戦後 - みる会図書館


検索対象: 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号
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1. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

子どを本幗 2015 年 8 月 1 日毎月 1 回 1 日発行 通巻 562 号 昭和 47 年 7 月 14 日 第三種郵便物許可 ISSNO 5-0528 第 44 巻第 8 号 No. 562 201 5 一ョ 0 リサイクル資料 ( 再活用図書 ) 除籍済 特集 戦後 70 年、被爆 70 年時の記憶未来への選択 今月の書評 『きせきの海をうめたてないで ! 』『蛙となれよ冷し瓜 複眼書評 『こわれる森ハチドリのねがい』 新刊紹介 2015 年 6 月選定図書 子ともの本棚社 日本子ともの本研究会◆編集

2. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

料金 〕円 ( ] ドリンク付 ) 2015 イタリア・ボローニヤ国際絵本原画展 日時〕 58 月日 ( 日 ) 9 〕 5 レ・開 ( 入館問合せ〕桂月企画 090 ー 7216 ー 23 ] 2 5 〕 ) 月曜・ 7 / 田休館 ( 7 / 開館 ) 各地の催しなどをお知らせするコーナーです。 場所〕板橋区立美術館 ( 東京都板橋区 ) 「平和のつどい・のだ 2015 」 読者のみなさんからの情報をお待ちしていま 入館料〕 650 円 ( 入場無料・講演 & 映画は協力券 500 円 ) す。誌面の都合もありますので、掲載について 0 ( , 0 ・ 0 っ / 日 日時〕 8 月日 ( 土 ) っっ・ O Od は編集部にお任せください。 O ・ 0 ( , 7 ー・ O 関連イベント〕 7 / 対談寮美干子 x 駒形 ( 日 ) ・ 3 3 ・ 5 物〕開岡崎弥保講演「ひろし マンガと戦争展 56 つの視点と 3 人の原画から克己 8 / 2 講演フェルプラン 8 / 物講※ 2 日 1 まとのめぐり会い」 & 朗読「ひろしまのピカ」」 日時〕 59 月 6 日 ( 日 ) ( 入館演北見葉湖 ( いずれも〕開 5 ・ ) ( 入場無料 ) 5 レ・ ) 水曜休館 ( 但し 7 / 58 / の 場所〕野田市中央公民館 ( 干葉県野田市 ) トークイベント 水曜は開館 ) にて随時確認のこと 7 月日 ( 木 ) 「『今、この本を子どもの手問合せ〕 04 ー 7 ] 29 ー 4297 ( 田口 ) 場所〕京都国際マンガミュージアム ( 京都市中京区 ) ① に』できるまでと活用法」 入館料〕 800 円 講師 / 張替恵子・土屋智子 鎌田和宏講演会「図書館活用教育 5 その学び ② 8 月日 ( 月 ) 「『戦後をさがしつづける」を考える 5 」 ( 仮題 ) 〈第 5 回学校図書館と子 講師 / アーサー・ビナード どもたちの学び〉 アニマシオン夏の研修会・東京 日時〕 8 月日 ( 水 ) 〕 5 物・ 時間 〈日本アニマシオン協会主催〉 場所〕瀬戸内市中央公民館 ( 岡山県瀬戸内市 ) 場所〕ジュンク堂池袋本店 ( 東京都豊島区 ) 日時〕 8 月 8 日 ( 土 ) 1 ー・ 1 ー・ CO 参加申し込み不要 参加費〕 1000 円 場所〕国立オリンピック記念青少年総合センター 問合せ〕瀬戸内市教育委員会 内容〕絵本を使ったア一一マシオン / 予読のア申込み・問合せ〕 VO¯ー 5956 ー 6111 一一マシオン「やかまし村の子どもたち』 / 足立幸子講演「読書の教育ア一一マシオンブックトーク「 2015 年上半期のおすすめ」混迷の時代に児童文学を問う . 旧信州 〈信州児童文学会主催〉 の今後の展開を考えながら」他に報告、作戦講師〕菅原幸子 & 国岡晶子 日時〕 9 月日 ( 土 ) 1 ー・ 0 1 ー・ O 日時 . 8 月 5 日 ( 水 ) ・開 5 四・ 準備と選書についての研修タイム 場所〕ホテルメトロボリタン長野 ( 長野駅前 ) 場所〕教文館 ( 東京都中央区 ) 参加費 . ] 000 円詳細 内容〕朽木祥講演っ想像力を通して目撃する彡 参加費〕 1000 円定員名 申込み〕メールゴ fo ◎ a コ一ョ ac 一 0 コ .jp 申込み・問合せ〕 vo— 03 ー 3563 ーということ」 / バネルディスカッション「戦 LL. 0 乙・「 / O ー ( 0 つ」ー L00 ) 0 ( O 後 R 年の今、過去の歴史をふまえ、何をどう 書くか」加藤多一・奥山恵・橋ロ英一一郎・い 公演『父と暮せば井上ひさし作 ニツボンのマンガ * アニメ * ゲーム展 LO ・ 0 ・ O O ・ O . ー , 8 ・ O 9 日ぶき彰吾・西山利佳 1 ー・ CD 1 ー・・ 0 1 ー・ 0 日時〕 58 月田日 ( 月 ) ( 金曜日時〕 8 月 6 日 ( 木 ) 参加費〕 ] 000 円先着 100 名 o ( 全 4 公演 ) 5 〕開 ) 入場は分前まで。火曜休館 申込み・問合せ〕 +-JQ)— 026 ー 272 ー 6 ] 5 ] 場所〕南青山マンダラ ( 東京都港区 ) 場所〕国立新美術館 ( 東京都港区 ) 出演〕岡崎弥保・内山森彦・蒔村三枝子・太詳細 観覧料〕 ] 000 円 宰百合 ( ピアノ ) 問〈ロ廾」〕↑ - O ・ -ー O っー仄 ) フ / 「 / 「 / ー 80000 マ情報コーナー△

3. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

語り継がれる〈被曝の物語〉 さし氏の戯曲。八月六 日にあわせての初演は 予想以上に大きな反響 俳優・語り手岡崎弥保 をいただき、戦後七〇 年・被爆七〇年の今年 初めて『ひろしまのピカ』に出会ったのは、原爆の図・丸は、さらに再演を重ね 木美術館の小さな一室だった。原爆の図の衝撃に呆然としなていくことになった。 がら休憩室の扉を開けると、読みふるされた赤い表紙の絵本 ( 二〇一五年四月一八 が並んでいる。窓には都幾川の流れる風景、私はひと息入れ日、丸木美術館にて初 の『父と暮せば』を上 るつもりでその絵本のペ 1 ジをめくった。原爆の惨状はそこ 演した。 ) 、 : 突きつけられるように迫りくる原爆の にも描かれてしたか、 その後『ひろしまの 図とは異なり、両の手のひらに包まれて差し出されているよ ピカ』は、さまざまな うなぬくもりがあった。その体温で、絵が、言葉が、自分の 身体にすっと入ってくる。「ピカは、ひとがおとさにや、お方のおカ添えを得て、朗読の形となった。丸木美術館開 館記念日には実際に『ひろしまのピカ』を朗読する機会もい ちてこん」。この鮮烈な最後の一文すらも。 巻末の「この絵本にそえて」に書かれた丸木俊氏の体験やたたいた こ、つして、私はヒロシマの作品を語っている父か広島出 思いを交えた絵本の作成経緯は、さらに私の心をとらえて離 さなかった。いっかこのあとがきを含め、必ず『ひろしまの身だからということもその一因ではあるが、このような〈被 曝の物語〉に向き合うようになった契機には、福島原発事故 ピカ』を朗読しようと私は心に決めていた。 がある そもそも丸木美術館を訪ねたのは、『父と暮せば』の舞台 私が被災地を実際に訪れたのは震災から二年半もたった二 のためだった。原爆投下三年後の広島、とある父と娘の会話 を通じ、原爆による人間の深い心の傷が描き出される井上ひ〇一三年九月。気仙沼市街地に津波で打ち上げられた漁船共 父各亡は 『父と暮せば』 井上ひさし 新潮社 1 998 ー 22 ー 『ひろしまのピカ 丸木俊 小峰書店 ] 980

4. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

一三ロ ら、新たな世界の構築へと「闘争する」 >-< 達が跳躍し飛翔 する。 < は廃墟の街の暴走族の少年達、は風の谷の神話的 な歳の少女である。 この両作には、広島・長崎の原爆投下後の廃墟を始点とす る戦後日本漫画間年の全てがつまってる ( 実際に発行された のは約年前だけど ) 。 co の最終コマ、国王から「破壊と慈 悲の混沌」と呼ばれた少女は、抵抗の闘争後、自ら難民の群 集の中で皆にこう呼びかける。 「さあ、みんな。出発しましよう。どんなに苦しくとも 生きねは : ・」。 今こそ、僕は、 < 択 に描かれた若者達 選 への決意と行動ーーそ 未こに至る「大きな力」 への抵抗と闘争の過 の 時程ーーーを、みんなと、 晦 <en の若者同士の 爆やりとりを想像しな がら、じっくりとク 0 リティカルに読んでを みたいと思一つ。 集 特 『 AK 旧 A ( 6 ) 』 ( 大友克洋著 / 講談社 KC デラックスャングマカジン ) 『風の谷のナウシカ 7 』 ( 宮崎駿 / 徳間書店 ANIMAGE COMICS ワイド版 ) ブックリスト タイトル 1 A 鉄腕アトム・地上最大のロポット B PLUTO ( プルートウ ) 2 A ササ工さん B ちびまる子ちゃん 3 A トーマの心臓 B リバーズ・エッシ 4 A AK 旧 A B 風の谷のナウシカ * 3 の関連リスト 3 A なのはな B 岡崎京子戦場のガールズ・ライフ 作家 手塚治虫 出版社出版年 光文社 1965 浦沢直樹 x 手塚治虫小学館 2003 ー 2009 姉妹社 1946 ー 1974 長谷川町子 さくらももこ 集英社 1986 ー 1996 小学館 1975 萩尾望都 宝島社 岡崎京子 1994 大友克洋 講談社 1984 ー 1993 宮崎駿徳間書店 1983 ー 1995 小学館 2012 平凡社 2015 萩尾望都 岡崎京子

5. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

み応えのあるものが多い 戦争の愚かしさを未来にどう伝えるか また子どもたちの日常である家族や学校、友だちが物語の 児童文学作家きどのりこ 中心となり、当時子どもだった作者の視点で語られるものも 多く、うまくいけば時を越えて、現代の読者は過去の子ども 選挙権が十八歳から行使できることになった。若者たちが たちに感情移入できる 柔軟な感性で政治に参加するのは嬉しいことだが、一方、若 しかし現実にはなかなかこの時の隔たりを越えるのは難し 年層の保守化も、世の中全体の右傾化と連動している。二四く、また、ある基本的な歴史認識が読者にないと全体が伝わ 〇万票とされる若者票が、結果として現政権を利することに らない。そのため「説明的になり、文学性が薄れてしまい ならないよ、つ祈るばかりだ。 がちだ。また読者を惹きつける「面白さ」は確かに重要なフ そして戦争への道は、今までにないほど開かれている : アクターではあるが、それに捉われすぎると真実を見失うこ とになる : そんな中で、子どもの頃戦争を体験した世代もすでに七〇代 択後半を過ぎた。 この「戦争を伝える」難しさのために、作者はさまざまな へその貴重な体験は、さまざまな形で伝えられ、またフィク手法を試みてきた。『あるハンノキの話』 ( 今西祐行作、偕成 未ションとして物語化されて、「戦争児童文学ー ( 絵本・コミッ 社 ) では、広島駅の近くの練兵場に立つ一本のハンノキが、 ク・紙芝居を含む ) という形で結品している。その数の多さ 目撃した原 時は驚くほどであり、愚かしい戦争の惨禍を次世代に伝え、ふ爆のむごい 年たたび未来に繰り返すまいとの強い思いが感じられる。一般光景を悲し みをこめて 爆文学として夥しく存在する戦争を扱った作品や手記などは、 若い世代に読みにくく、抵抗感があるものだが、この「児童物語る。ま 年 文学」というジャンルでは、書き手たちは読みやすくシンプた『ほろび 後 ルに、また読者がイメージしやすいように語る、といった習た国の旅』 特練を経てきているので、大人が読んでも解りやすく、また読 ( 三木卓 ) 一三ロ ほろびた国の旅 三木卓 『ほろびた国の旅 三木卓著 講談社 2009 年

6. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

いる、それは何故だろうと思った。みんなはどう考える ? 3 日本最大のステージの両ェッジに登場した両者を想像する な。 <€co 間には銀河間航行が可能な程の広がりがある。 < は、ドイツのギムナジウム ( 中高一貫校 ) を中心に展開 < 萩尾望都トーマの心臓 される、 ( 男子 ) 生徒達の「死と愛と救済希求」の物語。 co は、 ↓岡崎京子『リバーズ・エッジ ガッコ ( 高校 ) と主に河原で展開される、高校生 ( ガールズ ) 今舂、キミ達は岡崎京子さん初の大規模個展【戦場のガー の「死体と o x と生存不安」の物語です。共通の舞台は、 ルズ・ライフ】を世田谷文学館に見に行って来たんだって。 うん、キミ達の = = 〕う「文学館でガールズ会」ってそれだった >-< 達の戦慄の「日常」。 んだ。岡崎さんは事故で活動休止だけど、その後も未刊行作 4 < 大友克洋『 <Y—C< 品や復刊が相次き、今回は大規模個展。岡崎京子、バリバリロ =n 宮崎駿『風の谷のナウシカ 生きてるぜ。 あっ、 <0 ともア一一メーション映画になってるけど、観た 萩尾望都さん ジ土 o ッ麟网事ある ? うん、一言みんなに = = 〕っておくと、両作とも「漫画 が 4 年前の大震「 工宝 8 の方がア一一メより、断然、世界が深い」よ。 災後、原発事故 京 この 2 作品がほほ同時期に創作されたのは面白いね。そし を題材として、 崎 0 岡 c て、そのスケールの大きさ。 < は、関東地方で「新型爆弾」 事故後のフクシ 冂′ ( O が炸裂、東京崩壊、第 3 次世界大戦勃発。 2019 年廃墟と マで生きる少女 荒廃を抱えつつ日本では翌年東京オリンピックを開催しよう とチェルノブイ リの少女との交流を描いた『なのはな』や、その続編で、放としている。は、文明を崩壊させた「火の 7 日間」最終戦 射性物質を擬人化した部作 ( 「プルート夫人」等 ) を争後干年。激しく汚染された荒廃の地には、巨大な「腐海」 発表した時には、やっぱり、「萩尾望都、健在なり ! 」ってや腐海を守る「蟲」 ( 巨大昆虫 ) が現れ、人々は腐海の瘴気 毒に怯えて暮らしている。 思ったね。 そのポスト・被爆破壊世界 ( これぞ、戦後日本 ) の状態か さて、例によって <en と往復読みすると、僕は、例えば、

7. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

一三ロ って家族すべてを失った肥歳の少女が苦難を乗り越え生きて 子どもの本から「記憶」の描かれ方を考える きた『ガラスのうさぎ』 ( 高田敏子作、金の星社 ) は、多く 広瀬恒子 の子どもに読まれベストセラーとなりました。日本の児童文 学は戦争による悲惨さ、苦難、命の大切さなどをリアルに描 き、子どもたちに平和の大切さをアピールする一定の力を発 年前の戦争は、子どもにどのような記憶として今、引き 継がれてきているのだろうかーそのことを考えるにあたっ揮してきたと思います。 上へ戦争の本質に目を向けたり、 けれど、海外の作品にヒ。、 て、先す自分の記憶を思い起こしてみました。 一人ひとりの人間として痛みを共有し合う視点が弱いのでは 私の場合、「お国」とか「教科書」という子どもの目からは、 ないカ 過ちなどするはすのないものが、まちがっていることもある 日本児童文学者協会が創立周年記念出版新しい戦争児童 のだという事実が何よりの驚きでした。教科書の記述に、こ れはまちがいとして墨をぬるというのは、子どもにとって信文学としてシリーズ〈おはなしのピースウォーク〉 ( 新日本 択じられないよ、つなことでした。 出版社 ) を出版しました。 の この「新しいーにこめた思いと意味について編集代表の古 この体験は、成長していく過程で、国とか政治や世の中の へ 未出来事について自分自身が真実を知る、確かめる努力が欠か田足日氏は せないことなのだという、記憶としてそのためにも読書の必「日本が敗北して、七、八年たったころのある日、大人にな っていたばくは突然、子どものとき、中国の地図に日の丸の 時要さ、重要さを考えないわけにはいきませんでした。 年 後年、地域で子どもと本をむすぶ活動にかかわるようにな旗を立てたことを思い出した。ばくの心の中に、日の丸の旗 ねもと の下、日本軍の砲弾でこわされた家の壁のそばに立ったりす 爆った根元には、この原体験があったのかもしれません 子どもが戦争の記憶を保持していくことにかかわって、こわったりしている汚れた顔の中国の子どもたちの姿が浮かん 年 「子どものとき、ばくはなぜ家を焼かれ、 だ。 ( 中略 ) ・ れまで戦争と平和を考える多くの子どもの本が出版されてき 後 こわされた中国の子どもたちのことを想像できなかったのか ました。その中の例えば作品としての弱さを指摘する意見も ・ : 」 ( 「おはなしのピースウォーク」古田足日「はじめの発 特ある中で、 1945 年 3 月川日の東京大空襲や機銃掃射によ

8. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

史が歪められない限り、どのような新しい実験もアプロ 1 チ では、かって も試みられてよいと思う。 「満州」に植 ぐ」「す万訳 むのこ 8 そして、人間への想像力と柔軟な発想が見られるすぐれた のフみ 2 民者の子とし ラ 一・ゅ ラ一ま版児童文学を、歴史教育の現場でも副教材として使ってほしい。 て暮らしてい ト トキく出 ツツさ木もちろん平和教育については多くのすぐれた絵本があり、子 た「ばくカ ャ金 ヒ ジ どもたちを楽しませながら平和の種子をその心に蒔くという 過去の真実と 試みを、多くの教育現場で実践していただきたいものだ。 向きあうため また、戦争を体験した人びとの証言の重さ、それに依拠し の装置として、現代の図書館の書棚が反転し、過去へタイム・ た文学のリアリティを大切に継承しながらも、戦争を体験し スリップするとい、つ方法をとる ーゴも『戦火 『ヒットラーのむすめ』 ( ジャッキー・フレンチ ) では、現ない世代の作品にも注目したい。前述のモー の馬』など多くの作品で戦争を描いているが、一九四三年の 代の子どもたちがバスで登校する待合室での「お話ゲーム」 の中で、「ヒットラーのむすめ」の話が語られる。『モーツア生まれだから戦争はほんの幼児の頃だったろう。若い人にイ一 ーゴ ) では女性記者ンパクトを持っコミックの分野でも、『タ凪の街桜の国』 ( こ ルトはおことわり』 ( マイケル・モー うの史代 ) や『あとかたの街』 ( おざわゆき、講談社 ) など がナチスのために演奏した音楽家の過去を知るため、ヴェニ 戦争を知ら スに取材に行 ない世代の り わ作絵 作品に教え 「今」との とゴン年 られること 接点を模索す おハアこ 5 ま一オみ 2 か多い。 る作ロ叩に限っ モフゅ 店 丿レレく聿 = そして戦 ても、枚挙に アのさ崎 ツイイ岩後七〇年が とまがな 一ママ 経ったとは 、。真実の歴 モツツを第は おことわり 宅すあ 0 タ凪の街桜の国 ◎こうの史代 双葉社 2004 年

