営業活動 CF ( 間接法 ) 税引前当期純利益 減価償却費 貸倒引当金 営業外収益 営業外費用 特別利益 特別損失 売上債権の増減額 棚卸資産の増減額 仕入債務の増減額 その他流動資産の増減額 その他流動負債の増減額 小計 営業外収益の受領額 営業外費用の支払額 特別利益の受領額 特別損失の支払額 法人税の支払額 営業活動 CF 合計 図表 1 キャッシュフロー計算のコツ キャッシュフロー作成のポイント ・税引後ではなく , 税引前からスタートする。 こでは , 減価償却費や各種引当金などの非資金支出項目を加算する。減価償却費は , 損益計算書だけでなく , 製造原価報告書の中にもあるため , 注意したい。貸倒引当金は , 貸倒引当金繰入額ではなく , 貸借対照表上の貸 倒引当金の増減額を加算する。 こでは , 損益計算書の営業外収支 , 特別損益を調整する。 こで , 損益計算書上の収益を差し引き , 費用を足 し戻すのは「小計」の欄で , 営業利益レベルの CF を求めることを目的としているためである。「小計」は損益計 算書の営業利益と同じく , 本業で得られた CF を表している。しかし , 営業活動 CF の間接法では , 本業外の収益 を加減して求めた税引前利益からスタートしており , 税引前利益は本業以外の収益を含むため , それを排除する ために営業外の収益を差し引き , 営業外の費用を足し戻す処理を行っている。 こでは , 貸借対照表の流動資産・流動負債のうち , 営業に直接関係の深い運転資本に関する資金の増減を調整 する。 ・貸借対照表の流動資産・流動負債のうち , 重要度の低いものは , 上記の運転資本の後で増減を調整する。その他 の資産・負債も増減がある場合は , キャッシュフローに影響するため , 必ず調整する。 ・小計は損益計算書の営業利益と同じような意味を持ち , 本業で得られたキャッシュフローを表している。 ・本業以外で得られたキャッシュフローを加減していく。順番は , 損益計算書の営業利益以降の順番に倣うことが 計算モレを防ぐコツである。 ・特別利益および損失は , 本業ではなく , 投資活動でも財務活動でもないものを小計以降に計上する。有形固定資 産や有価証券の売却益や売却損は投資活動 CF に記載し , それ以外のもの ( 損益の内容が不明なものなど ) をこ に記載する。 ・未収利息や未払利息がある場合は , それと調整をした額を記載する。 ・未払い法人税がある場合は , それと調整をした額を記載する。 ミス防止策や修正法を準備しておきたい。ミス の防止や発見には , 以下の方法が役立つ。 くミスの防止法〉 誤差 6 の 1 / 2 にあたる 3 の士をチェックするこ ー 3 を + 3 としてしまった場合は , たとえば , チェックしたい。 + 財務 CF 」の誤差の 1 / 2 の数値の士の使い方を 場合は , 「現金の増減」と「営業 CF + 投資 CF 対照表の増減値の士を逆に使用した可能性がある 発見できる。また , 数値の使用モレがなく , 貸借 に〇印がついていない箇所を探すことで , ミスを 計算ミスが判明した場合は , 先に説明した数値 くミスの発見法〉 クを行うことで , 数値の使用モレを防止できる。 のため , 使用した数値に〇印をつけるなどチェッ 値」を部品として組み立て直したものである。そ 勘定の増減値」と「損益計算書の特定の勘定の数 キャッシュフロー計算書は , 「貸借対照表の各 ため , その場合は電卓のミスか数値の使用モレが 誤差の 1 / 2 を求めると小数点が発生する とでミスを発見できる ( ただし , 誤差が奇数の場 28 合は , 原因となっている可能性がある ) 。 ( 2 ) キャッシュフローの説明のコツ キャッシュフローの問題では , 計算後に , それ を評価・説明する問題がよく出題される。説明の 内容は , あらかじめパターンを金型的に準備し , 対応することカ陏効である。 たとえば , 「望ましいキャッシュフロー経営の モデル」や「望ましくないキャッシュフロー経営 のモデル」などをイメージし , それと比較する形 で述べる。前者には以下のようなケースがある。 ①本業である営業活動で十分なキャッシュを得る ことができ , ②この中から将来の発展に必要な投 資を行い , ③さらに借入金に依存した経営体質か ら脱却するために借入金の返済ができている。 一方 , 望ましくない状態は以下のようなケース である。 ①営業活動では十分なキャッシュを得ることはで きなかったが , ②無計画的に過剰な投資を行い , ③営業活動で得ることのできなかった運転資金の 不足分と投資資金を金融機関からの借入で賄った。 企業診断 2016 / 1
