充当し , 元金そのものを大幅に減額することもで きるかもしれない」 そんなヒントを , 私は新聞記事からっかんだの です。 3 つ目の転機は , 当時交際中だった彼女の妊娠 が判明したことでした。人生最大の危機に瀕する 中 , それまでは「格好良く死のう」という意識ば かりが強かった私ですが , 彼女のお腹に子どもが いることがわかってからは , 「格好悪くても生き 抜こう ! 」と意識が 180 度変わっていきました。 ④知識武装 「意識と知識の両輪があれば , どのような難局 も切り抜けられる」 そう考えた私は , 2000 年 1 月からは一転して 全力で情報収集を行い , 次々に知識を蓄えていき ました。書店や図書館に通い詰め , 弁護士会の法 律相談や商工会議所の経営相談 , 地元の税理士の 元などに片っ端から出向きました。 残念ながら , どの先生からも「自己破産しかな い」 , 「年商 2 , 000 万円台に対して高金利の借金が 7 , 500 万円もあるなんて狂気の沙汰」などと結論 づけられましたが , そこであきらめなかった私は , 先生方の言葉の節々に出てくる解決のヒントにな りそうな単語を図書館でおさらいし , 自力で戦う ための知識を着々と蓄えていったのでした。 また , もはや無傷では済まないことを自覚し , 「肉を切らせて骨を断っ」の精神で臨む決意も固 めました。その戦い方は , 「彼を知り己を知れば あや 百戦殆うからず」で , まずは自社の財務状態や借 入金の契約内容などを改めて調べ直し , 同時にヤ ミ金の素性なども全力で調べ上げました。 その結果 , 東京都の貸金業免許を持っているの は 6 社中 5 社で , 残り 1 社は無免許であること , 代表者は水商売出身の若者ばかりであることなど が判明します。そうとわかったことで , 恐怖心は だいぶ薄れてきました。 ⑤ x デー 忘れもしない 2000 年 2 月 28 日。 20 この日 , 私は 生まれて初めて借金の返済を止めました。 止めた先はヤミ金です。よりによって , もっと も手ごわい相手を真っ先に " 敵 " に回したのは私 なりの判断で , 背景にはこんな決意がありました。 「病気と同じで , まずは止血をし , もっとも悪 い患部から治そう。モタモタはしていられない。 一番手ごわいヤミ金への返済を止めて , 交渉を開 始するぞ ! 」 同日 , ヤミ金に振り出していた約束手形が不渡 りになりました。もちろん , 理論武装も怠ってい ません。手形は , 2 回不渡りを出さなければ , 銀 行取引停止にはなりません。また , 銀行取引停止 になっても , それだけでは法人格は消滅しません。 不渡りイコール倒産とは限らないのです。夕方に は , 黒い服を着た取り立て屋たちが押しかけてき ましたが , 110 番に電話をして対処しました。 翌日 , 私は単独でヤミ金事務所を訪問しました。 半日ほど監禁されましたが , 録音機をポケットに 忍ばせていたため , 出資法違反の暴利で借りた経 緯や暴力的な取り立てなどの証拠を残すことに成 功しました。そして , その翌日に再度訪問し , 「昨日の様子はすべて録音しました」 , 「おたくの ことはひととおり調べさせてもらいました」 , 「警 察にも相談しています」 , 「ですが , 借りたものは 返したい。どうか高い金利は免除していただき , 元金の差額分だけを返すことで和解してもらえな いでしようか ? 」と穏やかに求めると , あっけな いほど簡単に応じてもらえたのでした。 こうして , わずか 3 日間の自力交渉で , 6 社 合計 700 万円のヤミ金への借金が利息免除となり , 140 万円の元金返済での和解に成功したのです。 ⑥商工ローンと消費者金融 商工ローンと消費者金融 ( カードローンを含む ) については , まったく別の方法で整理しました。 主な舞台は簡易裁判所です。弁護士への依頼資金 がなかったため , すべて本人申立で済ませました。 商工ローンは「特定調停」または「債務不存在 確認請求訴訟」を , 消費者金融は「特定調停」を 企業診断 2016 / 3