9. 子どもの本棚―月刊書評誌 2015年10月号

善意の市民なの 言より」 ) はルヒ訳 O にユダヤ人少年 この指摘には私も共感させられたのです。 子 2 こ 『ばくがラーメンたべてるとき』 ( 作・絵長谷川義史、教を助けることが のタ真店 のド できなかったと あ←田書 育画劇 ) は、ラーメ 一・上波 リス岩 いう、いわば「子 フ ンをばくがたべてる ン』絵 7 どもの戦争責 メき 8 とき、となりでみつ 一とイ 2 ラる史 任ーという視点から書かれた作品はあまりないような気がし ちゃんは ? となりの 。、がて儀劇 ますが、なぜでしよう」と問題提起をされています。たしか くにの子は ? 同じ時く ^ に子どもも加害者になるという観点を意識させられるよ、つな 間、異国の地では少 物語については、これからの課題であろうと考えます。 年が倒れているシー 海外作品の場合『ヒットラ 1 のむすめ』 ( ジャッキー・フ ンが描かれています。戦火による被害を受けた子どもの姿で レンチ作、さくまゆみこ訳、鈴木出版 ) では、雨の日、スク一 しようか ? その結末の受けとめは、読者にゆだねられていま 間、少女アンナが「お話ゲームーをはじめま ールバスを待っ す。この絵本は他者へのシンパシーを呼び起こす想像力をか し女力いた。お話でした。それを聞 きたてられる気がしたのですが、もっとこうした視点を意識す。それは「ヒットラーこ良ゞ きながら、ばくはもし自分がヒットラーの子どもだったら、 した作品があってもいいのではないかと期待します。 以前、日本の戦争児童文学は『あのころはフリードリヒかあの戦争を止めることができたのだろうか、もし自分のお父 ー・リヒタ 1 作、上田真而子訳、岩さんが、またヒットラ 1 と同じようなことをしようとしてい いた』 ( ハンス・ペータ たら、ばくは ? と自問します。過去としてだけではなく、生 波書店 ) をなかなかのりこえられないという意見を聞いたこ きている今にひきつけて考える子どもを登場させている点を とがあります。このことに関わり『子どもの本棚』 ( 2014 年川月号 ) で女性史研究家の米田佐代子氏が、「日本の児童貴重に思います また『ペドロの作文』 ( アントニオ・スカルメタ文、アル 文学が戦争をとりあげるとき、子どもの悲惨な戦争体験を書 フォンソ・ルアーノ絵、宇野和美訳、アリス館 ) では、スペ くことは必要だと思、つけれど、「フリードリヒ・ : 」のよ、つに、 、、プノ第をミ こ

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残念だが ) 。その中で最近刊行された一冊『火城燃える町 しえ、いまだに埋まっている不発弾のように新たに掘り起こ される事実もある。先日も市民の活動によって、西東京市に ー 1938 』 ( 蔡皋、弸子 ) は、日中戦争中の一九三八年、 長崎原爆と同じ模擬爆弾が投下され、市民が亡くなった事実中国・湖南省長沙で起きた大火を題材にしたもので、日本軍 を検証したパンフレットを読んだ ( 児童文学では『パンプキの侵略・占領の前に町を焼いてしまおうとする計画が大火に 模擬原爆の夏』 ( 令丈ヒロ子作、講談社 ) が書かれてつながる出来事 を、奪われた人び いる ) 。 との暮らしを中心 戦争とその愚かしさ、そして平和がどんなに大切なものか に、墨一色の圧倒 を未来に伝えていくために、児童文学や絵本というジャンル 的な表現で描く。 はとても有効なものだと思う そして近年は、児童文学を通してのアジア交流が、まだ東この絵本を訳され た中由美子さんか 北アジアが主ではあるが少しすっ広がってきた。すぐれた絵 らちょ、つど先ほど 選本や児童文学も、訳者や研究者の地道な努力によって翻訳・ へ出版されるようになってきた。政治的な不安定さの中ではあメールをいただ 未るが、日中児童文学美術交流センタ 1 、アジア児童文学日本き、中国の作家で「日本軍の大小屋 , という作品を書かれて いる車培品さんが今、新しい長編戦争児童文学にとりかかっ センタ 1 が設けられ、「アジア児童文学大会」も隔年に中国・ ておられるとの嬉しいお知らせだった。こうして広がってい 時韓国・台湾・日本で開催され、研究と交流の成果をあげてい 年る く新しい戦争児童文学の試みと、それが未来の読者に届く時 爆そうした中で各地域の作家と画家と編集者によって「日中を、私は心待ちにしている 韓平和絵本ーが企画され、すでに七冊が日中韓同時に刊行さ 年 れている ( 「慰安婦」だったおばあさんを描いたクオン・ユ 後 ンドクの絵本『コッハルモニ花のおばあちゃん』が、慰安 特婦問題をめぐる状況の中でまだ日本で刊行されていないのが 日・中・韓平和絵本 『火城燃える町一 1938 』 蔡皋文・絵 / 翩子絵 / 中由美子訳 童心社 2014