わたしたちがダンスの魔法にかかっているあいだに、馬がどこかへ行ってしま ったのだ」 わら それを聞いて、ジャックとアニ 1 は顔を見あわせ、につこり笑った。 ばくそうち くろ、つま 「黒い馬と、茶色い馬と、灰色の馬なら、三頭とも、丘のむこうの牧草地にい ましたよ」 亠ま / 、さ 「おいしい草をたくさん食べて、待ってるわ」 ばくそ、っち さいしょ み の ふたりは、最初に見た牧草地へ、騎士たちを案内した。 法 しんく そのとちゅう、ジャックは、真紅のマントを見つけ、きちんとたたんで小脇と ン ゴ にかかえた。 / 、さ さんと、つ ばくそ、っち 牧草地で草を食べていた三頭の馬は、騎士たちの姿を見ると、大よろこびで 走ってきた。 きようちゃいろ、つま / 、ろ、つ亠ま ランスロット卿は、黒い馬の手綱をつかみ、ガラハッド卿は茶色の馬、 たづなひ シハル卿は、灰色の馬の手綱を引いた きよう ちゃいろうま ( ししろ、つ亠ま きよう は し、 ろ つ たづな かおみ さんと、つ あんない み すがたみ おか おお こわき 125
ノ、ろ、つま 黒馬のたてがみを、いとしそうになでなから、ランスロット卿が言った。 「わたしたちの馬を見つけてくれて、ほんとうにありがとう。この馬がいちば おく んはやいから、わたしが、そなたたちを、キャメロットまで送ろう」 「はいつ、おねがいします」 むす あか ジャックは、赤いマントをはおり、えりもとのひもを結んだ。 じぶん ランスロット卿は、ジャックとアニーを抱きあげて馬に乗せ、自分はふたり まえ の前にまたがった。 ひたりうで アニーは、右手でカップを持ち、左腕をランスロット卿のからだにまわした。 「アニ 1 、ばくがカップを持と、つか ? 」 こ、ん しんばい いちばん、つしろから、ジャックか、心配そ、つに亠をかけた。 「だいじようぶよ、お兄ちゃん」と、アニー もんむ ある しゅんび さんと、つ しゆっぱっ てつごうし 出発の準備がととのうと、三頭の馬は、鉄格子の門に向かって歩きだした。 みすき 馬がゆれるたびに、ジャックは、カップの水が気になってしかたがない。 みぎて 、つまみ 、つ士の きよう きよう 126
くろ、つませんと、つ いちれつなら 、つますす ランスロット卿の黒馬を先頭に、騎士たちは一列に並んで、馬を進めた。 どうどう たいどあっとう ふたりの衛兵は、騎士たちの堂々とした態度に圧倒されて、ただ立ちつくし 、つま さんと、つ もんとお ている。三頭の馬は、なにごともなく門を通りぬけた。 よ さむ もんそと 門の外は、霧につつまれた、暗くて寒い、この世の世界だった。 つめたい風にあおられ、ジャックが着たマントのすそが、バ タバタとひるが べっせかい える。ジャックは、門の中の〈別世界〉とのちかいに、あらためておどろいた。 さんと、つ つばし 三頭の馬が、無事に吊り橋をわたりきったときだった。 とっぜん、馬たちが足をハタつかせ、ヒヒ 1 ン、ヒヒーンと、 めた。 め やみなかみ みんなは、目をこらして、闇の中を見つめた。 すると、霧の中に、白いものが、ばうっとうかびあがった。 「あっ、あれは : アニ 1 が、さけんだ。 かぜ なか きよう もんなか あし しろ せかい いななきはじ ・・ドラゴンと魔法の水 129
