かえまえ かえ 「ディッパ 1 は『帰る前に』って言ったけど、ばくたち、まだ帰れないよ」 おんがくみちひ 「そうよね。わたしたち、ディッパ 1 を音楽の道に引きもどすための、きっか けすらっかんでないもの」 めまえ とお そのとき、ふたりの目の前を、かさ売りか通りかかった。 あらし おおあめく かさあ 「かさあ もうすぐ大雨が来るーー嵐になるよお かさを買うなら、いまのうちだよお 嵐が来る : : : ? あらし おんがくみちひ たか、シャックとアニ 1 には、嵐よりも、ディッパ 1 を音楽の道に引きもど じゅうようもんだい った せるかどうかのほうか、はるかに重要な問題だった。ディッパ 1 にどう伝えた しいたろ、つ : らいいのだろ、つ。も、つすこしいっしょにいるには、ど、つすれば、 すこしして、ディッ。、 ノ 1 かもどってきた。 「ぜんぶで三〇セントになった。ひとり一〇セントずつだ」 それを聞いて、アニ 1 があわてて言った。 あらし
ばんそう しやがいも頭 ディッパーは、三人のうしろ姿を見送っていたか、行ってしまうと、ジャッ む クとアニーに向きなおり、にこっと笑って言った。 なかま 玉にん 「あの三人は、小さいころからの仲間なんだ。十二歳のとき、四人でグル 1 プ を組んで、あっちこっちで歌ってたんだよ。おれはテノ 1 ルでさ。ときどき、 くちぶえ たの 伴奏にロ笛を入れたりしてさ。楽しかったなあ : : : 」 め そう言ったあとで、ディッパーの目か、一瞬、さびしそうにくもった。 アニーが言った。 を」よ、つ しごとはやき まえ ょにんうた 「ねえ、ディッパ 今日だけ仕事を早く切りあげて、前みたいに、四人で歌 、つことはできないの ? 」 おんがくす 「ああ、できない」ディッパ 1 は、そくざにこたえた。「音楽は好きだけど、そ しごと の前に、食ってかなきゃならないからな ・ : さ、仕事のつづきだ ! 」 さんにん さんにん 0 あたま すがたみおく わら 0 いっしゅん
ックネ 1 ムで親しまれるようになった。 わか サッチモにとって、ニュ 1 オ 1 リンズは大切なふるさとであり、彼は、若 おもで だいじ かれ いころの思い出をとても大事にした。ニュ 1 オ 1 リンズには、彼にちなん こうえん で名づけられた「ルイ・ア 1 ムストロング公園」かあり、ニュ 1 オ 1 リン こくさいく、つこ、つ ズの空港は「ルイ・ア 1 ムストロング国際空港」と呼ばれている。 ディッパーは、ぶはっと吹きだした。 「なんだってにおまえたち、おれをからかってるな」 、これを見て凵」 「からかってなんかいないよ ! ディッパ 1 めまえ ほんひろ ジャックは、ディッパーの目の前に、本を広げてさし出した。 だいかんしゅう まえ すかた そこには、タキシード姿のルイ・ア 1 ムストロングが、大観衆の前でトラン しやしん えんそう ペットを演奏する写真がのっていた。 「これは、未来のディッ。、 ノーだ。ディッパ 1 は、将来こうなるんだよ ! 」 みらい した たいせつ しようら、 かれ 1 40
「おはよう、テディ、キャスリーン。やつばり来てたんだね ! ふたりが来て ゅめみ いる夢を見たんだーーーアニ 1 がね ! 」と、ジャックはつけくわえた。 かお テデイもキャスリ 1 ンも、わかってる、という顔でうなずいている ハウスの中にす アニ 1 とジャックは、さっそくなわばしごをのばり、ツリー べりこんだ。 ジャックか、はりきって聞いた。 「ふたりかここへ来たということは、ばくたちに新しい任務かあるんだね ? 」 おば まえ でんごん せんせい 丿ン先生からの伝言を、覚えている ? 」と、テディ 「うん。この前のマ 1 ひとしあわ せかい 「たしか : : : 」ジャックが言った。「世界じゅうの人を幸せにできるほどの天 はっき ひとさいのう 才がいるけど、その人が才能を発揮できなくなっているんでしよう ? 」 じぶんちからはっき てんさい にんむ 「そして、わたしたちの任務は、その天才がちゃんと自分の力を発揮して、世 てつだ 、刀し 界じゅうの人を幸せにできるよう、お手伝いするのよね」と、アニー まえ せいき ノヤックたちは、十八世紀のウィーンに行って、 「そのとおりだよ。この前、 ) 、 ひとしあわ あたら にんむ なか てん ・・・・・嵐の夜の幽霊海賊
おも 思、つ ! 」 まえ 「ばくもだよ。百年ぐらい前のアメリカには、そういう決まりかあったんだね」 「それからね : : : 」 「まだあるの ? すおも 「〈ラフィットの鍛冶屋〉のクモの巣を思いだして、ゾゾゾッてしてる ! 」 おも かいぞくゆ、つれい ばくは、海賊の幽霊たちを思いだして、ゾゾゾッてなった ! 」 「ああ : おも あ ノ 1 に会えないと思うと、さひしいわ」 「それから : ・・ : も、つディッヾ おんがく 。でも、ディッパ 1 の音楽なら、きっといつでも聴けるよ。家 「そうだね : かえ 、とママに聞いて に帰って、ルイ・ア 1 ムストロングの OQ かあるかど、つか、ノノ みよう」 おも おと 「わたし、いろんな音を聞くたびに、ディッパ 1 のことを思いだすわ。たとえ あめおと ば、ほら、この雨の音も : ・・ : 」 ヾラ、ヾ一フツ、ヾ一フッパ一フッパ・ ひやくねん かじゃ 154
