クリスマスの騎士 「アーサ 1 王は、いすこに ! 」 こえ かぶとの中から、クリスマスの騎士の声がひびいた。 あか たいまつの明かりを受けて、赤いよろいが、ギラギラとる こ、ん アーサー王は立ちあがり、騎士をまっすぐに見すえると、低く落ちついた声 でこたえた。 「わたしがアーサーだ。そなたは、なに者ぞ ! 」 リ、、ナこよこたえす、小ばかにした調子でつつけた。 騎士は、王のⅢし力し。 ( めいくんなだか 名君と名高い、キャメロットのアーサーかとすると、 「ほほう。そなたが、 なら ここにい並ぶのは、かの有名な、円卓の騎士たちとお見うけするが ? 」 もの 再度たすねる。そなたは、なに者ぞ ! 」 「そのとおりだ。 むし ア 1 サー王の二度めの問いかけも無視して、騎士は言いはなった。 おう なか おう おう おう さいど ゅうめい きし えんたく もの ちょうし ひくお
ま 「ーー待て」 おう しんけんかお アーサ 1 王は、真剣な顔で、ふたりを見すえた。 さんにんあ べっせかい 「そなたたちは、〈別世界〉であの三人に会った、と申すのか ? 」 はなししん アーサー王は、ジャックたちの話が信じられないようすだ。 そこで、ジャックは、持っていた銀のカップをさし出した。 かえ 「これを、ガラハッド卿からあずかりました。お返しください」 くび アニーも、首にかけていたガラスの鍵をはずして、言った〇 「これは、ランスロット卿にー丨・」 じしやく さいご 最後にジャックが、方位磁石の箱を取りだして言った。 「これは、ヾ シバル卿に、わたしてください」 しな 「おお : これらはまさしく、あの三人が〈別世界〉へ持っていった品だ」 おう 、り - 、刀し おおごえわら アーサ 1 王は、すべてを理解すると、手をたたいてよろこび、大声で笑いな がら一一一口った。 おう きよう きよう きよう ぎん か〉さ さんにん み て べっせかい はも、つ 142
そうそう やかて、なにがほんとうで、なにが想像か、わからなくなってしまうのです」 ものかたり 「じゃあ、このほかにもキャメロットの物語があるの ? 」と、アニ 1 「そのとおりです」 しんけんひょうじよう それから、モーガンは、真剣な表情でつけ加えた。 でんせつ 、刀学に 「しかし、伝説のなかの人も場所も、そのように語りつがれてきたおかげで、 ひと いつまでも人びとの心のなかに、生きつづけることができるのです。 : ・です 、刀↓に でんせつ から、ジャック、アニ 1 。ど、つか、キャメロットの伝説を、りついでくださ お、つこく 、 0 アーサーの王国が、人びとにわすれさられることがないよう : : : 」 ものかたり 「もちろん。だって、これは、わたしたちの物語ですもの ! 」 おうでんせつ 「この世から、アーサ 1 王の伝説がなくなることは、ぜったいにありませんよ」 アニーとジャックか力をこめて一言、つと、モ 1 ガンは、よ、つやくほほえんだ。 おくおおひろま 「アーサ 1 王は、この奥の大広間にいます。さあ、はいりましよう」 モーガンは、重い木の扉をおし開けた。 おう おも こころ ちから とびら ひと ひと くわ ドラゴンと魔法の水
しかし、モ 1 ガンは、きつばりと一一一口った。 「わたくしではありません。それに、キャメロットでは、今年、クリスマスの お祝いをしないのです」 せつく 「えっ ? 」と言ったまま、ジャックは絶句した。 「どうして、クリスマスのお祝いをしないの ? 」 かお かな アニ 1 がたずねると、モーガンの顔が、悲しみでかげつた。 としよかん いっぞや、わたくしの図書館へ、来てくださいましたね ? あのとき、 を」りよく アーサー王は戦いにやぶれ、すっかり気力を失っていました。しかし、あなた ゅ、つ一 がたのおかげで、勇気と希望を取りもどすことができました」 「はい」と、ジャックはこたえた〇 「アーサ 1 王が戦っていたのは、モ 1 ドレッド卿という人です。その後、アー しようーり・ サー王は、ふたたびモードレッド卿にたち向かい、ついに勝利をおさめました。 おう きようて やみまほうつか たたか しかし、その戦いのさなか、モ 1 ドレッド卿と手を組んだ闇の魔法使いが、王 おう おう おう オオカ オオカ うしな きよう ひと ことし
