度は、職務執行上の上下関係にすぎないはずだが、現実では二十四時間の全生活を支配して いるらしいのだ。勤務時間外の宿泊先で、「上命下服ーの「リンチ」がまかり通っているこ とが、それをあらためて証明している。 階級社会の最上層部を、スピ 1 ド出世していくキャリアは、こういったノンキャリアの心 情や実態を、全く理解していないようである。むしろ理解しようとしないことが、出世につ ながるようにさえ見える。たとえば中林英二・警務部長にしても、その後の人事異動で警察 庁に戻っている。ポストは長官官房付ということだが、台風が過ぎ去るのをじっと待ってい るかのようだ。せめて集団暴行事件で、警務部長の立場にありながら、新人隊員から救いを 求められなかった不徳を噛みしめ、原因を突き詰めて考えてもらいたいものだ。それが地に 県落ちた警察組織が、蘇生するための第一歩だろう。 公務上で犯罪的な不正を犯すポリスも多い。茅ヶ崎警察署交通課の co ・ co 警部補 ( 五十三 神 歳 ) は、自分で処理した交通事故の加害者について、虚偽の調書を作成していた。事故の実 発態は、九五年三月十六日夕方、主婦 ( 五十一歳 ) の運転する車が、自転車で帰宅途中の・ 祥氏を後ろからはね、いったんは逃げ去っていたというもの。被害者は、頭蓋骨骨折で二十 不 日あまり意識不明で、ようやく命を取り留めるという重大事故だった。しかし、 co ・ ()n 警部 補は、主婦が逃げ去った事実を伏せた調書を偽装し、業務上過失傷害だけで処理していた。

崩壊 ! ニッポン警察 * もくじ 序章「県警本部長巡視」 " 裸の王様ご一行が今日も行く そこのけそこのけ「県警本部長」様のお通りだー 交差点の信号はすべて「青に変わって」ノンストップ通過 ヤクザも顔負け ? 県警本部長のお出迎え 県警本部長のお食事中は、事件の処理も後回し ? 高級レストランに高級旅館ーー・「巡視」成功の秘訣はお好みを知ること幻 壊れてしまった本部長の「おメガネーをパトカ 1 で緊急搬送認 高知県警では人命救助より県警本部長の「お出迎え」が大切幻 ″ノンキャリアの星みが県警本部長を訴えた泥沼裁判騒動 % 「命令と服従」ーー警察内部ではロに出せない「声ー「声」「声 ,

の通信傍受に関する法律 ) が成立した。盗聴を合法化して、過去の違法盗聴の責任を完全に なかったことにしようという意図も、おそらく隠されているだろう。 また、その是非をめぐって国会で論議されているさなか、テレビ朝日記者が、国会内の記 者クラブの電話を使用して、保坂展人・衆議院議員にかけた電話が、盗聴されていた。盗聴 した会話内容 ( 資料 ) と、次のような告発文が、六月下旬に朝日新聞、七月初旬に毎日新聞 に送付され、事件は表面化した。 《同封した資料は、電話通信回線の傍受記録です。警察の施設から、 zee のにアク セスし、傍受したときのものです。通信傍受法の施行に当たって、警察では、警察庁の指示 に基づいて、試験的に通信回線の傍受を準備しています。作業を開始しているところは、本 職のところだけではありません : : : 。》 警察官による、いわゆる内部告発のかたちになっている。告発者が、本当に警察官であれ ば、あえて「警察庁の指示」と入れているところから見て、ノンキャリアの可能性が高い。 現在、テレビ朝日と保坂議員それぞれの刑事告発を受け、東京地検が捜査に当たっている。 警察当局は、「 ( 違法な ) 盗聴はやっていないーと表明している。事実は、いかに。今度こそ 検察は、拍手喝采を受け得るような捜査手腕を発揮してもらいたい。 とにかく九九年夏以降、「盗聴 , をめぐる不連続線が生まれていた。

