「お兄ちゃん、スノ 1 が、連れてってくれるって ! 早くおりてきて ! マン トをわすれないでね ! 」 ( スノーだって ? アニ 1 は、また、かってに名まえをつけたのか ! ) 亠ま、打ノ \ よー・」 「わ、わかった、わかった。い しんちょう ジャックは、マントをかかえあげ、廩重になわばしごをおりた。それから、 しかせ おそるおそる鹿の背に乗ろうとすると、アニーが言った。 さむ 「お兄ちゃん。寒いんでしよう ? そのマントを着てみたら ? 」 ひろ むす ジャックは、マントを広げて、リュックの上からはおり、ひもを結んだ。ビ ここち れいき かんしよく ロ 1 ドの感触が心地よく、まわりの冷気がうそのように、あたたかい。 ひ ジャックは、引きずるほど長いマントのすそをひるがえし、アニ 1 のうしろ おじかせ から、牡鹿の背にまたがった。 「用意はいい 「うん、オーケ 1 だ」 よ、つ の っ なが 、つ、ん はや ・・ドラゴンと魔法の水
「ここよ」 かお ジャックの顔を、つめたい手がなでた。 「わああっ、なんだ」 ジャックは、おどろいて飛びのいた すかたみ 「あはは ! お兄ちゃん、わたしの姿、見えないでしよう ? マントのフ 1 ド ひみつ をかぶってみたの。それが、このマントの秘密だったのよー しん 「そんな : ・ まだ、信じられない : 「見てて。いま、フ 1 ドをぬぐから めまえ つぎのしゅんかん、目の前に、マントを着たアニ 1 の姿が、あらわれた。 「フードをかぶったときだけ、消えるみたい。うまくできてるわ ! 」 きみわる 。いや、それにしても、気味が悪いよ : : : 」 じぶん 「わたしも、自分のからだが消えたときは、びつくりしたわ。だけど、すぐに もんとお なれるわ。とにかくこれで、衛兵に見つからずに、門を通れるのよ ! 」 み すがた
つかみち さむ し、力し 寒さをふせぐ以外に、使い道があるのかなあ : : : 」 「、つ 1 ん : 、つら つきあ ジャックは、マントをぬぎ、月明かりにかざしたり、裏がえしてみたりした やく が、なんの役に立つのか、さつばりわからない。 「もしかして、これを着たら、姿が変わったり、見えなくなるんじゃない ? 「そんな、ばかな : : : 」 「あら。おとぎ話では、よくある話よ」 「でも、さっき、ばくが着ていたときは、姿も変わらなければ、消えもしなか ったぞ」 「着かたがまちがってたのよちょっと、かして」 おも ジャックは、むだなことを、と思いなから、アニ 1 にマントをわたした。 「お兄ちゃん、どう ? なにに見える ? 「こりやおどろいた。マントをはおったアニ 1 に見えるよ : : : 」 「なによ、お兄ちゃんたらっ ! 」 ばなし すがた はなし すかた
( たしかに、アニ 1 の言うとおりだけど : : : ) 「さ、お兄ちゃんも、わたしといっしょに、マントにはいって」 はんぶんかた ジャックは、しぶしぶアニ 1 の横に立ち、マントの半分を肩にかけた。 「よかった。このマント、ふたりではいっても、じゅうぶんな大きさねー まえあ ちゅうし からだのどこも出ないように、注意ぶかく前を合わせ、それから、 あたま フ 1 ドを引きあげて、ふたりの頭をおおった。 したみ ジャックは、下を見ておどろいた。足がないー 「う、、つわあっ ! 」 さけびながら、ジャックは、あわててフ 1 ドをはらいのけた。 「アニ 1 、やつばり、やめよう」 、もんレ」ハほ、つほ、つ 「だめよ。衛兵に見つからずに、門を通る方法が、ほかにある ? う、うん、わかったよ : : : 」 「 : : : そうだけど : いきす かくご おお ジャックは、覚を決め、大きく息を吸いこんだ。 よこ あし おお ・ドラゴンと魔法の水
こだち おじか 城壁の中にはいってからは、牡鹿はスピ 1 ドをおとし、ツリーハウスの木立 のところまで来て、止まった。 おじか 牡鹿がひざをおり、地面にすわると、ジャックとアニ 1 は、その背からすべ りおりた。 「マントは、ここでぬいでいこう。すそを踏んでころんだら、たいへんだ」 じめん ジャックは、カップを地面におき、マントをぬいだ。 おじかせなか アニーがそれを、牡鹿の背中にかけて、言った。 べっせかい 「スノー。わたしたちを、〈別世界〉まで連れていってくれて、ありがとう かえ つか もしもあなたが、 クリスマスの騎士のお使いなら、このマントを、騎士に返し てちょうだいね」 「さよなら、スノ 1 。ど、つもありがと、つ」と、ジャックもお礼を一一一一口った。 おじか しんびてきちゃいろめ 牡鹿は、神秘的な茶色の目で、ふたりをじっと見つめていたが、うなずくよ あたま よるやみき 、つに頭をふると、ゆっくりと立ちあかり、夜の闇に消えていった。 じようへき なか じめん ・ドラゴンと魔法の水 133
