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検索対象: 戦場にひびく歌声
20件見つかりました。

1. 戦場にひびく歌声

おも てくちお アニ 1 は、思わず、手でロを押さえた。 、つまの すると、もうひとり、やはり馬に乗った男かあらわれた。 あたま あおふく ぬのま その人も、やぶれた青い服を着て、頭に、血のにじんだ布を巻きつけている お ふたりとも、ぐったりしていて、いまにも馬から落ちそうだ。 おとこみ ジャックは、ごくりとつばを飲みこんで、ふたりの男を見つめた。 ひと 「あ、あの人たちは、だれなの ? 」 こ、んき アニーが、ふるえる声で聞いた。 ほんひら あおぐんぶく なんばくせんそう ジャックは、『南北戦争』の本を開き、青い軍服を着た男の絵を見つけると、 よ せつめい その説明を読みあげた。 りようどひろ がっしゅうこ , 、 じゅうきゅうせいき 十九世紀のなかごろ、アメリカ合衆国は、西へ西へと領土を広げていた。 しようこ、つぎようちゅうしん はってん ほくぶ のうぎようちゅうしん へんか そのころ、商工業を中心にどんどん発展する北部と、農業が中心で、変化 しけんたいりつ のおそい南部とのあいだで、意見の対立がおきていた。 ひと なんぶ の 、つま おとこ ち きおとこ え み 0 0

2. 戦場にひびく歌声

馬車の荷台には、けがをした兵士たちが乗せられていた。血を渣し、ひどく くる ひと 苦しんでいる人もいる。その人たちを、看護の人たちが、タンカに乗せ、つぎ つぎとテントへ運んでいる。 ばしゃぎよしやだい そのようすを、馬車の御者台から、じっと見つめている女の人がいた。 くろかみ じみふく 小柄なその女性は、黒髪を後ろで丸くまとめ、くすんだ色の地味な服を着て かお あせ いた。とほこりにまみれた顔は、きびしい表情を浮かべている : この人が、クララ・ 1 トン ? ) そうぞう せんじようてんし ジャックは、〈戦場の天使〉ということばから想像していたイメ 1 ジと、あま りにもちか、つので、びつくりした。 あせ 汗をぬぐっているクララ・ 1 トンに、アニーか話しかけた。 ハ 1 トンさん ! なにか、お手つだいできることが、ありますか ? 」 おんなひと 女の人がふりむいて、アニ 1 とジャックを見つめた。 「あなたがたは ? 」 こカら ひと ひと じよせい まる かんごひと ひょうじよう おんなひと いろ ルが

3. 戦場にひびく歌声

やみと つぎのしゅんかん、あたりは、ふたたび闇に閉ざされてしまった。 ばしよみ おも ジャックは、目をこらして、ツリー ハウスが見えたと思った場所を見つめた。 ひかり かぜ ひか そのとき、もう一度いなずまが光り、こんどは、光のなかに、風にゆれるな わばしごか見えた。 ジャックは、飛びついて、なわばしごをつかんだ。 なわばしごをつかまえた ! 」 「おにいちゃん ! どこなの ? 」 「こっちだ ! 」 (ö曾 いちど

4. 戦場にひびく歌声

ほくたちは、スパイしゃないー 「どうして、ここに、子どもかいるのだ」 ほのおも し、刀 ワシントンの目の中で、怒りの炎が燃えている ば、ばくたち、乗るつもりじゃ、な、 「こ、これは、まちがいなんです : なかったんですけど : : : 」 ジャックは、しどろもどろで言いわけした。 ノ、ちょう む しかしワシントンは、兵士たちに向かって、きつばりとした口調でただした。 「このふたりを乗せたのは、だれだ ! 」 しんにゆうしゃ 兵士たちも、小さな侵入者を、おどろいて見つめている くち アニ 1 かいそいで、ロをはさんだ。 「この人たちのせいじゃないわ。みんな、いそがしくて、わたしたちに気づか なかっただけなのよ ! 」 ひと めなか の み の 132

5. 戦場にひびく歌声

兵士が目を開けた。 ジャックはつづけた。 がくしゃ ぎいん がっこうせんせい 「学校の先生や、学者や、選挙で選ばれて議員になる人だって、出ますよ」 あたま 兵士は、ゆっくりと頭をまわして、ジャックの目を見つめた よげん 「 : : : ば、つや、未来が、予言できるのかい ? 」 ジャックは、笑って、、つなずいた 「そ、つか : ありかとう」 くち 、つ 兵士は、ふたたび目を閉じたが、そのロもとには、笑みが浮かんでいた。 げんき 「だから、元気をだしてくださいね」 しず ジャクは、静かに、しかし力強く言ってから、立ちあがった。 すぐ麦、に、アニ 1 が立っていた かえ 「お兄ちゃん、せ読ぶくばり終わ 0 たわ。さあ、帰りましよう : : : 」 ンックがうなずき、ふたりかテントを出ようとしたときだった。 わら みらい せんきょ ちからづよ ひと 戦場にひびく歌声

