『屋根裏の遠い旅」『ねんどの神被爆者・中村杉松さんの体験を自分ふくらませた胸を両手でたたいて大 さま』は、読むたびに複雑な思いをの体験として引き受け、中村さんのきな音を立てるドラミングについて 引き起こす。それは「平和でよかつ一部となって声をあげ続け、ピカのは、相手を威嚇し戦いを宣一言するた たね、で終わって、本当に戦争児童語り部となったのが、福島さんの「戦めと思われていたが、実は全く逆に 文学か」という作家・那須正幹の姿後」の始まりだった。「嘘はいっか争いを避けるためだったと考察す 勢のなせる業だったかと、改めて思くすれるはすだ。現実を全身に引きる。ゴリラ画家の阿部知暁さんが描 う全国大会での講演だった。「平和受けて表現すれば」ということばがくゴリラの表情に思わず見入ってし でよかったね」で歩いてきてしまっ響く ( 寺 ) まう。ヒトの家族社会を考察した「父 た自分の来し方を思う。「日本はも という余分なものサルに探る文明 う戦争しない」と教えられ、そう信◆読書術って意外と面白いですね。の起源』 ( 新潮社 ) は今年、文庫に 己じた。九条がある限り大丈夫・ : と。津野海太郎著『百歳までの読書術』なった。 き -0 そんな私が、「居ても立っても居ら ( 本の雑誌社 ) が高校生にも読まれ れない思い」に突き動かされて国会ています。っていうか、生徒に薦め も久前に行った。それだけのことが起きられて読んじゃいました。 ( 笑 ) たこの夏。多くのひとの思いが形を 津野さんは本をバラバラにして持 とりはじめ、新たな「戦後」が始まち歩いて読む「路上読書」のべテラ む る、と思いたい。そんな世の中に向ンですが、川歳で退職、現場を離れ 含 8 集 けて、那須さんの作品はさらに、強て初めて身につけたのが、「机に向 だ 2 を 2 い 6 料 2 さ いみ平く く真剣な問いを投げかけ続けるだろかって本を読む癖」だそーです。読 3 送 6 だ さ込劼入 0 ( 若 ) 書術ってホント十人十色ですね。 たし = = ロ己 - 分 7 く く申電冊入 そうだ、と僕は思いました。「子せ 一三ロ 0 「戦後」をつかみとってきた報道どもの本」の読書術を、読者の皆さ 3 合購 写真家・福島菊次郎さんが、 9 月幻んにも語って貰いたいなあって。 い」幵絡 3 円 O 数 問棚石 0 日に歳で旅立った。 4 0 0 枚のパ ( 輝 ) お本本ず x 0 冊 ネルを埋め尽くす 2000 点を超え る写真と言葉に多くの人々が圧倒さ ◆ヒトの行動や社会の起源を探る霊軽も 料座号 れた、昨年月の「福島菊次郎全長類研究の成果は素人にと 0 ても興お子読ロ望 写真展」が思い出される。ピカに合味深い。ゴリラ研究の第一人者、山 本 x 購振 わなかった自分ができることとし際寿一さんの絵本『ゴリラが胸をた 年 て、現実から目をそらさずカメラのたくわけ』 ( 福音館書店 / たくさん ーになった。 シャッターを切り始めた福島さん。のふしぎ ) がハートカ 0 ◆ ◆ ( 福 ) 月刊書評誌 子どもの本棚 2015 年 11 月号 No. 565 編集・発行日本子どもの本研究会 (JASCL/ ジャスクル ) 〒 176-0012 東京都練馬区豊玉北 4 -4 -18-105 TEL 03 ( 3992 ) 0362 / 03 ( 3994 ) 3961 発売元子どもの本棚社 〒 176- ( ) 012 東京都練馬区豊玉北 4 -4-18-1 ( ) 7 TEL ・連絡先 03 ( 3992 ) 0362 印刷所大村印刷株式会社 《編集委員》福田晴代 ( 編集長代行 ) 大江輝行 小寺美和若菜千佳子 廣畑環 ( 選定委員 ) 《発行者》野口武悟 定価 : ( 本体 370 円 + 税 ) 年間購読料 : 4 , 800 円 ( 12 冊分・送料を含む ) 購読申込先 : 日本子どもの本研究会 http://homepage3.n ifty.com/kodomonohonken/