ジャックは、騎士のことばを、すばやくノ 1 トに圭日きとめた。 「つぎは ? 」 さいしょ やく 「第二のヒントーーー、四つの贈り物が、役に立つ。最初は、わたしからの贈り物 じしやく かぎ つぎに、カップと方位磁石、そして、鍵だ」 カップ : 、方位磁石 : : : 、鍵 : : : 、と。そして、最後は ? 」 「第三のヒント 危機を脱したら、西の方角に秘密の扉がある」 みあ ジャックは、第三のヒントを書きとめると、クリスマスの騎士を見上げた。 しんく 騎士は、それにはこたえす、はおっていた真紅のマントをぬいで、床の上に ハラリと落とした。 はんしゃ マントは、たいまつの明かりを反射して、ぬれたように輝いている。 ジャックとアニ 1 が、マントに気をとられているあいだに、騎士は手綱を持 おと ちなおし、ひづめの音を高らかにひびかせながら、姿を消した。 十′しーー だいさん だいさん おく もの じしやく 力一 にしほうがくひみつ すがた とびら かがや ゆか たづな おくもの うえ
と、マントの中で、アニ 1 が、クルリとからだの向きを変えた。 ヒュウウウウ 「ビュウウウウ てつ おと こんどは、ガーン ! と音がして、鉄の扉が閉まった。アニーが押しもどした らしい。 とびらそと 扉の外で、衛兵たちは顔を見あわせていたが、すぐに持ち場にもどり、なに ごともなかったかのように、吊り橋のほうを向いて立った。 すかた しす ジャックとアニーは、静かに扉からはなれ、衛兵の姿が見えなくなると、マ しんこきゅう ントをかぶったまま、なん度も深呼吸した。 ておも どうして、あんな手を思いついたんだ ? 」 「アニー、やるじゃないかー きおお おも 「ありがとう。魔法のマントを着ていると思ったら、気が大きくなっちゃって ! 」 もんなかせかい かお それから、ジャックとアニーは、顔をあげて、門の中の世界に目をやった。 べっせかい ( これが〈別世界〉か : : : ) ふたりは、はじめて見るふしぎな世界を、、つつとりとながめた。 なか かおみ つばし とびら せかい とびら
「どのヒントも、なぞなぞみたいで、さつばりわからないや。ばくらはつまり、 どうすればいいんだろう : 「つまり、〈別世界〉に行けば、い、 しんじゃない ? 」 、つ、ん アニーは、床の上のマントをひろいあげた。まるでべッドカバーのように大 きなマントで、両腕でかかえても、ずっしりと重い。 め おく もの 「これは、第二のヒントの一ばん目〈クリスマスの騎士からの贈り物〉よ。す おく ものひと くなくとも、贈り物の一つは、もう手にはいった、ってことだわ」 べっせかい 「だけど、〈別世界〉なんて、どこにあるんだ ? あの騎士は、かんじんなこ おし とは、なにも教えてくれなかった。せめて、本でもくれたらよかったのに ! 」 でんせっせかい ほんやく っこく 「伝説の世界に、本は役に立たないって、言われたでしよ。とにかく、一刻も はや しゆっぱっ 早くここを出発することよ」 でぐち めしめ アニ 1 はそ、つ一一一一口うと、出口のほうを目で示した。 えんたく ジャックは、円卓をふりかえった。そこには、こおりついたア 1 サー王が、 学 / しー、 べっせかい ゆか りよう、つ一 ( て ほん おも おう おお 8
牡鹿が、ゆっくりと立ちあがった。 ど、つじ と同時に、真っ赤なビロードのマントが、ふたりのからだをすつほりとつつ みこんだ。 おじか こだちなか ある しようへき 牡鹿は、最初、木立の中をゆるゆると歩いていたが、町を抜け、城壁の門を いっき 出ると、白い息をはきだし、それから一気に走りだした。 アニーは、鹿の首にしがみつき、ジャックは、アニーにしがみついた。 しも しろおじか 、刀当一 かじゅえんき 白い牡鹿は、霜がきらめく畑をかけ抜け、生け垣をまたぎ、果樹園の木の下 かわと をくぐり、こおりついた川を飛びこえていった。 かみしつぶう アニ 1 の髪が疾風になびき、ふたりをつつんだマントが、ジャックの背中で 帆のよ、つにふくらむ。 おも ジャックは、こわいとは思わなかった。それどころか、牡鹿の背中は、意外 ごこち おも に乗り心地かいいと田 5 った。 、も、つ まんてんほしぞらした しろりゅうせい 満天の星空の下を、猛スピードで走る牡鹿は、まるで白い流星だ おじか しろ くび はしおじか まちぬ おじかせなか せなか もん し、刀し ・・・ドラゴンと魔法の水
なっとく む ひろま 広間の入口に目を向けたモーガンか、納得したように言った。 これで、なにもかもわかりました」 「 : ・・ : ああ、そ、つだったのですね : ・ こえ いちどいりぐち モ 1 ガンのことばに、も、つ一度入口をふりかえったジャックは、あっと声を あげた。 しろおじかすがた 白い牡鹿の姿は消え、かわりに、白いあごひげを長くたらした、風がわりな あか ろうじんた みぎて ながっえも 老人が立っていた。右手に長い杖を持ち、赤いビロ 1 ドのマントをはおってい ば、つりん・か べっせかい る。ジャックとアニ 1 が〈別世界〉への冒険に借りたマントと、よく似ている 「あ、あの人は ? 」と、ジャックか聞いた。 亠まほ、つつ、か せかいさいこ、つ おうじんせい 1 リンです」 「ア 1 サ 1 王の人生の師である、世界最高の魔法使い、マ しす モ 1 ガンは、静かにつづけた。 「おばえていますか ? わたくしをからかってネズミに変えた、いたずら好き しようたい こんや の、わたくしの友人 : ・ 今夜、あなたがたをキャメロットに招待したのは、 あのマーリンだったのです。いま、それがわかりました」 いりぐちめ ひと ゅうじん し 0 しろ 0 なが ふう 0 ドラゴンと魔法の水 145