政民営化問題では、周知の通 りのハイテンシ rn ンぶりだっ た。しかもその一種の逆上は、 総理になるより遙か以前から 持続したものである。 耐震強度偽装題に関して は、明らかに興味がなさそう だった。ぶらさがりで記者に インタピュウされているとこ ろをテレビ一一ユースで見たが、 おざなりにしやべっていると いう感しがした。関心のない 質問に答えるときは声に張り がなくなり、不機嫌ではない にしても、なんだか疲れてい るなという感じになるのだ。 経済問題を竹中大臣に丸投 げしているように、」この問題 も国土交通大臣に丸投げして いるのかも知れないが、人命 に関わるだけに、郵政民営化 のときみたいに先頭に立って もらいたい気がする。 不況の建設業界では、ヒュ 1 ザ 1 みたいな施主が一番強い ということ。次が木村建設みたいになんとか仕事を取った ところだとい、つこと 「下請け業者は勝手に叩き合いをする。代わりはいくらで もいるのだよ、という状況だな」と彼は自嘲的にいった。 姉歯もその一つだろうというわけだ。 こんなケースは、業界では稀なんだろうか、それともわ りにしばしばあることなんだろうかときいてみた。私が一 番ききたかったのはそれだったのである。友人は電話の向 こうで一瞬黙り、そしてため息をつき、いった。 「いくら土建屋でも ( 彼は自分のことをそういっているの だが ) 、ふつう、そこまではやらないよ」。 私は、少し救われた気がした。町の至る所に建っている マンションの相当多くが、耐震強度を偽装されたものだと したら不安どころではないからである。 そのあと、私と彼はだらだらとらちもない話をえんえん とした。二人は互いに信頼はしていないが、気の置けない 仲ではあったのである
目次 大問題 2006 ・政治 郵政民営化 クールビズ ポスト小泉・ 官製談合 朝日対 : ・ 国勢調査 大間題 2006 ・経済 ホリエモン・ 景気の踊り場・ 中内功・ 耐震強度偽装 アスベスト 大間題 2006 ・国際 ロンドン同時テロ・ 1 15 1 12 1 10 18 98 92 120 68 66 56 54 40 38
・メモランダム 正直なのかどうか知らない が、小泉首相という人は、自 分の興味ある周題とそうでな い周題とでははっきりと熊度 が変わるような気がする。郵 耐震強度偽装 耐 震強度偽装問題が明るみに出たころ、一級建築士で ある大学時代の友人に電話をしてみた。すごく信頼 のできる友人とはいえなかったが ( 悲しいことに、私に信 頼できる友だちは一人もいないのである。たぶん向こうも そう思っているだろうが ) 、少なくとも業界の人間ではあ るので、その感想をきいてみたいと思ったのだ。 まず同業者として姉歯のことをどう思うねと尋ねたら、 取り上げられている件数から見て、ずいぶん売れっ子だっ たんだなと私には意外に思えるようなことをいった。生活 かかかっているだけあって、同業者の仕事の数に、最初に 目が行ったのだろう。そしてこの問題においては、姉歯が 仕事をやたらにこなす建築士であったことと、彼がやって しまったことのあいだには明らかに関係があったのである。 私は、友人が、あまり売れっ子でなさそうなことを、ひそ かに祝福した。 そのほかにもこの問題についていろいろ尋ねたが、現場 の人間のリアリティはあったものの、彼の答えの大抵は、 すでにテレビや新聞で指摘されているようなことだった。
9784488070557 丿一連の「ライブドア 4 フジテレビ」騒動、参院での郵政 ラ民営化法案否決による異例の衆院髏、続く衆院選での 自民の圧勝、福知山線の脱線事故、耐震強度偽装、プロ 一野球交流戦開催。景気もよくなりつつある中、相疋内・ 一相舜のさまざまなことが起こった年を、軽妙な漫画 怠と洒脱なコラムで読み解く、いしい版「現代用擘典 . 」。 1920179006584 ISBN4 ー 488 ー 07055 ー 8 C 0 1 7 9 \ 6 5 8 E 定価本体 638 円十税 ) リサイクル資料 ( 再活用図書 ) 除籍済
