なりの時間をさいてくれと、強く求めてしかるべきだった。だから、責めはふたりで負うべきだ。おま えひとりが悪いのではない。ヾ ノンパイアのやりかたについてよく知らなければ、だれだって逃げだすだ ろう」 だまって聞いていたシ ーバーか、運命だ、と言いだした。 「こうなる運命だったのだ。もしダレンが逃げださなければ、カーダか一族をうらぎったことも、バン ハニーズのことも、気づかぬままだっただろう」 ここでハーキャットが、ばそりとつぶやいた しんぞう 「運命の針は : : : 心臓の形をした時計のなかで : : : 時をきざむ」 えつ、と全員そろって、 ーキャットを見つめた。 ーキャットフ 「どういう意味だよ、 さあ、とハーキャットが肩をすくめる。 「わからない。ふいにばっと : : : 頭にうかんできた。ミスター・タイニーの : : : ロぐせだ」 ミスター・タイニ 1 と、その手の中で転がされる、心臓の形をした時計 。ばくらは不安げに、顔 を見あわせた。 いつけん 「今回の一件に、デズモンド・タイニ 1 がからんでいたと思うか、ラーテン ? 」 104
しよう」 「ならば逃げだした敵を、外で待ちかまえてとらえればよい」 げんすい ミッカ 1 元帥がいきごんだが、 しきますまい 「そうかんたんには、ゝ とバネズがためいきをついた。 「横あなの外は、急な斜面です。敵はきっと、見はり番をおいているはず。その見はり番にかくれて、 はいち 味方を配置するのはむすかしいのでは ? できれば、山の中でつかまえたいのですが 「山の中では、つかまえられぬというのか ? 」 くちさっ 自信のないバネズを、パリス元帥がきつい口調でとがめた。 「どうがんばっても、むずかしいと言わざるをえません。 いくらこっそり近づいても、敵の不意をつく のはむりです。いったん気配をさとられたら、入り口に近い兵士がすて身でむかいうち、そのすきに大 議 半が逃げだすでしよう」 戦 作 それならば、とアロー元帥が口をはさんだ。 章 そうすれ第 「出口を外からふさいだらどうだ ? 岩をくずすなりなんなりして、ふさいでしまえばよい。 ば、敵も戦わざるをえまい」 てき しやめん 会
「いいんです、それくらい。ばくには、うしなうものがない。試練に失敗したから、いずれ殺される身 しよけ . い です。どうせ死ぬなら、死の間で処刑されるより、カーダの悪だくみを阻止して殺されるほうがまし ハ 1 かやさしく、ほほえみかけてくれた 「おまえは勇気ある、ほんもののバンパイアだな、ダレン・シャンよ」 「とんでもない。 とうぜんのことをするまでです。逃げだしたつぐないに」 「ラーテンはさぞ、誇りに思うだろう」 かた ばくは言葉につまって、赤くなり、肩をすくめた。そのあと、ばくらはひざをつきあわせ、山場とな る夜に向けて、いろいろと策をねった。 しれん
げんすい 三人の元帥たちが、不安そうに顔を見あわせる。 「そんなばかな」 ミッカー元帥が、つぶやいた。 そうだな、とアロー元帥が続ける。 「しかし、これほどとっぴな話だと、すぐに化けの皮がはがれる。われわれをだます気なら、もっとま ともな話をでっちあげたはずだ」 それに、とパリス元帥がためいきをついた。 : あの目には、うそなどかけらもない 「あの子の目を、見るといし とっぜん、さけび声があがった。カーダの手下のひとりが、シー ーの部下の手をふりはらい、通路 こ えいへい めがけて逃げだしたのだ。衛兵たちに行く手をはばまれ、とりかこまれると、ナイフを一本引きぬき、 命がけで戦おうとする。 「やめろ、サイラッシュ ! らんにゆう ちんもく カータがどなった。ま 。くが乱人してから、はじめて沈黙をやぶった。サイラッシュとよばれた手下が、 しじ ナイフを持った手をおろし、カ 1 ダの指示をあおぐ。 カータか、静かにつげた。 かわ
