どの少女も、人と関わる〈痛さ〉に傷つきますが、しかし、 止めに入った担任を傷つけるという事件を起こす : その経験の中で人に支えてもらっていることに気づいていき ます。 友人関係を少しすっ拡げ、その中で自分らしくあることに 主人公のめぐみは、一年間の教室での試練を乗り越えて強 自信を持ち始めるめぐみの心の成長を丁寧に描いている めぐみの周りの少女たちは、優希や直緒、そして理奈や一 ~ くなりました。それは、教室以外の場所で、彼女を見守って 伽、さらにはめぐみの姉も各々の問題や心の傷を抱えている " くれる人がいたからです。高校を中退して自分の道を模索す のだが、 物語にとって重要なこれらのディテールは登場人物 " る姉。共に時間を過ごしながら、「目をそらすな」と大きな メッセージをくれました。海外へ転校していった親友の優希 の回想の形で間接的に判明するという手法がとられている そのせいなのか、要所要所で挿入される情景描写が鮮やかす文通という手段で友情を絶やさず勇気づけてくれました。こ の二人の後押しによってめぐみは教室で立ち向かえたこと ぎるせいか、薄い紗のヴェール越しに芝居を見ているような と思います , 幻想的で不思議な感覚に捉われた。また、クラスの男子は幼 " に、読者である子供たちも気づいてほしい、 この物語から、現実の子供たちの問題に心を致さざるを得 稚な集団としてしか登場しないのだが、これは作者が男性だ からか興味が沸 / 、。 ません。子供たちは、学校以外の多くの時間、夕方から夜遅 くまで、休日の間、誰とどのような言葉のやりとりをして過 ごしているのでしよう。直接的なやりとりが少なくて、 coZ 不登校の子どもたちは減らず、いじめも後を絶たない昨今 co だけで十分に繋がっていると思って、ひとりばっちで過ご の状況をみると、本書に描かれたトラブルの類は珍しくもな いのだろうか友人同士のつながりをとおして、子どもたち】しているとしたら、彼らは、姉や優希のような見守ってくれ がめぐみのように成長できるとよいのだが。 る人を持っているのでしようかこれは、大人こそが考えな ければいけない、大きな問題です。 「ポプラズッコケ文学新人賞」大賞受賞。
争資料館などを巡りながら自分はどんなことができるのか考 ④平和 参加者 8 名えていることなど、話は多岐にわたった。 『せかいいちうつくしいばくの村』 ( 小林豊作・絵 / ポプ 戦後川年、被爆年をむかえ、直接戦争を体験した人が少 ラ社 ) を読んだ 4 年生が、「戦争に行った人のことは書かれ なくなっている中で、どのようにして子どもたちに「記憶」てなくて、でも行かなかった人も苦しかったということがわ を伝えていくのかか問われている かった」と感想を書いていたことを思い出し、改めて本と出 このつどいでは、どんな本をどんなふうに手渡して子ども会わせてあげることの大切さを感じたという声もあった。 たちと本との出会いをつくっていったのか、それぞれの経験 また、講演で被爆者としての那須さんがなぜ『絵で読む を出し合いながら交流した。実体験を持つ人が少なくなって広島の原爆』 ( 福音館書店 ) を書いたのかを知り、子どもた いく中での難しさは否めないが、こうしてそれぞれの経験をちに本を手渡すためにきちんと事実を積み上げていることに 出し合う中で、伝え続けていく大切さやどんなふうに伝えて驚いたことや、もっと知る努力をして自分の知っていること いくのかのヒントを得ることかできた。参加者の「このよ、つを伝えることをしていきたいとい、つ思いが広かった。 な機会に自分が学び、知り、考えること。自分の知っている 参加者が少なくて残念だったが、それだけそれぞれの熱い ことを伝える勇気を持っこと。これからも思いを伝えていか 思いをじっくり話し、有意義な時間を共有できた。 