ひさん ひさん 「戦争は、みんな悲惨よ。悲惨じゃない戦争なんて、ないわ。人は、なにかを ま、も たたか 守るために、あるいは、なにかを手に入れるために、戦うしかないような気か せんそう ひさん して、戦争をはじめるけれど、はじめてから気づくのーーーー戦争は、悲惨で、残 かな こくで、悲しいだけだって」 かえ 「 : ・・ : わたし、、っちへ帰りたい。パヾ ノとママに会いたし : よこがおみ げんき ジャックは、びつくりして、アニーの横顔を見つめた。いつも元気なアニ 1 か、うちひしがれている : いえかえ 「そうね。あなたたちは、そろそろ、家に帰ったほうかいいわ」と、クララ みすた もの ふしようへい ジャックは、水や食べ物や、なぐさめのことばを待っている負傷兵たちのこ おも ぜんせん とを思った。前線にもどるとい、つ、鼓手のジョンのことも わか かんごふ かみ それから、若い看護婦にもらった紙きれを、取りだした。 「ばくは、残ります。とちゅ、つで投げだしてはいけないんだ。ほら、この『看 護のこころえ』にも書いてある。〈最後までやりとげる〉って : : : 」 せんそう のこ せんそう せんそう ひと かん ざん
なんばくせんそう どくりつ 南北戦争で死んだ兵士の数は、アメリカが独立して以後の、そのほかの禛 ししゃ そう おお かす 争の死者をせんぶ合わせた数よりも、多かった。 なんばくせんそう ひさんせんそう そこで、南北戦争は、〈アメリカでもっとも悲惨な戦争〉と呼ばれる かな 「ここで、そんな悲しいことが、おこってるなんて : : : 」 アニ 1 は、いまにも泣きだしそうだ。 ジャックはだまって、ノートに圭日きたした。 / もっとも悲惨な戦争 「お兄ちゃん、見て。もっと大ぜい、やって来るわ ! 」 かお そとみ ジャックは、顔をあげて、外を見た。 あおぐんぶく さいしょ 森の中から、青い軍服の兵士が、あとからあとから出てくる。最初のふたり なか かす おお
マジック・ツリーハウスもくし せんしようにひびくうたこえ 〔第 1 話〕戦場にひびく歌声 モーガンの危機・ アメリカでもっとも悲惨な戦争 : : : 衵 野戦病院 : 黒人兵の悲しみ・ ほこりまみれの天使・ 4 砲央をくくりぬけて・ あの少年兵を救えー ションとジャック : 戦場にひびく、ふるさとの歌 8 ジョンの意外な事実・ お話のふろく 8 せんしよっ こくしんへい ほうか やせんび雀ういん はなし しようねんへいすく かな いがい てんし ひさんせんそう じじっ うた
戦場にひびく、ふるさとの歌 せんとうおこ しまも戦闘か行 タもやのなかに、クララとアニ 1 か立っていた。ふたりは、、 ほ、つ・刀ノ、み・ なわれている方角を見つめている に、つ、カ′、 ジャックも、そばへ行って、その方角をながめた。 しろけむり ひか ピカッと光っては、白い煙かたちのばる。すこしおくれて、ドカーン、ドカ おん ンとい、つはれつ音か、聞こえてくる たまひとお わか 「ああして、大砲の弾が一つ落ちるごとに、若い命がうばわれていくの : いちど それも、ひとりやふたりじゃないわ。一度に、大ぜいの命が失われるのよ」 また一つ、白煙がたちのばった。 かな 「あの一発で、すべてが吹きとんでしまうのーーーよろこびも、悲しみも、未来 ゅめ への夢も。兵士ひとりひとりの、かけがえのない人生のすべてが : : : 」 ひさんせんそう 「この戦争は、ほんとうに〈悲惨な戦争〉なのね」アニ 1 が、つぶやいた。 ゅう ひと せんそう いつばっ せんじよう はくえん おお じんせい いのち いのちうしな みらい 戦場にひびく歌声
カっしゅうこく ねんどれいせい 一八六一年、奴隷制に反対するエイプラハム・リンカンが、アメリカ合衆国 じゅうい亠っしゅう えら なんぶ だいじゅうろくだいだいとうりよう の第十六代大統領に選ばれました。すると、南部の十一の州は、べつの国をつ たたカ なんぶ せんそう はんらん くろうとして反乱をおこし、北部と南部のあいだで戦争がはじまりました。戦 ろくじゅう よねんかん なんほく ねん お いはなかなか終わらず、一八六五年までのおよそ四年間に、南北あわせて六十 に士小んにんいじよう だいにじせかいたいせんせんししややくよんじゅういちまんにん 二万人以上の兵士が戦死しました。第二次世界大戦の戦死者約四十一万人とく っこくない ぎせい らべても、一国内の戦争で、いかに多くの人が犠牲になったかがわかります しじよう ひさんせんそう なんばくせんそう このため、南北戦争は「アメリカ史上もっとも悲惨な戦争」と呼ばれています。 じぶんざいさんつか やせんびよういん せんそうちゅう ートンは自分の財産を使って野戦病院をつくり、 この戦争中、クララ・ せきしゅうじ ふしよう たす ぐんなんぐんくべっ 軍、南軍の区別なく、負傷した兵士を助けました。その後「アメリカ赤十字」 ひとびと すく せつりつ を設立して、さらに多くの人々に、救いの手をさしのべました。 どれい ねんほくぐんしようり せんそ、つお 一八六五年、北軍が勝利して戦争が終わり、アメリカのすべての奴隷に、人 じっさい さべっ げん けんり 間としての権利と自由がみとめられました。しかし、実際には、差別はすぐに けんり こくじんはくじん はなくならす、アメリカの黒人が白人とおなじ権利を手に入れるまでには、そ ひやくねん れからさらに、百年かかりました。 じゅ、つ おお せんし せんそう はんたい ほくぶ おお て ひと て よ く 0