89 不祥事続発 ! 神奈川県警 していた事件の状況を伝えていなかったのだろう。当時からキャリアと準キャリア ( ノンキ ャリア ) との間には、深い溝があったのだ。 それから数年して兵庫県警や大阪府警の警察犯罪や腐敗が、次々に表面化した。今から思 うと、緒方宅電話盜聴事件の処理にまでさかのばれる神奈川県警の場合と、どこか似ている ようた

第一章不祥事続発 ! 神奈川県警 なぜ県警本部長は″クビにならないのか 「警察キャリア組ナンバー 6 」が組織ぐるみで証拠隠滅 ″シャプ中〃警部補が監察官に告白したすごい内容 「覚醒剤乱用防止キャンペ 1 ン」の裏側で行われた事件隠蔽工作 それでも揉み消しに関与したキャリアはみんな出世和 「報告を聞かないことで責任回避 , ーーキャリア″出世の鉄則〃昭 不祥事警察の横綱「西の兵庫県警、東の神奈川県警」 キャリアには「あま 5 い犯罪認定」 ・ーー元利合計一七六万六一一九五円を払え ! 恐喝ポリスの細かな「芸当」 証拠品を盗んで女子大生を脅迫する悪徳ポリス それでもガッポリ、退職金 若手機動隊員を並べて陰毛に火をつけ「ナイアガラ」ー 天皇警備の合間に楽しむ「電気ショック」遊び 受け継がれた「不祥事隠蔽マニュアル」

思うのが自然だ。それで部下の窃盗事件に思い至らなかったとすれば、キャリア組の思考能 力を疑うしかない。やはり先の覚醒剤使用事件と同様に、なんらかの県警本部長の意思表示 の下に、組織ぐるみで窃盗事件を揉み消した疑いは残るのだ。 事件発覚当初の九九年九月五日、記者会見にのぞんだ深山県警本部長は、次のような紙に 書いた釈明文を読み上げた。 「このような各種不祥事案を起こし、県民の皆さまに深くおわびいたします。今後さらに職 業倫理教育を徹底し、信頼回復にむけて、いっそうの努力をしていく所存であります。関係 記録の精査および説明の不足により、結果として誤解を与えたことに対し、おわび申し上げ ます。この反省の上に立って、今後、なお、適切な報道対策に努める所存であります」 警察キャリアが、組織内の不祥事に直面した時の仕事とは、いったい何なのか。こんな他 人ごとのような抽象的なコメントで、収拾できると考えていたのだろうか。後半部分が、多 分にマスコミ向けであるとしても、それが「適切な報道対策ー程度だとすれば、報道関係者 もなめられたものだ。警察機構のナンバー 6 あたりまで上り詰めたキャリア組なのに、「事 実を謙虚、冷静に調査し、経過と結果を公表し、一般市民以上の厳しい処置をとる」という 自覚と責任感が、全く欠落しているのである。 いずれにしても責任問題は、厳格に問われてしかるべきだ。一時的であれ、事件を闇に押

45 不祥事続発 ! 神奈川県警 の段階で、もう一人警備部のキャリアである芝昭彦氏が、刑事訴追から除かれたことになる。 現在の警察組織では、キャリア、とりわけ警備公安系が、人事的にも優遇されているとい われ、警察内部からも、それが市民の生活を守る刑事系を弱体化させ、ひいては警察組織内 の腐敗にもつながっているという声が聞かれる。 この神奈川県警の揉み消し事件の処理を見ても、同じ傾向がうかがえる。二十代後半で神 奈川県警外事課長という超スピード出世していた芝氏にしても、一旦警察庁に呼び戻した上 で、九九年十二月一日付で「依願退職 , という、非常に温情のある処理をしている。