アーサー王のなげき いりぐちなら ひろ 城の中にはいると、広いろうかがあり、両がわにいくつもの入口が並んでい あ へや た。つきあたりの部屋から、かすかな明かりかもれている ひろばあっ ばめん かべ 壁には、戦いの場面や、広場に集まる人びとのようすを織物にした、大きな 0 カかかっている タベストリ 1 、、 ま おうった 「あなたがたのことを、王に伝えてきますから、ここで待っていてください」 へや モ 1 ガンはそう一一一一口うと、つきあたりの部屋へとはいっていった。 アニ 1 が、ジャックのそでを引っぱった。 おおひろま 「あの部屋が、アーサ 1 王たちがいる大広間よ。ちょっとのぞいてみない ? 」 : 。ただし、そ、つつとだよ」 「、つん : あしちか せきちゅう ふたりは、しのび足で近づき、石柱のかげから、部屋の中をのぞきこんだ。 へや そこは、テニスコートほどもある部屋で、天井が高いドームになっていた。 しろなか オたカ おう おう ひ ひと りよう てんじよう へやなか 0 おりもの おお
ひたり 「ジャック、アニー、わが騎士たちも紹介しよう。左から、ボア 1 ズ卿、ーーー」 アーサ 1 王は、円卓をかこむ騎士たちの名を、順にあげていった。 こごえ アニーか、ジャックに、 小声でそっと聞いた〇 「お兄ちゃん。王さまが、なになにキョウっていうのは、なんのこと ? 」 「騎士は、名まえに『卿』をつけて呼ばれるんだよ」 トリストラム卿ーーー」 「ーーケイ卿、 ジャックとアニ 1 は、ひとりひとりに、おじぎをしていった。 騎士たちも、ジャックとアニーに、会釈を返す。 べディビア卿、そして最後は、ガウェイン卿だ」 ジャックは、あこがれのランスロット卿の名が呼ばれるのを、いまかいまか 、 : ついにその名は呼ばれなかった。 と待ってしたか、 しめ みつ おう 三つのいすを示して、言った。 アーサ 1 王が、だれもすわっていない、 か、ん さんにんきし 「ここにすわるべき三人の騎士は、もはや帰らぬ人となってしまった : きよう おう おう きよう えんたく きよう きよう しよう、かい 、んしやく かえ きよう じゅん きよう ひと きよう
へいか え、陛下。わたくしは、マジック・ツリ 1 ハウスを動かしてはおりませ み ん。わたくしも、ふたりがここへ来たのを見て、おどろいているのです」 み おも そのやりとりを見て、ジャックは、けげんに思った。 アーサー王は、モ 1 ガンかマジック・ツリー ( おかしいな : ノウスを使、つ のが、気に入らないんだろうか ) む アーサー王は、ふたりのほうに、向きなおって言った〇 つみ 「 : : : まあよい。 さて、ジャック、アニ この子らには、罪のないことだ。 しよう・かし おうひ ー、紹介しよう〇これか、王妃のグイネビアだ。、 クイ、不ビアよ、この子らが、 亠ま、んはユは 前に言したジャックとアニ 1 た くち おうひ かな む しす 王妃は、ロもとをわすかにゆるめただけで、悲しげに沈んだまなざしを向け、 しす 静かに一一一口った。 「ようこそ、キャメロットへ。あなたがたのことは、よく聞いていましたよ」 あ 「お会いできて、とてもうれしいです」と、アニーがこたえた。 おう おう つか ・ドラゴンと魔法の水