物を使用しない無塩せき食肉加工品プランドとして着 実に売り上げを伸ばしてきたが , 近年は鈍化傾向にあ 自社の販売総額に占めるグリーンマークのシェアは , およそ 40 % 。鈍化の要因としては , ューザーの高齢 化に伴う自然減少の影響が想起されたが , それは近い 将来における確実な先細りが予測されることにもつな がる恐れもある。 こうした危機感から , 商品開発を統括する営業推進 部企画販促課およひ商品開発室では , 製品の質的な向 上を図ってきた。具体的には製品に含まれる脂質の含 有を抑えたり , 肉本来の風味から旨みを引き出す , あ るいは味付けと食感をよりマイルドにしたりといった 品質性の改良である。 グリーンマークプランドのユーザー特性としては , 化学合成添加物を使用しない食品という切り口によっ て指名購入の比率がやや高い。製品の質的な改良はこ うしたヘビーユーザー層には浸透しやすいが , 新規 ユーザーの取り込み対策としてはインパクトが弱い。 リピート商品を強化するためには , 質的な改良より は , むしろ機能性といった付加価値の付与や , 新規 ューザー獲得のためのトリガー的役割を果たす新製品 開発などが求められるからだ。 ( 3 ) リピートブランドの再構築を阻む限界と要因 同社営業推進部の部長である堀川善弘氏は , こうし たトリガー的な新規ューザー開拓に向けた新商品開発 を視野に入れていたが , 同時に現状においての企画・ 開発スタッフに対する限界も感じていた。 限界を感じさせる最大の要因は , 企画・開発スタッ フとユーザーとの距離感の遊離にあった。グリーン マークの購買意思決定者は , 女性主婦層であるにもか かわらす , 男性中心で構成されるスタッフ陣は , そう した層へのヒアリングやリサーチといった行為にあま り前向きとは思えなかったからだ。 ューザーとの遊離感によって生じる齟齬は , すなわ ちユーザーに関する情報不足をも生じさせる。企画開 企業診断 2016 / 3 つまり , 問題を解決するために , すでに使われた手 た振り返りの姿勢を強く作用させる。 性や新しいモノ・コトを志向するよりは , 過去に向け 発部署にとっての情報不足とは , 必然的に会社の将来 法を利用してしまう傾向が顕著となりやすくなるので ある。製品の質的な改良などは , まさにこのケースに 当てはまると言えるだろう。 もちろん , こうした質的な改良という開発行為自体 は間違ってはいないが , それだけではリピートを補強 させるためのトリガーとはなり得ないのである。 2 . 発想力を生み出すための組織デザイ ン手法 ( 1 ) 女性スタッフの編成とエデュケーション こうした限界を打破するために , 堀川氏は思い切っ たスタッフ編成の改革を実施した。企画・開発に関連 する 11 名のスタッフのうち , 7 名を女性スタッフで 再編成させたのである。 女性スタッフを拡充させた理由は , 子育て主婦層を 中心としたコアユーザーとの距離感を深める目的もあ ったが , 今後の戦略として学校給食などの業務用市場 への参入の狙いもあった。学校給食の材料購入担当者 でもある学校栄養士の大半が女性で占められているか とはいえ , スタッフを女性に入れ替えただけで , 即 効性のある発想がいきなり次々と生まれるわけではな い。そこで , 堀川氏は , さまざまな教育と啓蒙の場を 彼女たちに与えることにした。 まずは , ビジネス感覚と流通現場の環境を体感させ るために , 展示会などのイベントにスタッフを参加さ せた。したたかとも言える流通側バイヤーたちの現場 の声をリスニングすることで , スタッフが流通店舗に おける自社製品のポジショニングを認識することにも つながると思われたからだ。いわば , 自分たちの製品 の実売環境という現実を客観的な視点から見ることも 必要なのである。 次は , ユーザーとの接触を持たせることだが , ではあえて彼女たちスタッフを , 販促用のマネキンと して流通店頭に派遣させるという思い切った手段をと った。ユーザーの意見や感想を求めるという手法では , グループインタビューや街頭・店舗でのヒアリングや モニター調査といったものが一般的ではあるが , したリサーチは恣意的に集められたユーザーの心理が 余所行きに働きやすい。良い顔をしてしまうからだ。 したがって , 必ずしもユーザー自身が気づかないか 83
