バンハイア - みる会図書館


検索対象: ダレン・シャン 6
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1. ダレン・シャン 6

序章闇の中へ 心をゆるす相手は、選んだほうがいし親友だと思っていた相手に、うらぎられることもある。その ことを、ばくはつらい体験を通して学んだ。 ばくの名前は、ダレン・シャン。子どものころにバンパイアの血を流しこまれ、半分は人間のままだ まかふしぎ が、残り半分はバンパイアになり、八年にわたってシルク・ド・フリーク ( 摩訶不思議な芸人を集めた サーカス団 ) といっしょに世界を旅して回った。そんなある日、ばくは師であるクレプスリーから「バ げんすい ンパイア元帥にひきあわせる」と言われた。 そう しさつぐん バンパイア元帥とバンパイア将軍は、十二年ごとにバンパイア・マウンテンに集まってバンパイア総 たびじ かいひら 会を開くのだそうだ。そこでバンハイア・マウンテンまでの長くてつらい旅路を、ばくはクレプスリ 1 、 まり、 なぞ ーキャット・マルズ ( ミスタ 1 ・タイニーの謎の魔力で、死後の世界からよみがえったリトル・ピー ひき ・。、ール、ストリ 1 クやルディと名つけた四匹のオオカミといっ ノンパイア将軍のガブナー プルだ ) 、ヾ しょにたどり、ようやくバンパイア元帥たちにひきあわされた。さらに、元帥たちからハンハイアを名 やみ あいて えら たいけん

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めるまでは、落ちつかない じゅうゆみ しま、このし よくもぬけぬけと ! そしらぬ顔で、心配だなどと言えたものだ ! 銃か弓があれば、ゝ ゅんかん、たおせるのに 銃や弓のような道具は使わない、 というハンパイアのおきてなど、知る ものかー クレプスリーたちか立ちさっても、ばくはその場から動かず、じっくりと考えてみた。カーダの叙任 しさつかく の話が、どうもひっかかる。カーダがもうすぐ元帥に昇格することを、うつかりわすれていた。その叙 じけん 任と今回の事件を結びつけると、おそろしいシナリオがうかんでくる ハンパニーズの目的は、で きるだけおおぜいのバンパイアをしまっし、バンハイア・マウンテンをのっとることかと思っていた。 でも、よく考えるとおかしい。ほらあなだらけのどうでもいい山を、そこまでしてなぜうばうのだ ? そ、つかい み ぜんめつ たとえ総会のバンパイアを全滅させても、バンパイアならこの世にまだおおぜいいる。そのバンパイア 3 の たちがかけつけてきて、ハンハイア・マウンテンをうばい返そうとするはずだ。 者 っこゝよこぎ ハンパニーズがここに来たのは、それなりの理由が、ぜったいにある。その理由とは、い ら まりよく かーー・そうだ、血の石だ ! 血の石には、魔力がある。バンパイアはもちろんバンパニーズでも、 章 そんざい 血の石を使えば、この世に存在するすべてのバンパイアのいどころをつかめる。つまり血の石さえ手に新 すれば、バンパニーズはバンパイアを意のままに追いつめて、しまつできるわけだ。 ・ 4

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りのバンハイアやエラからおくれかちだ。 じさっきさっ けん だんだん状況が、つかめてきた。クレプスリーがばくをさかしに行くと言いだし、エラと、剣を持っ ていないバ、ノ ノ。、イアかついてくることになった。万が一ばくが生きていたら、と心配になったカータも、 ぜひ手伝わせてくれともうし出て、ふたりの手下とともに剣を持ってついてきた たぶん、そんなと なまみ ころだろう。もし生身のばくを見つけたら、三本の剣が目にも止まらぬ速さで動き、ばくと、クレプス こう しさつぐんげんすい リーと、エラと、もうひとりのバンハイアをしまっする。自分のうらぎり行為が将軍や元帥にばれない しゅうとうさく よう、カーダは周到に策をねったのだろう。 ずるがしこいカータか、やりそうなことだ。ただ、カーダに手下がいるとわかったのは、ショックだ った。剣を持ったふたりのバンパイアは、カーダとバンパニーズのことを知っているようだ。でなけれ ば、カーダがつれてくるはずがない。血の番人 ( バンパイア・マウンテンに住みこみ、バンパイアの死 ないぞう ていきさっ ぶきみ 体から内臓をもらうかわりに血を提供する、不気味な人間のことだ ) はカーダの手先という気がする。 たが、うらぎり者のバンハイアはカーダだけかと思っていた。とんだ計算ちがいらしい クレプスリーもエラも、ばくをさがすことしか頭にない。そうでなければ、おかしいと感ついたはす だ。剣を持ったふたりのバンパイアは、そわそわと見まわしたり、手をびくっと動かしたり、みように いっこ、つ 落ちつきかない。中でもカーダは、かなりいらついているようすだ。一行の前に飛びだして、カーダを