お話のふろくーーードラゴンと魔法の水 騎士 りようしゅ 中世ヨーロッパの騎士は、王や領主に仕え、戦争のときにはかけつけて、主 せんそう かくちおこな 人のために命をかけて戦いました。戦争のないときは、各地で行われるト 1 ナ ばしようじあ・い ちから うでせいしん メント ( 馬上試合 ) に出場して、カだめしをし、腕と精神をみがきました。仕 しゅじん りようしゅ しあい える主人がいない騎士は、戦争や試合で活やくすれば、王や領主の目にとまり、 め 召しかかえてもらえました。 おこな こんなん む よわものたす また、正しい行いをし、困難には勇敢にたち向力しし 、 : 、者を助け、女性に れいぎ しん 礼儀を尽くすのが、ほんとうの騎士である、と信じられていました。そのため こんなん ほ、つろ、つ たび に、わざわざ困難をもとめて、放浪の旅をする騎士もいました。 おうものかたり でんせつ アーサー王物語とケルト伝説 おう アーサー王、円卓の騎士、モーガン・ルー じん ちゅうせい っ いのち えんたく しゆっしよう せんそう おう ゅうかん かっ つか みず せんそう と、つじよう ものかたり ・フェイなどが登場する物語は、 おう じよせい つか 156
プロローグーーーアーサー王と円卓の騎士たち むかしむかし、イギリスがプリテンと呼ばれていたころ、王に子どもが生まれ、 じよげん まほ、つつか 丿ンの助言によって、アーサーは、ある ア 1 サーと名づけられた。魔法使いマー いえ そだ 騎士にあずけられ、その家の子として育てられた。 かくちせんそう やかて、王が亡くなると、各地で戦争かおこり、国はばらばらになってしまっ いしだいざ けんぬ きぞく きよう、かし 6 、ん た。貴族たちは、教会の前の、石の台座にささった剣を抜いた者を、プリテンの ぬ でんせつけん おう 王にしよう、と決めたが、だれも抜くことができなかった。その伝説の剣を、み ひ せいちょう ごとに引きぬいたのが、成長したア 1 サ 1 だった。 おう こうして、プリテンの王となったア 1 サ 1 は、マ 1 リンに助けられなから、王 こノ、と、ついっ 国を統一し、国に平和をもたらした。 おうみやこさだ じようへ一 アーサー王が都に定めたキャメロットは、城壁にかこまれた、美しい町だった。 ひと み おう かっき そこでは、ア 1 サー王をしたう人びとが、活気に満ちた生活をおくっていた。 おう おうえんたく よ きし せいかっ おう たす もの うつく まち おう 8
まコ とうじようじんぶつ おもな登場人物 ジャック すおとこ しゅう アメリカのペンシルべニア州に住む男の子。 だいす み ほんよ 本を読むのが大好きで、見たことや調べたこ とを、すぐにノートに書くくせがある。 アニ ぼうけんだいす ジャックの妹。空想や冒険が大好きで、いつ なか げんき も元気な女の子。どんな動物ともすぐイ中よし になり、かってに名まえをつけてしまう。 モーガン・ルー・フェイ あねまほう プリテンの王・アーサーの姉。魔法をあやっ ほんあっ せかい り、世界じゅうのすぐれた本を集めるために、 たび マジック・ツリーハウスで旅をしている。 アーサー王 でんせつおうやみ プリテンの伝説の王。闇の魔法使いののろい べっせかい さんにん をとくために、三人の騎士を〈別世界〉に送る が、失敗してしまう。 クリスマスの騎士 真っ赤なマントをひるがえし、緑色の衣しょ うをつけた馬に乗る、風がわりな騎士。ジャ べっせかい ックとアニーをく別世界〉へ行かせる。 ら か くうそう どうぶつ おんな な おう おう まほうつか おく しつばい みどりいろ か うまの