しました。まずは , 1 次試験と同じスマートフ 左右のページで分類するアイデアは , 財務・会 オンの講座で , 2 次対策の講義を聴き始めました。 の貸借対照表から得ました。貸借対照表の資本 講義の内容は , 試験問題に対する解法が中心で は , 「自己資本」と「他人資本」に分類できます す。事例企業は最終的にどうすべきか大枠を検討 よね。知識も同様に , 学習期間中に身につけた , し , 次に各設問について現状分析をします。そし いわば「自己資本」と , 試験直前に仕入れた , い て , 設問の内容と解答の要素を整備して結びつけ , わば「他人資本」に分類できると考えたのです。 「自己資本」はパッと見直せば OK で , 「他人 これらを 1 枚の表にまとめるのです。 その後 , 教わった解法を使って , 過去問を解い 資本」は直前に記憶して試験に臨む。このように ていきました。ただ , ほかの方の勉強法と違うの 用途の異なる知識を分けて記録することで , 試験 は , 9 月までは解答用紙に記述せず , 1 枚の表 本番でのうろ覚え防止につなげました。 にまとめるだけで終わらせたことです。 解答用紙に記述する練習は , 10 月に入ってか 2 次試験の本番はいかがでしたか。 試験会場には , ぶどうジュースと , 私の一番好 ら始めました。私は , それまでに他の記述式試験 を経験していましたし , 日々の業務で字数制限の きなパン屋さんのパンを持って行きました。ぶど ある営業報告などを書いていましたので , それら うジュースは , 頭を使って消耗した糖分を補給す の積み重ねがあれば大丈夫だと思ったのです。 るため , パンは , たとえ試験がうまく行かずに落 ち込んでも , 好きなものを食べて元気を出すため そのほかには , どのような学習をされましたか。 です。当日の体調管理とモチベーション管理は大 一番努力したのは , 苦手だった事例Ⅳです。テ 切ですからね。 キストを買って , 必死で問題を解きました。 試験終了後 , 合格への手応えはありました。特 , 旅行会社が題材となった事例Ⅱについては , また , 興味のある企業の財務分析にもチャレン ジしました。自社や競合他社の決算報告をもとに 「これをやれば売れる」 , 「どこかの旅行会社がや れば , 儲かるのに・・・」と思えるような解答を書く 貸借対照表や損益計算書を分析するのです。これ には , 2 次対策だけでなく , 自身の所属してい ことができました。 る業界などの理解が深まるという効果もあります。 社長さんの思いを受けきる 「想像していたよりも優良企業だった」などと意 外な事実に気づくこともありますし , お勧めです。 ー将棋マンガ『ハチワンダイバー』 ( 柴田ョクサ ル , 集英社 ) を受験のヒントにされたと伺いました。 ー試験直前期の過ごし方を教えてください。 『ハチワンダイバー』は私の好きなマンガです。 試験当日に持って行く , いわゆる「ファイルナ あるとき , 与件文をもとに現状分析をし , 根拠を ルペーパー」を作りました。 4 つの事例ごとに 絞りつつ , 結論にたどりつく , という 2 次試験 の過程が , 将棋と似ていることに気づきました。 それぞれ見開き 2 ページで構成したのですが , 私 また登場人物に , 相手の攻めをとにかく受けき はここにひと工夫を加えました。 見開きの左側のページには , 2 カ月間の学習 る強いヒロインがいます。それをヒントに , 「合 格しよう」ではなく , 「事例を全部受けきろう」 で得た気づきをそのまま書きます。一方 , 右側の という決意を持つようになりました。目の前で困 ページには , 『中小企業診断士 2 次試験合格者の っている社長さんの相談をすべて受けきり , 真の 頭の中にあった全知識』 ( 同友館 ) を読んで , ま だ身についていない知識を書きました。 果題や改善策が何か , 限られた時間内で結論にた 企業診断 2016 / 1 一三ロ 84
