Ⅱ時、サリマさんとはチャイハナで別れ、川原さ んとふたりで美術館や博物館を巡る。 その足でまたシャシリク屋台へゆき、昼ごはん。 焼いているところと、パンにはさんで食べていると ころを、川原さんにムービーで撮ってもらう。きの うはお腹がいつばいで食べられなかったギラック・ ス 1 プもたのむ。 ギラック・スープは、脂の浮いた汁に大きな肉だ んごがふたっ、じゃがいもとにんじんがごろごろ煮 込まれている。羊肉の脂身も入っている。レストラ ンで食べたのはあっさり目だったけれど、濃厚で、 肉のだしがきいていて、とてもおいしい。トマトも 少し入っているのかな。ほんのりと酸味のある塩味 た。ご飯にかけてかっこみたいような味。 自慢のス 1 プらしく、食べるジェスチャ 1 をしな がらキララが何度も見にくる。川原さんはソフトク リ 1 ムをたのんだ 今日は妹はいよい。 友たちの女の子が妹みたいに いつもそばにいて、手話で伝えてくれる。お昼どき で忙しいらしく、筆談に夢中になっているとお母さ んかキララの肩をたたきにくる。ちょっと淋しそう な顔をして、手伝いに立っキララ。 さっき、サリマさんがやってきて、「ここはバサ ールの屋台ですから、カバンのロをしつかり閉めて シリク 8000 スム、ビ 1 ル 3000 スム、アイス クリーム 500 スム、サムサ 800 スムと記す。お 母さんはサムサをひとつおまけにつけてくださった。 ああ、ようやくシャシリク屋の家族のことが書け 高山なおみの ロシア日記 めたら、わらわらと人が集まり、あっという間に囲 まれた。金歯たらけのおじいさんも腰掛けごと寄っ てきて、じっと見ている。キララはすぐにツルと分 かったらしく、飛ぶ仕草をしてみせる。 キララも自分の千代紙で何か折っている。とても 手の込んだ折り方で、お終いに空気を吹き込んだら、 ください」と、私の耳兀で巾定ロしていった。買い物 をした帰りに立ち寄ったらしい。なぜだか、とても 久しぶりにサリマさんに会ったような気がした。同 じウズベク人なのに、私たちよりもそこにいるのが 不目然で、彼女の方が場違いな感じがした。 帰りぎわ、川原さんがキララたちに千代紙をプレ ゼントしたので、私はそれでツルを折る。折りはじ ヾ、いリレ 7 ララ 蓮の花の形になった。 そのうち、後ろでタイコの音が鳴り出した。 タンバリンのように薄べったいタイコを抱え、お じさんが打ち鳴らしている。お腹の底に響く音。地 面から湧いて出てきたような乾いた音。 さっき、サリマさんが今日はお祭りがあるといっ ていたから、踊りの一団が私たちの後ろで休んでい たのかもしれない。 水色の揃いのワンビ 1 スにターバンを巻いたおば さんが、ひとりふたりと立ち上がって踊りはじめた。 飛び入りの女も腰を振って踊る。沖縄のおばあちゃ んたちのカチャ 1 シ 1 に、羊の脂とヨ 1 グルトが混 じり合ったような踊り。民族の血が通った、熱い踊 お客さんらはみな手拍子を打ち、動物や鳥たちが 歓んでいるような声が、あちこちで飛び交う 私は涙が噴き出した。隣でキララがどうして泣い ているの ? という顔で見ている。私ははずかしい 涙が出るのがはずかしいキララが心配するから泣 きやまないとと田 5 うのたけど、あとからあとから噴 き出してくる 「楽しいから泣いているんだよ」と、キララに伝え るのだけど、しばらくするとまたキララは私の腕を 触り、泣きマネをして「どうして ? 」と心配そうな旅 る 顔をする。タイコをたたいているおじさんも私を指 め を 差し、泣きマネをして首を傾けてみせる 光栄なような、もったいないような、望外の喜び 星 でいつばいな気持ちが詰まっている胸のあたりを押 さえ、私は頭を下げた。 9 2 おかめ顔のふくよかなおばさんが、踊りがら近
