六月の半ばを過ぎたその日は、初夏とは思えない暑さだった。 もう日が暮れてからかなりの時間が経っていたが、昼間の熱はアスファルトにへばりつい ままだった。 しんじゅくかぶきちょう ハチンコ店、ピンクサロン、ゲームセンター、ラーメン屋、ファー 新宿、歌舞伎町 ざっきょ ストフードショップ、キャパレー、立ち並雑居ビルにありとあらゆる種類の店が乱立する 街。 けばけばしい看板が立ち並び、その横ではハッピを纏った客引きが、人波から目ばしい酔っ 払いを呼び込んでいる。 たび 街毎日、日が暮れる度繰り返されているであろうこの街の典型的な風景だ 光 夜 しどうなが 足元のおばっかない通行人達を上手い具合に避けながら、四堂流は走っていた。 一〈裏新宿〉 なか
204 新宿は異様な緊張感に包まれていた。 早朝から新宿全体に警官が配備され、四堂組四代目仮襲名式に全国から集まる組幹部や関係 まぎ ざっとう 組員の警戒にあたっているのだ。街の雑踏には私服警官も数多く紛れている。 そうこう それだけではない。西新宿に位置する四堂組本部付近には機動隊の装甲バスさえ停まってい つも通りの顔が道を埋めている。買い物客、学校 しかし表面上は一見普段と変わらない。い に向かう学生、会社員・ : 街を行く人々はマスメディアを通して今日行われる事を知ってはいるが、それは彼らにとっ ては違う世界の出来事なのだ。誰もが無関心に道を歩く。自分に関わりのないものになど関心 を示さない。 そしてそういった人々とは別に、もう一つの人種も確かに存在する。裏の新宿で生きる人々 カ それが『新宿』という街なのだ。 一一つの人種が背中合わせに共存する場所 そむ 薄暗い店内、ピアノの横に生けられた大輪の白バラが放っ香りに、美貴は顔を背けた。 たいりん
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