・の 合 【特集】 中小企業診断士 2 次試験 図表 1 貸借対照表・損益計算書 貸借対照表 平成 26 年度平成 27 年度 負債の部 流動負債 支払手形・買掛金 短期借入金 その他流動負債 固定負債 長期借入金 その他の負債 負債合計 純資産の部 資本金 利益準備金 別途積立金 繰越利益剰余金 純資産合計 負債・純資産合計 損益計算書 ( 単位 : 百万円 ) 平成 26 年度 平成 27 年度 320 300 190 186 130 125 123 ( 65 ) ( 63 ) 5 0 1 3 3 3 0 0 0 3 0 1 2 ( 単位 : 百万円 ) 平成 26 年度 平成 27 年度 66 30 35 1 128 125 3 194 2 40 234 資産の部 流動資産 現金等 受取手形・売掛金 有価証券 棚卸資産 その他流動資産 固定資産 建物 設備・備品 土地 投資等 7 ・つ 8 1- 00 っ乙 0 CD ーっこ っ 0 130 57 8 1 62 2 104 46 5 31 22 1 ー LO ーっ 0 0 っ 0 4- 0 つな 8 つなっ (.D っ 0 こ -1- 1 ・ - 4 ・ 4 ・ 8 へ 0 4 資産合計 234 246 売上咼 売上原価 売上総利益 販売費・一般管理費 ( うち , 人件費 ) ( うち , 減価償却費 ) 営業利益 経常利益 特別利益 特別損失 法人税等 当期利益 ( 4 店合計 ) 売場面積 (m2) 165 従業員数 ( 人 ) 店に商品を卸すこともしている。ただ , 売上高の ルなども積極的に行ったが , それでも収益は回復 規模は , 4 店の中では一番低いため , 経営者は せず , 平成 27 年度はついに経常赤字となってし 今後とも継続していくべきか否かを悩んでいる。 まった。資金繰りを懸念した経営者は , 創業から D 社各店の周辺には多くのファッション店が 間もない頃に取得していた未使用の土地や不要な 乱立し , 有名プランドの直営店や D 社と同様の 投資有価証券を高値で売却し , その改善を図った。 セレクトショップが多数立地しており , 競争が激 だが , 最終利益は赤字のままである。 このため , D 社の経営者は , 本業における問 しい地域である。このような中で , 最近は不況の 影響もあり , D 社の売上高は減少しており , 題の解決策を求めて , 特に財務的な視点から中小 企業診断士に診断・助言を依頼してきた。 れに歯止めをかけるために , 平成 26 年度は新た な国内プランドおよびインポートプランドを積極 第 1 問 ( 配点 30 点 ) 的に開拓した。だが , 個性が強すぎるデザインで D 社の 2 ヵ年度の財務諸表を用いて経営分析 あったり , 競合他店ですでに扱っている商品もあ を行い , 財務上の長所または短所のうち , 重要と ったりと , 顧客のニーズにマッチせず , 期待した 思われるものを 3 っ取り上げよ。その各々につ ほどの効果を生み出すことはできなかった。セー 企業診断 2016 / 1 35 営業外収益 営業外費用 税引前当期利益 平成 26 年度 平成 27 年度 165
務格 扁合 【特集】 中小企業診断士 2 次試験 図表 1 貸借対照表・損益計算書 貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 損益計算書 ( 単位 : 百万円 ) XI 期 X2 期 XI 期 X2 期 XI 期 X2 期 流動負債 30 短期借入金 売上原価 80 35 20 固定負債 総利益 長期借入金 65 販売管理費 55 純資産 営業利益 資本金 50 営業外収益 120 利益剰余金 営業外費用 50 20 負債・純資産合計 経常利益 245 245 図表 2 経営比率の分析結果 XI 期 X2 期 問題点の内容 76.92 ( % ) 62.50 ( % ) 短期借入金の増加によって短期支払能力が低下している。 流動比率 46.00 ( % ) 40.82 ( % ) 収益性の低下による内部留保の減少によって資本構成が悪化している。 自己資本比率 NB 商品が中心で商品の競争力が低いため , 売上につながらず , 在庫も増加し , 25.33 ( 回 ) 17.50 ( 回 ) 棚卸資産回転率 投資効率が低下している。 店舗の老朽化で集客力が低下し , 売上につながらず , 店舗の投資効率が低下 ( 回 ) 2.00 ( 回 ) 有形固定資産回転率 2.11 している。 価格競争に対抗し , 低価格販売を行ったため , 総利益段階の収益性が低下し ま上吉総利益率 25.00 ( % ) 20.00 ( % ) ノし一 ] 、 ている。 売上高が低下する中 , 低価格販売で総利益額が低下したため , 販売管理費や 1.05 ( % ) 売上高経常利益率 支払利息をまかなえず , 事業活動全般における収益性が低下している。 上高 ) に着目して原因を示すとともに , 「商品の 母・分子の勘定科目を視点として , 「なぜ , そう 投資効率が低い」など計算した指標値が示す分析 なったのかという原因」を示すとともに , 指標値 の結果を視点として , 「つまり , どのような状況 結果をキーワードで示す。 