、亠冫み \ 一分、み 1- ナ呰上ずらの 3 め 川原さんとサリマさんはにんじんジュ 1 ス、私は トマトジュースをたのむ。にんじんジュ 1 スを味見 させてもらったら、繊維が粗く、不思議な甘みがっ いている。何か果物がざっているんだろうか私 のトマトジュ 1 スはほんのりした甘み。みずみずし くてとてもおいしい。トマトジュ 1 スにしてよかっ ここは、縁台のひとつひとつに陽よけのテントが 巡らされ、なかなか涼しい。座布団の上に足を投け 出し、きのうの日記をつけることにする。川原さん は私をスケッチしている サリマさんが、グリ 1 ンティ 1 のおかわりをティ ーポットにもらってきてくれた。私は腰を落ち着け、 シャシリク屋台の家族のことを書きはじめる きのうは、ホテルのレストランでタ食を食べよう と楽しみにしていたのだけど、団体客で予約がいっ ばいだったので、散歩がてら川原さんと表に出た。 昼間歩いたバザ 1 ルのはずれのシャシリク屋が気に なっていたので。 屋台の並びは、どの店も慌ただしく店じまいをし ていた。逆さにされた腰掛けがテ 1 。フルに伏せてあ 、焼き場の火も落とされている。 突き当たりまで歩いたら、残り少ないシャシリク旅 を焼いているおじさんがいた奥さんらしき人が隣 で燃料を片づけているけれど、思い切って注文してを みた。ふたりはい 0 せいに 2 本の指を立「私たち がうなずくと、ひき肉団子のシャシリクを 4 本焼き はじめた。ひとり 2 本すっということらしい。 ヒンクのワンビースの 髪をポニ 1 テ 1 ルにした、。
6 月 7 日 ( 金 ) 晴れ とろとろと目が覚めると、まだ砂漢たった。きの うとまったく同じ景色の中をひた走っている。 窓を閉めて寝ていたのに、隙間から 入ったのか、テープルもシーツも砂で じゃりじゃりしている。喉もカラカラ よっぱど乾燥しているのだ。 川原さんはとっくに起きていて、待 ちかまえていたように私に話してきか せる。 ゅうべ怖い夢をみて、ハッと目が覚 めたら、窓の外が満天の星空だった。 窓のいちばん下の方には、草も何もな い砂漢があるのが、列車の灯りで見え た。あとは、すべてが白い点々の星だ らけ。黒い空よりも星の方が多いくら いで、水疱瘡のようだった。それで窓 の真ん中あたりには、ワーツと天の川 が見えていた。まるでプラネタリウム の天井みナし ( こ、こ、地球が球体になって いるのがよく分かった、とのこと 「高山さんを起こそうかどうしよう 高山なおみの か、すごく迷ったんだけど、ぐっすり口シア日記 眠っているみ力しカオ こ、。こっこし、ここで起 こしたら、また眠れなくなるといけないなと思って。 でも本当に、これこそが『大が星見た』た 思った」 布い夢というのは、かってないくらいの台風の中 を列車が走っている夢をみていたそう。「かってな いくらいの」と、川原さんは何度も一一一口う。その言い まわしが、日本語でないように聞こえ、ふたりして 大笑いする。 「かって味わったことがないくらいの大嵐の中を、 この列車がっき進んでいて、線路を踏みはずしたん じゃないかとい , フくらい、あっちこっちに揺れるし、 ガッタンと大きな音もして、大丈夫なんだろうかと 思って、怖くて目が覚めたら、満天の星だった」と、 またはじめから川原さんは真面目な顔をして言った。 なときわ強く 日く 天の叫 第の、灯つ トイレで顔を洗い、身支度をする 車両についているサモワールのお湯を、水筒に移 し入れる。茶色がかった水のようだけどかまわずに 注いでいたら、フランス人の女たちがペットホトル を手に手に部屋から出てきた。「この水、飲めたの ね ? 」という顔をして。みんな水不足だった様子。 私もそうだけど、列車の中がここまで乾燥している とは思わなかった。 6 時川分、ナヴォイ駅に停車。 あと 1 時間あまりでブハラに着くと、 2 等車両に いたサリマさんが伝えにきてくれた。サリマさんは 気の毒なくらいに、気遣いを見せてくれるようにな つ、、 0 私はこの日記を、桃の味のするプラムを食べなが ら書いている。