するにとどまらす、調査に集まってくる仲間達が生き物と接乳類ではあるが、鳥の方が人間に近い、と考える。ちうが人 間と心を通じ合わせることのない生き物と冷静にとらえる一 する姿を通して、二カ月にも及ぶ調査の様子をいきいきと伝 方で、著者はちうに心を寄せている えている そのことが最も印象的に伝わる部分がある。寿命が一年と 次は、もちろん、ジネズミの成長の貴重な記録である点。野 鳥の調査に携わる著者だけに、行動や食べ物についての記述されているちうが迎えた二度目の冬、調査で帰りが遅くなる は詳細で科学的だ。例えば、好んで食べた蛾が、細かに種類度、著者はちうを心配する。ジネズミハウスからちうの気配 分けされ、イラストも添えて記録されている。食べないで残が感じられないと、巣をかきわけて生きている姿を確認した す蛾があると知れば、このことをヒントにこれまで知られてくなるのを必死でがまんする著者。「もし、ちうが死んでい たとしても、確認しなかったことを後悔するのは、その一回 いなかった蛾の性質がわかったらおもしろいと考える程だ。 だけ。それまでの何十回も、不安になるたびに巣の中を見る あと一つは、人間と生き物との付き合い方について考える なんて、ちうのためじゃない。自分が早く安心したいだけじ きっかけを与えてくれる点だ。生き物を調査している著者な ゃないか らではの生き物との付き合い方が、ジネズミと過ごした日々 人間は生き物とどう関わることができるのか蝶を収集す の記録に反映されている。著者は、ジネズミに名前をつける つもりはない、やがて自分のいた世界にもどっていくはす、るのが趣味、熱帯魚を飼育するのが好き、猫カフェに行くの と言う。一緒に暮らし始めても、「虫を見たらどうするかな」が幸せ、大が家族の一員だと言う人もいるだろう。野鳥の愛 と、ます疑問を持つ。自然の中で暮らす生き物は、あくまで好家は、渡っていくタカを心配したり、数えている鳥の気持 ちを想像することはあるのだろうか一度尋ねてみたい。残 観察や調査の「対象ーなのだろうか 生き物と仲よくなるには親しみをこめて話しかけることだ念ながら、私達で身近に接することのできる生き物は限られ ている。愛情をかけつつも、自然の生き物としての生き方を と考える著者は、ジネズミの鳴き声をまねて話しかけてみる 「ちう」。それが呼び名になった。著者にとってちうとはど、つ尊重する、そんな態度を子ども達に伝えている作品だと思う 本書は、第五回子どものための感動ノンフィクション大賞 いう存在か ? 著者は、自分がどんなにちうの世話をしても 親と認識されることはないだろう、ジネズミは人間と同じ哺で最優秀作を受賞している
のロ評 2 著者は、渡り鳥のカウント調査をしている。秋は長野県の とか子 白樺峠で、春には青森県の龍飛岬で、渡りをするタカを数え 物る るのである。個体数を数えるだけではなく、タカの種類や、 きき 幼鳥と成鳥の別も記録する。ハチクマ ( タカの一種 ) の場合、 オスかメスか、食べたものが入っている「そのう」という部 分のふくらみ具合も記録するという 渡りの時期になると、タカの渡りに魅せられた野鳥愛好家 達が調査地に集まってくる。三十倍の望遠鏡を一一本並べて双 人こ 眼鏡のようにした手作りの「双眼スコープ」でタカの数を数 る える。一万羽を越えるタカが渡っていくときは、仲間で手分 わ けをして数える程の大がかりな調査だが、この調査はお金を 関 もらって行っているものではない。だから、著者は生活費を一 得るために長野県安曇野のわさび園で働いている 書名の「天井からジネズミ」は、著者が働くわさび園の作 ど 業場の天井から落ちてきた小指の先ほどの小さな生き物、モ グラ目トカリネズミ科ジネズミのことだ。調査で家を空ける ことが多いので生き物を飼うことはないと思っていた著者だ ズ が、生まれたばかりの小さな生き物を外に放り出すのはしの ネ ら文絵版月 4 円ひなく、自分のアパ 1 トに連れ帰る。本書は、そのジネズミ ー出 510 と三年に渡って暮らした記録である。 か子士育年 / 釦 井元弘教 5m1 この本の見どころはいくつかある。まずは、タカの渡りの 天伯べ研 6 体 「佐あ学 22 本魅力が十分伝わってくる点。調査の時期や場所、方法を紹介 ミ