なのかという分析」を書いていきたい。「原因」は , く収益性分析の説明のコツ > 収益性分析の算出式は , 「利益 + 売上高」である。 調査結果でもある与件文や決算書から得られる情 分析内容の説明は , 売上高から分析の対象となる 報をもとに , 「分析」は , 経営の状況を的確に示 利益の範囲で原因などを説明していきたい。 すキーワードをあらかじめ準備して書く。 具体的には , 売上高総利益率を解答に挙げた場 分子 合は , 売上高から売上原価 , 売上総利益までの範 数値 分母 囲で , 売上高営業利益率を挙げた場合は , 売上高 ↓ ( 原因 ) ( 分析 ) から売上原価 , 総利益 , 販売管理費 , 営業利益ま 与件などを活用 キーワードを準備 での範囲で , また売上高経常利益率を挙げた場合 は , 売上高から売上原価 , 総利益 , 販売管理費 , く活動性分析の説明のコツ > 営業利益 , 営業外費用 , 経常利益までの範囲でそ 活動性分析は効率性分析 , 回転率分析ともいわ れ , その算出式は「売上高 + 資産」である。分析 れぞれ , 収益低下の原因を説明する。 具体的には , 売上高経常利益率を解答に挙げた 内容の説明は , 対象となる資産に着目し , 売上高 場合は , 「競争激化による売上低下」の中で , 「低 低下の原因や資産増加の原因を説明するとともに , 価格販売で総利益額が不足」し , 結果として「販 分析結果をキーワードで説明していきたい。 売管理費や支払利息を十分にまかなうことができ たとえば , 商品回転率 ( 棚卸資産回転率 ) を解 ない」ことなど , 売上高から経常利益までの範囲 答に挙げた場合は , 「商品の競争力が低く , 売上 に着目して原因を示すとともに , 「経常赤字で収 高につながらないこと」や「売れ残りによる在庫 益性が低い」など指標値が示す分析結果をキー の増加」など , 算出式の分母 ( 在庫 ) , 分子 ( 売 企業診断 2016 / 1 21 当を 流動資産 現金等 棚卸資産 固定資産 建物・設備 土地 投資その他 資産合計 0 ) 5 ) 0 LO 0 1 ー 4 ・ 8 8 0 ) 0 ) 60 120 20 250 経営指標 ↓
算を行うが , この割引率は通常 , 加重平均資本コ ストを用いる場合が多い。 なお , 加重平均資本コストは , 負債コストと株 主資本コストを加重平均したものであり , これを 用いて現在価値に割り引く過程で , 負債コスト ( つまり , 支払利息 ) 分を控除しているため , フ リーキャッシュフローを計算する過程で支払利息 を控除すると , 支払利息の 2 重引きになってし まう。そのため , 設備投資の資金調達を借入で行 っている場合であっても , フリーキャッシュフ ローを計算する際は , 支払利息を控除しないよう に注意する必要がある。フリーキャッシュフロー を求める式が , 「経常利益 x ( 1 ー税率 ) 」ではなく , 「営業利益 x ( 1 ー税率 ) 」であるのは , こうした 理由からである。 また , 投資の経済性計算を行ううえで求めるキ ャッシュフローは , 投資した設備によってもたら されるキャッシュフローの増加分であることにも 注意が必要である。 NPV を計算する場合の対象 となるキャッシュフローは , 投資後の企業全体の キャッシュフローではなく , 投資設備によって得 られる差額キャッシュフローを求める点に気をつ けたい。 設問の条件で , 投資によって得られる収益が企 業全体の収益を示していた場合は , 投資を行った 場合と , 投資を行わなかった場合の差額収益 ( 差 額キャッシュフロー ) を求めて , NPV を計算し ていくことになる。 く設備などの残存価値 > 投資の経済性計算では , 投資を行った設備など の経済的価値を計算するため , 投資計画の最終年 度の期末に , 貸借対照表上に設備の残存分があっ たり , 棚卸資産の残高があったりした場合は , そ の分も現金同等物とみなし , 現在価値に割り引く ことになる。つまり , 投資にかかった資産は , 計 画年度の期末に貸借対照表上に残高として残すこ とはなく , すべて現在価値に割り引き , 経済性の 計算に組み入れるということである。 企業診断 2016 / 1 財務・会計 中小企業診断士 2 次試験 合格の鉄 この残存分の計算処理の方法は , 設問文中に明 記されていない場合でも , 同様の処理を行うこと になる。