略縦横な野球は、読売巨人の 退潮と相まって、新寘勢力の 台頭を思わせた。 半世起ふりの新球団、東北 楽天は、思った以上に弱かっ たが、寄せ集め集団が力を合 わせる様子は、いかにもけな げで人々の判官びいきに訴え た。その中心にいた田尾監督 を、シーズン後、解雇したオ ーナーは野球がもっ感傷性が 理解できていないのだった。 へん、そういうタイプさ。 一リーグになる代わりに、 パのたっての要望で、交流試 合も実現した。ます成功だっ たらしいが、あんなにたくさ んやったら、すくに飽きてし まうと思うね。 るいは急流と化し、多くの伏線と、そしてきちんとした結 末のある長編小説に、毛色の違う、つまり刺激の強い短編 を接ぎ木するこの制度を、私は悪趣味とさえいいたい さらに〇四年ストライキのきっかけとなった単一リーグ 化への策動は、今はなりを潜めているものの、いっ再燃す るかわからないとい、つことが、ペナントレースを楽しみた い私の心を不安にしている。プレイオフ制度と、こうした 策動は連動しているのではないかと私は疑っている。理由 をこれとはっきり一小すことはできないか、ど、つも私には、 この二つは同じセンスのように思えるのである どうやらセも、パの真似をして、プレイオフを導入しょ グが一つしかなく 、つとい、つ不穏な動きかあるよ、つだ。リ 1 なってしまったとしたら、私は野球ファンを、すつばりや めてしまおうと考えていた。いまはそこにプレイオフ導入 という条件が加わった。ああいう刹那主義が、ペナントレ ースの正統性を汚しに来たら、私は野球を見るのをやめよ う。やめて古い映画のでも見ることにしよう。ジャ ン・ギャパンが出たりなんかしている映画の。
・メモランダム 0 五年の「今年の漢字」の 一一位以下は改革の「改」、郵 政民営化の「郵」、そして 「株」だった。「愛」にくらべ ると、どうも世知辛い。もっ 五年の「今年の漢字」は「愛」だった。もちろんわ がプリンセスの結婚にちなんだものである。ハリケ ーン災害やパキスタン大地震の際に見られた世界的な援助 さ の広がりも、この漢字に結びつけられた。いずれにしても 愛があるのは何よりである。 一般人の結納に当たる納采の儀は、三月一九日におこな われた。こうした儀式のたびに、テレビは将来の夫君、東 京都職員の黒田慶樹氏を映し出した。じつにきまじめそう な青年で、だが同時にそこはかとないユーモアを漂わせて おり、たとえば明石家さんまが司会をするバラエティー ショーなどに出演したとしたら、大いにいじられそ、つなタ イプであった。 二人が結婚したのは一一月一五日。その朝、嫁ぐ娘を母 は抱き寄せ「大丈夫よ」と語りかけたという。たしかにそ れは「愛ーであった。 帝国ホテルでおこなわれた披露宴は、質実なものだった。 晴れて黒田清子さんとなった新婦は、母譲りの着物で祝宴 に臨んだ。乾杯の音頭を取ったのは、新郎の上司である石 188
0 ) ・メモランダム アスベストというのは、耐 久性、耐熱性、耐薬品性、電 気絶縁性に優れた便利重宝な 資材で、おまけに値段が安い ので、さまざまな用途に、も スベスト」というよりも、私には、「石綿」と呼ぶ トデ ほ、つがなじみ架 冫い。こんな危険な物質となじんでも 仕方ないわけだが。 事典によると、石綿は、繊維状にほぐ すことのできる天然の鉱物なのだそうである。私は繊維だ とばかり思っていた。鉱物なら石綿でなく「綿石」とすべ きではないのかと思ったりした。どうでも、 しいことだが。 なじみができたのは、、 月学生のころだった。理科の実験 ア で、石綿金網というものをつかったのである。中央に石綿 が丸く貼り付けてある金網で、その上にビーカーなどを置 いてアルコールランプで加熱したのだ。こうした実験器具 をつかっていると、女子のことはわからないが、男子小学 生は科学冒険漫画的気分といったものに、ふと浸ったりし たものである。ただ湯を沸かしているだけだったのだが。 ところでこの場合の科学冒険漫画は、手塚治虫でなくて、 横山光輝のほうだった。どうでも、 しいことだが。 石綿は、もっと所帯じみた用具にもっかわれていた。豆 炭アンカである。豆炭というのは、無煙炭や粉コークスを 固めた燃料で、これを一ヶ入れて寝具に用いる暖房器具と