第 47 回日本子どもの本研究会全国大会報告 ( 2 ) ー和へつなぐ子どもと本の出会し 2015 年 8 月 2 日 ( 日 ) ~ 3 日 ( 月 ) 国立オリンピック記念青少年総合センター 那須正幹 みなさん、こんにちは。那須正幹です。ばくは一九四二年 六月六日に、広島市の現在の己斐本町で生まれ、三歳で被爆 しました。今日は最初に自分の被爆体験をお話し、それから、 大人になって子どもの本の作家になり、原爆や戦争について も書きましたので、自分の作品について語ります。 まず被爆体験ですが、家族は両親と姉二人の五人で、十三 歳上の姉は県立第一一女学校の五年生でした。学徒動員先の専 売局で被爆しましたが、大したけがはせず、逃げのびました。 九歳上の姉は国民学校六年生で、集団疎開していましたから 被爆していません ( 後に児童文学作家となる竹田まゆみ ) 。 父は当時、広島電鉄家政女学校の教師をしていました。国 民学校高等科を出た女生徒が午前中は授業を受け、午後は電 車の運転手や車掌、バスの車掌として勤務するという学校で 8 月 2 日 = 時 8 分 5 時 「戦後 R 年、広島と平和を語る」 一 ~ 記念講演
ピッチの王様 明日をつくる十歳のきみへ※ 4 人の誓い 一 0 三歳のわたしから テイロ文 日野原重明著 若松宣子訳 冨山房インターナショナル 森川泉絵 2015 年 4 月 ほるぶ出版 本体 ] 100 円 2015 年 4 月 小学上級から 本体円 小学上級から 百歳を超えて現役の医師である日野原重明氏から十歳の子 いつも空地でサッカーの練習をする 4 人で、力を合わせて どもたちへのメッセージ本。著者は、十歳の子どもは「いの 杯にいくぞと誓いあった時から物語が始まる ある時、空地でクラブチームに所属する 4 人と試合をするちー「なぜ生きるか」について、きちんと順序良く説明すれ ば理解できる能力を持っているとしてこの本を記した。 ことになり、なんとか勝利するが、ちゃんとしたクラブチー 日野原氏は説く。いのちとは自分の使える時間である。大 ムに加入したいという長年の想いか 4 人に募る。そうした折、 クラプへの加入がかかった試合で、合格は 3 人という結果と人になったら自分の時間を他人のためにも使って欲しい。人 なる。 4 人でなければこちらからお断りだよと決めたのに、 のために使う時間をどのように使うのか。著者は自身の経験 主人公のノアだけ監督からの電話で入団すると返事をしてしや最近の具体的な事例を示しながら説いている ま、つ 自分の命も人の命も等しく大切な命を守るためには「ゆる 友だちを裏切ってまで入団したチームでの、地区決勝戦。しーの心を持っ必要がある。「ゆるし」がいじめや戦争の無 い世の中を作る。人の命を助けるために科学を学んで欲しい。 劣勢の場面で観客席を見ると 3 人の応援する姿が : 科学には良い科学と悪い科学があることを知って、科学を人 挽回できれば 3 人を入団させると監督と約東したノアは、 殺しのために使う大人にならないように。自然の前では人間 最後まで諦めない気持ちで残り時間の少ない試合に臨む。 は無力だが、 世界中の知恵を集めれば良いアイデアが出るだ スポーツは五輪や杯などの開催時こそ注目を集めるが、 文学ではいつでも「気持ちや「感動」を共感することがでろう。いくつになっても夢を持とう。 きる。そんな一冊だ。シリーズ第 1 巻。 これら氏の思いを子どもと共に読みたい。 1 32 P/ 1 9 X 1 3c m ( 田村幸光 ) 明日をつくる、 , 。 ー一 0 三歳のわたしから を第第 0 ) 日野原重明 : を = 、 ( 竹本ゆりえ )
これらの歌は、あの日を本当に体験した人間でないとっく す ( 午前・午後が逆のパターンもある ) 。八月六日の朝も父 親はいつもどおり出かけ、学校の教員室で被爆しました。爆れない歌ばかりです。父親はこういう情景を見ながら、必死 で教え子を探したんでしよう。父はその後一年間寝込みまし 心から二キロのところです。背中と頭にけがをしたものの、 た。放射能の影響でしようが、幸い一年後には復帰しました。 勤務中の教え子を探しに出ました。そして偶然にも姉と行き ただ、教師はやめて、広電の普通の社員になりました。戦争 条い、これから教え子を探して回るので、家には当分帰れな 中に軍国教育をした責任を自分ながら取ったんだろうと思い いと伝えたそうです。