なくてはいけない」という言葉にもあるように、私たち自身 がつながり考えていく場を持つ大切さを実感した。 教科書にも掲載されていた『おかあさんの木』 ( 大川悦生 作 / 蓑田源二郎絵 / ポプラ社 ) を 6 年生に読み聞かせをし、 おかあさんの心の変化を追った実践、被爆体験はないが伝承 者として自分のできる形で子どもたちに伝えているピ 1 スポ ランティアの話、『はだしのゲン』 ( 中沢啓治作 / 汐文社 ) が 好きな子どもとその『はだしのゲン』の撤去問題のこと、戦 ( 司会・記録小寺美和 )
のロ評 2 著者は、渡り鳥のカウント調査をしている。秋は長野県の とか子 白樺峠で、春には青森県の龍飛岬で、渡りをするタカを数え 物る るのである。個体数を数えるだけではなく、タカの種類や、 きき 幼鳥と成鳥の別も記録する。ハチクマ ( タカの一種 ) の場合、 オスかメスか、食べたものが入っている「そのう」という部 分のふくらみ具合も記録するという 渡りの時期になると、タカの渡りに魅せられた野鳥愛好家 達が調査地に集まってくる。三十倍の望遠鏡を一一本並べて双 人こ 眼鏡のようにした手作りの「双眼スコープ」でタカの数を数 る える。一万羽を越えるタカが渡っていくときは、仲間で手分 わ けをして数える程の大がかりな調査だが、この調査はお金を 関 もらって行っているものではない。だから、著者は生活費を一 得るために長野県安曇野のわさび園で働いている 書名の「天井からジネズミ」は、著者が働くわさび園の作 ど 業場の天井から落ちてきた小指の先ほどの小さな生き物、モ グラ目トカリネズミ科ジネズミのことだ。調査で家を空ける ことが多いので生き物を飼うことはないと思っていた著者だ ズ が、生まれたばかりの小さな生き物を外に放り出すのはしの ネ ら文絵版月 4 円ひなく、自分のアパ 1 トに連れ帰る。本書は、そのジネズミ ー出 510 と三年に渡って暮らした記録である。 か子士育年 / 釦 井元弘教 5m1 この本の見どころはいくつかある。まずは、タカの渡りの 天伯べ研 6 体 「佐あ学 22 本魅力が十分伝わってくる点。調査の時期や場所、方法を紹介 ミ
女の子、いつもは子ども部屋の窓辺に座っている。物語は持 参加者 4 名ち主の女の子に乳母車に乗せられ川で忘れ去られたり、屋根 に放り投げられて誰にも気づかれなかったり、釣り大会につ れられまた川の水底へ、最後は森の奥に置き去りに、という 4 場面で構成されていることなど。 主人公ガルドラはいろんな場所で一人ばっちになっても決 して落ちこまず、不思議なほど元気で自分の置かれた環境を 楽しんでしまう。ぬいぐるみが川に落ちたら体はぐしょぐし よ、さぞ気分も悪かろうに、「星を眺めたり、ふくろうの声 に耳を傾けながらにこにこして、周りで起こっている事全て が、自分に何かを教えてくれているようです。ーとおおらか そのもの。 とりあげる本に魅せられて、読書会の進め方が知りたくて、 ガルドラを取り巻く登場人物が皆優しい。ぬいぐるみを置 本は読んでいないけど、と参加者の動機はさまざまだった。 き去りにしてきた子どもへの母親の接し方にも学ぶことが多 、。いつの時代も子どもは不変だと思うが、親に子育てを楽 司会者から読書会の柱として、①主人公について②あらす じゃお気に入りの場面、挿し絵等に関して③今の課題とこのしむゆとりがなくなっているのが昨今の現状。こういう明る 本とのかかわりを中心に話し合いをすすめることが提示され く活力のある読みものを今こそ子ども達に出会わせたい。大 た。本を読んでいない人のために以下を確認しあった。作者社玲子氏の挿絵が物語を生き生きさせていて好感がもてるこ はインド生まれ、渡英しイギリスで執筆活動をし、この本は とも参加者の共通の感想であった。 