なお , 残存価値の計上の仕方としては , 先の「毎年のキャッシュフローの計算」の項目で ( ) 内に示したようにキャッシュフローに加算 したり , キャッシュフローには含まず , 資産の終 価 ( ターミナルバリュー ) として , 現在価値の計 算時に加算したりする場合がある。 なお , 設問文中に最終年度の期末に設備を売却 する旨が記されており , 売却額が明記されている 場合は , 売却損益の発生の有無やそれによる税効 果にも注意しながらキャッシュフローを求めてい きたい。 ( 3 ) NPV の計算 NPV については , 以下のように計算される ( 単位 : 百万円 ) 。 NPV = ー 105 十 ( 38X0.9091 ) 十 ( 41 x0.8264 ) 十 ( 44 x0.7513 ) 十 ( ( 47 十 25 ) x0.6830 ) ー 105 十 34.5458 十 33.8824 十 33.0572 十 49.176 = 45.6614 NPV を求める計算工程は , 「フリーキャッシュ フローを求める計算工程」と , 「現在価値に割り 引く計算工程」の 2 つに区分できる。 後者は , 与えられた現価係数を掛けて求めるた め , 計算工程でミスを犯すことは少ない。 NPV 算出におけるミスは , フリーキャッシュフローを 求める工程で生じる場合が多く見られる。 フリーキャッシュフローを求める際は , ①売上 高などの営業収入 , ②営業に係る費用 ( 「売上原 価や販売管理費」なのか , 「現金支出原価」なのか。 後者の場合は , その中に減価償却費は含まれてい ない ) , ③設備の残存分の処理 ( 売却によって生 じる特別利益や特別損失の有無 ) , ④売上債権 , 棚卸資産 , 仕入債務などの運転資本の増減額 , ⑤ 法人税の有無と税率 , などをしつかりと把握して 計算したい。 33
財務・会計 合格の鉄 【特集】 中小企業診断士 2 次試験 図表 3 貸借対照表・損益計算書・販売費・一般管理費の内訳 貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 平成 X6 年度平成 X7 年度 平成 X6 年度 平成 X7 年度 産の 部 資 負 債の部 流 動資 産 87 流 動負債 74 43 47 現金預 30 29 支払手形・買掛金 25 28 商 56 短期借入金 42 その他流動資産 固 定負債 2 2 76 76 固 定資産 長期借入金 147 138 76 土地・ 建物 負 債合 計 1 17 123 備 18 純資産の部 23 その他固定資産 本 3 繰越利益剰余金 純資産 計 資 産合計 負債・純資産合計 221 225 損益計算書 ( 単位 : 百万円 ) 販売費・一般管理費の内訳 ( 単位 : 百万円 ) 平成 X6 年度平成 X7 年度 平成 X6 年度 平成 X7 年度 給 料手 当 985 965 106 商 廃 棄 損 56 709 694 広 告宣 伝 費 7 276 271 水 道光 熱 費 33 243 273 減 価償 却 費 5 33 そ の 他 36 2 2 計 243 5 5 30 ー 5 従業者構成 ( 単位 : 人 ) 1 5 1 0 従業 者 30 0 ( アルバイトを除く ) 0 アルバイト 0 注 : アルバイト人数は 1 日 8 時間勤務に換算した人数 < 解答例 > ① a ) 商品回転率 ( b ) 17.23 回 ( c ) 店舗の顧客層が異なる中 , 全店とも画一的 な品揃えで売上高が低下し , 在庫も増加し たため , 商品の投資効率が低下している。 ② a 涜上高営業利益率 ( b ) ー 021 % ( c 合激化で売上高が低下する中 , 給与手当 や商品廃棄損等の販売費・一般管理費が増 加し , 本業における収益性が低下している。 ① a ) 当座比率 ( b 題 .70 % ( c ) 収益低下による現金・預金等の当座資産の 減少や , 仕入債務や短期借入金など流動負 債の増加で , 短期支払能力が低下している。 第問危 忝透 03 ロロ ロロ 0 っムっ乙 1 ー L.O LO 50 52 102 225 上 冗 上原価 上総利益 販売費・一般管理費 営 業利益 呂 業外収益 呂 業外費用 経 常利益 特 別 利益 特 別損失 税引前当期純利益 法人税等 当期純利益 74 9 34 5 35 273 平成 X6 年度 平成 X7 年度 22 つ 0 収益パ人下しスいる ②の営業利益率の説明は , 販売管理費の内容 も具体的に示せると′より内容が充実して 良くなると思います。 (b) (c) (b) 6 7 ひ ③の安全性の説明は′ B / S から得られる情報 をもと ( 指標の算出式の分母・分子の視点 から原因を多面的に書けると良いですね。 企業診断 2016 / 1 23