サリマさんは「アンズ」といってい たけれど、プラムのような味がする さっきまで砂漢だったのが、いつの間にか畑の中 を走っている。 茶色い牛を放牧させている男、ペラベラとした紙 のようなのを砂の上につき立てた、お墓らしい集ま ヒヴァのバザ 1 ルで買った干しぶどうをつまみな がら、そんな景色を飽きずに眺める。ウズベキスタ ンの人たちは、何杯もお茶をおかわりしなから、こ旅 る ういうものばかりつまんでいるけれど、野菜はあまぐ め 食べないようだ。干しぶどうもナツツもミネラルを やビタミンが豊富なのだから、これで充分に栄義が 星 とれているのだ。そんなことを思いながら私も干 しぶどうをつまんでいる 3
車でブハラに向かう。出発の時間まで炎天下をうろ うろするのはたいへんなので、チェックアウトを遅 らせることかできるかどうか、サリマさんに通訳し てもらう。無事交渉がすみ、延滞料の 4 万 2000 スム ( 約 2100 円 ) をフロントに支払った。 9 時分、塔に向かって出発。 通りを歩いていたら、前の方で硬いものどうしが ぶつかるような音がした。見ると、石畳に倒れてい るおじいさんが、自転車を起こそうとしているとこ ろだった。私はヒャリとする。 「妊婦さんが前を歩いていたので、おじいさんは自 分から転びました。ウズベキスタンの場合は、男性 は、妊婦さんをとても大切にします」。サリマさん が胸を張って言った。 塔 ( イスラ 1 ム・ホジャ・ミナレット ) に登って みたいと歩きながら伝えると、「頂上までは階段が 118 段ありますから、とっても大変です。足が疲 れますよ」と目を丸くする。川原さんとふたりで登 ト、 7 るというと、胸をなでおろしたような顔になった。 サリマさんには下で待っていてもらう 曲がりくねった急な階段を、休み休み一歩ずつ登 る。水を飲みながら登る。塔の中は真っ暗なので、 足下を懐中電灯で照らしながら。グリム童話で、髪 の長いお姫さまが囚われていたのは、きっとこんな 搭た。階段の板は、長い年月をかけてたくさんの人 か登ったあとがある。かなり頑丈なっくりだけど、 高山なおみの ロシア日記 方からホテルの中庭には食卓と椅子が出て、屋外食堂と変る。地元の 人たちは、ここにきて涼みながら、チャイを飲み、シャシリクを食べている。 シャシリクリ」と尻上 ふいごを足で踏み、火をかっかとこし「シャシリクⅡ りの売ら声をあげながら羊肉を焙る男。皿を並べる少女。皿を運ぶ少年。 火の前で「コークス ? 」と訊くと「コークス」と少女は笑って肯いた。 ( ウズベキスタンのサマルカンドにて。『大が星見た』より ) カ 1 。フのところは幅が狭く斜めになっている レンガの隙間にある覗き窓のところにくると、わ ずかに光が漏れている。遥か下の景色に目がくらむ。 泥をこねて作られた四角い箱の群れ。泥一色の中に 指輪のトルコ玉がばつんと光っている。モスクの丸 屋根だ 塔のてつべんは展望台になっていて、城壁の外か ら地平線までぐるりと一周見渡すことができる。ヒ ヴァの街のすぐ外側は、乾いた緑がばそばそと生え た砂漠で、そのまま何もない砂漠へとつながってい る。やつばりここは、飛行機の窓から見えていた通 り、広大な砂漠の中にこっ然と現れたオアシスなの 、へんな苦労をして大昔にこし た砂漠の民が、たし らえたのた 足を開いて踏ん張っていないと飛ばされそうに風 が強いのに、川原さんは柵の間からカメラで覗き込 み、同じ高さになるよう腕を固めたまま、ぐるりと 一周分のパノラマ写真を撮っていた 塔を降り切ると、足がワラワラする。近くのチャ イハナで休憩。 126
