逃げだし - みる会図書館


検索対象: ダレン・シャン 6
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1. ダレン・シャン 6

じさつけん わへい 「白旗をかかげて、和平の条件を話しあえというのか ? 「ひにくを言われるとは、心外ですな ! 」 ハネズも負けずに、どなり返す。 こうげ . き 「バンパニーズを攻撃したい気もちは、わたしとてみなにひけをとりません。でも一対一で戦えば、ピ ュロスの勝利にしかならない」 「それしか手がないのであれば、しかたあるまいが」 げんすい ハリス元帥がためいきをつく。 ーに聞いてみた。 みんながだまりこんだすきに、ばくは「ピュロスの勝利」とはなにか、シー だいしさっ 「ふむ、ピュロスの勝利とはな、代償が大きすぎる勝利のことだ。たとえバンパニーズをたおしても、 てき ぎせい 味方が六十人も七十人も犠牲になるのでは意味がない。敵はたおさねばならぬが、勝っても引きあわぬ ほど犠牲を出してはならん。それが、戦の第一のおきてだ」 ひら やがて、 パリス元帥がおずおずと口を開いた。 ンパニ 1 ズを追いはらうという手だ。大きな音を立てながら近づけば、 「ほかの手も、ないではない。バ に ハンパニーズはおくびよう者ではないが、お 敵はいっせいに逃げだすであろう。向かっては来るまい ろか者でもない。負けるとわかっていて、むかえうつことはなかろう」 しろはた 115 ー第 14 章作戦会議

2. ダレン・シャン 6

ーキャット、ありがとう。会いたかったんだ」 「気がきくな、ハ ーキャットはよくめんどうをみとったぞ、とシ 1 ハーが声をかけてきた。 わはい 「おまえがいなくなったとき、我が輩にもらってくれと言ってきたのだが、ことわった。この先どうな るかわからんからこのまま持っておけとな : : : おまえがもどってくるような気がしたのだよ、ダレン」 でも、と、ばくは暗い声でおうじた。 しれん めいよ 「けつきよく、もらっていただくことになるかもしれません。名誉は取りもどしましたが、試練に失敗 せきにん した責任を取らなきゃいけませんから ばっ いまさら : : : 罰せられないだろう」 「まさか : というハーキャットの一一一口葉に、ばくはシー も言わなかった。 数時間後、バネズかいい知らせとともに、もどってきた。バンパニーズのかくれ場所を、つきとめた のだ げんすい 前おきもあいさつもぬきで、バネズは元帥たちにずばり切りだした。 「やつらは山の外に近い、細長いほらあなにいます。そのほらあなからは二本の横あながのびていて、 かたほうの横あなをぬければ、すぐ外に出られます。いざとなれば、あっという間に逃げだすつもりで ーの顔色をうかがったが、シー バーはけわしい顔でなに 110

3. ダレン・シャン 6

ばくは頭を下げて、てれ笑いをかくした。 げんすい ほめるのはそのくらいでよかろう、とアロー元帥がつぶやく 「まずは、バンパニ 1 ズのしまつだ。ひとり残らず死の間につるし、杭の上になんども落とさないと、 とっげき いますぐ突撃して : 腹の虫がおさまらない あわてるでない、 とパリス元帥がなだめるように、アロ 1 元帥のうでに手をおいた。 そうさくたい 「ことを急いではならん。ダレンがいなくなったあと、一族きっての捜索隊にダレンの足どりをたどら せたが、そのときにバンパニ 1 ズのかくれ場所のすぐそばを通っておる。カーダのことだ。とうに見こ して、バンパニーズが見つからんよう、移動させたに決まっとる。まずは、やつらを見つけるのが先決 だ。たとえ見つけても、じゅうぶん用心せんと。われわれの足音を聞きつけて、逃げだすかもしれん」 よし、とアロー元帥がいきごむ。 こ、つノき 「攻撃の第一陣は、このわたしにまかせてくれ」 「わしは、かまわん。ミッカ 1 は、どうだ ? 」 そのかわり、第二陣はおれだぞ。敵をたつぶり、残しておけ。砥 「わかった、第一陣はアローでいし 石がわりに、しごいてやる」 「しようちした」 じん いどう てき 99 ー第 13 章告発