2 . 各設問の解説 第 1 問 第 1 問は , 環境分析 (SWOT) の問題である。 C 社が今後も事業を成長させていくために有効活用でき る強みを挙げることになる。事例Ⅲ ( 生産・技術の事 例 ) であることを強く意識し , いくつかある強みに解 答の優先度づけを行い , 事例Ⅲらしい解答をすること が重要である。 事例問題で強みが問われた場合 , 「いままでの強み」 , 「既存事業での強み」 , 「結果としての強み」 , 「外部か らの評価としての強み」などを与件文から拾い出す必 要がある。本事例における C 社の強みとしては , 高 い金属加工技術 , 蓄積された製造設備の保守ノウハウ と改良提案カ , 生産体制 , 5 S 活動の徹底 , 油水分離 装置における高い研究開発力 , デモ機を使った拡販ノ ウハウ , 積極的な広報活動など , 多くの強みが挙げら れるが , 解答にすべてを列挙するには文字数面で制限 がある。そのため , 設問構造を意識して重要度を考え , 解答を絞り込んでいくことが必要になる。 解答例では , 油水分離装置の市場展開の源泉となり , 保守サービス事業へのシナジーにつながる強みを重要 な切り口として , ①製造設備の保守ノウハウと改良提 案カ , ②高い研究開発力と金属加工技術力を持つ生産 体制 , の観点でまとめている。 重要なことは , 第 1 問で解答した強みが , C 社の 今後の事業拡大 , 業績向上につながることである。設 問文に「今後の事業展開の方向性を踏まえ」と指示が あり , これを見落とすと大きな失点につながってしま う。設問構造から考えると , 第 4 問で問われている「 C 社の新規事業と保守サービス事業に関する今後のあり 方」を強く意識した解答を導くことがポイントになる。 第 2 問 第 2 問では , 「油水分離装置」事業における短納期 要請への対応が問われている。 C 社の生産形態の変遷 は , 既存事業では , 「個別受注生産」からスタートした。 また , 新規事業の立ち上がりは , 「標準仕様の受注生 産」の形態であった。その後 , より多くの顧客ニーズ に対応するため , 「標準仕様の見込生産」と「オプシ ョン仕様の受注生産」での対応となった。 124 図表 5 問題の真因訴求分析 希望納期に対応できず失注が増加している オプション仕様製品の納期が長い 組立に時間がかかる 受注後に必要な部品 を調達している 対策 1 販売見込と在庫に 基づいた見込生産 特殊部品の調達に 時間がかかる 部品点数が多い 対策 2 生産計画に 応じた見込手配 対策 3 部品の体系化と モジュール生産化 しかし , オプション仕様についても短納期の要請が 強くなって失注が増加しているため , オプション仕様 であっても生産リードタイムを短縮することが重要課 題となっているのである。 このように , 第 2 問は油水分離装置の生産で顕在 化した生産上の問題と原因について指摘させ , その対 策を求める問題である。結果として生じている問題現 象を指摘し , 原因を根本まで掘り下げ ( 真因訴求 ) , 対策を求めていくステップが必要である。 図表 5 は , 「希望納期に対応できず失注が増加して いる」ことの真因訴求と対策を示している。このよう に原因の原因を探っていくことで真の原因が明らかに なり , 根本的な対策の検討につながっていく。 問題は , 短納期要請に対応できずに失注につながっ ている点である。何が短納期要請に対応できない原因 なのか , 与件文を確認していくと , ①受注後に資材手 配を行っている , ( ②殊部品の調達リードタイムが 1 カ月程度かかっている , ③部品点数が多く組立に時間 がかかっている , ことがわかる。これらの因果関係を 明確にして論理的に整理する。 真因が特定できたら , 次に対策を検討する。与件文 からオプションの仕様が確定し , 受注後に必要な資 企業診断 2016 / 3