こ / 、はっ 第十三章土ロ発 ちんもく えんえんと、沈黙が続いた。なにを言えばいいのか、どう受けとめればいいのか、みんなとまどって げきど ひてい しトろぐん いる。もしカーダが激怒して否定すれば、将軍たちを味方につけられただろう。しかしカーダは目をふ なかま せて立ちつくし、ほんとうなのかと問いたげな仲間の視線を、受けるばかりで答えない。 げんすい とうとうパリス・スカイル元帥が、せきばらいをした。 こくはっ じょにん 「聞きずてならぬ告発だな。しかも、叙任を目前にひかえた元帥が相手とは : と、首をふる。 「うその告発ならば、どういうことになるか、わかっていような ? 」 「どうしてばくがうそを ? ばくは言いかえして、後ろをふり返り、ずらりとならんだバンパイアたちを見た。 りきりさっ しれん しよけ . い 「知ってのとおり、ばくは力量の試練に失敗して、処刑される前に逃げだしました。もどれば、とうぜ ん処刑されるはす。処刑されるとわかっていて、なんの理由もなく、もどると思いますか ? 」 しせん
そうぎ さば ここち 葬儀が終わったあと、ばくの裁きが始まるまでえんえんと待たされたときは、生きた心地がしなかっ りきりよっ しれん た。力量の試練に失敗したことも逃げだしたことも、きっとゆるされるとクレプスリーはロぐせのよう に言っていたが、 ばくには自信がない。日記を書いて気をまぎらわしたが、すべて書きおわり、もらし かくにん たことがないか確認したあとは、とくにやることもなく、ひまを持てあました。 えいへい げんすい ようやく衛兵がふたり、元帥がおよびだとっげにきた。少し待ってもらって、ばくは気をしずめた。 そして衛兵をとびらの外に待たせたまま、 ーキャットに向きなおり、 「これ、たのむよ」 と、日記や手まわり品を人れたバッグを手わたした ( このバッグは、友だちだったサム・グレストの かたみ 形見た ) しよけ . い 「もし処刑されることになったら、おまえに持っていてもらいたいんだ」 わかった、とハーキャットがおもおもしくうなずく。そして、衛兵とともに元帥の間へ向かうばくの ぎしき 第ニ十ニ章血の儀式
だきたい」 げんすい ヾ、 ーを、ミッカー元帥がぎろりとにらみつける。 落ちつきはらったシー 「おまえもかかわっているのだな、シー 「はい、和。みとめるのに、やぶさかではありません」 に しよばっ 「その少年は、われわれの処罰をおそれて、逃げだしたのだぞ。そんな者に、用はないー と、こんどはアロー元帥がすごんだ。毛のない頭に、青すじを立てている。 「ダレンがなぜここに来たか、わかればかならずや、なっとくしていただけましよう」 ーも、一歩もゆずらない ひら ついにパリス・スカイル元帥が、ロを開いた。 かた じょにん ぜんだいみもん れい 元帥の叙任をさまたげるなど、前代未聞のことだ。なぜそちがこの者の肩を持つの 「なんたる無礼ー か知らんが、ふたりともつまみだせ。話はあとで : 「いやだっー えいへい ばくは思わず大声を出して、衛兵たちをかきわけ、元帥の前に立った。元帥ひとりひとりと目を合わ せ、みんなに聞こえるように、声をはりあげる。 「元帥の叙任をさまたげたのは、たしかに前代未聞のことでしよう。でもそれを言うなら、うらぎり者 85 ー第 12 章叙任式
