固定資産の増加 棚卸資産の増加 人件費の増加 減価償却費の増加 要因 経営指標 固定資産回転率 有形固定資産回転率 棚卸資産回転率 売上高営業利益率 売上高人件費率 売上高営業利益率 次に今後の推移が懸念される財務指標を検討する。 与件文より , 外部環境の変化によって顧客世帯数と世 帯当たり売上高が減少し , LP ガス業界を取り巻く環 境変化によって , その売上高減少の傾向がさらに加速 される状況になりつつあることがわかる。損益計算書 を確認すると , 平成 27 年度の売上高は前年比 1 % 減 の微減であるため , この売上高の減少が今後の推移と して最も懸念される点であることが推測される。 続いて財務指標から上記の推測を裏づけていく。安 全性を示す各種指標については特に問題はない。収益 性を示す各種指標はすべて悪化しており , 今後の推移 が最も懸念される売上高を含む財務指標としては , 短 所としても共通で推測された売上高営業利益率が最も 適切である。効率性を示す各種指標では , 推測どおり に有形固定資産回転率と棚卸資産回転率が前年比で悪 化しており , これらが短所の 2 つに該当する。 これらの 3 つの財務指標を挙げて , 内容には与件文 からの引用を含めて , 30 字にコンパクトにまとめる。 経営指標 総資本経常利益率 売上高経常利益率 収売上高総利益率 性売上高営業利益率 売上高販管費率 売上高人件費率 総資本回転率 棚卸資産回転率 効 率固定資産回転率 性 有形固定資産回転率 売上債権回転率 流動比率 当座比率 安 全固定長期適合率 性 負債比率 自己資本比率 124 平成 26 年度 6.74 % 4.88 % 42.00 % 4.73 % 37.27 % 18.15 % 1 .38 回 15.32 回 2.65 回 4.53 回 11 .02 回 124.95 % 95.52 % 84.49 % 1 17.07 % 46.07 % 平成 27 年度 3.06 % 2.21 % 41 .51 % 2.75 % 38.76 % 18.80 % 1 .38 回 13.97 回 2.66 回 4.39 回 1 1 . 1 6 回 127.36 % 96.01 % 83.42 % 107.05 % 48.30 % 第 2 問 ( 設問 1 ) まず ( a ) 固定費の算出であるが , 勘定科目法による 固変分解を行う。営業利益べースでの分析であるため , 総費用 = 売上原価 + 販管費となる。売上原価の全額と 販管費の輸送費のみ変動費のため , 変動費と固定費は 下記のとおり算出される。 ・変動費 = 売上原価 + 輸送費 = 135 , 115 ( 千円 ) ・ ( a ) 固定費 = 販管費ー輸送費 = 80 , 295 ( 千円 ) したがって , 損益分岐点比率は次のように計算でき る。 ・変動費率 = 変動費 / 売上高 = 0.61 ・損益分岐点売上高 = 固定費 / ( 1 一変動費率 ) = 205 , 884.615 ( 千円 ) ・ ( b ) 損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 / 売上高 = 92.95 ( % ) ( 設問 2 ) まず ( a ) 目標固定費削減額の算出であるが , 設問 1 で算出した損益分岐点比率より目標となる損益分岐点 比率を算出して , そこから目標となる損益分岐点売上 高を算出する。 ・目標損益分岐点売上高 = 売上高 x 目標損益分岐点比 率 = 221 , 58 x ( 0.9295 ー 0.08) = 188 , 16425 ( 千円 ) ・目標固定費 = 目標損益分岐点売上高 x 限界利益率 = 188 , 164.25 x ( 1 ー 0.61 ) = 73 , 384 ( 千円 ) ・目標固定費削減額 = 80 , 295 ー 73 , 384 = 6 , 911 ( 千円 ) 営業レバレッジについては , 次の式で計算できる。 ・営業レバレッジ = 1 / ( 1 ー損益分岐点比率 ) = 限界 利益 / 営業利益 したがって , ( b 現在の営業レバレッジと , ( c ) 固定費 削減後の営業レバレッジは次のように計算できる。 ・ ( b ) 現在の営業レバレッジ = 1 / ( 1 ー 0.9295 ) = 14.18 ( 倍 ) ・ ( c ) 固定費削減後の営業レバレッジ = 1 / ( 1 ー 0.9295 + 圓 8 ) = 6.64 ( 倍 ) なお , 営業レバレッジとは売上高の変化率に対する 営業利益の変化率の割合をいう。たとえば , 売上高が 20% 減少したときに営業利益が 50 % 減少する場合には , 営業レバレッジは 2.5 倍となる。総費用に占める固定 費がゼロであれば営業レバレッジは 1 倍であり , 固定 費が大きくなるほど営業レバレッジも大きくなる。営 企業診断 2016 / 4