づいてくる 「高山さん、いっしょに踊ろうって誘ってるよ ! 」 私は涙をふき、みんなにはやし立てられながら踊 オ月原さんも踊った。 キララの手拍子は、みんなより少しだけ遅れてい た。キャーキャ 1 と歓声を上げ、椅子の上でお尻を 持ち上げてはしゃいでいた。 私はここであったことを一生忘れないだろう。ま たいっか、この人なつつこい村人たちのところに来 られるだろうかいつの日か夫と一緒に来ることか あったら、サプちゃんのホテルに泊まり、、ハザ 1 ル のはずれのこのシャシリク屋に連れてきたい。 帰り道、古い大きな土のお皿を買う。ホテルに戻 ってシャワ 1 を浴び、荷物のパッキング。もうこれ で最後なので、ファンタオレンジを買ってきて戸口 のソファ 1 に腰掛け、日記をつける。 5 時にホテルを出発、ウルゲンチ駅へ 運転手の男は、 2 日前にウルゲンチ空港からヒヴ アまで乗せてくれたがたいのいいおじさんなのだけ 、駅に着いても荷物を運んでくれない。 駐車場か ら駅までのガタガタ道を、女ふたりがスーツケース をひきずって、お皿や食料、水などの大荷物を運ん でいるのに。サリマさんも手伝ってはくれない。サ リマさんは自分用に買った土産物で手がふさがって、 どんどん先を歩いていってしまう。 私はむかっ腹が立つ。さっきまで心やさしい人た ちに囲まれ、言葉などなくても通じ合えていたのに いくら私と川原さんがふたりだけで過ごす時間が多 いからといって、サリマさんはガイドの仕事を怠け てやしないだろうか出発までまだ間があるので、 きちんと話してえることにする 6 時半、寝台車の中は蒸し風呂のよう。 2 等の 4 人部屋に通される。 1 等を予約しておいたはずなの だけど、現地の旅行会社の手違いらしい。私は断固 として 2 人部屋を要求する。サリマさんが電話で問 い合わせている間、私はタンクトップになった。 空気がとまっている。とても古い車両だ 分ほどしてサリマさんが戻ってきた。無事、 等がひと部屋だけ空いていて通される。 1 等といっ たって冷房はないので、蒸し暑さは変らないそれ でも寝台がふたっきりなので、ずっと広々した感じ がする。 列車は 7 時ちょうどに走り出した。 夕食はサムサ ( キララの店で買ったもの ) 、黒パ ン ( 川原さんはきゅうり、私は干しぶどうをはさん で食べた ) 、トマト、きゅうり ヒヴァのスーパ 1 で買ったサラミソーセージを傷 ませてしまった。残念だけどこの暑さだし、冷蔵庫 もないのだから仕方がない。アイスコ 1 ヒー ( ホテ ルにあったインスタントコ 1 ヒーの粉を水で溶い た ) がとてもおいしい たたただ頑丈そうな、飾り気のない部屋だ。シベ リア鉄道の方が新しくてずっときれいだったけど、 百合子さんたちが乗ったのは、こんな感じの車両か もしれない。 通路側の窓も、カ 1 テンを巻き込んで景色がよく 見、んるよ , フにしこ。 タ陽が砂漠に落ちょうとしている。広い広い砂だ らけのところに、スギナを大きくしたような乾いた 0 草がポソボソとはえている。あれはサクソ 1 ルだろ 3 うか。飛行機の窓からコケのように ( 川原さんがそ ういった ) 見えていたのはこの草た 電信柱の向こうを、茶色い牛とぶち模様の牛が 2 頭、のっそりと歩いている。人は誰もいない。 大きな河を渡った。河のほとりで網を張り、魚っ りをしているランニングシャツの男。 うんとしはらくいくと、遥か向こうの方に泥の家 がばつん、ばつんと見えてきた。 上にある開き窓を引いても、風はない。 フランス人も、ドイツ人も、みな思い思いの格好 で通路に出てきて、陽が沈む景色を眺めている。私 もせんこう花火の玉のように大きく膨らんだタ陽を、 ミネラル水を飲みながら見ている。あんまり眩しい ので、サングラスをして見ている 一面の砂漠の中、ホームも何もない駅でとまった。 列車から降りた乗客が数人、丘のように盛り上け 、タ陽に向かって歩いてゆく た砂上の線路づたいに 、皮らのゆ 列車が走り出すと、手を振ってよこした。彳 くてには、あと 2 センチほどで地面にくつつきそう な太陽がある 陽が沈んだら、通路に人はいなくなった。 トイレのある通路の窓から眺めていた川原さんが、 興布岩凩味にやってくる 「今、道路があったでしよ。空の上から見えてい たまっすぐに伸びた線は、あれかも私、地平線に 沈むタ焼けを、生まれてはじめて見た ! 」 9 時半に目をつぶる。時々、びつくりするほど大 きく揺れるので、乗り物酔いの薬を飲んで寝た。