英国放送協会 (n;ao) の子ども向けラジオ番組で放送され 少人数ゆえ心おきなく自分の感想や疑問を出し合いク読書 たものがもとで本になったこと。ぬいぐるみ人形ガルドラは会は楽しいクの思いで散会した。 手作りで、褐色の肌をして三つ編みに長いスカートをはいた ( 司会・千田てるみ記録・茅野とめ子 ) んきなめいをる ②幼年文学 モドウイナ・セジウィックさく 多買京子やく 大社玲子え 『げんきなぬいぐるみ人形 ガルドラ モドウイナ・セジウィックさく 多賀京子やく 大社玲子え 福音館書店 / 20 ] 4 年
するにとどまらす、調査に集まってくる仲間達が生き物と接乳類ではあるが、鳥の方が人間に近い、と考える。ちうが人 間と心を通じ合わせることのない生き物と冷静にとらえる一 する姿を通して、二カ月にも及ぶ調査の様子をいきいきと伝 方で、著者はちうに心を寄せている えている そのことが最も印象的に伝わる部分がある。寿命が一年と 次は、もちろん、ジネズミの成長の貴重な記録である点。野 鳥の調査に携わる著者だけに、行動や食べ物についての記述されているちうが迎えた二度目の冬、調査で帰りが遅くなる は詳細で科学的だ。例えば、好んで食べた蛾が、細かに種類度、著者はちうを心配する。ジネズミハウスからちうの気配 分けされ、イラストも添えて記録されている。食べないで残が感じられないと、巣をかきわけて生きている姿を確認した す蛾があると知れば、このことをヒントにこれまで知られてくなるのを必死でがまんする著者。「もし、ちうが死んでい たとしても、確認しなかったことを後悔するのは、その一回 いなかった蛾の性質がわかったらおもしろいと考える程だ。 だけ。それまでの何十回も、不安になるたびに巣の中を見る あと一つは、人間と生き物との付き合い方について考える なんて、ちうのためじゃない。自分が早く安心したいだけじ きっかけを与えてくれる点だ。生き物を調査している著者な ゃないか らではの生き物との付き合い方が、ジネズミと過ごした日々 人間は生き物とどう関わることができるのか蝶を収集す の記録に反映されている。著者は、ジネズミに名前をつける つもりはない、やがて自分のいた世界にもどっていくはす、るのが趣味、熱帯魚を飼育するのが好き、猫カフェに行くの と言う。一緒に暮らし始めても、「虫を見たらどうするかな」が幸せ、大が家族の一員だと言う人もいるだろう。野鳥の愛 と、ます疑問を持つ。自然の中で暮らす生き物は、あくまで好家は、渡っていくタカを心配したり、数えている鳥の気持 ちを想像することはあるのだろうか一度尋ねてみたい。残 観察や調査の「対象ーなのだろうか 生き物と仲よくなるには親しみをこめて話しかけることだ念ながら、私達で身近に接することのできる生き物は限られ ている。愛情をかけつつも、自然の生き物としての生き方を と考える著者は、ジネズミの鳴き声をまねて話しかけてみる 「ちう」。それが呼び名になった。著者にとってちうとはど、つ尊重する、そんな態度を子ども達に伝えている作品だと思う 本書は、第五回子どものための感動ノンフィクション大賞 いう存在か ? 著者は、自分がどんなにちうの世話をしても 親と認識されることはないだろう、ジネズミは人間と同じ哺で最優秀作を受賞している