中小企業診断士 2 次試験 性を高めるための商品戦略の方向性を 40 字以内 四捨五入 ) 。なお , 負債の金額は , 平成 27 年度の 貸借対照表上の金額に新たな借入金 3 , 000 万円を でアドバイスせよ。 加えて計算すること。 第 4 問 ( 配点 25 点 ) [ 条件 ( 税引前コスト ) ] D 社は , 新店舗を出店し , 業績の拡大を図る ・株主資本コスト ( 資本金 , 利益剰余金のコスト ) ことも検討している。店舗に関連する投資は平成 12 % 28 年度末 ( 今年度末 ) に実施し , 翌 29 年度の期 ・有利子負債のコスト ( 長期・短期借入金のコス ト ) 2 % 首より営業を開始する計画である。具体的な計画 の内容は次の通りである。 ・法人税率 40 % ・店舗に関連する投資額は 3 , 000 万円であり , 耐 ( 設問 2 ) 用年数は 5 年で , 毎年 540 万円ずつ定額で減価 新店舗の出店によって得られる毎年 ( 平成 29 年度から 33 年度の 5 年間 ) のフリー CF ( 単位 : 償却を行い , 平成 33 年度末には 100 万円で売却 万円 ) を計算し , 解答用紙に記入せよ ( 端数が生 する。 ・投資金額については , 全額金融機関から借り入 じた場合には , 小数点第 3 位を四捨五入すること ) 。 れを行う予定である。 ( 設問 3 ) ・新店舗の出店による売上高は , 1 年目 ( 平成 D 社は , 新店舗の出店計画は不確実性が高い 29 年度 ) から 2 年目 ( 平成 30 年度 ) までは ため , 正味現在価値を計算するに当たって , ( 設 6 , 000 万円得られ , 3 年目 ( 平成 31 年度 ) から 問 1 ) で解答した加重平均資本コストに更にリ 5 年目 ( 平成 33 年度 ) までは 5 , 100 万円得られ スクプレミアムを 2 % として正味現在価値を求 る計画である。また経費については , 現金支出 めることにした。新店舗の出店計画案の正味現在 を伴う業務費用は 5 年間 , 毎年 4 , 300 万円かか 価値を求めよ ( 単位 : 万円 ) 。なお , 割引率は , る見込みである。 加重平均資本コストにリスクプレミアムを考慮し ・新店舗の出店に係る運転資本については , 平成 た数値の小数点以下を切り捨てし , 以下の中から 29 年度末 ( 1 年目 ) の期末残高が 500 万円増加 選択せよ ( 例 : 3.12 % → 3 % ) 。端数が出た場合は , するが , その後 , 平成 32 年度末までの期末残 小数点第 3 位を四捨五入すること。 高には変化がなく , 平成 33 年度末の期末残高 複利現価係数一覧 は 0 円になる。 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 ( 29 年度 ) ( 30 年度 ) ( 31 年度 ) ( 32 年度 ) ( 33 年度 ) ・法人税率は 40 % である。 割引率 4 % 0.96 0.93 0.89 0.86 0.82 ・全てのキャッシュフローは各年度末に生じるも 割引率 5 % 0.95 0.91 0.86 0.82 0.78 のとする。 割引率 6 % 0.94 0.89 0.84 0.79 0.75 割引率 7 % 0.94 0.87 0.82 0.76 0.71 ( 設問 1 ) 割引率 8 % 0.93 0.86 0.79 0.74 0.68 D 社は , 新店舗の出店計画について , 正味現 在価値 (NPV) 法を用いてその可否を判断した ( 設問 4 ) いと考えている。そこで , 加重平均資本コスト 投資計画は , 将来カ坏透明な状況下での計画で (WACC) を算出して , それを割引率に使用す あり , 収益が計画通りに行くかどうかは不確実で ある。しかし , そのような中で投資の実行を決定 ることにした。 D 社の平成 27 年度の貸借対照表 と次の条件をもとに , 加重平均資本コスト ( 帳簿 した場合 , 将来 , どのような点に留意しながら事 価額基準 ) を算出せよ ( 解答は小数点第 3 位を 業を進めていくことが必要か。 60 字以内で述べよ。 企業診断 2016 / 1 37 ・の 合 【特集】
