スの九人の警察官たちが報告を怠ったのか、県警本部の方が「事件ーを隠し通せるものなら 隠し通したいと考えてそう言ったのだろうか。事実関係は不明だ。 警察の常識は一般市民の非常識 たしかにパトカーの通報を受けて五人の「救援部隊」が派遣されてきた。水中にまで入っ て捜索もした。しかし寸秒を争う水難事故で、後からやって来た「救援部隊、がいくら一生 懸命捜したとしても、松ケ瀬橋の上で「目視」していたり、水際まで下りながら「目視、だ けで冷たく立ち去ったマイクロバスの警察官たちの存在を知る父母たちにとっては、全く意 味はない。人の生き死にの緊急事態に直面して、町の人たちにとっては警備担当も、「救援 部隊、も関係ない。すべて同じ警察官なのだ。 しかし、警察の論理や認識は少々違うようだ。 「重要な任務をほうり出し、溺れた子供の救助に専念するわけにはいかない。間の悪い時に 急訴があったため、誤解が増幅、混乱したのである」 と、警察庁キャリアの鈴木達也氏 ( 捜査評論家 ) は某月刊誌に書いている。 また、この「事件」の調査に入った片桐義之・岐阜県議会議員 ( 共産党 ) も次のように話
される。そこで緒方宅の電話盗聴事件にしても、警察庁警備局公安一課『サクラ』が関与し、 神奈川県警本部長の頭越しに、県警警備部長ないしは盗聴実行者と関係していた疑いが持た れている。 この警察庁と神奈川県警の指示・命令系統の中に登場する人物は、《県警公安一課長・金 田浩 5 同公安一課・盜聴実行者》を除き、すべてキャリア組の首脳である。 警察庁は、今に至るも緒方宅電話盗聴事件とのかかわりを否定している。しかし、事件が 発覚した後、東京地検の事情聴取の手が警察関係者に伸びていくと、奇妙な人事異動が行わ れている。 《 ( 八七年 ) 六月一六日の幹部人事異動で神奈川県警の中山好雄本部長の辞職と吉原丈司警 備部長の総務庁青少年対策本部参事官への転出を発令しました。中山本部長は関東管区警察 局長への昇進も噂されていました。在任一年一〇カ月、五三歳での退任は異例です。吉原警 神 備部長にいたっては就任後わずか一〇カ月で転任という不自然さでした。 発 つづいて七月四日付で発令された警察庁の夏の定期人事異動では、三島健二郎警備局長が 辞職・退官、小田垣祥一郎警備局公安一課長が警察共済組合本部事務局長に転出しました。 不 三島警備局長は、警視総監の有力候補といわれ、警察庁では本庁局長で退官したのは過去に 石も三人だけで、これまた異例なことです。
れなくなったからである。ホテル代は、監察官室の係官のポケットマネーで支払ったとされ るが、これも疑わしいものだ。 この間の十二月十六日午前中に、渡辺泉郎・神奈川県警本部長は、事態の概要について報 告を受けた。 報告を聞き終えた本部長は、 「不倫問題で一日も早く辞めさせろ」 と指示したとされる。 しかも、不倫の実態調査を命じないまま、不倫を理由に実質解雇を即座に言い渡したので ある。言葉の裏に、″覚醒剤事件を闇に葬れ〃という意味が隠されていることは、明らかだ った。だから部下たちは、覚醒剤使用が確認できなくなるまで、・警部補をホテルに軟 剽禁し続けたのである。尿の検査結果は、毎日、渡辺県警本部長に報告されていたという。 神 ニッポン警察のナンバー 6 に位置するキャリアが、覚醒剤事件を不問に付しただけでなく、 発事件の揉み消しを指示し、最後まで見届けていたのである。異常な事態である。 事 トップが腐ったリンゴでは、組織全体が腐敗するのは当然だ。渡辺県警本部長の指示に沿 祥 不 って、神奈川県警は、組織ぐるみで覚醒剤事件の揉み消しに走った。たとえば覚醒剤事件を 担当する生活安全部の部長は、監察官室長から「尿検査の結果が陰性になるまで捜査に入ら