千電八重子 追悼辛島泉さんをしのんで 昭和片年生まれの辛島さんは薬学部出身の会員でした。自立図書館から委嘱され、会の全員で作成した「科学読物ブッ 宅の辛島病院 ( 大分市 ) を支え、三人のご子息を育て、日本クリストー県立図書館理数系推薦図書リストー」は大きな 子どもの本研究会の会員として、「科学よみもの。の普及活財産になったと会員の安部恭子さんに学びました。安部さん は最初からの会員で、辛島さんを支え、会を牽引されていま 動に専念された一人です。 「児童文学と科学読物の会」の名称で 1991 年に 3 名です。 はじめ、「子どもたちに科学の本の楽しさを、科学する喜 読書会を発足、以後幻年間続いています。会員は幻名 に変化してい ( 2015 年 8 月現在 ) 、会報は 100 名近い人々に送られてびを」だったのが、近頃は「子どもたちと : ます。この変化こそが私たちの会の変移かなと安部さんは語 おり、本会にも届いていると思います。 ってくれました。 大分県立図書館での月 1 回の課題図書を中心とした例会 ずっと昔、辛島さんは子どもさん同伴で夏の全国講座に参 は、当初から変わっていません ( 県立図書館自体は建物も場 加していて、いろいろな所で出会いました。「子ども学園 所も変わりましたが ) 。現在は例会とともに数カ所で子ども たちとの「科学あそび」も併行した活動です。辛島さんの「科で未知の子どもたちに出会いをさせ、ご自分は研究会の講座 学の本っておもしろい , をテーマにした講演は今年 2 月、福へ出席して学びをされていました。当時私は福岡、彼女は大 分が活動の場でありました。 岡県小郡市の小学校が最後でした。 「科学読み物」と言えば辛島さんの顔が浮かびます。後を 幻年の歩みを振り返ると、月例会に加え課題図書の著者は 継いで仲間が今日も小学校やサ ] クルに出向き、アイスを作 じめ絵本作家、画家、科学者、弁護士、ブックトークの専門 ったり廃材から音の出る楽器を造ったりする会員の姿がみら 家、その他多くの方々に講演や科学あそびをしてもらいまし 発行 ) となる会れます。多くの人を育ててくれた一人です。川年間ガンと戦 た。これらは今回で号 ( 2 015 ・ 8 ・ 1 って最後まで現役の方でした。葬儀の折にお子さん、お孫さ 報「科楽知タイム」で、その都度例会報告とともに記載して います。中でも 1996 年に開催した岐阜物理サ 1 クル「のんに家族の知らぬ辛島さんの一面をお伝えできたことは有難 らねこ会」による「親と子のわくわく科学ひろば」は、会のかったです。 その後に大きな影響をもたらしました。また 2010 年に県
声の出ない ぼぐと = 一 2 マッさんの この作品は、、いが傷ついたことで、声が出なくなってしま れ本美 ったシンが、母親 ( 以下ママ ) の親友であるマリと一週間を さる由 真 過ごし、心が元気になっていく様子をつづった物語である 癒く村 本の表紙や題名からは、想像もっかないような人物が出て がて山 くるため、主な登場人物である、シン・ママ・マリの紹介を 通じて、作品の魅力に触れていこう。 たわ 主人公シンは二カ月前から声が出ない。その原因は、体で しカ はなく心にある。親友からの「おまえがいると、頭がキリキ リするんだよ」といった言葉や、ママからの「シン、どこか っ欲 へ行って。せいせいするわ」といった発言が、シンの頭の中 傷一思 でいつばいになり、胸が苦しくなる。その結果、シンは言葉 る を発することかできなくなり、小学五年生になったころから、 き 学校にも通えなくなってしまう。 生 シンは今まで自己主張せず、仕事が忙しいママの希望に沿 う生き方をしてきた。父親はシンが生まれる前に事故死して と間 いるため、シンには自分の胸の内を相談できる人が、誰もい なかった。「ほくなんか、消えちゃえばいいんだ : : : 」など、 孤独なシンの自分を責める言葉は、地の文や心の声として、 ん作絵明明 r¯o 頻繁に出てくる 出さ美子年 4 シンのママは、女手ひとつでシンを育ててきた、キャリア れのリ聰智社 41 声マ体邊文 5 体 松渡汐 2 本ゥーマンだ。ママは子どもよりも仕事が好きなのだと、シン