「おまえたちが物ごいだってことは、ひと目でわかる ! さあ、出て出て ! 」 みせで ジャックとアニ 1 は、ウェイタ 1 に追いたてられて店を出た。 ひとはなし 「人の話も聞かないで、ひどいわ ! 」 「行こ、つ、アニ ルイ・ア 1 ムストロングは、ここにはいないみたいだし」 まえ 「でも、その前に、わたしたちは物ごいじゃないってこと、あの人にわかって もらわなくちゃ」 みせ アニ 1 か店にもどろ、つとするのを、ジャックか引きとめた。 「言ってもむだだよ」 ジャックも、ウェイターの態度には腹が立ったが、この身なりでは、物ごい かねも にまちがわれてもしかたがないしかも、一セントのお金も持っていないのだ。 「それより、ばくたちはルイ・ア 1 ムストロングをさがさなくちゃ。だれか、 かれ 彼のことを知ってる人はいないかなあ」 おも ジャックは、いやな思いをふりはら、つよ、つに、あたりを見まわした。 もの ひと もの はら ひと もの
ガンホ・シチュー たいようしず ・刀し A 」、つ 太陽が沈み、街灯がともりはじめていた ひろば まえとお どお 三人は、ジャクソン広場の前を通りすぎ、 ーボン通りにやってきた。 やたい 丸いパンにハムをはさんだハム・ビスケットや、パイを売っている屋台があ 、つ ある とお る。アイスクリ 1 ム売りが歩いて通りすぎた。 「ニューオーリンズの町には、おいしそうな食べ物がたくさんあるのね」 とアニ 1 か一言、つと、ディッヾ 「ああ。ニュ 1 オーリンズほど、うまい物かあるところはないだろうな」と、 と′、し 得意げにこたえた。 おんがく なが ダンスホールから、にぎやかな音楽が流れてきた。 ひとびと たの レストランの外に並べられたテ 1 プルでは、人々が楽しそうに、食べたり、 がっき 飲んだり、おしゃべりしたりしている。そのテ 1 プルのあいだを、楽器を持っ まる さんにん そとなら まち もの もの
わら しばらくして、ディッ。、 ノ 1 か、笑いをかみ殺しながら言った。 さっき、おれにはこわいものはない、 「は、白状するよ : せ ネズミだけはだめなんだ。背すじかゾゾゾゾッてなるんだよ」 「あはは、わかる、わかる ! 」アニーもうなずいて言った。「わたしは、クモを 見ると、ゾゾゾゾッてなるわ ! 」 ゅうれい 「ばくは : : : 幽霊にゾゾゾゾッてなるよ」と、ジャックも言った。 「なんだーーーみんな、こわいものかあるんじゃないか ! 」と、ディッパー さんにんおおわら そこでまた、三人は大笑いした。 わら みんなの笑いかようやくおさまったところで、ディッ。、 ノ 1 か立ちあかった。 ちんぎん か、んまえ 「さて、と。帰る前に、バナナ運びの賃金をもらってくるよ」 ふ A 」、つ ディッパーはそう言って、埠頭のほうへ走っていった。 のこ じめん 残されたジャックとアニ 1 は、地面にすわったまま、ディッパーのことを考 えていた み 0 ころ って言ったけど、 0 かんが ・・・・嵐の夜の幽霊海賊
ふいをつかれて、ジャックはことばにつまってしまった。ルイ・ア 1 ムスト ロングに会ったらなんと一一一一口うか、まったく考えていなかったのだ。 まえ すると、アニーが前に出て言った。 「あなたがディッヾ ノーなのね ! はじめまして。わたしはアニー こっちは兄 のジャックよ。わたしたち、ペンシルべニア州のフロッグクリ 1 クから来たの A ャも 友だちから、ニュ 1 オ 1 リンズに行ったら、ルイ・ア 1 ムストロングに会うよ 、つに、って言われてきたのよ」 えがお 「へえ。友だちって ? と、ディッヾ ノーが笑顔でたすねる。 「テディとキャスリーンよ」 かお ディッパーは首をかしげ、知らないなあ、という顔をした。そのとき、アニ ーか持っているトランペットに気づいた。 しいラッパだ。聴いてみたいな ! 」 「ああ、これは : いまはだめなの」と、アニ 1 とも くび かんカ しゅう あに
ニューオーリンズ かん しめつほい、むっとするような暑さを感じて、ジャックは目を開けた。 見ると、ジャックは、、つすよごれた白いシャツのそでをまくりあげ、プカプ 力のつりズボンをはいている。リュックは、布袋に変わっていた。 アニーもおなじようなかっこうで、ふたりともはだしだ。 まえほ、つけん おも これなら、思いきり動けるわ ! この前の冒険では、 「わあい、ズホンよー ろ、つ なが 長いドレスで苦労したから : : : 」 ふく 「そうだったね。ばくも、あのきゅうくつな服とかつらには、まいったよ」 「あははは ! でも、おもしろかったわ」 わら ばうけんおも おも ふたりは、ウィ 1 ンでの冒険を思いだして、思わす笑った。 じだい 「ところで、ばくたち、いつの時代のニュ 1 オ 1 リンズに来たんだろう」 こ、んき もの、つ おと まどそと 窓の外から 、パッカバッカという馬のひづめの音や、物売りの声か聞こえる あっ しろ ゞつご ぬのふくろ