「お兄ちゃん、これ、見て ! 」 ひら ゅび アニ 1 か、開いていたペ 1 ジを指さした〇 しやしん そこには、ほこりにまみれた、ふたりの子どもの写真がのっていた。男の子 か、カメラに向かって、一枚の板をかかけている しやしんした ぶんしよう アニーか、写真の下に書かれた文章を読みあげた。 「『この勇敢な子どもたち』だって ! わたしたちのことよ、アハ わら アニ 1 が、笑いころげて言った。 「希望の詩」を手に持つ、ふたりの子ども。 まち じしんあと 地震の後、街のあちこちで火の手があがり、おおくの市民が家を失った。 ゅうかん しやしん そんななかで、この勇敢な子どもたちが詩をかかげる写真は、サンフラン おお シスコの人びとに、大きな希望をあたえた。 ゅうかんこ ひと しみん うしな おとこ 150
1 先生のような先生に会えて、よかった」 かお ジャックか一一一口、つと、ニ 1 リー 先生はにつこりほほえみ、それから顔をあげて、 とおちへいせん 遠く地平線を見つめながら、言った。 きようー ) しごと おも しごとだいす 「教師というのは、すばらしい仕事だと思うのよわたしは、この仕事が大好 おし きなの。いま、わたしがみなさんに教えていることは、きっと、みなさんの子 ども、さらにその子どもへと、伝わっていくでしよう。わたしは、みなさんを おも 教えながら、未来の子どもを教えているのだと思っているの」 すると、アニ 1 が、力をこめて言った。 みらい おし 「そうよ、先生 ! ここで教えてもらったことは、未来の子どもに、ちゃんと った 伝わるわ ! 」 ジャックも、先生はほんとうに未来の子どもを教えたんですよ、と言いたカ むね ったが、そのことばは胸にしまった。 か、ん 「 : : : それじゃあ、ばくたちは、帰ります」 せんせい みらい せんせい せんせい ちから おし せんせい せんせい みらい おし
男の人は、頭をふって言った。 やく 「どういうことだね ? きみたちのような子どもか、どうして、わたしの役に 立てるとい、つのだ : : : 」 こ、ん ふか み 、ナんに満ちていたか、。 とこか弱々しかった。 その声は、深く、しし やく 「子どもでも、役に立てることがあるわ」 こえ あか アニーが、明るい声で言った。 せんそうきず 「これまでだって、お兄ちゃんとわたしは、戦争で傷ついた兵士をなぐさめた A 」 しようた、んゅ、つ医一 て り、はげましたりしたし、将軍が勇気を取りもどすお手つだいもしたわ」 ジャックも一言った。 おおじしん やく たつまき 「竜巻や、大地震におそわれた人びとの役にも立ちました」 おとこひと み しせい 男の人は、姿勢をただし、ふたりをまっすぐ見つめて言った。 「勇敢な子どもたちょ。それでは、きみたちは、わたしのために、 にをしてくれるというのだ ? 」 ゅうかんこ おとこひと あたま ひと よわよわ いったいな 144
て言った。 ゅ・、つ」 」ば、つみ 「わたしも、ふつうの国王だ。ふつうの子どもが、勇気と希望を見つけられた こくお、つ のだから、ふつうの国王でも見つけられるはすだーー、」 男の人が、ゆっくりと立ちあがった。 「わたしは、どうかしていた。いますぐ騎士たちのところへ行って、きみたち った が持ってきてくれた知恵を伝えよう。子どもたちょ、ありかとう」 , 刀学 / そう一一一口うと、肩にかけたマントをひるがえし、ジャックとアニ 1 に一礼して、 へや 部屋を出ていった〇 ふたりがそのうしろ姿を見おくっていると、モ 1 ガンが近づいてきて言った。 「ジャック、アニ 1 、どうもありかとう。わたくしからも、お礼を言います」 「どういたしまして」とアニーがこたえた。 せきばん それから、ジャックが、持っていた石盤と板きれを、モ 1 ガンにさし出した。 「それでは、これを : : : 」 おとこひと すかたみ こくお、つ ちか いちれい ・夜明けの巨大地震 147
しやしん しんぶん 「あの路地でとった写真を、べティが新聞にのせたんだわ ! 」 おおわら ジャックも、ゆかいになって大笑いした。 それにしても、ふしぎな気もちだった。サンフランシスコで持ちあるいてい しやしん た本に、あのときの写真がのっていたなんて : そのとき、アニーが、本をパタンと閉じて言った。 ゅうかんこ 「さっきは、ア 1 サー王にも、『勇敢な子どもたち』って言われたわ。これで、 二回めね ! 」 おう 「ア 1 サー王 ? 」 「そ、つよ」 ジャックには、アニーかなにを一言っているのか、さつばりわからなかった。 しかしアニーは、そんなことにはおかまいなしに、しゃべりつづけた。 てがみ 「これで、モーガンの手紙のなぞが、やっと解けたわ。四つの〈書かれたもの〉 あっ おう おう ゅ、つご *IJ ば、つ を集めたのは、アーサ 1 王のためだったのよアーサ 1 王が、勇気と希望を取 , 刀し ほん おう ほん 152