リンドグレーンと少女サラ※ 秘密の往復書簡 1 アストリッド・リンドグレーン / サラ・シュワルト著 石井登志子訳 岩波書店 2015 年 3 月 本体円 中学生から 知らないことを知っていくわくわくした気持ちで、この本 『長くっ下のピッピ』と聞けば、胸ときめかせて読んだと を読んだ。戦争のために故郷コストボル ( 現ウクライナのコ いう人も少なくないであろう。この本は世界中の子どもたち ストピリ ) を追われた家族が、それまでの生活からは、想像を魅了した作品の作者リンドグレーンとサラという一人の少 できない毎日を送っていく。悲しいだろうはずなのに、つら女が交わした通以上もの手紙が収められた書簡集である いだろうはすなのに、少年はたくましく生きていく。守られ 文通が始まったのはリンドグレーン歳、サラ肥歳。その ているだけの生活から、未知への扉を自分の意志で開いてい 年齢差は歳。毎日世界中から膨大な数の手紙をもらい、文 生きるすべを、自らの手に得ていく 通相手になってほしいというクお願いクを断らざるを得なか この本を開くと、初めに「日本のみなさんへ」という作者ったリンドグレーンが唯一文通相手に選んだサラ。サラの何 の前書きがある。この本の舞台であるヨーロッパは、今も昔 がリンドグレーンをそんなにも引き付けたのだろうか。最初 もさまざまな民族が暮らす一つの大陸で、戦いが繰り返されの手紙が書かれた 1971 年に歳だったサラは最後の手紙 てきた。そこに住む人々は、それでも自分たちの宗教や言語 を書いた 2002 年には歳を越えている。一人の少女が悩 を守ろうとしてきた。今も、守ろうとしている。その、「今」み、もがきながら大人へと成長していく過程とともに、常に がこの話に重なって見える あたたかく見守るク大人の存在がいかに重要か読み取れる 終戦後、イスラエルにたどり着く一家。いつも前向きに生 有名な児童文学作家であり、時代のオピニオンリーダ 1 で きた母と子の姿は、今のこの世界の誰かの姿に重なるはすだ。 あったリンドグレ 1 ンの新たな魅力を発見できる一冊でもあ る。 人は、あきらめすに生きていけるのだと力をくれる物語だ。 ( 滝沢純 ) ( 杉山喜美恵 ) 6 254P / 19X 18cm 太陽の草原を駆けぬけて ゥーリー・オルレブ作 母袋夏生訳 岩波書店 2014 年粍月 本体 ] 700 円 中学生から ンドグレ サラ
資料案内 学校面書館九イ 吉岡裕子・遊左幸枝 監修 ありがとう古田足日さんの会編 少年写真新聞社 かもがわ出版 2015 年 5 月 2015 年 8 月 26cm / 95P 本体 1 800 円 20cm/277p 児童文学作家、評論家、読書運動家、児童 学校図書館を職場とする者にとって、子ど 文化研究家の古田足日を知る貴重な資料本で もたちが楽しみにしてくれる図書館・子ども ある。 20 ] 4 年 6 月他界した古田足日を偲び、 たちの役に立つ図書館とはを、日々考え工夫 古田足日児童文学塾、子どもの本・九条の会、 するのは当たり前だと思っています。 新しい戦争児童文学委員会、ゼロの会のメン この本にはそのヒントがたくさんありまし バーが集結したことがきっかけで生まれた本 た。「使ってもらえる図書館」という視点が 前文にきちんと書いてあり、子どもたちに向 ] 章「古田足日未来に語る」は絶筆とな けてどう発信するとよいかという具体例もイ った「母のひろば』 600 号 ( 童心社 ) の「児童 ラストなどを使い多く載っています。 文学、三つの名言」、後藤竜ニ ( 児童文学者 ) 中学生でも分類表示がわかっていないこと への追悼文など、雑誌などに掲載された原稿 があり、自分で本を探すなどとてもできない である。 2 章「足日さんに寄り添い続けて」は、 ことがあります。