4. ダレン・シャン 6

やさしくよびかけたが、マグダは最後まで聞かずに、首をさっとふった。悲しげなマグダの目を見つ めるうちに、マグダが最初からその気だったことが、ばくにもわかってきた。群れをはなれたときから、 体がもたないことを、知っていたにちがいない。それでも、マグダはあえて出発した。オオカミの群れ によろよろとっきしたがって、季節をあとひとっかふたっこえ、死に向かって少しずつ老いさらばえる 道よりも、だれかの役に立って死ぬ道を選んだ。死のかくごはとうにできている。どうどうと世を去る つもりなのだ。 ばくはかがんで、マグダの頭や耳のうすい毛をやさしくなでてやり、 「ありがとう」 と、ひとこと、お礼を言った。マグダはばくをなめ、鼻を左ほおになすりつけてから、おばっかない ひとけ 足どりで闇の中へ消えていった。人気のない場所をさがし、そこで横になって、静かに最期のときをむ かえるのだろう。 ばくはしばらくその場にとどまって、死について考えてみた。マグダは落ちついて、死と向きあった。 せんこく 。そんな それにひきかえ、ばくはどうだ ? 死の宣告を前に、あわをくって逃げだしたこのばくは 暗い考えを頭からふりはらって、ばくはたてあなをのばりだした。 ばくよりもオオカミたちのほうが、苦労していた。もともとオオカミは、がけや木をのばるのが大の やみ さいご

5. ダレン・シャン 6

ほねずい 骨の髄まで、ふるえがきた。ー , 也人の命をうばったのは、生まれてはじめてだ。ガブナーのかたきをと ろうと燃えていたが、かたきをとるとはどういうことか、い まのいままでまともに考えもしなかった。 このバンパニーズは この男は ばくのせいで死んだ。このばくが、命をうばった。うばった命は、 二度ともとにもどらない。 もしかしたら、死んでとうぜんのやつだったのかもしれない。殺したほうが世のためになる、根っか あ、と、つ らの悪党だったのかも でも、もし、ごくふつうの若者だったとしたら ? ばくやほかのバンパイ めいれい アとおなじような、どこにでもいる男だとしたら ? ただ、命令にしたがって、ここに来ただけなのか けんげん もーー。第一、死んでとうせんだろうが、そうでなかろうが、そんなことをばくに決める権限はない。 な あいて 他人にけちをつけて亡き者にする権限など、あるわけがない。なのに、ばくは殺してしまった。相手が ふくしゅう りせい かんじさっゅうせん ぶき おびえているのをいいことに、復讐しようといきまいて、理性より感情を優先し、この男に武器をかざ して、殺してしまったのだ。 つくづく、自分がいやになってきた。さっさと逃げだし、遠くに行って、すべてわすれて生きられた ら、どれだけいいだろう。自分がいやらしい、ただのろくでなしになった気がして、なさけなかった。 これでよかった、正しいことをしたんだ、と言いきかせて、なっとくしようとした。でも、そもそも 「正しい殺し」と「まちがった殺し」など、くべつできるのか ? ガブナーを刺したとき、カーダは正 1 ろ 4