シリーズ戦争 原発事故で、生きものたちに 語りつごうヒロシマ・ナガサキ 4 何がおこったか。※ 核兵器とはどういうものか※ 永幡嘉之写真・文 7 安斎育郎文 / 監修 つ」 岩崎書店 新日本出版社 Q. 2015 年 2 月 0 ) 2015 年 3 月 本体 1600 円 本体 2500 円 「可 小学上級から 小学上級から 福島原発の事故以後私たちは、自らの命や生活を左右する さまようイノブタ、田んば一面を覆うセイタカアワダチソ 核の問題に否応なく向き合うことを迫られている ウ、奇形を起こしたヤマトシジミなど、題名通りの「フクシ そういう中で出版されたこの本は、単に核兵器の原理や仕マの今」が突きつけられる。川を遡上するサケを見れば、自 組み、破壊力について述べているだけではない。人類の生存然が回復したように見える。しかし、以前よりずっと多く見一 に敵対する核兵器が、。 とのような状況下で、どのような動機かける鳥ノスリ ( ワシの仲間 ) は、その生態から放射能の影 のもとに開発されたのか、ヒロシマ・ナガサキの惨状にもか響か懸念され、他地域にもその影響は及ぶという かわらす、核保有国と核兵器はどこまで増え続けたのか、と 著者は、東北の魅力に取りつかれ、東北の自然を観察し続 いう核兵器をめぐる歴史的状況が明らかにされている けていた。美しかった阿武隈の里山を、原発事故以後も、観 被爆しながら、原爆がいかに非人道的な兵器かを知ること察し伝え続ける著者に観察者としての使命感を見た。 の出来なかった日本人が、しかし「第五福竜丸」のビキニ被 さらに、ここで紹介される琉球大学の大瀧丈二氏のヤマト 災に「核兵器なくせ ! 」と立ち上がり、その声は原水爆禁止シジミの研究は、放射能の影響を示して衝撃的である 運動となって、今、核兵器禁止に向けて世界の世論を動かし 写真やメッセージは、決して難しいものではない。だが、 ている。核の脅威に屈しない理性と意思の大切さが示される フクシマの今後や低線量被曝の影響を考える時、何と困難な 太陽が核融合反応で生み出すエネルギー利用の可能性の提課題を、この日本という国は、背負ってしまったのだろうと 示は、未来への指針となる。写真や絵の資料も豊富で内容が 思う。「フクシマ」のその後を追い続ける必要が伝わって来る、 優れており、ぜひ一読を薦めたい。 貴重な一冊である。 ( 千田てるみ ) 核兵器とは 、どういうものか ( 杉野高子 ) 48P / 27X23Cm
日本子どもの本研究会編 新朝どの本よもうかな ? 中学生 中学生、読書指導の先生、 司書教諭、学校司書、司書、 保護者の方々に役立つ 読みたい本、読ませたい本がすぐ見つかる ブックガイドの決定版 ! ・中学生が読みたい本を探すときのブックガイド。あらすじ、テーマ、作 口をむときのポイントを各作品 1 ページでわかりやすく解説。 ロロロノし 0 巻末には 2 巻共通の全巻索引を掲載。「書名索引」「著者名索引」、テー マから本を探すことができる「事項索引」の 3 種類 ! 0 「本の各部の名前」「図書館活用術」「製本の種類」など、本に関するコ ラムも充実。両編合わせて 14 のコラムを収録しました。 『新・どの本よもうかな ? 