したむ モーガンは、だまって下を向いた。そのとき おと とっぜん、ろうかのほうで、大きな音がした。サーツと吹きこんだ風に かべ いまつやろうそくの炎があおられ、壁にうつったかげが、ゆらゆらとゆれた。 、カッ、。、カッ、。、ツ おとちか つづいて、ひづめの音が近づいてきた。 おおひろま い , り・ノ、↓っ しせん みんなの視線が、 大広間の入口にくぎつけになった。 そこへあらわれたのは、馬に乗った、風がわりな騎士だった。 あかひかり しんく 騎士は、赤い光を放つよろいかぶとに身をつつみ、床までとどきそうな真紅 あたま くらした のマントをはおっている。馬はといえば、頭にかぶったマスク、鞍の下からの ぞくマット、からだをおおう布まで、すべてが緑色だ。 おも かんせい アニ 1 が、思わず、歓声をあげた。 あかみどり 「クリスマス・カラ 1 の赤と緑 ! あの人、クリスマスの騎士だわ ! 」 ほのお ぬの おお ひと ふう みどりいろ ゆか かぜ ・・・ドラゴンと魔法の水
さんにん 踊りの輪のむこ、つに、ランスロット卿、ガラハッド卿ハ けんこし み 三人とも、剣を腰におさめ、身なりをととのえている 「騎士さん ! 」 アニ 1 が、呼びかけた。 「わたしたち、やったわ ! 」 さんにんきし ある 三人の騎士が、ジャックとアニ 1 に気づき、よろよろと歩いてきた。やせお かおいろ 、刀いふ / 、 とろえてはいるが、顔色はずいぶん回復している きおくそうぞうみず 「これが〈記憶と想像の水〉よー ぎん かんたんこえ アニーが、銀のカップを持ちあげてみせると、騎士たちは、感嘆の声をあげ っこ′、 「これを、一刻も早く、キャメロットにとどけましよ、つ ! 」と、ジャック。 むねん すると、ランスロット卿か、 ~ 念そ、つに一一一口った。 おく 「ああ、馬がいれば、ふたりをキャメロットへ送ってあげられるのだが : おど 、つま わ よ はや きよう きよう 0 きよう 0 1 シノノ呱力いた きよう 124
「だいじようぶ ? 気をつけて ! 」 0 そのたびに、アニ 1 もこたえる 「わかってる、わかってる ! 」 もんみ てつごうし やがて、あの鉄格子の門が見えてきた〇 きんいろ 門のむこうに、金色のよろいかぶとをつけた衛兵が立っている むね とお おも 則にここを通ったときのことを思いだして、胸がさわいだ ジャックは、 と 事に、力学に、カ さんにんきし もんまえ けんぬ 三人の騎士たちは、門の前で馬を止めると、いっせいに剣を抜いて、高々と 、刀 , 刀しに ランスロット卿か、さけんだ。 「わが名は、キャメロットの騎士、ランスロット ! アーサー王の名において もんあ てつごうし 命じる ! 鉄格子の門を開けよ ! 」 こえ その声は、わすかにかすれてはいたが、低く重く、力強くひびいた。 てつごうし すると、おどろいたことに、鉄格子の扉がゆっくりと開きはじめた。 もん きよう 、つま とびら ひくおも ちからづよ ひら おう 0 ドラゴンと魔法の水 127
三人の騎士は生きていた ! さむ ′、らせかい そこは、さっきまでふたりかいた、寒くて暗い世界とは正反対の、輝くばか うつく りに美しい世界だった。 たいよう ばくそ、っちひろ めまえ 目の前 ( ( リこよ、太陽がふりそそぐ、緑ゆたかな牧草地が広がっている くろちゃいろはいいろうま 0 そこでは、黒、茶色、灰色の馬が、ゆったりと草をはんでいる おか ほ、つ社一 ほくそ、っち 牧草地のむこうのなだらかな丘には、赤やむらさきの花が、宝石をちりばめ さ たように咲いている 「ああ、なんて、きれいなの ! 」と、アニーがため息をついた 「もう、姿をかくす必要はなさそうだね」 ジャックは、フードを取った。 み ふたりの姿がもどったのを見て、ジャックは、心からほっとした。アニーの かおみはなし 顔を見て話ができるのが、なによりもうれしい。 さんにん すがた すがた せかい ひつよう 0 きし みどり あ こころ し、 き せいはんたい かかや 0 ・ドラゴンと魔法の水