父親は二週間、家に戻りませんでした。 ます。 父の短歌を何首かご紹介します。 私自身は己斐本町の自宅に母親といました。あの朝、近所 「わっと泣き吾に寄り来る教え子を吾も抱きぬ生き し歓び」 のおばさんがアサリをもってやってきて、前庭にしやがんで、 「軌道逸れ電車のあわれ焼けさびてすわりしままの日傘をさしておられた。母親は縁側の戸袋の陰に腰かけ、ば 2 告骸骨とどむ . くは母親の背中におぶさるような形で立っていたそうです。 これと同じ情景が、『絵で読む広島の原爆』 ( 西村繁男絵、八時十五分十七秒に原爆が投下され、四十三秒後に広島の上 会 国福音館書店、四〇 5 四一頁 ) に描かれています。焼けた電車空五百八十メートルで爆発。わが家は爆心から三キロ離れて いました。ばくは爆発の瞬間を覚えていませんが、爆風で屋 会の中に遺体がすらーっと並んでいます。 究 研「屍体にも顔をそむける心失せただ教え子の姿のみ根が半分ほど吹き飛び、ガラス障子が全部こわれました。幸 の追ふ い、私と母親は戸袋の陰にいたので熱線を直接浴びず、大け 子「死者名簿名前のあればいまははやほっと息づく哀がをせずにすみました。前庭にいたおばさんは日傘が燃えて、 半身大やけどをされたそうです。 日しさ忘れ 回 7 ここまでは母親から聞いた話ですが、断片的ながら覚えて ばくはこの歌がいちばん好きなんです 4 第 いることがあります。十一時ごろからひどい雨が降り出して、 「タせまる焼け野の町にとろとろと鬼火燃えけり雨 ばくは押し入れで雨宿りしながら、国民学校一年生の国語の 特のそば降る」
き返る『おじいさんならできる』 ( フィービ・ギルマン作・ ・子ども達はどんなことを知りたいか、どう考えるかを大切 絵 / 芦田ルリ訳 / 福音館書店 ) の読みきかせ。布の命、また、 にしたい。例えば『おじいさんならできる』では、古いも のを大切にしようではなく、一つのものがどんどん変わっ ものを大切にすることについて考えさせ、「古くなったり小 ていく面白さを楽しみたい。 さくなった洋服は、捨てないで誰かにあげたり再利用してい く方法をかんがえよう」と呼びかけた。 ・読みきかせを子ども自身の読みにつなげて行く、物語の読 みきかせなど工夫したい。 お話し会 3 米田久美江対象小学 4 、 5 年生 ・ブックト 1 クとテーマを持ったおはなし会の違い テ 1 マかけがえのない出会いといのちのたいせっさ の立て方読みきかせの仕方など課題だと思う。 多くの参加者から貴重なご意見をいただいたが、討議の時 『はじめまして』 ( 近藤薫美子 / 偕成社 ) 楽しい出会いを 重ねていきたい。『ちいさな島』 ( ゴールデン・マクドナルド 間が取れなかった。アンケ 1 トのご意見と共に次回の分科会 さく / レナ 1 ド・ワイスガ 1 ドえ / 谷川俊太郎やく / 童に生かしていきたい。 話館出版 ) 日本の中の小さな島が大きな地球、字宙に繋がっ 参考紹介のみの本 ている。『へいわってすてきだね』平和って何だろう。いっ しょにかんがえてみよう。『ゴリラとたいほう』 ( なまちさぶ『ペレのあたらしいふく』 ( エルサ・ベスコフさく・え / お ろうぶん / こばやしゅうじえ / 福武書店 ) ゴリラの王様の のでらゆりこやく / 福音館書店 ) 『アンナの赤いオー ハリエット・ジ 1 フェルトぶん 横暴な命令。でも知恵と勇気で平和を守り抜くことができる。 模擬おはなし会の後、参加者一人ひとりから意見や感想を / アニタ・ローベルえ / 松川真弓やく / 評論社 ) 発表してもらった。いくつか紹介すると、 『おひさまいろのきもの』 ( 広野多珂子作・絵 / 福音館書店 ) ・道徳を教科で扱うようになったらどうなるのか。価値観を『あたらしいおふとん』 ( アン・ジョナス作 / 角野栄子訳 押しつけないで、自分で考えていけるように指導していき ( 司会・鈴木佳代子記録・青柳智江 ) ・十五分の朝読書では一、二冊しか読みきかせできないけれ ど、自分のテーマを持ってのぞみたい。 あかね書房 )