中学生版日本編 物語 / 詩歌 / 伝記 / 科学・ノンフィクション / 絵本 / 調べ学習シリーズ 定価 ( 本体 2 , 500 円十税 ) 旧 BN978-4-323 ー 01597-2 『新・どの本よもうかな ? 中学生版海外編 物語 / ノンフィクション / 絵本 定価 ( 本体 2 , 500 円十税 ) 旧 BN978-4-323-01598-9 〒 111 ー 0056 東京都台東区小島 1 ー 4 ー 3 電話 : 03 ー 3861 ー 1861 FAX : 03 ー 3861 - 1507 http://www.kinnohoshi.co.jp 海外編第 新・どの本 ようかな 新・どの本 よもうかな ? 昭和四十七年七月十四日第三種郵便物認可 全 2 巻 、日本子どもの本望会・第 A 5 判 / 各 254 ページ / 上製本 揃定価 ( 揃本体 5 , 000 円 + 税 ) 旧 BN978-4-323-9521 1 -6 海外編 日本編 ー」掲載図書 186 点 」掲載図書 183 点
す、言葉に与える負の感情の力やいじめが始まるときの空気 参加者名感などがとてもよくとらえられている。いつ、自分に向けら いじめのターゲットになった時のイメ れるかもわからない、 ジも、挿絵ともども印象的にえがかれている 大人が読むと、流されないで自己肯定感や充実感を持てる 雰囲気作りや言葉を大切に光る言葉が飛び交う社会にしたい と思わせる力を持った作品といえるが、子どもたちはどのよ 、つにとらえてくれるのだろうか ? 「狭い檻の中で飼育されているんだから、噛みあっちゃう んだよーという義次郎叔父さんのような人や「平気で子ども でいられるのは、いっかはおとなになれるって、わかってる 告 からじゃないのかなあ。ーと、過酷な子ども時代を回想して 報課題図書の著者、岩瀬成子は 1977 年の最初の作品『朝 いる路上生活者クニさんのように縦や横の関係ではなく斜め はだんだん見えてくる』出版以来、家族や地域社会の中での 大 にかかわっていける人、生きづらさを感じたときに、人生に 全子どもの疎外感、抑圧感を丁寧に繰り返し描いてきた作家で はさまざまな道があり、違う世界もあることに気付かせてく 究ある。今回とりあげられた作品もクラスでの孤立やいじめが 本主題になっているだけに、身近な子どもたちの状況に迫るもれる窓口になれるような人が子どもの救いとなっていること も大切な要素として、指摘された。 ものがあり、分という限られた時間では語りつくせないほど ど 一方で、リアルなようで大人目線を感じる、女の子の気持 子瞬く間に予定時間がきてしまった感じで、充実した読書会と 日なった。 ちを書きすぎているという声もあった。ちょっと地味な本な 回 7 のだが、 人間関係に悩んでいるときに読むと、次のステップ 参加者一人ひとりの発言から見えてきたことを報告する。 4 第 の足掛かりを見つけた主人公により共感できて、心に響く作 何気ない言葉で救われたり、傷ついたり、始まりはちょっ 品となっている ( 司会・記録米田久美江 ) 特とした悪意から毒を塗った言葉の矢が飛び交っていくよう きみは知らないほうがいい 岩満成子作長谷川集平第 . ③児童文学 きみは知らないほうがいい』 岩瀬成子作 長谷川集平絵 文研出版
