、お兄ちゃんだけでも、行ってきて。見たことをノ 1 トに書いて、あ はなし とで、話を聞かせてくれればいい 「えっ ? じゃあ、アニ 1 は、どうするんだい ? 」 「わたしは、さっきの劇場で待ってるわ。終わったら、むかえに来て」 おか げきじよう ひとびと じよせい かせ びようどう 」もうと 1 1 1 ・・・古代オリンピックの奇跡
みち ていた。いまこそ、 " すべての道が閉ざされたとき〃だ。 ちゅう もの ジャックは、ふくろから巻き物をとり出すと、宙にかかげて、さけんだ。 たす しよもっ 「書物よ ! アニ 1 を助けてくれ ! 」 こえ せんしやはしおと かき消されてしま しかし、その声も、戦車の走る音と、人々のかん声とに、 った。 ジャックは、助けがどこから来るのかと、まわりをきよろきよろ見まわした。 きようぎ」じよう ちんもく とっぜん、競技場にどよめきがおこり、すぐに、沈黙へと変わった。 いっと、つしろ、つま′、き ひとびとめ 人々の目が、立ちのばる土けむりの中から走り出た、一頭の白い馬に釘づけ になった。 それは、ジャックが見たこともないほど、美しい馬だった。だれもがそのす かん がたに見とれ、感たんのため息をもらした。 せんしゃ 白馬は、ふたり乗りの戦車をひきなから、ジャックめがけて、飛ぶように走 ってくるではないかー たす っち なか ひとびと うつく はしで 133 ・・・古代オリンピックの奇跡
かんか それから、しばらくなにかを考えているふうだったが、とっぜん言った。 あんない しゅうど、ついん 「わたしたちの修道院に、ご案内しましよう」 「え ? でも、まだ、みんな寝てるでしよう ? 」 、トリックは、とんでもない、というふうに手をふった。 すると、プラサ 1 しごと よあまえ 「わたしたちは、夜明け前から起きて、仕事をするんですよ。とくに夏のあい だは、やるべきことがたくさんあるのでね。さあ、こちらです。 みちある ジャックとアニーは、案内されるままに、でこばこ道を歩きだした。 おも 、トリックのことばを思いだしていた。 ジャックは、さっきの、プラザー この島には、、 しつ、バイキングがおそってくるかわからないのだ。できるこ かえ であ となら、バイキングに出会わないうちに、任務をはたして帰りたい。 ほん しゅうど、ついん 、トリックの修道院に、さがしている本がありますように ) ( ど、つかプラサ 1 ジャックは、心のなかで祈った。 おと かねな そのとき、ガラ 1 ン、ガラ 1 ンと、鐘が鳴りだした。音が聞こえるほうを見 こころ あんない にんむ なっ
やくにせんはっぴやくねんまえ さいてん 古代オリンピックは、神にささげる祭典として、いまから約二千八百年前 力いさし よねん きようぎたいかい に、ギリシャのオリンピアではじまった。竸技大会は、四年ごとに開催さ かんきやく よんまんにん か′とし れ、各都市を代表する選手のほか、ギリシャじゅうから四万人もの観客が 、せ一い / し 集まって、盛大に行われた。 ひら ここは、古代オリンピックか開かれた町、オリンピアだ ! 」 「じゃあ、オリンピックが見られるのね ! 」 ジャックは、ふくろから、えんびっとノ 1 トをとり出して、書きとめた。 ー / オリンピア日古代オリンピックの地 「ちょっと、見に行ってくるー アニ 1 はそう一言、つと、なわばしごをおりはじめた。 あっ み だいひょう おこな こだい かみ せんしゅ み まち ・・古代オリンピックの奇跡