図表 2 貸借対照表・損益計算書 損益計算書 ( 単位 . 百万円 ) ( 単位 : 百万円 ) 平成 XI 年度平成 X2 年度 増減 平成 x2 年度 売上高 7 , 440 2 , 295 3 , 748 1 , 453 売上原価 6 , 089 740 788 48 売上総利益 1 , 351 1 , 255 2 , 660 1 , 405 販売費・一般管理費 1 , 010 300 300 0 ( うち , 減価償却費 ) ( 5 ) 454 537 営業利益 424 507 営業外収益 0 営業外費用 2 , 749 1 , 536 貸借対照表 平成 XI 年度平成 X2 年度 増減 負債の部 流動負債 2 , 544 4 , 140 1 , 596 ー 19 支払手形・買掛金 280 261 短期借入金 1 , 654 3 , 150 1 , 496 120 その他流動負債 6 720 ー 1 固定負債 9 40 長期借入金 790 830 ー 5 その他固定負債 100 95 12 負債合計 660 672 純資産の部 30 63 33 資本金 繰越利益剰余金 純資産合計 負債・純資産合計 4 , 970 1 , 636 資産の部 流動資産 現金等 受取手形・売掛金 商 ロロ その他流動資産 固定資産 土地・建物 投資有価証券 その他固定資産 1 9 4 6 0 8 8 っ 4 1 ー 1 ー 1 ー 30 経常利益 特別利益 特別損益 法人税等 当期利益 4 , 285 20 0 20 100 税引前当期利益 565 665 585 685 100 3 , 334 4 , 970 1 , 636 投資活動キャッシュフロー ( 単位百万円 ) 項目 投資有価証券の増加 そ也固定資産の増加 合計 財務活動キャッシュフロー ( 単位 . 百万円 ) 項目 短期借入金の借入による収入 長期借入金の借入による収入 [ 解答例 ] 計算書を作成後は , 「営業 CF ー 1 , 462 」 , 「投資 CF ー 45 」 , 「財務 CF + 1 , 488 」の合計を求め , そ れと現金の増減値である一 19 が一致することを 必ず確認したい。 ( 設問 2 ) [ 解答例① ] D 社は , ①営業面で売上債権と商品の増加で資金 獲得力が低下したにもかかわらず , ( 殳資面で戦 略性の薄い投資を行ったため , ③財務面で不足資 金を賄う借入依存型の経営となり , 不健全な CF 経営となっている。 [ 解答例② ] D 社は , ①売上債権や商品の増加など営業面での 資金獲得力が不足する中 , ②本業に直結しない投 資を行い , FCF はマイナスである。このため , ③不足資金を財務活動で調達し , 借入依存の不健 全な CF 経営となっている。 資産合計 ( 設問 2 ) 3 , 334 額貶っ 0 1-O CF の説明も経営比率分析の説明と同じく′ 「なぜ′そうなったのか」という原因と , 「つまり′どのような状況なのか」という 分析を①営業面′②投資面 , ③財務面で区分 してわかりやすく書いていけると良いです ね。解答例を参考に研究してみてください。 く解答例と解答のポイント〉 ( 設問 1 ) 営業活動キャッシュフロー ( 単位 : 百万円 ) 項目 税引前当期利益 減価償却費 営業外収益 営業外費用 十 216 特別利益 ー 26 売上債権の増加額 棚卸資産の増加額 仕入債務の増加額 その他流動資産の減少額 営業外収益の受領額 営業外費用の支払額 特別利益の受領額 法人税等の支払額 金額 十 1 , 405 十 83 十 1 , 488 計 ー 1 , 496 ー 120 十 48 ー 1 , 221 十 49 ー 216 十 26 ー 18 ー 1 , 462 小計 計 30 企業診断 2016 / 1
財務・会計 ( アカウンティング ) 〈経営分析》 例題 について , 最も適切な記述はどれか。 経常利益率 , 総資本回転率 , 売上高経常利益率の関係 約 ) は , 次のとおりである。このとき , 両社の総資本 A 社と B 社の貸借対照表 ( 要約 ) と損益計算書 ( 要 貸借対照表 ( 要約 ) ( 単位 : 百万円 ) 資産の部 現金預金 受取手形 売掛金 有価証券 たな卸資産 有形固定資産 無形固定資産 売上咼 売上原価 A 社 100 80 160 60 1 30 210 60 800 B 社 50 70 180 50 150 160 40 700 負債の部 支払手形 買掛金 短期借入金 長期借入金 資本金 資本剰余金 利益準備金 合計 A 社 80 1 30 80 1 1 0 200 140 60 800 B 社 40 60 150 150 120 1 1 0 70 700 ウ総資本回転率は B 社のほうが良いが , 売上高経常 利益率は A 社のほうが良く , 総資本経常利益率は A 社のほうが良い。 