時に強姦されている。子さんもワイセッ行為を仕掛けられた。それを訴えようと、取り調 べの捜査員に弁護士と面会したい旨を訴えた。 その時捜査員は、「事件をうやむやにはしないが、表沙汰にしない方がいいのではないか』 というようなことを言って、弁護士に会わせていない。弁護士との接見を巧みに制止してお いて、一方で警察は急いで co 巡査部長を逮捕した。 その後が問題で、事件を警察に都合のいい情報に加工してマスコミに流し、情報操作を図 った疑いがある。 々実は子さんは沼津拘置所に移管時に、タイツを首に巻いて自殺を図っている。これにつ すいて警察は、『子さんはと恋愛関係にあり、 ()n が逮捕されたことに責任を感じて自殺を 滅図った』というような意味の説明をしている。しかし、事実関係が全く違っている。子さ 身んは自殺を図った時点ではまだ弁護士とも会っておらず、事件が表面化したことは知り得る 女 立場にはなかった。警察が意図的にマスコミ操作をしてデマを流したとしか思えない プ これが被害者の関係者の証言である。警察内部の不祥事については、どこかでなんとか少 ン ャしでも事実を矮小化しようとする警察の体質には、本当にあきれはてるばかりだ。 なお、この事件の裁判記録の開示、閲覧を求めたジャーナリストが、申し出を拒絶されて 幻いる。事件の真相は、二重三重の壁を立てられ、隠されていくのである。
786 警察官の掟ーー身内の不祥事は密かに処理して表に出すな ! 和歌山県警のネコババ事件も、拾って届け出た人物が、あとから落とし主が現れたかどう か確かめるために、届け出た派出所に再び立ち寄って事件が表面化した。 「白浜地区は自治・防犯がよくやられている所ですが、そこの椿駐在所の警察官が辞めてし まい、だれもいなくなってしまった。それで警察官を回してほしいという要望が地区の住民 から出た。私の所にもなんとかしてほしいという話があって、動いていた。 そうこうしている中で、どうも椿駐在所にいた警察官が突然辞めたのは、前任地で拾得物 をネコババしていたために辞めさせられたらしい、とたまたま耳に入ってきたんです。調べ てみたところ、それが事実だったことがわかった。辞めた警察官は懲戒免職になっていたん です。 驚いたことに、和歌山県警はそういった事実を発表せず、ずっと隠し続けていた。私が知 ったのは、事件が内部的に処理されてから一年あまりも後のことだったんですよ」 と、警察の一一重の問題点を指摘するのは、この事件を県議会経済警察委員会で取りあげた 浜本収・県議会議員 ( 社会党 ) である。
法であり、冤罪事件になりやすい典型的な捜査パターンと言える。 また、愛知県警では、警察情報を盜み出し、元暴力団組員の興信所経営者に漏洩していた 徳島県警の警察官は、窃盜事件の証拠品として押収した現金 という警察官が、逮捕された。 , を着服し、逮捕された。警視庁、大阪府警、神奈川県警 : : : と、痴漢・わいせつ警察官は跡 を絶たない。大阪府警の警部などは、東京中野の警察大学校に「新任機動隊幹部教養ーの研 修に来ていて、その合間に女子高生のスカートの中をビデオカメラで盗み撮りしていたとい うのだから、なんのための「幹部教養ーだったのかと言いたくもなる。 日本の警察は優秀だーーーと、自他ともに認めてきた。私もある時期まではそう思っていた。 しかし、十年ほど前からその内側を取材してきたが、実に腐敗・堕落していると実感した。 さらにこの十年間、警察組織の腐敗・堕落は、改善されるどころか逆に進行してきたようだ。 その象徴的な事例が、昨年秋に露見した「神奈川県警本部長の犯罪」である。ついに警察の 力なり衝撃的な現実 腐敗・堕落は、組織の中枢部にまで及んでしまったのだ。このことは、ゝ であり、深刻な事態である。 十年前から指摘してきたところだが、いわゆる「警察問題ーは、二つに大別される。一つ は、警察組織内部の腐敗や不正の問題。これは階級が一つ下というだけで、自由にものも言 えないという非民主的な警察組織が、一つの土壌になっている。また、国家公務員のキャリ