中小企業経営・政策 例題 中小企業新事業活動促進法では , 「創業」 , 「経営の 革新」 , 「新連携」など中小企業の新たな事業活動を支 援することを規定している。 このうち , 「経営の革新」の支援においては , 中小 企業者が作成した経営革新計画が承認された場合 , 政 府系金融機関による低利融資や信用保証の特例などの 措置を講じることとしている。 経営革新計画に関する記述として , 最も適切なもの はどれか。 ア経営革新計画における経営の革新とは , 従来その 業界で存在しなかったものに該当するような内容 でなければならない。 イ経営革新計画の計画期間が 5 年間の場合 , 計画 期間終了時において付加価値額または従業員 1 人 当たり付加価値額が 15 % 以上伸び , かっ営業利益 が 5 % 以上伸びる計画とする必要がある。 ウ経営革新計画における「付加価値額」の算出方法 は , 「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」である。 ェ中小企業新事業活動促進法に基づく支援を受ける ためには , 作成した「経営革新計画」について , 国 〈中小企業新事業活動促進法》 ウ 解答 の承認を受ける必要がある。 企業診断 2016 / 3 とは , 以下のように定義されている。 中小企業新事業活動促進法における「新事業活動」 で , 2005 年に制定された。 持ち寄り , 連携して行う新事業活動の支援を加える形 合するとともに , 異分野の中小企業がお互いの強みを 動促進法 , 新事業創出促進法の 3 つの法律を整理統 同法は , 中小企業経営革新支援法 , 中小企業創造活 革新」に関する問いである。 中小企業新事業活動促進法の規定における「経営の 目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士試験】実力養成セミナー 119 樋野昌法 ( 日本マンパワー講師 / 中小企業診断士 ) 以上より , 「ウ」が正解となる。 都道府県または国の承認を受ける必要がある。 けるためには , 作成した「経営革新計画」について , ェ x : 中小企業新事業活動促進法に基づく支援を受 記述のとおりである。 方法は , 「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」であり , ウ〇 : 経営革新計画における「付加価値額」の算出 益が 5 % 以上伸びる計画とする必要がある。 人当たり付加価値額が 15 % 以上伸び , かっ経常利 画期間終了時において付加価値額または従業員 1 イ x : 経営革新計画の計画期間が 5 年間の場合 , 計 初でなければならない , というわけではない。 業にとって新たな活動であればよく , 必ずしも業界 ア x : 経営革新計画における経営の革新は , その企 である。 経営革新計画における計画期間は , 3 年から 5 年 上伸びること , となっている。 平均 3 % 以上伸び , かっ経常利益が年率平均 1 % 以 加価値額 ( = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 ) が年率 上」とは , 付加価値額または従業員 1 人当たりの付 なお , 経営革新計画における「経営の相当程度の向 が必要となる。 に加え , 利用を希望する支援策の実施機関による審査 ただし , 支援を受けるためには , 経営革新計画承認 税制などの支援措置を享受できることとなる。 を得ることができれば , 当該中小企業者などは融資や この計画を作成・申請し , 都道府県または国の承認 である。 って , 経営の相当程度の向上を図るための計画のこと 意グループなどが , 上記の新事業活動を行うことによ 経営革新計画とは , 個別中小企業者 , 組合および任 活動 ・役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業 ・商品の新たな生産または販売の方式の導入 ・新役務の開発または提供 ・新商品の開発または生産