しぜんのひみつ写真館 3 E ぜんぶわかる ! メダカ※ つ」 内山りゅう著 7 酒泉満監修 CIJ ボブラ社 8 2015 年 3 月 つ」 OOO 円 本体 小学上級から 田んばのまわりの用水路でくらすメダカを通して、世界の、 「オキノタュウ」という名前をきいたことがあるだろうか 日本のメダカのルーツを探り生態を紹介している。メダカは「アホウドリーという侮辱的な名で図鑑に掲載されている鳥 日本人には古来より親しまれてきた魚で、各地で様々な呼びの名前である。一時は絶滅寸前になったこの鳥を、たった一 名がある。現在ではなかなか見られなくなったが、生息地や人で無人島にキャンプを張り、幻年以上にわたって毎年一カ一 食性、外敵なども写真を添えて判りやすく説明。交尾 ( 包接 ) ・月間調査・観察した記録である。卵、雛鳥、成長・若鳥、そ 受精・産卵・孵化までを追った写真は素晴らしい。 れぞれの個体数を調査し、生態を観察記録し、孵化して育っ 春になって水が温むころ、川底にじっとしていたメダカが た幼鳥に足環をつける。地を這う努力が功を奏して、鳥島に 田んほの傍らや川の中に群れになって上がってくる。田んば渡った当時ヒナと成鳥合わせて数十羽だったものが、観測数 は稲や水草も多く身を隠すのに格好な場所でエサも多く繁殖が千羽を超えるまでになった。 に適している。また意外なほど大きなたまごを産むのに驚か 第二章では、毎年一か月に及ぶ無人島生活日記である。天 される。 8 倍から川倍くらいのルーべでたまごの中の様子を気の変化や毎回の食事の内容まで様々なことを細かに書きっ 観察することかできるという けている。具体的な生活 ( 例えば、トイレをどうするかなど ) メダカは私たちの体とほほ同じしくみを持ち観察・実験のや、実際に直面した問題などがメモされているこの克明な記 しやすい動物で、その解剖や観察方法なども丁寧に紹介して録は、フィールドワークを伴う研究者の仕事を知る上で、と いる。また、飼っていたメダカを川や池に放してはいけない ても参考になるだろう。なによりも、著者のオキノタュウに 等の注意点も書かれている 対する愛情が詰まっている。カラー写真も豊富。 ふわかる ! メダカ ( 瀬間幸子 ) タ , ュウの . 長谷川 , 博 オキノタュウの島で※ 無人島滞在みアホウドリ調査日誌 5 長谷川博著 つ」 偕成社 Q. 2015 年 5 月 4 LO 本体 1800 円 つ」 中学生から ( 高桑弥須子 )
千電八重子 追悼辛島泉さんをしのんで 昭和片年生まれの辛島さんは薬学部出身の会員でした。自立図書館から委嘱され、会の全員で作成した「科学読物ブッ 宅の辛島病院 ( 大分市 ) を支え、三人のご子息を育て、日本クリストー県立図書館理数系推薦図書リストー」は大きな 子どもの本研究会の会員として、「科学よみもの。の普及活財産になったと会員の安部恭子さんに学びました。安部さん は最初からの会員で、辛島さんを支え、会を牽引されていま 動に専念された一人です。 「児童文学と科学読物の会」の名称で 1991 年に 3 名です。 はじめ、「子どもたちに科学の本の楽しさを、科学する喜 読書会を発足、以後幻年間続いています。会員は幻名 に変化してい ( 2015 年 8 月現在 ) 、会報は 100 名近い人々に送られてびを」だったのが、近頃は「子どもたちと : ます。この変化こそが私たちの会の変移かなと安部さんは語 おり、本会にも届いていると思います。 ってくれました。 大分県立図書館での月 1 回の課題図書を中心とした例会 ずっと昔、辛島さんは子どもさん同伴で夏の全国講座に参 は、当初から変わっていません ( 県立図書館自体は建物も場 加していて、いろいろな所で出会いました。「子ども学園 所も変わりましたが ) 。現在は例会とともに数カ所で子ども たちとの「科学あそび」も併行した活動です。辛島さんの「科で未知の子どもたちに出会いをさせ、ご自分は研究会の講座 学の本っておもしろい , をテーマにした講演は今年 2 月、福へ出席して学びをされていました。当時私は福岡、彼女は大 分が活動の場でありました。 岡県小郡市の小学校が最後でした。 「科学読み物」と言えば辛島さんの顔が浮かびます。