たのは何と骸骨だった。骸骨は必死に逃げるロンをどこまで【つけを守らす、嵐の海に舟をのりだします。釣り上げたのは も追ってくる。恐ろしさのあまり気を失ってしまったロンを , 大きなガイコツ。ロンは恐ろしさのあまり気を失ってしまい むみよう 骸骨はそっと介抱する。この骸骨は父親なのではないか、そ・ます。ガイコツは闇をかかえた無明 ( 注 ) をさまよいつづけ、 んな想像がよぎる。骸骨に、死者になってしまったしさと・やっとロンに出会ったのでした。鏡を見て自分の姿を知った ガイコツはふるえだしました。ロンはガイコツをあたためて 哀しみが襲う。目覚めたロンか床にうずくまる骸骨に優しく 思いやりの言葉をかけ、手元に残る全ての食べ物を差し出す・やり、ありったけの食べ物をわけてやると、ガイコツは漁師 と、見知らぬ漁師が現れる。姿は違うが境遇はロンの父親と に変わりました。幼い無垢な生命がガイコツを救ったのです。 よく似た人間の漁師になっていくこの場面は驚きと不思議、 一ペ 1 ジの絵は、高いビルが迷路のようにならぶ海べの町 そして戦慄を覚える。人の手や足に変っていく生々しい場面】のはずれに : ・、竹であんだ粗末なロンの小屋がたっています。 は言葉の表現でも十分なのではないかと思う。一見ホラ 1 的 小屋とビル街には異なった時間が流れているように見えま な作品 ? とも見えたが次第にこの物語は深い精神世界を描い す。読者の眼は、釣りをしているロンに集中しますが、二枚 ていると思えてくる。父を亡くして一人ばっちのロンと愛す・の絵のそれぞれの表情に気がつけば、絵本の背後のかくされ る息子を遺して海に沈んでしまった漁師の魂が触れ合う。抱 " た作者の言葉がきこえてきます。ロンがガイコツを釣りあげ き合う二人の表情には互いに懐かしく温かいものを感じてい ても、ガイコツが魚を食べても、人間になっても、ふしぎで はありません。 る様子が溢れている。読後も何度も眺めてしまう程感動的な 絵である。ロンは漁師に導かれ今までにない大漁に恵まれる おとうさんを思い出し、漁師にだきつく口ン、ここで過去 と現在と未来が一点に交わり、ふたりにはおだやかな時間が 新たな絆で結ばれた二人は青く静かな大海原を進んでいく。 鳥たちも嬉しそうに飛び交う。もう一人ばっちじゃない、 : 父と子の時間が流れだします。その先に用意されているの ンの未来は幸せだろうと予感させて最後の場面は清々しい。 は桃源郷でした。 ロンが釣り上げた画面いつばいのリアルな骸骨にはロンと 同様「わっ」と声をあげてしまった。哀しみを秘めたその骸 チェン・ジャンホン ( 陳江洪 ) は、一九六三年天津に生ま 骨はやがて人間の漁師に生まれ変わる。『海からきた漁師』】れ北京の中央美術学院卒業後、一九八七年パリに移住。中国
話題提供③ zo-O 法人として取り組んだ調べ学習 杉戸直由 ( 法人としよかん再発見 ) 杉戸さんは、子どもたちが調べて考える力、自分の思いや 考えを伝えることのできる力を身につけることが大切であ り、そのために必要な言語力を養うことのできる読書が重要 であることなどを知らせてくれた 夏休み自由研究応援講座の開催や学校での調べ学習を支援 する活動では、本を使って調べることのできない子どもがい る反面、毎年学習を積み重ねることによって調べ方が身につ いていく様子を見ることもできる 一方、現行学習指導要領では、思考力、判断力、表現力が 参加者は公共図書館司書や図書館支援センタ 1 のような行 重視されており、それに沿った教科書では、各単元に調べ方 を学ぶ場面が多く取り入れられている。調べ学習を大変なも政に携わる方も多く、公共図書館が学校図書館との連携や支 のと捉えすに、普段の授業の中で教科書を使って指導するこ援に取り組みたいと考えていることが分かった。 また、多くの学校図書館では、教材や資料の不足、非常勤 とは十分可能だという また、探究的学習を継続していくためには、学校図書館をの学校司書の継続した図書館教育の難しさなどの悩みが大き いという現状ではあるが、子どもたちが知りたい、調べたい 活用して授業を行う先生への支援が今後の課題になるという という意欲を高め、自らの考えを深め、伝え合う力を身につ ことだ。 