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てき りきりさっしれん かこく のるにふさわしい実力を見せろと命じられ、力量の試練という過酷なテストを受けることになった。五 しつ。はい つの試練をすべてこなせば晴れて一族に人れるが、ひとつでも失敗したら「死の間ー行きだ。 ひさん 一頭のイ 最初の三つの試練は、なんとか切りぬけた。しかし四番目の試練でばくは悲惨な目にあい、 ころ ーキャットがいなければ、たぶん死んでいたたろ ノシシの下じきとなって、あやうく殺されかけた。ハ 強 ~ つぎじさっ かんいつばっ 、つ ーキャットが間一髪のところで客席から競技場に飛びおり、イノシシをたおしてくれたおかげで、 けつか 助かったのだ。しかしほんとうはひとりで戦わなくてはいけないのに、結果としてハーキャットに力を 貸してもらったことになり、ばくはおきてをやぶってしまった。そんなばくをどうするか、ハンハイア たちが話しあうあいだに、ある者がばくの部屋にこっそりやってきて、ばくを逃がしてくれた。金髪で、 げんすいしノかく すらりとしたバンパイアーー頭の切れる、平和主義者のカーダ・スモルトだ。元帥昇格をひかえたカー なかま ダのことを、ばくは仲間だと信じてうたがわなかった。 カーダにつれられて逃げるとちゅう、ばくらはガブナーに追いっかれ、もどって元帥の裁きにしたが せっとく え、と、さとされた。そのガブナーもカーダに説得されて、ばくを逃がす手伝いをすることになった。 ところがバンハイア・マウンテンの外まであと一歩のところで、ばくらはとんでもないものに出くわしの てしまった。人間の血を飲んだら、その人間をかならず殺すという、紫色のはだをした、バンパイアの章 ハンパニーズたちが、ほらあなにかくれていたのだ。 敵ーーそう、 さば きんばっ

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に飛びかかる。そして、槍がばくにつきささる前に、槍をとりあげ、地面におさえつけた。 ーの部下から、かなりはなれていた しかし、ナイフを持ったバンパイアは止められなかった。シ 1 しさつぐん からだ。そのバンハイアは、列をなす将軍たちをかきわけて、クレプスリーをおしのけ、ばくをめがけ とっしん て突進してきた。ナイフを一本投げつけてきたが、これはやすやすとかわせた。さらにもう一本、ばく に投げつけたり、体につきたてたりするよゅうはなかった。そうはさせじと、二匹の若いオオカミかバ ンパイアに飛びかかったのだ。二匹は敵を地面におしたおし、こうふんといかりをあらわにほえまくり、 はでにかみつき、つめを立てた。バンパイアが悲鳴をあげ、オオカミたちをはらいのけようとしたが、 オオカミたちの力が強くてどけられない いきね やがてかたほうのオオカミが、バンパイアののどにがぶりとかみつき、自 5 の根を止めた。目をおおい こうけい 、ゝい。なんの罪もないバンパイアは、せったい傷つけてはならない。しかし、 たくなる光景だが、これでし さっき はんのう すばやい反応やすさまじい殺気からすると、こいつはまちがいなくカーダの手下だ しさっげき いあわせたバンパイアたちは、衝撃のあまり、全員ばう立ちになった。あのクレプスリーでさえ立ち式 叙 すくみ、目を見ひらいてとほうにくれ、息をあらげている。 章 第 しオいなに」とたフ・ いったいどうやって : : : 」 「ダ、ダレンフ 「あとだ ! やり ひきてき つみ