のスペシャリストだと思うだろう。しかし、そんなことは全く関係ない。先の谷川議員の質 問にもあったように、大学時代に「国家公務員—種 ( 上級職 ) 」という一般的な国家公務員 試験に合格しているだけ。それだけで高級官僚の予備軍と見なされ、ものすごい速さで出世 の階段を駆け上っていくのである。 警察庁は、毎年、十数名から二十名弱のキャリアを採用している。最近の警察庁は、大蔵 省や通産省と争うほど、—種合格者の人気は高く、入庁者も東大卒が大半を占める。 現在、警察庁採用の現役キャリア組は、約五百二十人。ここ十年ほどの間に百人以上増え たが、全都道府県警に所属する警察官は合計約一一十一一万九千人 ( 警察職員を含めれば約一一十 五万人 ) にのばる。したがってキャリア組は、全警察官の約〇・二パーセントにすぎない。 警 さて、この〇・二パ 1 セントが、大学を卒業して警察庁に入ると、自動的に「警部補。の 県 階級が与えられる。そして約五か月間の研修を受けた後、大きな警察本部管内の警察署に出 神 される。たとえば九九年四月採用者は、警視庁 ( 新宿、渋谷、池袋 ) 、大阪府警 ( 西成、南、 曾根崎 ) 、福岡県警 ( 博多、中央 ) 、愛知県警 ( 中村 ) 、京都府警 ( 伏見 ) 、神奈川県警 ( 川 崎 ) 、千葉県警 ( 船橋 ) 、埼玉県警 ( 川口 ) 、兵庫県警 ( 生田 ) に行っている ( 九九年十月時 不 点Ⅱ以下同 ) 。 この最初の現場経験は、わずか半年程度で終了し、本庁 ( 警察庁 ) に上げられる。そして

裁判で浮上した公安警察の秘密組織「サクラ』 盗聴事件の概要を振り返ってみよう。緒方宅と盗聴用アジトは、ともに警視庁管内の町田 市にあった。しかし、盗聴を実行していたのは警視庁ではなく、神奈川県警の公安一課に所 属するポリスだった。盗聴されていた被害者側がそれに気づき、犯行が確認された。そして 損害賠償を求めた民事裁判を起こした。 結果、《神奈川県警警備部公安一課所属の少なくとも三名以上の警察官が関与し、かっ長 期にわたって継続的に ( 盗聴を ) 行っていたものである》 ( 九七年六月二十六日の東京高裁 判決 ) と、裁判所も神奈川県警のポリスによる盜聴行為だと断定している。 しかし、判決で「三名以上」と認定された盗聴警察官は、すべてジカタ ( 県警採用 ) のノ ンキャリアだったのである。 「盗聴実行者とされたジカタ組は、冷たい処遇を受けている。一人は事件の捜査中に自殺し ているし、『上司の命令でやった』と発言した巡査は辞職した。神奈川県警に残っている二 人も、いまなお復権できずに、わかりにくいポストに置かれたまま。一方、盜聴事件の背後 には、キャリア組の影がチラついていた。そのキャリア組は、社会的な制裁も受けず、警察

不祥事警察の横綱「西の兵庫県警、東の神奈川県警」 キャリアには「あま 5 い犯罪認定」 「これは覚醒剤事件に端を発した、警察組織による証拠隠滅と、犯人隠避という複合的な事 件だ。トップの県警本部長の指示で、組織で三年間も事件を隠し通していた。つまり証拠隠 滅の過去がある事件だから、まず被疑者を逮捕して、ロ裏合わせなどの証拠隠滅を防ぐのが、 捜査の常道だ。なのに在宅のままで、警察も検察も捜査を続けた。これは不可解というより、 身内に甘い措置であるし、特にキャリアには大甘だというしかない」 こういった批判も、事件を追っていた社会部記者を含め、一般市民から出ている。 つまり「犯人隠避」の部分では、県警本部長を含めた関与は、否定できない状況に追い込 まれた。しかし、「犯人隠避ーと同等ないしはそれ以上に悪質な「証拠隠滅」や「共謀性ー の点で、極力小さく収めるような捜査処理を行ったのではないかという疑惑だ。 検察の大森礼子・参議院議員 ( 公明党 ) は、参議院地方行政・警察委員会 ( 九九年十 一月十六日 ) で、次のように石川重明・警察庁長官官房長に噛みついている。