ようだ。これなどは暴力団顔負けの犯罪だ。 女子大生が、恐喝ポリスが所属する神奈川県警ではなく、警視庁管内の警察署に被害を訴 え出たために、事件は表面化したようだ。そうでなかったら、これも揉み消されていたかも しれない。 市民の安全を守る立場にあるポリスが、反対に一般市民を脅迫するのだから、卑劣きわま りない。世も末だ。 さらに恐ろしいことには、覚醒剤事件の裏に犯人隠避・証拠隠滅事件が隠されていたよう に、この脅迫事件も複雑系犯罪だったのである。つまり脅迫に使ったネガフィルムは、警察 署内に保管されている証拠品の中から、盗みだしたものだったのである。 県そもそも事件の発端は、神奈川県警多摩警察署の管内で自動車窃盜事件があり、複数警察 くだん 剽署による連合捜査体制が組まれた。そこに件の脅迫ポリスが、相模原南警察署から派遣され 神 た。その捜査過程で事件の被疑者から、問題のネガフィルムなどを任意提出させた。その一 発部を盗みだし、脅迫に使ったのである。つまり窃盗事件の捜査に行った刑事が、もっと悪質 祥な窃盜事件に手を染めたうえ、それをネタに脅迫していたというコワ 1 いオハナシなのだ。 不 さらに、さらに神奈川県警は、この事件でも自らの手を汚している。九八年十二月に入り、 警視庁から連絡があり、・元巡査長から事情を聴いた。そして同十二月二十五日付で密
の前任の神奈川県警警備部長だった松崎彬彦氏も、財団法人日本道路交通情報センター理事 を務めている。 いずれも盗聴関与を否定している。とはいえ、損害賠償請求の民事裁判もあり、積極的に 反証・反論する機会も与えられたが、説得力ある「潔白証明」がされたわけでもない。まし てや盗聴事件の「事後処理」が、神奈川県警腐敗の大きな要因になっているとすれば、少な くともキャリア組の管理責任に時効はない。等々思うに、自殺者まで出たノンキャリアの盗 聴実行ポリスの実状と比べ、文字通り天国と地獄の格差が生じているというしかない。真相 を知っているであろう神奈川県警のノンキャリア組が、隠された情報の「公開」という反乱 を起こしたとしても少しもおかしくはない。 県ちなみに九六年の覚醒剤事件揉み消し事件に関与したり、少なくとも管理責任を負ってい たキャリア組も、事件発覚直前まで素知らぬ顔で、昇進あるいは天下りをしていた。 神 ただし、この揉み消し事件では、関与したノンキャリア組も昇進している。したがってこ 発の事件の処遇では、ノンキャリアに対する処遇も盗聴事件の時のような不満を残さない配慮 事 ( ? ) がされたのかもしれない。 不
ノ 70 大阪府警が闇に葬ろうとした「警察官ネコノイ ヾヾ事件 逮捕、取り調べ、自白強要ーー犯人「テッチ上け」の構図 一九八八年二月、大阪府警堺南警察署で「十五万円ネコババ事件」と呼ばれている事件が 発生した。落ちていた現金十五万円を派出所に届け出た主婦が、警察によって逆に窃盜犯に されたという、天が動き、地球が止まった事件である。 ネコババ犯人にデッチ上げられかけた主婦は大阪府警の責任を問うため、八八年五月一一十 五日に一一百万円の損害賠償を求める国家賠償訴訟 ( 民事 ) を起こした。 五十日後の七月十五日、大阪地裁で第一回の法廷が開かれた。大阪府警はここで、事実関 係については一切争わない、しかし、損害賠償請求には応じる「請求認諾」という作戦に出 た。法廷で争うことで、あらためて「ネコババ事件」の背後に見え隠れする「犯人デッチ上 げ・証拠ねつ造」という警察の構造的な腐敗や組織犯罪性が白日の下に暴きだされることを 嫌ったものと見られる。 事件は、十五万円をポケットに入れてしまった一巡査 ( 懲戒免職 ) の「業務上横領事件
かに懲戒免職にし、本来の窃盗ないしは恐喝・脅迫事件の方は、送検もせず、そっと闇に葬 ってしまった。 警察当局は、 「被害女性から捜査協力が得られなかったから , と、釈明していた。 たしかに恐喝・脅迫事件は、女子大生側の要請もあり、穏便に収めたらしい。しかし、ネ ガフィルムを盗みだした窃盗事件の方は、女子大生の協力がなくても十分に捜査・立件でき る状況だったはずだ。こんな捜査の素人でもわかる処置を、捜査のプロである警察がしてい なかったことが問題なのだ。 相模原南署・巡査長の件は、脅迫・恐喝事件から約八か月後の九九年九月初旬、どこ からか情報が漏れ出し、毎日新聞がスクープした。すると神奈川県警は、警察庁の指示もあ ったようだが、再捜査に着手した。そして約一か月後の十月一日、ネガフィルムの窃盗容疑 に限定して、・元巡査長を送検した。「新聞が書いたから事件だ」という感じだが、そ の後批判が高まる中、やむにやまれぬといった感じで逮捕された。これだから警察の信用は 落ちていく。