6. ダレン・シャン 6

これまでの生きかたをただちにすてさるつもりはないが、行くすえをしかと見すえたうえで、必要と あらば変えていかねばなるまし ゝ。いままでは不変の世界に生きておったが、これからはそうはいかん。 ひら 目を、耳を、そして心を開き、新しい考えかたや新しい生きかたを受けいれるときが来たのだ」 「だからこそ、みなにこうして集まってもらった。ふだんならば、ダレン・シャンの運命を決めるのに、 りきりさっ しれん しけい しよばっ わざわざみなを集めたりなどせん。ダレンは、力量の試練に失敗した。それにたいする処罰は、死刑と はんけっ はんざい 決まっておる。さらにダレンは、判決から逃げだした。この犯罪にたいする処罰も、ただひとつ、死刑 ま しかない。 これまでならば、ダレンはすみやかに処刑の間へ送りこまれたはずだ。だれも異議など、も うしたてん。 しかし、状況が変わった。ダレンのおかげで、われわれも変わらねばならんと、気づかされたのだ。 ダレンは苦しみにたえぬき、 いったん手にした自由を、バンパイア一族のためにすてた。そしてかかん に戦し バンパイアにふさわしい力量があることをしめした。そんなダレンの偉業にたいし、これまで じよめいたんがん ならばどうどうと死なせるという形でむくいた。だが今回は、ダレンの助命を嘆願し、ダレンには生き けんり る権利があるという声があがった」 パリス元帥がせきばらいをし、コップから血をすすった。広間の空気は、きんちょうしてびんとはり に ひつよう 211 ー第 22 章血の儀式

7. ダレン・シャン 6

しオし ばくはクレプスリーを頭ごなしにどなりつけ、うらぎり者はどこだと目を走らせた。もう、 きんもっ しい。でも、ゆだんは禁物だ。なにもかも、言いたいことをすべて言いおえるまでは、安心できない。 「あとで説明するからー げんすい と、クレプスリ 1 につげて、ばくは落ちついてクレプスリ 1 のわきをすりぬけ、カーダと元帥たちの けいかし 前に進みでた。ストリ 1 クがびったりとよりそって、まわりを警戒し、威嚇するようにうなっている。 こし こし このさわぎに、カーダをかついでいた四人のバンパイアが、輿をおろした。カーダが輿の上に立って、 こし 目をあけ、顔をあげる。しかし、輿からおりようとも、ほらあなから逃げだそうともしない。近づくば かんじさっ くを、感情のこもらない目で、じっと見つめている。あわてるようすはない。悲しげな顔だ。そして、 左ほおにある三つの小さなひっかき傷をさすり、ためいきをついた ( このひっかき傷は、カ 1 タがバン わかい ハニーズと和解するために話しあった数年前 ハンパニーズにつけられたものだ ) 。 げきど なに」とだ、とミッカ ・レス元帥がどなった。激怒して、ものすごいけんまくだ。 「なぜ戦うのだ ? いますぐ、全員引きはなせ , じゅひんちさっ すかさず、需品長のシ ーバ 1 が声をあげた。 かっか なかま わはい 「閣下 ! ダレンをおそった者は、わが一族の仲間ではありません。それをとりおさえた者は、我が輩 めい の命にしたがっただけです。ダレンの話を聞きおえるまで、どうかこのまま、とらえさせておいていた いかく

8. ダレン・シャン 6

な視線を感じながら、ばくは角を曲がって消えた。 来た道をひき返し、山をおりていって、ほどなく倉庫にたどりついた。いまは、静かだ。それでもむ りをせず、気配をうかがいながら、あなからそっともぐりこんだ。前に逃げだしたときに、カーダが教 えてくれたあなだ。 だれもいないのをたしかめ、横あなに通じるドアに向かいかけたところで、ふと立ちどまり、あらた めて自分のすがたを見た。はだかにすっかりなれたせいで、人間やバンパイアの目にどううつるか、い ゅうれい やせいじ まのいままで考えがおよばなかった。どろだらけの野性児のようなかっこうでたずねていったら、幽霊 とシー バ 1 に腰をぬかされる。 この倉庫には着がえがなかったので、ばろばろのふくろを切りひらいて、腰にまきつけた。たいして こ ぬの よくはならないが、少しはましになる。足音を消すために、足にも切りさいた布を結びつけてから、小 むぎこ 麦粉のふくろをひとつあけて、白いこなを体になすりつけた。体にしみついたオオカミのにおいを、消 すためだ。そのあと、ようやくドアをあけて、横あなへするりとすべりこんだ。 ーの部屋まで、ふつうなら二、三分で着く。でも、べつの横あなにさしかかるたびに、ヾ ィアが急にあらわれてもかくれられるか、しつこくたしかめてから進んだため、十分近くかかった ようやくシ 1 、 ーの部屋に着いたときは、きんちょうのあまりふるえていた。しばらく無言で立ちっ しせん こし そうこ こし 71 ー第 11 章生還