図書館の本がどんな基準で 文恵夫人が執筆。 3 章「古田さんの作品・仕 並べられているか、わかりやすくひと目でわ 事とともに」は、『おしいれのぼうけん』や「全 かる表示を考え工夫することが第一歩だと改 集古田足日こどもの本』全 ] 3 巻・別巻に関 めて思いました。また、小学校と中学校の違 わった編集者、画家が語っている。読書運動 いも例をあげて説明してあり、自分の学校な のはじまりである「日本子どもの本研究会」 らこうしてみようかとイメージが膨らみまし を代田昇と創立し活躍している。 4 章「東久 た。子どもたちの読書を広げていくというこ 留米の地域に根ざして」は、古田作品地域マ とでは、新刊書やおすすめの本の紹介の仕方 ップが存在し、作品誕生の資料になる。 5 章 も様々な人や仕掛けを取り入れた方法が事例 「古田足日児童文学塾」は、子どもに携る人 としてあげられ、なるほどとうなすいてしま を育てた姿。 6 章「新しい戦争児童文学委員 いました。学びのバックアップをしていく図 会」は、 2004 年古田足日が中心となり、い 書館というのも、調べ学習などで必要な分野 ままでの戦争概念を砕き、子どもたちに戦争 の本を集めたりコーナーを作ったりすること の真実を伝える取り組み内容を知ることがで はもちろん、どんな授業が今されているかを きる。 7 章「子どもの本・九条の会」、 8 章「ゼ 考えて運営していくことがもっと必要だとい ロの会」は、平和への願い。 9 章「古田さん うコラムにハッとしました。学校図書館はも との日々」、終章「未来へ」である。未来の っと自ら動き発信して使ってもらえるように 子どもたちのために、命と平和を願う古田足 日。その願いを、引き継ぐ決意本でもある。 なることが、子どもたちとの未来に大切なこ とだと改めて思いました。 ( 森充代 ) 『発信する学校図書館ティスプレイ 使われる図書館の実践事例集」 「古田足日さんからのバトン ホ、タルプク回咲くころに ( 須長和子 ) ー 44 ー
自分でよくできたと思った箇所や、苦心した点、うまくい 参加者名かなかった所などを発表する 創作講座は、参加者が満員となり、熱気あふれる会であっ 3 講師からの講評 た。書きたいというモチベ 1 ションの高い参加者の方々が多 素材、何を伝えたいか、起承転結のつなげ方、まとめ方、 く、講師の一色悦子さんの優しい語り口で「さあ、みなさん、共感が得られるかなど、具体的にアドバイスがあった。特に できます。書きましよう。ーと背中を押された。それぞれが現実、リアルな世界から少し飛んでいくことは、ファンタジ 集中して、創作に取り組めた。 ーだという指摘にうなすく方々が多かった。常識的な世界で はなく、発想を広げると読み手も書き手も面白いと思った。 〈創作の手順〉 今関信子さんの参加もあり、書いている間、お二人が机間巡 視してくださり、助言してくださったのは、参加者には貴重 な機会であった。また、隣の人と意見を交換する方々もいた。 書く時のポイント ①書きたいことの確認 ( テ 1 マ ) 一色さんから、書くという作業は、孤独なので、仲間作りが 大切というご意見もいただいた。そして、今関さんからは、 ②登場人物、誰と誰か。その関係 好奇心を大事にすること、それがネタになるというアドハイ ③場面 ④誰に伝えたいか。 スもあった。一色さん、今関さん、それに菊地澄子さんの参 ⑤今回は 5 枚の用紙に、書ける所まで書く 加という豪華な顔ぶれと参加者の熱意で暑さも忘れる素晴ら しい会となった。 ※起承転結を構成する。バランスを考慮。 2 発表する 何人かの方が、あらすじなどを発表する。タイトルは適切 か内容は共感しやすいか 〇創作講座 ( 司会・一色悦子記録・小池淑子 )