けることができるような支援と工夫を考える上で、 3 つの先 * 参考文献 進的な事例に勇気をもらうことができた ード白熱日本史教室』北川智子著 / 新潮新書 / 2012 年 ( 司会・大橋道代記録・鈴木正代 ) 『教育のカ』苫野一徳著 / 講談社現代新書 / 2 014 年 ( 全国学校図書館協議会 / 2 012 「学校図書館」 738 号引芻 年 4 月 ) どの教員も取り組めるコンパクトな「探究的 学習」の開発 ( 中條敏江 ) 浦 5 ( 全国学校図書館協議会 / 2012 「学校図書館」 738 号 年 4 月 ) 調べ学習 O & < ( 熊谷一之 ) 「学校図書館」 7 6 9 号 5 7 7 3 号 ( 全国学校図書館協議会 2014 年 52015 年 ) キラリ ! 司書教諭 1275 1 ーっ 0 1 ・ 1 ー・」 ( ハ林達也 ) 『中学生・高校生のための探究学習スキルワーク』桑田てるみ編 / 全 国学校図書館協議会 / 2012 年 文科省「子どもの『読む・調べる』習慣の確立にむけてー子 ども読書サポ 1 ターズ会議ー」
教科書をながめていました。巻末に「ももたろう」の話が載変調がおこると、「もしかしたら ? 」という不安が頭をよぎ っていて、そこだけあざやかな色彩の挿絵がついていたとい るようになりました。たぶん、生涯続くだろうと思います う記憶があります。大人になって当時の教科書を見ると、大 小学生のころは本がきらいで、漫画ばっかり読んでいまし した色づかいじゃなくて、あの日は暗がりで極彩色の絵と錯 た。六年生の時、手塚治虫に弟子入りしたいと手紙を出して、 覚したんでしよう 返事をもらったことがあります。それくらい漫画大好きでし 午後になると、家の前の道路を、被災した人が市内からぞた。昆虫採集に熱中し、高校は生物部に入って、大学も島根 ろぞろ逃げてこられた。なかにはわが家で休んでいく人もい 農科大学で森林昆虫学を専攻しました。大学卒業後、東京の て、寒い寒いと言われるので、母親が縁側に寝かせ、毛布を会社に就職し、自動車のセールスをしましたが、どうも生に かけてあげたのをかすかに覚えています。それからもう一つ、 合わす、二年で辞めて帰郷しました。そのころ、父親はかな 夕方、荷車の上に缶詰めを山積みにした男が立ち寄り、水をり大きな書道塾をやっていて、それを手伝いました。 飲ませてくれと。水を飲ませてあげると、ミカンの缶詰をあ とはいえ、ほかに職を見つけんといかんなと思っていた時 けてくれました。やけどするくらい熱く、フウフウ吹きなが に、姉の竹田まゆみに誘われて同人誌「子どもの家」に参加 ら食べたのを覚えています。あとで考えると火事場泥棒だっ しました。ところが私は子どもの時に童話なんか読んだこと たのでしよう かないどう書いてよいかわからず、当時、児童文学の傑作 小学四年まではよく病気しましたが、自分が被爆者だとい と言われていた松谷みよ子さんやいぬいとみこさん、古田足 う自覚はあまりなかった。ところが中学二年の夏休みに、ク 日さんやらの作品を借りて読みました。ばくが子どもの時に ラスメートが白血病で死にました。そういう体験を初めてし本を読まなかったのは、おもしろくなかったからです。子ど て、その年の秋、学校で行われた被爆者検診で、ばくは赤血も時代のばくが夢中になるような本を書けば子どもは絶対読 球にやや異常が認められ、精密検査を受けました。幸い、軽んでくれる、ばくでも作家になれる、そう思いました。その 度の貧血でしたが、結果が出るまですっと不安で、その時初時二十七歳で、三十まで修行しよう、それで本が出なかった めて、自分が被爆者だと自覚しました。それ以後、体に何か ら才能はないとあきらめよう、と思って頑張った。そうした