後を 幻年の歩みを振り返ると、月例会に加え課題図書の著者は 継いで仲間が今日も小学校やサ ] クルに出向き、アイスを作 じめ絵本作家、画家、科学者、弁護士、ブックトークの専門 ったり廃材から音の出る楽器を造ったりする会員の姿がみら 家、その他多くの方々に講演や科学あそびをしてもらいまし 発行 ) となる会れます。多くの人を育ててくれた一人です。川年間ガンと戦 た。これらは今回で号 ( 2 015 ・ 8 ・ 1 って最後まで現役の方でした。葬儀の折にお子さん、お孫さ 報「科楽知タイム」で、その都度例会報告とともに記載して います。中でも 1996 年に開催した岐阜物理サ 1 クル「のんに家族の知らぬ辛島さんの一面をお伝えできたことは有難 らねこ会」による「親と子のわくわく科学ひろば」は、会のかったです。 その後に大きな影響をもたらしました。また 2010 年に県
リンドグレーンと少女サラ※ 秘密の往復書簡 1 アストリッド・リンドグレーン / サラ・シュワルト著 石井登志子訳 岩波書店 2015 年 3 月 本体円 中学生から 知らないことを知っていくわくわくした気持ちで、この本 『長くっ下のピッピ』と聞けば、胸ときめかせて読んだと を読んだ。戦争のために故郷コストボル ( 現ウクライナのコ いう人も少なくないであろう。この本は世界中の子どもたち ストピリ ) を追われた家族が、それまでの生活からは、想像を魅了した作品の作者リンドグレーンとサラという一人の少 できない毎日を送っていく。悲しいだろうはずなのに、つら女が交わした通以上もの手紙が収められた書簡集である いだろうはすなのに、少年はたくましく生きていく。守られ 文通が始まったのはリンドグレーン歳、サラ肥歳。その ているだけの生活から、未知への扉を自分の意志で開いてい 年齢差は歳。毎日世界中から膨大な数の手紙をもらい、文 生きるすべを、自らの手に得ていく 通相手になってほしいというクお願いクを断らざるを得なか この本を開くと、初めに「日本のみなさんへ」という作者ったリンドグレーンが唯一文通相手に選んだサラ。サラの何 の前書きがある。この本の舞台であるヨーロッパは、今も昔 がリンドグレーンをそんなにも引き付けたのだろうか。最初 もさまざまな民族が暮らす一つの大陸で、戦いが繰り返されの手紙が書かれた 1971 年に歳だったサラは最後の手紙 てきた。そこに住む人々は、それでも自分たちの宗教や言語 を書いた 2002 年には歳を越えている。一人の少女が悩 を守ろうとしてきた。今も、守ろうとしている。その、「今」み、もがきながら大人へと成長していく過程とともに、常に がこの話に重なって見える あたたかく見守るク大人の存在がいかに重要か読み取れる 終戦後、イスラエルにたどり着く一家。いつも前向きに生 有名な児童文学作家であり、時代のオピニオンリーダ 1 で きた母と子の姿は、今のこの世界の誰かの姿に重なるはすだ。 あったリンドグレ 1 ンの新たな魅力を発見できる一冊でもあ る。 人は、あきらめすに生きていけるのだと力をくれる物語だ。 ( 滝沢純 ) ( 杉山喜美恵 ) 6 254P / 19X 18cm 太陽の草原を駆けぬけて ゥーリー・オルレブ作 母袋夏生訳 岩波書店 2014 年粍月 本体 ] 700 円 中学生から ンドグレ サラ