C 社の業績推移 図表 1 水分離装置の設計から検査までの生産体制を持ち , 高 い研究開発力と金属加工技術力がある , ことである。 第 2 問 問題は , 製品仕様に特殊部品が含まれる場合に , 短納 期要請に対応できす失注が増加していることである。 対応策は , モジュール部品化と見込生産による短納期 体制の構築である。具体的には , ①販売見込と在庫に 基づいて製品と部品を見込生産する , ②生産計画に基 安定数年前現在 将来 創業成長 づき外注部品を見込手配する , ③構成部品を体系化し ー←保守サービスー・ - 新事業 ー金属部品 てモジュール化する , ことである。 ※グラフは業績推移のイメージを表している。 第 3 問 って , 最近は金属製機械部品の売上が減少傾向にある。 情報項目は , 顧客情報 , 受注確度 , 引き合い時点の特 そのため , 業績回復に向けて新事業である環境対応装 殊部品の使用可能性の有無 , 設置予定現場の生産設備 置の製造・販売と , 保守サービスの拡大に取り組んで 状況である。理由は , ①販売見込みに応じた生産およ び在庫計画を立案する , ②製造設備などの保守サービ いる。 事例問題では , ①対象となる企業が創業後にどのよ ス提案に結びつけた顧客開拓を探っていくためである。 うな強みを持って成長を遂げてきたのか , ②その後 , どのような環境変化に対応してきたのか , ③その結果 , 第 4 問 現在はどのような強みや弱みを持っているのか , ④現 新規事業で , C 社の高い設備保守や改良提案力と , 油 在 ~ 将来の機会と脅威は何か , この 4 点を整理して 水分離装置事業とのシナジーを活かした事業展開を進 いくと事例の全体像が把握できてくる。 める。既存事業で , 油水分解装置の商談から機械メー まず , C 社の業績の推移を図表 1 に示してみる。 C カーなどを対象に保守サービスの顧客開拓を進めるこ 社は , 金属製機械部品の加工下請けとして創業し , X とで売上を拡大し , X 社への依存リスクを低減する。 社の事業拡大とともに成長してきた。その後 , 金属製 機械部品 ( 量産品 , 試作品 ) の製造 , 機械設備の保守 サービスの分野で売上を拡大してきた。数年前からは , 前述した理由で業績が悪化したため (A), 将来を見 1 . 本事例の概要と事例Ⅲ攻略のポイント 据えて環境対応装置の研究開発を進めて製品化 (B) 本事例は , 金属製機械部品などの製造業である C に至っている。 今後は , 設備保守サービスの拡大 (C) と , 環境対 社が , 外部環境の変化に対応して事業基盤を再構築し , 応装置の事業拡大 (D) によって業績を回復させると 新事業分野の拡大を図る事例である。 ともに , 継続的な成長を目指している。しかし , 現状 金属製機械部品の加工下請けからスタートした C では環境対応装置の生産において問題があり , 失注が 社は , 現在の主要取引先である x 社が作成した仕様 増加しているため , この問題を早急に解決していく必 に基づいて , 高い金属加工技術力を強みに事業を拡大 させ , 金属製機械部品 ( 量産品 , 試作品 ) の製造 , 機 要がある。 こうして考えていくと , 短期施策として環境対応装 械設備の保守サービス , 環境対応装置 ( 油水分離装 置の短納期化によって失注を防ぐこと , 中長期的には 置 ) の製造を主な事業として成長してきた。 保守サービスと環境対応装置の販売割合を高め , 経営 しかし , 国内製造業の長引く業績低迷や , X 社が生 を安定成長させる方向性が見えてくる。 産拠点を海外へ移転することなどの外部環境変化によ 企業診断 2016 / 3 122 O: △第 売上 △′ ・解説