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や、ちカう ! ただ、流されるままだ。もう死んでいるのに、気づかないだけかも まだ、死んで いない。鼻に水が入って、むせたではないか。生きている証拠だ。これだけの思いをしたんだ。あきら めるものか。気力をふりしばって、岸までおよぐんだ。このままずっと、ただよっているわけにはいか ない。流されれば流されるほど、あとが苦しい つかれきったうでと足に力をこめてみる。こんなに早く死ぬなんてあんまりだ、と言いきかせて だめだ、カが出ない バンハイア一族はどうなる、カーダやバンパニーズがいまにもおそおうとしてい ほねずい るんだぞーーやはり動けない。そういえばーーあることを思いだしてようやく、骨の髄までひえきった 体に火がつく。 川でおばれ死んだバンパイアは、魂がこの世からはなれられない。 川や流れる水の中で 死んだバンパイアは、楽園に行けない、 というバンパイア伝説だ。 ハンパイア伝説など信じたこともないくせに、なぜか力がわいてくる。弱ったうでを持ちあげ、岸に こうか 向かって動かしてみる。たいした効果はない。 4 クし回転しただけだ。でも体を動かせるとわかっただけ で、希望がわいてくる。 明 ひっし 夜 歯を食いしばって、顔を岸に向け、必死で足をあげる。のろのろと、でもちゃんと、足が動いてくれ 章 た。よし、クロールでおよごうーーーむりだ。あおむけでよわよわしく水をけり、わずかに手を動かしな第 がら、ゆっくりと岸をめざすしかない。かなり時間がかかった。バンパイア・マウンテンからだいぶは

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ハンパイアとバンパニーズは「フリットして、目にもとまらぬ速さで走ることができる。しかしバ ンハイアはおきてにより、バンパイア・マウンテンへの行き帰りにはフリットできない げんすい アロー元帥が、さらに続けた。 てきに しさつぐん 「もしわたしがいっかいの将軍ならば、断固として反対する。そんななさけない方法で敵を逃がすくら いなら、どうどうと戦って死ぬほうがよっほどましだ」 いったん言葉を切り、アロー元帥はがつくりとうなだれて、ためいきをついた。 ふまん 「しかし、わたしはバンパイア元帥だ。自分の不満はさておき、ますは一族の安全を第一に考えなけれ みさつあん ばなるまい ハンパニーズをわなにはめ、うまく攻撃する妙案がほかになければ、追いはらうしかない だろう」 だれも声をあげないので、元帥たちはおもだった将軍たちをよびだし、バンパニーズを追いはらう方 はいち 法や、山の外に兵を配置する場所を相談しはじめた。広間全体に、重苦しいあきらめの気分がたたよっ 議 た。立ったままのバンパイアも、腰をおろしたバンパイアも、いちょうにがつくりとうなだれ、歯ぎし戦 りしている。 章 第 ヾーに耳うちした。 ばくは小声で、シー 「みんな、なっとくしてないんだね」 こし そうだん 」 , っげ . き 会

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宀に。で、も、か ばったとしてもやはり、なさけなく思うだろう。 ぎ げんすいだんじさっえいへい パリス元帥が壇上の衛兵に合図した。衛兵たちがカ 1 ダをとりかこ 判決に異議がないと見きわめて、 てんじさっ み、はだかにする。衣服をはがれ、誇りをうばわれても、カーダはなにも言わず、広間の天井を見あげ ていた。 げんすい パリス元帥が五本の指をびんとのばして、指先をそろえ、玉座のうらの鉢に手のひらをひたした。へ むね ビの血が入った鉢だ。その手のひらを、カーダのむき出しの胸になすりつけた。ミッカー元帥とアロー ハンパイアの 元帥も、おなじようにする。こうしてカーダの胸に、三本のみにくい血の線が残った 世界で、「うらぎり者。「ひきよう者」を意味するしるしだ。 しるしをつけたあと、カーダは衛兵に連行されていった。広間のバンパイアはいっさいしゃべらず、 音も立てない。元帥の間を出るとき、カーダはうつむいていた。そのほおを、涙がとめどなく伝ってい こどく る。カ 1 ダは孤独だった。おびえていた。できれば、なぐさめてやりたい。でも、いまとなってはおそ すぎる。引きとめすに、行かせてやったほうがいし 連行されていくカーダに、やじをとばしたりなぐりかかったりするバンハイアは、さすがにいなかっ た。あけはなされたとびらの前で、カーダがいっしゅん立ちどまった。外のほらあなにいるバンパイア 、レよ。け . い たちに、道をあけてもらうためだ。そのあと衛兵につれられて、カーダは元帥の間から通路へ、処刑の はんけっ はち 194