「とんでもないー ばくたちは、ふつうの子どもです。でも、スノ 1 はきっと、 士玉ほ、つつか かんけい おも 魔法使いと関係があると思います。だって、キャメロットからここまで、あっ 亠ま とい、つ間だったから : : : 」 ランスロット卿か、、つなずいて一一一口った。 おじか 「そ、つかならば、そなたたちは、牡鹿といっしょに行くほ、つかよいであろ、つ はや わたしたちよりずっと早いにちがいない」 ランスロット卿は、ジャックが馬からおりるあいだ、銀のカップを持ってい いってき てくれた。、、 シャックは、カップを受けとると、中の水を一滴もこばさないよう おじか に注意しながら、牡鹿のところへ行き、アニーのうしろにまたがった。 おじか おも 牡鹿が立ちあがった。。 シャックは、思わす、カップを両手でささえた。 こ、ん ランスロット卿が、馬上から亠をかけた。 しんねんさいしょ まえ 「アーサー王に伝えてくれ。わたしたちは、新年の最初の夜がおとすれる前に、 かえ かならずキャメロットに帰ります、と ! 」 ちゅう おう きよう きよう きよう 、つ十 6 なかみす りよう一、 ぎん よる 0 ドラゴンと魔法の水 131
「行ってみましようよ ! 」 まんいち 「待って ! 万一つていうこともあるから、姿をかくして行こう」 しんばいしよう 「お兄ちゃんって、ほんとに心配性ね」 くさ ジャックがフードを引っぱりあげた。姿が消えると、ふたりは、そろって草 う、んある の上を歩きはじめた。 とお そうして、三頭の馬のそばを通り、花畑の丘をのばり、丘の頂上についた。 「あっ、これは : くさちひろ こ、つけい おかした くさちひろば みどり 丘の下の草地に広がる景に、ふたりは、またしても仰天した。 緑の草地の広場には、大きなダンスの輪ができていた。 わなか カくし ぶえよこぶえたてごと 輪の中では、楽士たちが、たて笛、横笛、竪琴、マンドリン、大太鼓、小太 がっき たの おんがく 鼓と、さまざまな楽器で、楽しげな音楽を奏でている。そのまわりを、おおぜ いの人たちが、手をつなぎ、笑い、うたい、踊りながらまわっている おおがまばんにん 「お兄ちゃん、あれがきっと〈大釜の番人〉たちょ ! 」 ひと さんと、つ 、つま わら はなばたけおか すかた かな すがた おど ぎようてん おカちょうじよう おおだいこ 一」 4 にし ・ドラゴンと魔法の水
まコ とうじようじんぶつ おもな登場人物 ジャック すおとこ しゅう アメリカのペンシルべニア州に住む男の子。 だいす み ほんよ 本を読むのが大好きで、見たことや調べたこ とを、すぐにノートに書くくせがある。 アニ ぼうけんだいす ジャックの妹。空想や冒険が大好きで、いつ なか げんき も元気な女の子。どんな動物ともすぐイ中よし になり、かってに名まえをつけてしまう。 モーガン・ルー・フェイ あねまほう プリテンの王・アーサーの姉。魔法をあやっ ほんあっ せかい り、世界じゅうのすぐれた本を集めるために、 たび マジック・ツリーハウスで旅をしている。 アーサー王 でんせつおうやみ プリテンの伝説の王。闇の魔法使いののろい べっせかい さんにん をとくために、三人の騎士を〈別世界〉に送る が、失敗してしまう。 クリスマスの騎士 真っ赤なマントをひるがえし、緑色の衣しょ うをつけた馬に乗る、風がわりな騎士。ジャ べっせかい ックとアニーをく別世界〉へ行かせる。 ら か くうそう どうぶつ おんな な おう おう まほうつか おく しつばい みどりいろ か うまの