アメリカでもっとも悲惨な戦争 まなつひ ジャックが目を開けると、小屋の中には、真夏の日ざしがさしこんでいた。 「うわあ、暑いな ! 」 「ここへ : : 行きたい : つよかせふ ドーン、ゴロゴロ ! と、かみなりが鳴って、いちだんと強い風が吹きはじめ ツリー ハウスか、まわりはじめる おも かいてん 回転がどんどんはやくなり、ジャックは思わす目をつぶった。 しず やがてなにもかもが止まり、静かになった。 なにも聞こえない。 あっ こやなか ひさん せんそう
あおそら みどりそうげん 本の表紙には、ぬけるように青い空と、緑の草原の絵があり、その上に『南 だいめい 北戦争』という題名がついていた。 ジャックが、こ、つふんして一一一口った。 なんばくせんそう 「南北戦争だって ? それはたしか、アメリカか、」 そう たの 争だ。これは楽しみだなあ ! 」 アニ 1 は、まゆをしかめ、ジャックをにらんで言った。 たの たの 「楽しみ ? 戦争が、どうして楽しみなの ? 」 ジャックは、ちょっとこまって、ロごもった。 おも ほんよ 「そりゃあ、ばくだって、戦争はよくないと思うけど : 。でも、本で読んだ れきし り、歴史でならったりする戦争の話は、おもしろいじゃないか」 アニ 1 はだまってしたか、 、 ' 、やかて、あきらめたように言った。 「わたしは気がすすまないけど、ここに行くしかないのよね ? ほんひょうしゅび こ、ん ちい そして、本の表紙に指をおき、小さい声で、いつものおまじないをとなえた。 ばくせんそう ほんひょうし せんそう せんそう せんそうはなし くち きたみなみ ヒと南にわかれて戦った戦 え オたカ 、つえ ん なん 戦場にひびく歌声
しよくみんちたかせいきん やがて、本国イギリスが、植民地に高い税金をかけるようになると、それ どくりつけつい しよくみんちひと に反発した植民地の人びとは、イギリスからの独立を決意した。 しよくみんち せんそう ねん 一七七五年、イギリスと植民地とのあいだで、戦争がはじまった。 ねんしよくみん お しよくみんちぐんしようり ねんたたか 一七八一年、戦いは植民地軍の勝利に終わった。そして一七八三年、植民 じよう がっしゅうこく ちせいしきどくりつ 地は正式に独立がみとめられ、〈アメリカ合衆国〉がたん生した。 どくりっせんそう このため、この戦いは〈アメリカ独立戦争〉と呼ばれている ジャックは、リュックからノートを出して、書きとめた。 ー / アメリカもとは、イギリスの植民地 かっしゅうこ / 、 どくりっせんそう 独立戦争で勝ち、アメリカ合衆国となった あか ぐんぶく きへいし さらにページをめくると、赤い軍服を着た兵士の絵があった。それには、こ せつめい んな説明が書かれている はんばっ ほんごく たたか 0 よ 、ん 0
ほこりまみれの天使 ほんひら 1 トンと書いてあるべ 1 ジをさがした。 ジャックは、本を開き、クララ・ やせんびよういん クララ・ 1 トンは、南北戦争のとき、自分の財産をつぎこんで野戦病院 てあ をつくり、負傷した兵士たちの手当てや世話に、力をつくした。 きゅうきゅうしゃ き びよういん せんじよう クララの馬車は、救急車のように、戦場と病院のあいだを行き来して、負 せんじようてんし 傷した兵士を運んだ。そこで、クララは、〈戦場の天使〉と呼ばれた。 しせんさい せきじゅうじ せつりつ せんそう その後、クララは「アメリカ赤十字」を設立し、戦争だけでなく、自然災 ひと 、力し 害にあった人びとにも、救いの手をさしのべた。 ジャックは、本をしまうと、アニーのあとを追って、馬車のほうへ走って いった。 しよう ばしゃ ふしよう ほん なんばくせんそう て てんし じぶんざいさん せわ お ちから ばしゃ よ 4 戦場にひびく歌声
ひと びよういんはこひつよう 「あのなかに、病院へ運ぶ必要のある人がいるかどうか、見てきてちょうだい」 ばしゃ / し なんぐんへいし だが、馬車の荷台には、すでに南軍の兵士が乗っている の ほくぐんなんぐんへいし 「 : : : 北軍と南軍の兵士を、いっしょに乗せて、だいじようぶですか ? 」 き しんばい ジャックが心配して聞くと、クララは、つなずいて一言った。 てきみかた きず 「傷をおった兵士たちは、もう、敵か味方かなんて、どうでもよくなってしま し てき うの。ときには、敵どうしか、知りあいだったということもあるわ。この戦争 A すも きたみなみ では、たくさんの親子や、兄弟や、友だちどうしが、北と南にわかれて戦って いるのよ」 「わかりました。行ってきます ! 」 と ばしゃ すい アニーが、水とうを持って、馬車から飛びおりていった。ジャックも、すぐ お そのあとを追った。 こ、ん アニーが、兵士たちに、声をかけた。 ひと びよういんはこひつよう 「このなかに、病院へ運ぶ必要のある人は、 ) おやこ きようだい しますか ? 」 の み 0 オオカ せんそう 戦場にひびく歌声