6. 戦場にひびく歌声

。こっちは兄のジャック。お手つだいに来たんです」 「わたしはアニ 1 て ジャック、お手つだいは大だすかりよ。わたしのことは、ク 「そ、つ。アニ 1 ぜんせん 」泉こよ、ここへ運ばな ララと呼んでちょうだい。ちょうどよかった。まだ、前糸。 ( ふしようへい ければいけない負傷兵が、たくさん残っているの。いっしょに来てくれる ? 」 「ええ、もちろん ! 」アニ 1 が、こたえた。 「ジャック、あなたは ? 」 ち へんじ ジャックは、すぐに返事ができなかった。血だらけの兵士を見たばかりなの せんせん 前線に行く、と聞いて、足かすくんだ。 おも しんけん み しかし、クララに真剣なまなざしで見つめられて、思わず、 「もつ、もちろん、ばくも行きます」と、こたえてしまった。 しゆっぱっ 「じゃあ、乗って ! すぐに出発よ ! 」 なら ) ンヤック A 」アニ 1 は、クララ・ ノ . 1 トンと並んですわった。 かぞく 「では、行ってくるわ。わたしたちの新しい家族を、よろしくね ! 」 よ の あし のこ あたら おお て み

7. 戦場にひびく歌声

るのだ』」 ジャックは、ジョ 1 ジ・ワシントンの目を、ま正面から見す、んて、心から、つ ったえた。 さい一 ) ぜっぱうてきおも 「絶望的に思えても、最後まで、あきらめてはいけないんでしよう ? 困難に よ ぎおお せいこ、つ 見えれば見えるほど、成功したときの意義は大きい。あなたが読んでくれた、 み トマス・ペインのことばは、そういう意味なんでしよう ? ゅ、つ当」 しよくみんちぐん この作戦が成功すれば、植民地軍は、きっと勇気と希望をとりもどします。 さくせんけっこ、つ みんなのために、作戦を決行してください ! 」 アニ 1 も言った。 ′にみらい 「そうよ ! わたしたちのために、この国の未来の子どもたちのために、ぜっ たいにあきらめないでー ふ 風かくるったよ、つに吹きあれるなかで、ワシントンは、ジャックとアニーを、 み じっと見つめた。 かぜ さくせんせいこう め しようめん み こころ こんなん ・・託された手紙 141

8. 戦場にひびく歌声

おと あさせ ちょうどそのとき、ギキキイ 1 と音かしてへさきが浅瀬にのりあげ、ポート たいがん は対岸にとう着した。 きしひ 兵士がふたり、飛びおりて、ボートを岸に引きよせる ジャックとアニーは、ワシントンに、きびしく一言いわたされてしまった。 ぎし 「よいかこのホ 1 トは、すぐにむこう岸へもどる。むこうについたら、ホー トをおりるのだ。二度と、こんなことをするんじゃないぞー も、つしません : : : 」と、ジャック。 「よい、 それからワシントンは、ポ 1 トをこぐ兵士たちに、 「このふたりが、またべつのボ 1 トに乗らないよう、よく注意せよ ! 」 と、言いのこし、ボ 1 トをおりていった。 なみだ ジャックは、はずかしくて、なさけなくて、涙が出そうだった。 ふたりは、そのようすを、だま 兵士たちが、つぎつぎと岸にあかっていく って見つめるしかなかった。 み ちゃく の で ちゅうい ・・託された手紙 133

9. 戦場にひびく歌声

「わすれてないよ ! ちょっと寝ばけてただけだ。すぐ用意するから : : : 」 ジャックがべッドをおりると、アニ 1 は、「外で待ってる」と言って、部屋を 出ていった。 つものリュックにノ ジャックは、いそいでシャッとジ 1 ンズに着が、ん、 にわで げんかん かいだん 1 トとえんびつをほうりこむと、階段をかけおりて、玄関から庭へ出た。 、もり - 朝もやのなかで、アニ 1 が、森のほうを見つめながら、待っていた。 「アニ 1 、お待たせ。さあ、行こう ! 」 もりむ どうろ ふたりは、道路に出ると、フロッグクリ 1 クの森に向かってかけだした。 せたか 森にはいってまもなく、もやのなかに、森でいちばん背の高いカシの木が見紙 えてきた。 カシの木にたどりついたふたりは、すぐに、なわばしごをのばった。 ほん ハウスによじのばって、部屋の中を見まわすと、たくさんの本が積み 、つ、ん ゆか あげられた床の上に、二枚の紙きれがおいてある。 あさ かみ へやなかみ そと 4 玉、つし へや

10. 戦場にひびく歌声

ひさん ひさん 「戦争は、みんな悲惨よ。悲惨じゃない戦争なんて、ないわ。人は、なにかを ま、も たたか 守るために、あるいは、なにかを手に入れるために、戦うしかないような気か せんそう ひさん して、戦争をはじめるけれど、はじめてから気づくのーーーー戦争は、悲惨で、残 かな こくで、悲しいだけだって」 かえ 「 : ・・ : わたし、、っちへ帰りたい。パヾ ノとママに会いたし : よこがおみ げんき ジャックは、びつくりして、アニーの横顔を見つめた。いつも元気なアニ 1 か、うちひしがれている : いえかえ 「そうね。あなたたちは、そろそろ、家に帰ったほうかいいわ」と、クララ みすた もの ふしようへい ジャックは、水や食べ物や、なぐさめのことばを待っている負傷兵たちのこ おも ぜんせん とを思った。前線にもどるとい、つ、鼓手のジョンのことも わか かんごふ かみ それから、若い看護婦にもらった紙きれを、取りだした。 「ばくは、残ります。とちゅ、つで投げだしてはいけないんだ。ほら、この『看 護のこころえ』にも書いてある。〈最後までやりとげる〉って : : : 」 せんそう のこ せんそう せんそう ひと かん ざん