目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士試験】実力養成セミナー 第 1 問 ( 配点 24 点 ) ている。地方の中小規模の LP ガス小売業者も将来的 D 社の貸借対照表 , 損益計算書と LP ガス業界を取 なエネルギー業界の再編に巻き込まれることは必至で あり , 知り合いの同業者たちも危機感を募らせ , 生き り巻く環境に基づき , D 社が現在抱える短所を最もよ く表す財務指標を 2 っ , 今後の推移が最も懸念される 残りに向けた取組みを開始しようしている。 財務指標を 1 っ , 名称 ( a ) と平成 27 年度におけるその D 社が導入している集中監視システムは電話回線を 数値 ( b ) ( 単位を明記し , 小数点第 3 位を四捨五入する 使用したものだが , 通信技術の進歩によりここ数年は 毎年追加投資が必要となっている。それでも電話回線 こと ) を示し , そこから読み取れる D 社の財政状態お よび経営成繍 c ) について , それぞれ 30 字以内で述べよ。 に代わって増加している最新の光回線には対応が難し なお , 短所を表す指標については① , ②の欄に , 今 く自動検針ができない世帯が増えてきているため , 検 後懸念される指標については③の欄に , それぞれ記入 針にかかる人件費が増加し , また需要予測の精度カ がりつつある。 すること。 そこで , D 社では大手 LP ガス事業者が通信事業者 第 2 問 ( 配点 20 点 ) と開発した電力事業にも対応できるシステムへの移行 D 社の売上高変動のリスクを知るために営業利益 を検討している。その他配送費用など単独でのコスト べースで損益分岐点分析を行い , リスク軽減のために 削減やシステム構築に限界があるため , 中小 LP ガス 固定費削減額を検討する。売上原価と輸送費は変動費 小売業者の提携・ M&A による規模の拡大での生き残 りを模索している。 で , あとはすべて固定費とする。 なお , D 社の平成 26 年度と平成 27 年度 ( 平成 27 年 ( 設問 1 ) 平成 27 年度の財務諸表 ( 貸借対照表 , 損益計算書 ) 1 月 1 日 ~ 平成 27 年 12 月 31 日 ) の貸借対照表 , 損益 を用いて , 固定費を ( a ) 欄に , 損益分岐点比率を ( b 歴 t 算書を掲載する。 に求めよ。なお , 固定費は千円単位 , 損益分岐点比率 は小数点第 3 位を四捨五入せよ。 ( 設問 2 ) 売上高変動リスクを軽減するために固定費削減の目 標を設定する。現在の変動費率を変更せずに , 損益分 岐点比率を 8 ポイント改善したい。このとき目標とな る固定費削減額はいくらになるか。また , 営業レバレ ッジはどれだけ変化するか。それぞれ ( a ) 目標固定費 削減額 ( 千円単位 ) , ( b 現在の営業レバレッジ ( 倍 ) , ( c ) 固定費削減後の営業レバレッジ ( 倍 ) を求めよ。 なお , 計算に当たっては ( 設問 1 ) の計算結果を用 いるとともに , 固定費は小数点第 1 位を四捨五入し , 営業レバレッジは小数点第 3 位を四捨五入せよ。 第 3 問 ( 配点 24 点 ) 電力事業にも対応した集中監視システムの最新シス テムへの移行にあたり , ①全額借入 ( 耐用年数と同期 間 ) による一括払いにて自社所有の設備として更新す る方法と , ②業務委託費 ( 世帯単価 x 世帯数 ) の年払 いにて , 現在システムを所有する外部の会社にシステ ム運用も含めて業務委託する方法の 2 とおりがある。 