政府軍 - みる会図書館


検索対象: 勝海舟 : わが青春のポセイドン
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1. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

よしのぶ ぶぎまこうどうはし とくがわびやくねんれきだいしようぐん 徳川三百年の歴代将軍のうちでも、こんな無様な行動に走ったのは慶喜だけだという不 めいよ れきし 名誉を歴史にきざんだ。 しよ、つぐん せんじようち さいこ しようへい よしのぶ 慶喜は、このときこそ最後の将軍らしく将兵たちと戦場に散る覚悟をしめすべきだった。 しんぼう せいけんこうそう とくがわし それなくしてどうして徳川氏のあるじとしての信望をあつめ、新しい政権構想のなかに自 ぶんいち 分を位置づけることができようか よしのぶたいせいほうかん しさん よくなのか よしのぶだっしゆっ ばくへい たいしよう 大将をうしなった幕兵は四散し、慶喜が脱出した翌七日、朝廷は「慶喜の大政奉還はい よしのぶついとうれい たいぎやくむどう つわりであり、大逆無道」として慶喜追討令を発した。 じゅう にほんこくてんのうしんさい 宀ない。力し せいじ そして各国の使臣には「内外の政事は日本国天皇が親裁する。大君の名称をもちいた従 かんせんしかんへいそっか つうこく ばくふがわへいき ぜんじようやくてんのう 前の条約は天皇にかえる」と通告、また幕府側に兵器・艦船・士官・兵卒を貸しあたえな たいとうこうせん りようしよう たいくんせいふ にちしんせいふ かっこく いように要求した。各国ともこれを了承して二十五日、新政府と大君政府とを対等の交戦 みときよくがいちゅうりっせんげん 団体と認め局外中立を宣言した。 ゃんぬるかな。 ふゅぞら 海舟は江戸の冬空をあおいでため息をついた。 だんたい かいしゅうえど かっこくししん ようきゅう はっ ちょうてい あたら かく′」 たいくんめいしよう じ 127

2. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

ひ くちょう はぎ わる サトウの口調も歯切れが悪くなっている。イギリスにとって、江戸が火の海にでもなれ じじよう えどそうこう ぼうえき よこはまきよりゅうちあんぜんおびや ば、横浜居留地の安全が脅かされ、さらに貿易にもさしつかえるという事情は、江戸総攻 しようぎたい せいふぐんま 撃のときとおなじだ。しかし、こんどは彰義隊が打って出るのを政府軍が待ち構えている たちば ばくふカわようぼう しようぎたい じようきよう ークスとしては「彰義隊をおさえろ」と、幕府側に要望する立場 といった情況だから、 しようぎたい 「彰義隊のほうは、なんとか手を打っことにしてますから、政府軍のうごきを牽制しても らいたい」 ア」 , っし った 「公使には伝えておきましよう」 かえ たよ へんじ 頼りない返事をして、サトウは帰って行く。 いっぽうたんしんかん じきよくへいわてきかいけったんがん だいそうとくしよかんおく がつなのか 五月七日、海舟はまた大総督に書簡を送り、時局の平和的解決を嘆願する一方、単身寛 あまのはちろうあ しようぎたい 永寺に出むいて、彰義隊をたばねている天野八郎に会う。 ぼうはっ とくがわしよぶんき 「徳川処分の決まらぬ大事なときだ。暴発はいけませんよ」 学にたカ ツ」らなりき やっ ぼうはっ 「暴発はいたしませんが、奴らが攻撃してくれば戦うまでです」 きんしん ぜんしようぐんみと 「前将軍が水戸で謹慎されているんだから、おとなしくしていなきゃいけねえ」 さしず りんのうじのみやよう しようぎたい 「彰義隊はかたじけなくも輪王寺宮を擁しております。勝さんの指図はうけない」 えいじ で かいしゅう だいじ て 、つ う で かっ せいふぐん うみ かま けんせい 185

3. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

ばくふ 幕府を挑発しているのは西郷だからね。 まあこれはあくまでもおれの推測で、 りようまあんさっげしゅにん とにかく竜馬暗殺の下手人はわからないとしておくしかない むねん 無念でならないのは、 きよ、フとまちなか のほほんと京都の町中で下宿住まいし、 りよ、つま かれ あ だれ彼なしに会っていた竜馬のうかっさだよ。 にち がっ 十一月十五日といえば、 ちよく」 しんせいふこうりよ一つはっさくさい」う 新政府綱領八策を西郷に見せた直後のことで、 じぶんおもわくどおこと 自分の思惑通り事がはこんでいるとはかり、 こころすきま っ ひといき ほっと一息ついた心の隙間を衝かれやがったのだろう。 ゆだん まったく油断というほかはない。 しかく この大事なとき、みすみす刺客に討たれるとはなんたるまぬけだ。 ヾ一」 ) バレ ちょうはっ げしゆくず さい」、つ すいそく 、つ 121

4. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

仕方なく腰をあげることにした。 たてやま えのもとかまじろう 榎本釜次郎がいつまでも館山にとどまるとはかぎるまい と しゆっこう 出航しないうちにと、馬を飛ばして館山にかけつけたよ。 かいようばんりゅ一つかんこ、つかんりんちょうようふじさんかいてんちょだかた 開陽・蟠龍・観光・咸臨、朝陽・富士山・回天・千代田型 ばくふ ぐんかんおきせい そんな幕府の軍艦が沖に勢ぞろいしている。 けっちゃく 海戦だけで決着がつくのなら、 ぶねかんたい あしもと 新政府のポロ船艦隊など足元にもよせつけない海軍力だ わた えのもときも これを渡したくない榎本の気持ちもわからなくはないが、 よしのぶこ一つ 慶喜公の首がかかっているといえば、 かんたい このまま艦隊をつれて逃げるとはいわないだろう。 。力いーかん ふねだ かいよ、つ、けんてい 海岸から舟を出させ、開陽の舷梯 ( タラップ ) をのばって行き、 しんせいふ しかた かいせん くび こし 、つま たてやま かいぐんりよく 176

5. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

めいしゆす にほんあたら しゆっぱっ とくがわけ 徳川家はのこしておくべきで、日本が新しい国家として出発するための盟主に据える人物 みと ぜんしようぐんよしのぶこうさいてき としては、前将軍慶喜公が最適であることはだれもが認めるところです」 かいしゅうねつべん 海舟は熱弁をふるった。 むごんあつりよく もっかていしゆっちゅうたんがんしよしんせいふ そして目下提出中の嘆願書を新政府がうけいれるよう、イギリスが無一言の圧力をもって ちょうてい 朝廷にはたらきかけてもらいたいと頼んだのだ。 「できるだけのことはやりましよう」 よてい うなず かんたい 1 クスは、こころよく頷いた。また東インド艦隊は、近く出航する予定と聞いて、 ていはく せいふぐんにら 「政府軍に睨みをきかせてもらいたいので、もうしばらく停泊することはできませんか」 ちゅ、フじよ、つようせい と、ケッペル中将に要請した。 むり せき 「それは無理だが、一隻だけなら一カ月にかぎってのこすことにしよう」 ごう じまんこうてつかん やくそく かんたい そう約束してくれた。アイアンデューク号は、艦隊ご自慢の甲鉄艦である。 たの ひがし こっか ちかしゆっこう じんぶつ 163

6. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

しようぎたいうえのせんそう 彰義隊上野戦争 けんあくど しようぎたい おそ 海舟たちが恐れたとおり、彰義隊の空気は日増しに険悪の度をくわえているようだった。 あんさつはか もの せいふぐんへいし こわだかひなん せんたっ 人数も四千に達し、街頭に出て新政府を声高に非難する者、さらに政府軍兵士の暗殺を謀 る者がいるという風説もひろまっているらしい。 おおむらますじろう いっきよかこく とくがわしよぶん しようぎたい ぼうはっ 彰義隊が暴発すれば、徳川処分は一挙に過酷な決定に走るだろう。あるいは大村益次郎 ま しようぎたい あば などときたら彰義隊が暴れだすのを手ぐすねひいて待ち構えているのかもしれないのだ。 かいしゅう ひさ 五月五日、久しぶりにアーネスト・サトウが海舟のところにやってきた。 / 、つつ、つ みずあわ そ、つ」、つノげ・き 「江戸はたいへんですね。総攻撃をのがれるため、勝さんが苦労したことも水の泡になり しようぎたい ざんねん そうで残念です。彰義隊はどうですか」 サトウは江戸のようすをおれから探り出すためにやってきたんだろう。 「パークスさんに、また骨を折ってもらわばなりません」 「そうですね。しかしまえのようにはいきませんよ」 かいしゅう にんずう もの えど カついっか えど 力いと、つで ふうせつ ほねお しんせいふ さぐだ ひま けってい かっ 184

7. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

いのち とくがわよしのぶ さいこ、つ びしよう せいかんいんのみやみ と、西郷が意味ありげに微笑した。このさいは静寛院宮の身より、命にかかわる徳川慶喜 て しょち せんけつもんだい の処置をどうするかが、先決問題だろうというのである。やはり手ごわい相手だ。 あすだんばん そうだん じよ、つじようか 「これをごらんください。、 こ相談すべき条々を書いております。くわしくは明日談判いた したいので、本日はとりあえず「れにて退散させていただきます」 そうだん たんがんしょわた かいしゅうあたら おおくぼいちおう と、大久保一翁とも相談して海舟が新しくつくった嘆願書を渡し、早々にひきあげた。 みと いんきよきんしん ないよう よしのぶびぜんはん その内容は、慶喜を備前藩おあずけという「とにせず、実家の水戸で隠居謹慎とするこ とをまずあげている。 いちもんたやすけ えどじよう せいふぐんあ 一門の田安家にあずけ、同 江戸城については、ただちに政府軍に明け渡すのではなく、 かんり 家で管理する。 そ、つとうかず ちあんじようひつよう とくがわけ へいき 兵器・軍艦などは徳川家においてとりまとめるが、治安上必要なので相当の数をのこし うえせいふぐんわた た上で政府軍に渡す。 しょち よしのぶこ、つど、つとば 慶喜の行動 ( 鳥羽・伏見の戦い ) をたすけた幕臣には特別の憐憫をもって、寛大な処置 ねが をお願いしたい : むじようけんこうふくとくがわしょんあん さいご、つやまおかてったろ、つしめ たんがんしょ この嘆願書は、まえに西郷が山岡鉄太郎に示した無条件降伏の徳川処分案にくらべると、 じよ、つけん つよき 条件つきの強気なものになっている。 ぐんかん ほんじっ 0 ふしみ たたか たいさん わた ばくしん とくべつれんびん じっか そ、っそ、つ かんだい どう 157

8. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

せいふぐん かえ ふね 帰れぬ船の、人のなんと多いことか けつべつでふねうた だから決別の出船の歌ばかりが、 ついおく 追憶の波間をただようのだ。 けいおうねんなっ 慶応四年の夏。 ヾ一、ゝ洋 6 お台場の岸にたたずむおいらの脳裏をよぎったのは、 よかん に A 」 もう二度と遭えないだろうという予感だった。 ゅうひ にしかぜ 西風でふくらんだ帆をタ陽の色に染めて、 しながわおきで 品川沖を出てゆく咸臨丸を みおく ひそかに見送ったあの日のことをわすれない えのもとかんたいま 政府軍への抗戦にまなじりを決した榎本艦隊に交じって たいかんかいよう 大艦「開陽」のあとにつき、 なみま きし あ こうせん ひと ほ かんりんまる ひ おお けっ いろそ の、つり・ 205

9. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

おれにしても、あまり他人さまのことはいえない めいじ 明治二年には新政府に登用されたのだ。 さい」、つ 西郷らがかげで推してくれたのだろうが、 がいむだいじようかいぐんたゆうさんぎけんかいぐんきようげんろういんぎかん 外務大丞・海軍大輔・参議兼海軍卿・元老院議官と しゅうにん」 やくしよく 派手な役職はならぶが、ほとんどは就任後、 きんむ ただちに辞任して勤務せず、 めいじ ねんいこうしせい 明治八年以降は市井の老人として自由に暮らしている。 ねん じにん しんせいふ お ひと と、つよっ ろうじん じゅう 198

10. 勝海舟 : わが青春のポセイドン

と、つばっ ちょうしゅ、フきなし あ 「癶よ一つ ークスさんと長州の木梨さんが会いました」 物」いど」い ぎぶとんうえ 。しオ六年近くも滞在してい 座布団の上にぎこちなくあぐらをかきながら、サトウよ ) っこ。、 たっしゃ るので、日本語も達者なものだ。 きなしあ 「ほう、木梨が会いに行ったのですか」 よこはまよ 「いや、 ークスさんが、横浜に呼んだのです」 はなし 「どんな話をしておりましたか」 がた わるはなし 「聞きたいですか。あなた方にとって悪い話ではないですよ」 サトウはニャリと笑った。 っ かいしゅうけいかい なぜわざわざそんなことを告げにきたのかと、海舟は警戒した。 じしんかんが 「ここにこられたのは、あんたご自身の考えでんすか」 ークスさんが、勝さんに知らせておけといいましたので、わたしやってきまし 一」一つ・け・き よこはまきよりゅうちあんぜんおびや せいふぐんえど ノ ークスは政府軍が江戸を攻撃して戦争になったとき、横浜居留地の安全が脅かされる み けねんきなしった とくがわよしのぶきようじゅんたいど のではないかという懸念を木梨に伝え、徳川慶喜が恭順の態度を見せているのに、 , 、れを 、はんこくこ , つほ , っ 討伐するのは『万国公法』にもそむくことになるといっているという。 「いや、 き にほんご わら かっ し せんそう ねんちか 159