いちじかん よれんしゅう きよう、か 1 ) よ 「さて、一時間めは、読む練習です。教科書は、この一冊を、みんなで使いま す。では、まず、ジャック : : : 」 ほん ニ 1 リー 先生が、ジャックに本をわたして、言った。 ひら よ 、刀 にぎよう 「五〇ペ 1 ジを開いて、そこに書いてある詩の、最初の二行を読んでください」 せんせい 「あ : : : はい、 先生」 へんじ きよう、かー」よ ジャックも、ほかの子どもとおなじように返事をし、教科書の五〇ペ 1 ジを ひら よ こ、ん 開いた。そして、めがねを押しあげると、大きな声で読みあげた。 キラキラる、小さな星よ あなたは、ほんとは、なにものなの ? きよう、かー ) よ 「はい、じようずに読めましたね ! では、教科書をジェブにまわして。ジェ よ 」 ~ ぎよう プ、つぎの二行を読んでください」 せんせい か お し おお いっさっ つか
くちなか ロの中が、ジャリジャリする あたま かみかおようふく アニ 1 を見ると、まるで、頭から粉をかぶったかのように、髪も顔も洋服も、 ほこりでまっ白だ。、、 シャックもおなじだった。 ルさ こえ おんなひと そのとき、うしろから、聞きおばえのある女の人の声が聞こえた。 「あそこにいる子どもを、取材しましよう ! 」 む しんぶんきしゃ ふりかえると、新聞記者のべティと、カメラマンのフレッドか、こちらに向 かってやってくる。ふたりも、ほこりまみれだ。 フレッドが、三脚を立て、カメラをかまえた。そのあいだ、べティは、ノー トにペンを走らせている 「ちょっとあなた。その板を見せて ! 」 し べティに言われて、ジャックは、アンドル 1 の詩が書かれた板を、かかげて みせた。 すかた しやしん その姿を、フレッドが写真にとった。 み しろ さんきやく 0 いたみ しゅ、い 0 こな ・・・夜明けの巨大地震 129
かえ おおじしん ジャックは最後に、大地震におそわれたサンフランシスコから持ち帰ったば かりの、あの板きれを見せた おおじしん 「これは、大地震で家をなくした男の子が、落ちていた板きれに書いてくれた ものです。 きほう なにもかもなくなっても、まだ、希望があるーーと書いてあります」 ひとひと 男の人は、〈書かれたもの〉の一つ一つに、じっと見入っていたが、やがて、 かな 目をあげて、ふたりを見た。その目から、さっきまでの悲しみの表情は消えて 「どれも、すばらしい知恵だ : よく、見つけて、持ってきてくれた。さっ ししゃ まほ、つつカ き、モ 1 ガンの使者と言っていたが、きみたちは、魔法使いかね」 え」と、アニーがこたえた。 亠よほ、つつか 「モーガンはりつばな魔法使いだけど、わたしたちは、ふつうの子どもよ ! 」 しず じぶん 男の人は、静、にほほえみ、そして、自分に言いきかせるように、力をこめ おとこひと おとこひと おとこ ひょうじよう ちから 146
とお くずれかけた家から、人びとが、通りに出てきていた 子どもたちが泣いている。しかし、おとなたちは、みなだまったまま、かた たてものまえ ど、つろ むいた建物の前にすわりこんだり、道路にばうぜんと立ちすくんでいる ひと すがた ほとんどの人が、ねまき姿に、はだしだった。 「みんな、ショックで、ロがきけなくなってしまったみたい」と、アニ 1 おも 「、つん、そ、つだと思、つ。ばくも、いまはなにも考えられないよ : ・・ : 」 しばらくして、アニ 1 が、本のつづきを読みあげた。 じしんあと えんとっ 地震の後、たおれた煙突やスト 1 プ、もれたガスから、火事がおきた。 まち ひろ みつかかんも にまんはっせんいじよう 火は、またたく間に街じゅうに広がり、三日間燃えつづけ、二万八千以上 いえたてものや の家や建物が焼けた。 まち じしんかじ せんめっちかじようたい この地震と火事で、サンフランシスコの街は、全滅に近い状態となった。 くち ひと ほん かんが 102
ひさいち がっこうやくよんぶん 被災地では、学校の約四分の一が、くずれたり、火事で焼けてしまいました。 きゅうきゅう ひなんじよ ていきよう カっこ、つ たてもの 残った学校の建物は、避難所や救急センターとして提供されたため、そのあい きようしつ だは、テントを教室にし、ボランティアの先生が勉強を教えました。子どもた じしんやくさんげつご たてもの カっこ、つ べんきよう ちが学校の建物で勉強できるようになったのは、地震の約三か月後でした。 亠よよっ さんこ、つカ ものがたり かねふね 物語に出てくる、お金を船に運んで守った銀行家は、チャールズ・クロッカ つま、つ キ」ちょう としよかんおさ じんぶつ しりつ じっざい ーという実在の人物です。一方、私立のス 1 トロ図書館に収められていた貴重 な本は、。 ) ノヒリオンに移動させたために、ほんとうに、ぜんぶ燃えてしまいま しゅうすうまんさつほん しりつとしよかん した。、 べつの場所にあった市立図書館は、建物がつぶれ、十数万冊の本ととも しゅうれを」し に、カリフォルニア州の歴史についての資料が失われました。 どお じっさい アンドレ ノーか板きれに書いた詩は、実際に、マ 1 ケット通りのくすれかかっ たてものかべ 0 た建物の壁にはってあった詩をもとにしています ものかたりさくしゃ と〃ピ 1 ター ・ポ 1 プ・ また、〃アンドル は、この物語の作者メアリ 1 ォズボーンの、ふたりのおいをモデルにしているそうです では、〃メアリーおばさん〃のモデルはだれだか、もうおわかりですね ? ほん どう し し 1 」りよう せんせい たてもの うしな べんきようおし 0 や 157