グ 1 ーッド」と、照れくさそうにつぶやきながら、 包みをカシャカシャさすっている きのうの夕方、フランス人の団体客が人くらい やってきた。手ぶらでぞろぞろと外階段を上ってい ったから、見学にきているたけなのかと田 5 っていた ら、後ろからサプちゃんともうひとりの男の子 ( と てもネ儀正しく、英語も話せる ) が、大量のスーツ ケ 1 スを引きずって出てきた。男の子はホテルの制 服たったけど、サブちゃんは前の日と同じ灰色の くたびれたポロシャツを着ていた。 1 階の部屋もた くさん空いているようなのに、団体客はみな 2 階へ と上がっていった。スーツケースを肩に担ぎ、蟹の 横歩きで狭い階段を縣大叩に運び上げているサプちゃ ん。私はソファーに座って、その一部始終を見ると もなく見ていた。サプちゃんはスーツケースの側面 をバンツと平手でたたき、「ビ ッグ ! 」と一一一口っ ておどけた。日、 , 原さんはスケッチブックを広け、長 いことホテルの建物の絵を描いていた さて、そろそろ顔を洗って身支度をしよう。今日 はイチャン・カラの中でいちばん高い塔に登る。塔 を建てた人夫たちに敬意を表して、私は黒いパンツ に麻の白シャツ。サプちゃんの真似をして正装のつ り′ 7 時半、朝食に出るとき、玄関の椅子にサプちゃ んが腰掛けていた。サブちゃんの目玉は逆光で見る とグリ 1 ンがかって、風がないだ湖のよう。角度が 変ると、琥珀色に光る野生のヒョウの目玉になった。 ホテルの離れにあるレストランで朝ごはん。今朝 もまた、教会のように静まりかえっている。フラン ス人の団体客はまだちらほらとしか来ていない。 広々として、とてもいい空気。 、ハイキングの料理が並んだテー 。フルに、蜂蜜の大鉢が置いてある コバルト色に彩色された土器に なみなみとした琥珀のとろとろ。 ス 1 プを飲む用の銀のスプ 1 ンが 無造作に投け入れてある 天窓から注がれた陽の光が白レ ンガの壁に当たり、蜂蜜にも届い ている。私はよそった料理を置いたまま、いろんな 角度から」撮った。かがんだり、体を斜めに倒 したり。写真を撮るのをやめて遠くから見たり、近 寄ってパッと目を見開いてみたり。静粛な空気ごと 体に焼きつけたいのだけど、見れば見るほど心の中 がばんやりしてくる。仕方がないので薄目にして、 空気の匂いを嗅いだ メニュ 1 はきのうとほとんど変らないが、何を食 べてもとてもおいしい。ソーセージ、チ 1 ズ、フレ ッシュバター、カッテージチーズ、目玉焼き、牛乳 のうす甘いお粥、甘い口 1 ルバン、ライ麦パン、。、 ンケーキ ( カッテ 1 ジチ 1 ズを巻いてある ) 、ナン。 ヒヴァのナンはビザ生地のように白っぱく、飾りの 判子がたくさん押してある。この土地の女たちのワ ンビース柄のよう。 帰りしな、サリマさんが泊まっているホテルに迎 えにいった。立ち止まった川原さんが【を撮って いる。イスラム帽をかぶったおじいちゃん 6 人組が、 角を曲がって向こうへそぞろ歩いてゆくところ。空 は真っ青、今日もまた暑くなりそうだ。 3 人でホテルに戻る。今日、私たちは夕方の寝台 らの木蔭には縁台が出て、水売りもいる。老人 、や男たちがお茶を飲んだら昼寝をしている。行 き倒れたように地べたにも昼寝している。 ( 中略 ) 子供 だけがはだしで、ものの影のようにびっそり動 ) まわっ ( ウズベキスタンのサマルカンドにて。『大が星見た』より ) ている。 ウズベ、キス 9 ン キリ、ルワ カサフスン キルキ・、ス ヒうア・ ァイタル ? ル月 サマル・ トルワニス 9 ン フやー、ラ 今ジキス 9 ン らルハン村 0 0 100 淋 125 アフがニス 9 ン