どの少女も、人と関わる〈痛さ〉に傷つきますが、しかし、 止めに入った担任を傷つけるという事件を起こす : その経験の中で人に支えてもらっていることに気づいていき ます。 友人関係を少しすっ拡げ、その中で自分らしくあることに 主人公のめぐみは、一年間の教室での試練を乗り越えて強 自信を持ち始めるめぐみの心の成長を丁寧に描いている めぐみの周りの少女たちは、優希や直緒、そして理奈や一 ~ くなりました。それは、教室以外の場所で、彼女を見守って 伽、さらにはめぐみの姉も各々の問題や心の傷を抱えている " くれる人がいたからです。高校を中退して自分の道を模索す のだが、 物語にとって重要なこれらのディテールは登場人物 " る姉。共に時間を過ごしながら、「目をそらすな」と大きな メッセージをくれました。海外へ転校していった親友の優希 の回想の形で間接的に判明するという手法がとられている そのせいなのか、要所要所で挿入される情景描写が鮮やかす文通という手段で友情を絶やさず勇気づけてくれました。こ の二人の後押しによってめぐみは教室で立ち向かえたこと ぎるせいか、薄い紗のヴェール越しに芝居を見ているような と思います , 幻想的で不思議な感覚に捉われた。また、クラスの男子は幼 " に、読者である子供たちも気づいてほしい、 この物語から、現実の子供たちの問題に心を致さざるを得 稚な集団としてしか登場しないのだが、これは作者が男性だ からか興味が沸 / 、。 ません。子供たちは、学校以外の多くの時間、夕方から夜遅 くまで、休日の間、誰とどのような言葉のやりとりをして過 ごしているのでしよう。直接的なやりとりが少なくて、 coZ 不登校の子どもたちは減らず、いじめも後を絶たない昨今 co だけで十分に繋がっていると思って、ひとりばっちで過ご の状況をみると、本書に描かれたトラブルの類は珍しくもな いのだろうか友人同士のつながりをとおして、子どもたち】しているとしたら、彼らは、姉や優希のような見守ってくれ がめぐみのように成長できるとよいのだが。 る人を持っているのでしようかこれは、大人こそが考えな ければいけない、大きな問題です。 「ポプラズッコケ文学新人賞」大賞受賞。
クアップして解説。 この本からミジンコを見てみたいとミジンコに興味を持っ 子どももいるだろうし、逆に本物のミジンコを観察した結果 この本に手を出す子もいるであろう・ : ということで、今回は 本と実物を両方用意し、両者を往ったり来たりするような形 で会を進めていった。実物は初めてという参加者が多く、ラ イトスコープをのぞいたり、あらかじめミジンコの動く様子 を映しておいたスマホの映像に興味深く見入ったりしてい た。今回は、田んばから掬ってきた水の中にいる生きものを 見たわけで、そこにはたしてミジンコかいるのかどうか : ・ど れが探しているミジンコなのか : ・まさしく本と実物が一体化 はじめに本書のページを繰りながらざっと説明し、未読のしたというか、本と自然を往ったり来たりしたというか : 参加者にもわかりやすく興味を持ってもらうようにした。 科学の本の使い方の特徴の一つである本を仲立ちとして自然 ミジンコは小中学校でも理科の時間に必ず学習する動物性にアタックした感じだった。とりあえす力ラダが透明のあの のプランクトンであるが、生態は知っているようで知らない ミジンコが確認でき、参加者は満足そうだった。 ことが多い。今回も参加者の多くはク名前は知っていたが、 科学の本の読書会はなかなか難しいものがあるが、今回の このよ、つにおもしろい生態を持っていたとは : クと驚きの感スタイルは一応よかったかなと感じた。年間通した研究会で 想が多かった。ます、目が一つであること、環境が変わり酸の話し合いが結集した結果だと思う。 素不足の場合には自らへモグロビンをつくるので全身真っ赤 ( 司会・鈴木浩子演者・増本裕江記録・小澤恭子 ) になること、川 5 回脱皮するとすぐに産卵し、その卵から はすべてメスが誕生。秋口になるとこれまでとは違ってオス か産まれるような体のしくみを持っていることを本からピッ かかやく いのち ージンコ 水の中の小さな生き物 森文俊著 武田正倫監修 あかね書房 / 2014 年 参加者大人名小人 1 名 森文臺 / 新正第