と、シー バーかクレプスリーに問いかけた。 えたい 「いや、まさか。ダレンは、運を味方につけただけだろう。しかし、タイニーは得体が知れんからな。 ほんとうのところは、わからん」 ばくが助かったのは、運命をあやつる時計の針の力なのか ? それとも、ただの幸運か ? みんなで げんすい 考えこんでいたところへ、元帥の使者がやってきた。この使者のあとについて、ばくはバンパイア・マ そうさくたい ウンテンの下のほうにある広間や横あなを通りぬけ、捜索隊と合流し、バンパニーズをさがすことにな ノ、イス・フレーンもいた。バネズというのは、試練を受け 一族から選ばれた五人の捜索隊の中には、ヾ : かため しどうきさつかん るばくのために指導教官を買って出てくれた、片目のゲームズマスターだ。バネズはばくの手をとり、 あいさつがわりにギュッとにぎりしめた。 「おれにはわかってた。おまえがおれたちから、逃げだすはずがない。ほかのやつらがおまえのことを戦 悪く言っても、おれには自信があった。頭をひやして考えれば、ぜったいもどってくるってな。だから、 ダレンは血まよっただけだ、ぜったい考えなおすって、言ってやったんだ 「そんなこと言って、賭けになったら、ばくがもどらないほうに賭けるんだろ」 しれん 会
「でも、カーダをうらぎり者よばわりしたんです , というだれかの声に、ヾ ノンパイアたちはふたたびおこりだし、ロぐちにばくをののしった。そんなバ ンパイアたちに、 「、も一ついし げんすい と、ミッカー元帥がどなり返した。広間が、しんとしずまりかえる。ミッカー元帥が、ばくをひたと こ、つ′き 見すえた。その目には、さっきばくを攻撃したバンパイアたちに負けずおとらず、いかりの炎がゆらめ れんこう 「もしおれにまかせてもらえるなら、おまえをしばりあげ、なにか言う前に口をふさぎ、死の間に連行 して、とうぜんのむくいを受けさせてやる」 いったん口をつぐみ、ミッカー元帥はバンパイアたちをぎろりとにらみつけた。みんなうなすき、そ うだ、そうだとつぶやいている。シー ーを見つけると、元帥はふっと顔をしかめた。 しんらい しよばっ 「だが、一族の信頼があっく、だれもが尊敬するバンパイアが、おまえに味方した。処罰をいさぎよく式 ・ナイルは、お 受けず、こそこそと逃げだすような半バンパイアなど、ただのくずだ。しかしシー ーの言葉を、おれとしては無視できない まえの話を聞けという。シー 「ああ、わしもだ」 そんけい みかた
していあん げんすゝ ハリス元帥の提案に、ヾ ノンパイアたちはいっせいに、とんでもないとつぶやいた。戦わないで追いは炻 一は こ、つい らうのは恥ずべき行為だと、みんな信じているからだ。それよりはバンパニ 1 ズと戦いたし A 」い一つ音 ~ あっとうてき 見のほうか、圧倒的に多かった。 こうふんしてささやきあうバンパイアたちに、。、 ノリス元帥が大声でよびかけた。 せんじゅっ 「たしかに、ヾ ノンパイアの名にふさわしい戦術とは言えん。しかし、外に逃げだしたバンパニーズを、 こ , っげ . き 追いかけて攻撃すればよいではないか。とりにがす者も多かろうが、見せしめになるていどは、とらえ て殺せよう」 いちり 「なるほど、 パリスの言いぶんには一理ある」 というミッカー元帥の一 = ロ葉に、ヾ ノンパイアたちはひそひそ話をやめた。 なかまぎせい 「どうしても、とは言わない。だか、バンパニ 1 ズたちを逃がすか、四、五十人の仲間を犠牲にするか、 どちらかしかないというなら : ハンパイアたちもいやいやながら、ひとり、ふたりとうなすきだした。ヾ ノリス元帥に意見を求められ、 ひら アロ 1 元帥が口を開く。 むえん 「そんな戦術、わたしに言わせれば、ただのたわごとだ。バンパニーズは、われわれのおきてとは無縁 なのだぞ。いったん外に出れば、フリットできるではないか。どうせ全員とりにがすに決まっている