経営法務 《特許法ー平成 26 ・ 27 年の改正点》 例題 日本の特許法に関する記述として , 最も不適切なも のはどれか。 ア所定の期間内に出願審査の請求がされなかったと きは , 特許出願は取り下げられたものとみなされる が , 出願人の責に帰すべきでない事由により当該期 間を経過した場合の救済規定が設けられている。 イ出願前に公然実施されていたなど , 本来ならば特 許が与えられるべきでない発明に与えられた場合 , 特許掲載公報の発行日から 6 月以内であれば , 何 人も特許異議の申立てを行うことができる。 ウ職務発明について , 契約 , 勤務規則その他におい て , あらかじめ使用者に特許を受ける権利を取得さ せることを定めても , その定めは無効であり , 特許 を受ける権利は発明者たる従業者に帰属する。 ェ審査官などにより指定された手続期間の満了後で あっても , 当該手続期間の延長を認めるという趣旨 から , 外国語書面出願の翻訳文を所定の期間内に提 出しなかった場合 , 特許庁長官は , その旨を出願人 に通知しなければならないとされる。 特許法では , 平成 26 ・ 27 年に重要な改正が行われ たので , 主な変更点を整理しておいてほしい。 ア〇 : 従来 , 災害など , 当事者の責めに帰すべきで ない事由により所定の手続期間を徒過した場合でも , 救済規定が存在しない手続が多数あった。平成 26 年改正法では , 東日本大震災などの経験を踏まえ , 国際的な法制度に倣って , 制度ューザーにやむを得 ない事由が生じた場合に , 手続期間の延長を可能と する規定が整備された。代表例として , 出願審査請 求 ( 選択肢ア ) , 国際出願に関するパリ条約による 優先権の主張 , 新規性喪失の例外規定の適用を受け るための証明書の提出 , 特許料の納付などがある。 企業診断 2016 / 3 目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士】実力養成セミナー イ〇 : 従来 , 他者の特許を無効化したい場合 , 誰で もいつでも請求できる「特許無効審判」によること になっていた。しかし , 特許無効審判は手続きが煩 雑で費用も時間もかかるため , より簡易に他者の特 許の見直しを求められる制度を求める声が高まっ ていた。平成 26 年改正法では , 特許掲載公報の発 行の日から 6 月以内であれば誰でも行うことができ , より手続きが簡易な「特許異議の申立て」の制度が 設けられた。これに伴い , 誰でもいつでも請求可能 とされていた特許無効審判は , 「利害関係人に限り いつでも」請求可能な制度に変更された。 ウ x : 従来 , 職務発明については , 特許を受ける権 利は発明者たる従業者に原始的に帰属するとされた。 一方 , ①使用者には無償の通常実施権を付与する , ②従業者から使用者に特許を受ける権利を譲渡す るよう取り決めておくこと ( 予約承継 ) を認める , 特許を受ける権利を使用者に譲渡する代償として , 従業者に「相当の対価」を受ける権利を与える , の 3 点により , 使用者と従業者の利害の調整を図っ てきた。平成 27 年改正法では , この従来の仕組み に加えて , 契約 , 勤務規則その他において , あらか じめ使用者に特許を受ける権利を取得させること を定めたときは , 職務発明について特許を受ける権 利は発生したときから使用者に帰属するとされた ( 特許法 35 条 3 項 ) 。併せて , 従業者が特許を受け る権利を使用者に取得させた場合 , 従業者は相当の 金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する とされた ( 同法 35 条 4 項 ) 。 ェ〇 : 特許法条約 (PLT) は , 各国で異なる国内 出願手続きの統一化および簡素化を進め , 手続き上 のミスによる特許権喪失の回復などの救済措置を 設けるなど , 出願人のイ更宜を図っている。日本では , 平成 27 年 6 月に国会で特許法条約の締結が承認され , 平成 27 年改正法でその実施に必要な変更がなされた。 選択肢ェの外国語書面出願の翻訳文に係る通知 ( 特 許法 36 条の 2 第 3 項 ) は , その一例である。 松林栄一 ( クレアール講師 / 中小企業診断士 ) 117