・メモランダム 〇五年は、カトリーヌ、リ 夕、ウイルマはかりでなく、 合計一四個のハリケーンが発 生した。ふつうの台風の規模 のトロピカルーストームを合 ・ / ) 、月の終わりにアメリカ南部を襲 0 た ( リケーン「カ トリーナ」が、雑誌「タイム」の〇五年の「今年の 顔 , の候補になった。結局選ばれたのは、マイクロソフト のビル・ゲイツ夫妻とロックバンド「 2 」のポノだった。 ケ 私がけちをつけても始まらないが、この人選は、ぜひ〇五 年でなければという感じはあまりしない「カトリ 1 ナと 母なる自然」を候補にあげたのは、六人いる選考メンバー の一人であるニュース・キャスターだったそうだ。「母な る自然」のなかには、〇四年末のスマトラ沖の津波、カト 1 ナだけではなかったハリケーンの襲来、一〇月のパキ スタン地震など度重なる自然災害を含んでおり、この母は、 最近はやさしい母では、どうもない カトリ 1 ナは、様々なことを考えさせると選考メンバー のニュ 1 ス・キャスターはいっている。ブッシュ大統領の 政策、石油問題、人種問題、イラク戦争。 巨大な自然害は、社会的弱者にい 0 そう苛酷な影響を 及ばすのは、との国でも同じだが、カトリーナはそれを露 骨に示した。ニューオーリンズでは、改修されたしつかり 142
とも台風がやたらに来て、ま た新潟では地震があった前年 は「災」が選ばれたのだから、 まだましだろう。 全国から寄せられた「漢 字」は、八万五三一三通だっ た。そのうち一位は四 0 一九 通 ( 四・セ一 % ) だったそう だから、断然「愛ーに満ちて いたというわけではなかった。 ところで愛と関係があるの かどうか。「涙プーム」とい うのも起こったのだそうだ。 泣ける映画や本がよく売れた。 私の子ども時分に、母もの 映画というのが流行って、 「三倍泣けます」などという キャッチコピーがついていた ものだ。復興期で、泣くこと にもエネルギッシュな時代だ ったのだ。泣くのは一種の排 泄だから、まあ健康にもよい のだろう。 原慎太郎東京都知事だった。この普段は威勢のいい都知事 は、明らかに上がっており、しきりに目をしはたたかせ、 スピーチもあまり上手にできたとはいえなかった。 内親王が、ふつうの既婚女性になる一方、女性天皇、女 系天皇問題が深刻化した年でもあった。首相の私的諮問機 関、皇室典範に関する有識者会議が、一月二五日に最初の 会合を開き、首相に答申が出されたのは黒田夫妻の結婚か ら九日目の一一月二四日だった。これを拙速とする人がい るが、私にはわからない 結論は「女性、女系天皇」をともに容認するというもの だった。それが妥当なのかどうかについても、私には判断 がっかない。天皇という存在自体にびんと来ていないとこ ろがあるからだ。答申に対し反対の声が澎湃とわき上がっ たか、ここまで熱心に天皇問題を語る人がいるのだなあと、 少しあっけにとられたというのが、正直なところだ。だが それを眺めつつ、私は、びんと来ない立場に固執したいと ちょっと思い始めたのである。だれも「大丈夫よ」とはい ってくれないだろうが 189
・メモランダム プレイオフは馬鹿げたもの だったとしても、バレンタイ ン率いる千葉ロッテの強さと 魅力は評価しなければならな い。若くてびちびちして、機 ポピー・マジック ど うも釈然としないシーズンだった。ひいきチームの 阪神タイガースが、日本選手権でこてんばんにやら それだけではない れたからだろうか。それもある。だが、 気が、どうもする。子ども時代から、かれこれ五〇年近く も大好きだったプロ野球が、なんだか私の気持ちに添わな い方向に逸れていっているという感じがするのだ。 たとえば櫛の歯を挽くように有望選手が次々にアメリカ 野球に流出する風潮。わが軍の井川慶も、その傾向にかぶ れていて、周知のように昨季は、心ここにあらずといった ピッチングを繰り返した。ファンというのは、いわば偏狭 なナショナリストであって、帰属心の希薄な選手を信用す る気になれないのである またパのおこなっているこじつけとしか思えないプレイ オフに対しては、ひいきチームが惨敗したという私怨はべ つにして、私ははっきり反対したい。半年に及ぶ山あり谷 ありの聖杯探求の旅の成果が、わずか数試合で無に帰する プレイオフとはいったいなんなのだと私は思う。たつぶり とし、見せ場もたくさんあり、ときにゆったりと流れ、あ 2 1 0