ら受け入れられる人となった。大学に入って友達の家で暮らすは、その後半世紀と続くことはなかった」 ( 『思い出袋』より ) と 菊年の戦争が今とつながってい 鶴見氏は語る。「 19315 ことになった時、家の問題は彼を含めて家族全員で話しあった。 日常生活にどんな変化をもたらすかは、米国では重みのある事るというのは、あの戦争時代の指導者層がかなりの程度まで今 柄だ 0 た。こうした傾向は当時「国社会に深く根ざしたプラグ 0 日本 0 指導層である = とを見てもわかります。私たちは前と マティズムの影響かと思われるそして又鶴見氏自身少年時代同じような不本意な状態につれてゆかれないようにしたい」 ( 『昭和を語る』より ) と。彼は戦争中に抗議の声をあげなかっ から新しい変化に対しては、事実をもって確認せすにはおかな いとする優れた知性と感性の持ち主であったことも事実であた。政府を批判し、牢屋に入れられることもなかった。「だから、 病気で死なせて欲しいというのが、日夜の祈りでした」 ( 『昭和 る。彼自身「プラグマティズムの哲学は私にとってヨーロッパ を語る』より ) 。こう記す自らを「今もわたしは外人です」と の哲学より相性がよかった」 ( 『思い出袋』より ) と記している。 渡米 3 年目に日米開戦。彼は本部へつれて行かれ、東語る。又「 1945 年 8 月米国大統領は、すでに日本は戦力を ボストンの留置場に入れられた。そこで夜便器のふたを机にし失っているのを知りながら、持っている二発の原子爆弾を日本 に落とした」 ( 『思い出袋』より ) とも。そして両国は共謀して て卒業論文を書いた。彼が交換船に乗ったのは、日本が戦争に 敗ける時、敗ける側にいたいという思いが強く心の中に動いた被害の実態を隠蔽しようとした。このことは「科学が国家と結 んで人間をもてあそぶ時代の幕開け」 ( 『思い出袋』より ) と彼 からだという。それは「日本国家に対する忠誠心からではない。 はいう。今や米国に対しても自分は外人であると考える。外人 国家に対する無条件の忠誠を誓わすに生きる自分を国家の中に 置く望み」 ( 『思い出袋』より ) であるという。又後に「軍事国鶴見氏はその厳しさを糧に年を生きた。そして外人にとりか こまれて暮らす子どもたちに「共同」を求めた 家だったころの記憶を掘り起こせば、早起き早飯という反射を 植えつけられる軍人生活の中で、遠い未来を予測することは思 参考文献 いもよらない。時代にあらがうことが現代批判を確実にする」 ( 『思い出袋』より ) と記している。彼は現代の米国を次のよう に語る。「米国は今や世界最大の軍事力に内部から抵抗するに は、よほどの精神力を持たねばならないが、それはもはやない 戦時捕虜収容所にいた私に卒業証書をくれたこの国の寛大さ 社学術文庫 ) 『思い出袋』 ( 鶴見俊輔著 / 岩波書店 / 2 010 年 ) 『昭和を語る鶴見俊輔座談』 ( 晶文社 / 2 015 年 ) 『アメリカ哲学』 ( 鶴見俊輔著 / 講談社 / 1986 年 / 講談
ふ新刊第介 どんなきもち ? べツツイ・メイとにんぎよう ぜんぶわかる ! アサガオ※ ピッチの王様 明日をつくる十歳のきみへ※ 見えてくる ! 陸地のデコボコやギザギサ※ 広島の木に会いにいく※ ラオス山の村に図書館ができた※ ※は、ノンフィクション・科学・知識の本です。 0 どんなきもち ? ミース・ファン・ハウトさく ほんまちひろやく 西村書店 20 ] 5 年 6 月 本体 ] 300 円 小学初級から 「痛かったね ! びつくりしたね。と、声をかけるお母さん 泣き出した子は、自分の不快感を「痛かった、びつくりした」 という言葉にしてもらって落ち着くことができます。 絵本『どんなきもち ? 』の帯には、「子どもたちを応援す一 る絵本」とあります。表紙には、黒の地に、赤を主体にした カラフルな魚の絵かくつきり。その表情は、今にも何か言い 出しそうです。ページを開くと、見開きの片面には、表情豊 かな魚の絵。そして、もう片方には、魚の気持ちを表す言葉、 わくわく、もじもじ、むしやくしや、どきん、 私は、この本を、クイズ形式で三年生の子どもたちに読み 聞かせしました。魚の絵だけを見せて、「この魚は、どんな 気持ちだろう ? ーと尋ねると、たくさんの言葉が出ました。 子どもがマイナスの感情を押さえこんでしまっていると、 発達にとって好ましくない影響があると聞いています。喜怒 哀楽、いろいろな気持ちに素直に向き合うために、子どもと 大人とで一緒に読みたい本です。 48P / 22X27Cm ( 田中純江 )