境対策面でも切削液からの異物分離レベルが重要視さ れ , 切削液を使用する事業所にとって , コスト削減や 環境対策は大きな関心事となっている。 C 社の油水分離装置は , 冷却のための切削液に混入 した油の分離技術に特許機構を組み込み , 従来の油水 分離装置に比べてコンパクトで高性能 , 操作性に優れ た製品として市場に送り出された。環境対策の社会的 な要請の高まりなどから , 国内の切削加工事業所や海 外に生産拠点を持っ部品メーカーなどからの引き合い が増加しており , 売上の回復に寄与している。 【油水分離装置の受注から納品までの流れ】 油水分離装置は , 当初は標準モデルのみを受注生産 していたが , より多くの顧客ニーズに対応するために 現在は標準仕様モデルを見込生産で , オプション仕様 モデルを受注生産で生産している。標準仕様モデルの 生産が月産約 10 台 , オプション仕様モデルを含めた 装置全体の生産・販売台数は月に約 15 台となっている。 顧客はカタログや解説動画によって装置の仕様や運転 方法の概要を把握でき , 実機による製品評価の要望が ある場合は , C 社の工場でデモンストレーションがで きるようになっている。また , 必要に応じて標準仕様 モデルをデモ機として貸与設置し , 顧客評価の結果に よって受注カ辧定する場合も多い。標準仕様モデルに ついては在庫対応で即納が可能である。オプション仕 様モデルの場合は , 受注後に必要な資材などの手配を 開始して加工や組立を行う手川頁になっており , 納品ま でに 1 カ月から 2 カ月程度の期間がかかっている。 最近は , オプション仕様モデルであっても短納期を要 請されることが多くなるにつれ , 希望納期に対応でき ず失注することが増えている。 油水分離装置は , 分離槽 , ポンプ , 架装フレーム , 吸い込みノズル , 制御用の電子基板などで構成されて おり , 各々は多くの部品を必要としている。最近は , 組立の段階で必要部品の欠品が生じることや , 使用し ない部品在庫の増加が目立ってきている。構成部品の 30 % を外注しており , オプション仕様で特殊部品が含 まれる場合は , 調達に最長 1 カ月程度を要する場合 がある。なお , 顧客ごとにさまざまなオプション仕様 があるものの , 特殊部品を使用する中間部品は 20 種 類程度に分類整理できることがわかっている。また , 企業診断 2016 / 3 目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士試験】実力養成セミナー 121 ・解答例 ハウと改良提案力がある , ②コンパクトで高性能な油 客の設備状況全般を熟知しており , 高い設備保守ノウ 強みは , ①長年にわたる設備メンテナンスを通じて顧 第 1 問 ようにアドバイスをするか , 120 字以内で述べよ。 る今後のあり方について , 中小企業診断士としてどの C 社の油水分離装置事業と保守サービス事業に関す 第 4 問 ( 配点 30 点 ) 理由とともに 120 字以内で述べよ。 保守サービスの顧客拡大につながる情報項目は何か , 引が増加している。今後の製品供給体制の見直しや , C 社は油水分離装置の販売を通し , 新規顧客との取 第 3 問 ( 配点 20 点 ) ついて , 160 字以内で述べよ。 引き合いにおいて生じている問題と考えられる対策に C 社カ噺規事業として参入した油水分離装置の受注 第 2 問 ( 配点 30 点 ) る経営資源について , 120 字以内で述べよ。 今後の事業展開の方向性を踏まえ , C 社の強みとな 第 1 問 ( 配点 20 点 ) 討している。 守サービス事業の拡大も視野に入れた業績向上策を検 だ需要を掘り起こすことが可能であると考え , 機械保 制や生産方法の見直しを検討中である。また , まだま る。社長は , 受注量の増加に対応できるよう , 生産体 を持っ工作機械ューザーからの引き合いが増加してい ィアへの広報活動を積極的に行い , 国内外に生産拠点 イスもあって , 工作機械関連の展示会出展やマスメデ 業から高い評価が得られた。取引先などからのアドバ 発売当初から従来の取引先である X 社やその関連企 C 社の油水分離装置は , 高い研究開発力が認められ , 立工程での部品点数を削減できないか模索している。 までに平均 5 日間を要しており , 設計開発部門で組 部品点数が多いこともあって , 組立開始から組立完了