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ちんもく それでも、沈黙が続く。 とうちナ、 目の前にいるあわれなカーダを、ばくはじっと見つめた。バンパイア・マウンテンに到着したばかり のころ、カーダはばくが早く慣れるようにと気をつかってくれた。友だちのようにせっしてくれ、じよ けいけんしゃ うだんを言ったり、いろいろ教えてくれたり、経験者ならではの知識をひろうしたりしてくれた。カー ダがエラ・セイルズを、台の上からはたきおとしたこともあった。そのエラを助けようと手をさしのべ、 びしやりとはたかれたときは、傷ついた顔をしていた。ばくの命を救ってくれたのも、カーダだ。ばく きけん ま 。くがいま、生きて のために、あぶない橋をわたってくれた。計画が失敗する危険までおかして ここにいられるのは、すべてカーダのおかげだ。 ばっ ばくは腰をうかせて、カーダのために罰を軽くしてくれと言いかけた。そのときふっと、ガブナーの 顔が頭をかすめた。エラの顔も、うかんでくる。もしクレプスリーやシ 1 1 やほかのバンハイアかじ やましたら、カーダはどうしたか ? いざとなれば、全員まよわず殺したはずだ。喜んで殺すことはな だんこ いが、ひるみもしないだろう。真のバンパイアらしく、やるべきことは断固としてやりとげたはすだ。 裁 かた ばくは席に深くすわりなおし、がつくりと肩を落として首をふり、のどもとまで出かかった言葉をぐ 章 しよばっ っとのみこんだ。ことが大きすぎる。カーダの処罰など、とても決められない。カーダはみすからの手第 はめつ で、破滅をまねいた。ひとりで受けとめてもらうしかないカータをかはえない自分か、なさけなかっ こし しん ちしき

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ほらあなにひびきわたる。 じょにんしきしゅじんこう この八人に続いて、叙任式の主人公、カーダ・スモルトがすがたをあらわした。四人のバンパイアが こし かつぐ小さな輿に乗り、ゆったりとした白いロープすがたで、金髪の頭を下げ、目を閉じている。カ 1 げんすい ダの列が元帥たちのもとへ半分ほど進むのを待って、ばくは元帥の間のかげから進みでた。すぐあとに、 オオカミたちが続く。そして、あらんかぎりの声をはりあげた。 「止まれつ ! 」 しいかぎん くがだれかわからなか 全員、こっちを向いた。詩歌を吟じる声が、びたっとやむ。最初はだれも、ば こむぎこ はんら ったーーー小麦粉をぬりたくった、こぎたない半裸の少年は、ゝ しったい何者だ ? でも近よっていくと、 みんなはっとして息をのみ、ロぐちにさわぎだした。 「おおつ、ダレンー りさっ クレプスリーが喜んでさけび、両うでを広げてよってくる。でもばくはクレプスリ 1 を無視して、ほ かのハンハイアたちに目を光らせた。だれか、おそってくるやつはないか ? 敵は、すはやかった。ばくを見たとたん、緑色の服を着たバンパイアがふたり、さっと槍をかまえた。 さらにもうひとり、二本のナイフを引きぬいて、おそいかかってくる。シー ーの部下たちも、すばや にんむ こんらん く任務をまっとうした。混乱をものともせす、間髪いれずに飛びだし、槍をふりかざすバンパイアたち てき かんばっ きんばっ やり