121 一三ロ 損益計算書 ( 単位 : 千円 ) 平成 26 年度 平成 27 年度 221 , 500 129 , 548 91 , 952 85 , 862 41 , 646 5 , 567 9 , 126 29 , 523 6 , 090 1 , 424 2 , 610 4 , 904 630 744 4 , 7 1 , 916 2 , 874 223 , 666 129 , 726 93 , 940 83 , 355 40 , 600 5 , 234 8 , 200 29 , 321 1 0 , 585 1 , 480 1 , 156 10 , 909 1 , 272 481 1 1 , 700 4 , 680 7 , 020 売上咼 ま上原価 売上総利益 販売費・一般管理費 人件費 輸送費 減価償却費 その他 営業利益 営業外収益 営業外費用 経常利益 特別利益 特別損失 税引前当期純利益 法人税等 当期純利益 ノし′、 企業診断 2016 / 4
第 3 問 ( 設問 1 ) 本問の計算過程は次のとおりとなる。 ・ ( a ) 設備更新の NPV = 毎年の減価償却費のタックス シールド x 年金現価係数ー更新費用 = ( 6 百万円 x 0.4 ) x 4.5797 ー 30 百万円 = ー 19 百万円 ・ ( b ) 業務委託の NPV = 毎年の正味キャッシュフロー x ( 1 ー税率 ) x 年金現価係数 = ( ー業務委託費 + 固 定費削減額 ) x ( 1 ー税率 ) x 年金現価係数 = ( ー 3 千円 x3 , 000 世帯 + 2.4 百万円 ) x0.6X4.5797 = ー 18 百万円 よって , 税引後の NPV では業務委託カ陏利となる。 ( 設問 2 ) 設問 1 の NPV 値だけでなく , 業務委託には世帯単 価 x 世帯数による精算のため固定費を変動費化するメ リットがある。エネルギー業界再編により売上高減少 ( = 世帯数減少 ) の懸念のある中では , 固定費となる 設備投資よりも , 変動費となる業務委託のほうがリス クが少ないと判断できる。したがって , これらの 2 点 を記述すればよい。 第 4 問 ( 設問 1 ) 設問文の条件に応じて , 通常販売と通常販売よりも 値引きしたリース販売のそれぞれの利益の期待値を求 める計算問題である。 ( a ) 通常販売で期待される利益 ( 将来の解約による 利益減少含む ) は次のとおり。 ・機器当たり利益 = 販売単価ー仕入単価 = 60 ( 千円 ) ・販売世帯 = 対象世帯 x 成約率 = 60 ( 世帯 ) ・通常販売で期待される利益 = 3 , 600 ( 千円 ) ・解約による利益減少 = 販売世帯 x 解約率 10 % x 2 千 円 x60 カ月 = 720 ( 千円 ) ・ ( a ) 解約を含む通常販売で期待される利益 = 3 , 600 ー 業レバレッジが大きいということは , 売上高の変化に 対して利益の変化が大きく , 業績変動のリスクが大き いと判断される。 720 = 2 , 880 ( 千円 ) 企業診断 2016 / 4 ・機器当たり利益 = 販売単価ー仕入単価 = 40 ( 千円 ) (b) リース販売で期待される利益は次のとおり。 目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士試験】実力養成セミナー 社 ) とする株式移転のイメージである。 表は経営統合する会社のうち 1 社を持株会社 ( 親会 っ , 各社の独自性を残すことができる。なお , 下の図 ステムの統合により直接・間接コストの削減を図りつ 的簡単である。さらに , 持株会社で管理間接部門やシ 調達を必要とせず , また法人は残るため手続きが比較 M&A に関する問題である。株式移転の場合は資金 第 5 問 世帯当たり売上高と利益を増やすことができる。 また , さまざまな商品とのセット販売を行うことで , きるため , 全体では利益が増えることが考えられる。 とで , 通常であれば解約により減少する利益力保で 通常より値引きをしても , 一定期間顧客を囲い込むこ 設問 1 の検討結果からわかるとおり , セット販売で ( 設問 2 ) 販売世帯 = 3,000 ( 千円 ) ・ ( b ) リース販売で期待される利益 = 機器当たり利益 x ・販売世帯 = 対象世帯 x 成約率 = 75 ( 世帯 ) 図表株式移転のイメー 株主 B Y 社株式の移転 株式所有 三 株主 B 株式所有 株主 A X 社株式の割り当て 株式所有 三 株主 A 株式所有 X 社 ン 125 株式所有 株主 C 株式所有 Z 社株式の移転 株主 C