ェ総資本回転率は B 社のほうが良いが , 売上高経常 利益率は A 社のほうが良く , 総資本経常利益率は B 社のほうが良い。 解答 収益性分析に関する出題である。収益性分析では , まず資本利益率が分析され , さらに資本回転率と売上 高利益率に分解される。本試験において出題頻度の高 い指標と計算式を以下に示す。 損益計算書 ( 要約 ) ( 単位 : 百万円 ) B 社 1 , 100 800 300 160 140 30 160 20 0 180 72 108 120 80 200 20 40 1 80 20 80 120 260 380 820 1 , 200 A 社 貸指標 総資本経常利益率 総資本回転率 流動資産回転率 売上債権回転率 たな卸資産回転率 固定資産回転率 売上高経常利益率 売上高営業利益率 売上高総利益率 計算式 売上総利益 / 売上高 X100 ( % ) 営業利益 / 売上高 x 100 ( % ) 経常利益 / 売上高 x 100 ( % ) 売上高 / 固定資産 ( 回 ) 売上高 / たな卸資産 ( 回 ) ※売上債権 = 受取手形十売掛金 売上高 / 売上債権 ( 回 ) 売上高 / 流動資産 ( 回 ) 売上高 / 総資本 ( 回 ) 経常利益 / 総資本 x 100 ( % ) 売上総利益 販売費および一般管理費 営業利益 営業外収益 営業外費用 経常利益 特別利益 特別損失 当期利益 法人税等 税引前当期純利益 本設問における指標は , 以下のとおりである。 総資本経常利 益率 総資本回転率 売上高経常利 益率 A 社 1 8 0 / 8 0 0 x 1 0 0 = 22.50 % 1 , 200 / 800 = 1.5 回 180 / 1 , 200X100 = 15.00 % B 社 160 / 700X100 ・ 22.86 % 1 , 100 / 700 寺 1.57 回 160 / 1 , 100 x 1 00 14.55 % ア総資本回転率 , 売上高経常利益率ともに A 社のほ うが良く , 総資本経常利益率も A 社のほうが良い。 イ総資本回転率は A 社のほうが良いが , 売上高経常 利益率は B 社のほうが良く , 総資本経常利益率は A 社の方が良い。 110 以上より , 総資本回転率は B 社のほうが良いが , 売 上高経常利益率は A 社のほうが良く , 総資本経常利益 率は B 社のほうが良い。よって , 「エ」が正答となる。 樋野昌法 ( 日本マンパワー講師 / 中小企業診断士 ) 文川実 ( 日本マンパワー講師 / 中小企業診断士 ) 企業診断 2016 / 1
の 【平成年調査】 中小企業実態基本調査に基づく 4 円 税 4 中小企業庁が実施している「中小企業実態基本調査」 ( 平成 25 年調査 ) の結果を加工分析した、中小企業の経営活動を 示す財務データ集です。従来発行されていた「中小企業の経 営・原価指標」を引き継きつつ、中分類業種を中心に、見や すく、使いやすい構成に変更して新登場しました ! 0 小 ( 細 ) 分類と内容の例示 6 中 ペ分 当該当する小 ( 細 ) 分類の特徴 ( 一般的なビジネスフロー、財務分析のポイント、業界動向など ) の例示 構業 0 財務旨標比率の特徴 成種 平成 25 年調査による財務指標比率 て右 0 損益計算書の平均金額および構成比率 いの ま項 す目 。を′貸借対照表の平均金額および構成比率 ①中小企業の現在の財務状況を確認するための情報として ②財務状況確認後、生産性向上や財務体質改善等の目標設 定をするための情報として 3 目標設定後、中期・短期経営計画 ( 利益計画など ) の策定の ための情報として ④目標や計画達成をめざし経営する際、業績状況判断のため の情報として 3 目標や計画差異を分析して後、フィードバックする際の情 報として 平成 25 年調査 中小企業実態基本調査に基づく 中小企業の 財務指標 ~ 社団法人中小企業診断会編 本書は、 このような目的に ■ 最適な中小企業の 財務データ集です ! 〒 113-0033 東京都文京区本郷 3 ー 38 ー 1 ー 3F TEL 03-3813-3966 一 FAX 03-3818-2774 IJ 日 L httP://WWW.doyukan. CO. jP/ 0 同友館