9. ダレン・シャン 6

ぼう エラが、ためいきをもらした。 かいほ、つ クレプスリーがエラを介抱しているあいだ、ばくは腰をおろし、戦闘が終わりに近づくのをばうぜん とながめた。まともに戦える敵は、あと六、七人しか残っていない。そのひとりひとりを、数人のバン ハイアがとりかこんでいる。こうさんすればいいのにと思うか、ハンハニーズのことだ。こうさんなど、 せんし するわけがない ハンパニ 1 ズもバンパイアも、勝っか死ぬか、どちらかしか考えない。誇り高き戦士 にとって、どちらでもない道はありえなかった。 せなか 背中あわせになって戦っていたふたりのバンパニーズが、外に通じる横あなへと逃げだした。すかさ と、つ ノ、イス・プレーンのすがたもあった。おかげで逃 ずバンハイアたちが、前に立ちはだかる。その中に、ヾ : 亡はふせげたが、かたほうのバンパニーズが、つかまって殺される前にやぶれかぶれで、これでも食ら ちゅう たんけん えと短剣を投げつけた。短剣はミサイルのようにいきおいよく宙を走り、なんとハネスめかけて飛 んでいった ! ハネズが、さっと顔をのけぞらせた。よけられるかと思ったが、短剣のほうか速かった。切っ先が、 りさっ ハネズのつぶれていないほうの目に、すぶりとっき刺さる。血がふき出した。バネズが悲鳴をあげ、両 バーがあわてて、バネズをわきへつれていった。 手で顔をおおう。シー あの悲鳴からすると 、バネズはたとえ助かっても、月の光や星のまたたきを見ることは二度とないだ てき こし せんとう

10. ダレン・シャン 6

しいことをしたと思っていたはすだ。バンパニーズも正しいことと思えばこそ、人間の血を飲みほすの だろう。しかしいくらなっとくしようとしても、ばくは自分かおぞましくてたまらなかった。いまのば ざんにん くは、ただの殺人者ーー残忍で、おそろしい、人の道をふみはずした生きものだった。 ぎむかん 逃げださなかったのは、ひとえに義務感からだった。もうすぐ、バンパイアたちが攻めてくる。それ たいせい はんげき までは、バンパニーズたちが態勢を立てなおして反撃したりしないよう、クモたちをあやつらなければ ぎせい ならない。ゝ しま持ち場をはなれたら、バンパニ 1 ズたけでなくバンパイアも、おおぜい犠牲になる。 も′、ひさっ くら吐き気がしても 、いまは大きな目標のために、集中しなければならない 2 、、刀メ本 笛をくわえなおして、息をふきこみ、いっせいに飛びかかれ ! とクモたちをけしかけた。ば かなきごえ したバンパニーズの目で見ると、なにもかも、ちがってうつる。金切り声をあげてあばれまくるバンハ じ′」うじとく ニーズを見ても、ざまあみろとはもう思わない。自業自得だとあざわらう気もない。いまはバンパニー こきさつなかま くつじ奎、 せんし ズたちが、戦士に見えてきた。クモにおびえ、屈辱をあたえられて、故郷や仲間から引きはなされ、むと ざんにも殺されようとしている戦士たち げんすい こんらん 混乱のさなかに、ヾ ノンパイアの第一陣がなだれこんできた。先頭でアロー元帥がさけびながら、する章 はいごやり どいプーメランを投げつけて、バンパニーズをなぎたおしていく。そのわきと背後を槍を持った兵士が新 . てき いた かため、槍をくり出し敵を痛めつけ、つぎつぎとたおしていった。 ふえ だいじん