目指せ ! 経営コンサルタント / 【中小企業診断士衄】実力養成セミナー ・解説 ② a ) 有形固定資産回転率 ( b439 ( 回 ) ( c 集中監視システムに毎年追加投資が発生し効率性 本事例は , 2016 年の電力小売りの全面自由化を題材 として , かっ近年の出題傾向を意識して作成した。電 が低下している。 ① a 涜上高営業利益率 カ小売り全面自由化の翌年には都市ガス小売りの全面 ( b275 ( % ) 自由化も予定されており , それぞれに業種や地域を越 ( c 験針費用等のコスト増の一方 , 業界再編で売上高 えた市場参入の表明が相次ぎ , 電力とガスをセットと 減が懸念される。 したエネルギー業界の再編は必至の情勢である。そう した中 , D 社が生き残りを模索する事例となっている。 第 2 問 ( 配点 20 点 ) 第 1 問は , 経営分析の問題である。短所だけではな ( 設問 1 ) く 8 点 : (alb) 各 4 点 > く , 今後の推移が最も懸念される点も 1 っ挙げる。 ( a ) 80 , 295 ( 千円 ) 第 2 問は , CVP 分析の問題である。今後さらなる ( bD2.95 ( % ) 価格競争が予測され変動費率の低減は困難であるため , ( 設問 2 ) < 12 点 : (alblc) 各 4 点 > 固定費の削減に着目した設問となっており , 固定費削 ( a ) 6 , 911 ( 千円 ) 減の効果が営業レバレッジとしてどのように表れるか ( b ) 14.18 ( 倍 ) が問われている。 ( c る .64 ( 倍 ) 第 3 問は , 変則的な NPV 問題である。単なる投資 評価ではなく , 借入による設備投資によって自前の設 第 3 問 ( 配点 24 点 ) 備を保有する場合と , 初期投資カ坏要な業務委託 ( ア ( 設問 1 ) < 12 点 : (aXb)66 点 > ウトソーシング ) とする場合の比較をシミュレーショ ( a ) ー 19 ( 百万円 ) ンで実施している。 ( b ) ー 18 ( 百万円 ) 第 4 問は , 今後の方向性を問う問題である。将来的 ( 設問 2 ) く 12 点 > な電力とガスのセット販売も視野に入れた , ガスとそ 現状世帯数では業務委託カ陏利である。理由は設備投 の他のセット販売の是非と根拠が問われている。 資より正味現在価値が大きく , 固定費を変動費化する 第 5 問は , M&A に関する問題である。経営統合の 方法として , 一般的にはまず買収や合併があるが , 中 メリットがあるためである。 小企業が採用しやすい株式移転による持株会社設立を 第 4 問 ( 配点 16 点 ) 取り上げそのメリットが問われている。 ( 設問 1 ) く 8 点 : (aXb) 各 4 点 > ( a2880 ( 千円 ) 第 1 問 (b)3,000 ( 千円 ) 経営分析に関する問題である。短所 2 っと今後の推 ( 設問 2 ) く 8 点 > 移が最も懸念される財務指標を 1 っ挙げる必要がある。 狙いは , 顧客の囲い込みによる本業の利益確保と世帯 第 2 問以降の取組みに向けて , 内部環境だけではなく 当たり売上高・利益の向上である。 特に LP ガス業界を取り巻く外部環境を認識すること が重要である。まず , 短所に着眼する。集中監視シス 第 5 問 ( 配点 16 点 ) テムの仕様が古くなっていることに起因する追加投資 メリットは管理間接部門やシステムの統合を進めなが の発生 , 人件費の増加 , 需要予測精度の低下があるこ らも各社の独自性を残せること , 手続きが簡単で資金 とがわかる。追加投資の発生からは固定資産の増加 , 調達カ坏要なことである。 減価償却費の増加が , 需要予測精度の低下からは安全 在庫増による棚卸資産の増加が推測される。こで短 所として考えられる財務指標は , 次のとおりである。 123 企業診断 2016 / 4