「べつな箱をあけてみよう」 そばの箱をあけると、こんどは女のロボットが出てきて言った。 「ああら、坊やたち。遊び相手がなくて、つまんなかったでしよう。あたし ゞお相手してあげるわよ。かくれんばしましようか。それとも、なぞなぞご っこかいし・ しょち これもおかしかった。しかし、ふしぎがってもいられない。植物への処置 を急がねばならないのだ。それにしても、どうしてこんなことになったのだ ろうか。こんなロポットばかりなのだろうか さいしょ 二人は今あけた箱をよく調べた。ふたに文字が書いてあった。最初のには こう記してあった。 〈 3 級ロポット。レジャー用。生産や実務には適せず〉 女ロボットのはこうだった。 せいさんじつむ てき 208
うちゅうせんと 星々のきらめく広い空間を、一台の宇宙船が飛びつづけていた。かなりの うちゅうせん かもっゅそう おおがた 大型だが、乗っているのは二人だけだった。これは貨物輸送用の宇宙船だっ いみん たのだ。地球から移民した人びとの住む星から星へと、いろいろな品物を運 ぶのが役目だった。 きけん へんか かもっせん みち たんけん 「未知の星への探検旅行とくらべ、貨物船の仕事は危険がないかわり、変化 がなくて退屈だな」 にんむ 「任務には、さまざまな分野があるものさ。重要さでは、どちらが上とはい ねほけロボット たいくっ じゅうよう 203 ねぼけロボット
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「キ 6 ) 0 そうおっしやるところをみると、わたしがねばけていたのですね。 その場合は、人間に対するのと同様になさればいいのです。つまり、ほっぺ たをひつばたいて下されば : 「そうだったのか : ほんのう 人間の本能にあわせて、わたしが作られているのです。統計による と、ねばけた相手に対して、人間はたいていそうするそうです : : : 」 しょちてきちゅう 思いがけなく、処置が的中したわけだった。ロポットは植物に近より、そ かた なえつけの薬品を使って、手ぎわよく片づけてくれた。 こうろ うちゅうせん かくして、宇宙船はふたたびぶじに航路をたどりつづけた。 と、つけ・い 213 ねぼけロボット
星新一 ショートショート セレクション 和田誠絵 星新いー〈・ レクションの 短い物語の中に、現代 と未来のいくつもの顔 を鮮やかにとらえる (-n 童話。ショートショ ートの名手が明日の子 どもに示す新しい世界。 日頭の大きなロボット圓ピーターバンの島 田ねらわれた星 盗賊会社 未来人の家 2 宇宙のネロ 磴クリスマスイプの出来事 3 ねむりウサギ日夜の山道で Ⅱホタン星からの贈り物 9 さもないと 3 奇妙な旅行 宇宙の男たち e 重要な任務 日番号をどうそ
「坊やたち、鬼ごっこがいいわね。ぐるぐる回りながらだと、つかまえにく いわよ」 しゅうしゅう たいへん 大変なさわぎで、収拾がっかなくなった。植物への対策が進まないばかり うちゅうせん へん か、変なロポットばかりがつぎつぎあらわれる。この宇宙船がどうなるのか、 見当もっかなくなってきた。 「ひどいことになった。あんなロポットなど、起こさないほうがよかった。 なにか注意書きはついてないか」 しへん 箱のなかをのぞくと、紙片があった。 せいこ、つ スイッチを入れてしばらくは人間 〈これは精巧なロポットで、人間に近い。 の場合と同じく、ねばけることがある : : : 〉 じじよう 事情はわかった。しかし、その場合はどうしたらいいのかという部分は、 紙がちぎれてなくなっていた。ロボットが起きあがる時に破けたらしい ぼう おに たいさく ゃぶ 211 ねぼけロホット
スイッチを入れる前によく読めばよかったのだが、あわてていたので、こ んなことになってしまった。い まさら後海しても、まにあわない。 そうじゅうしつ 操縦室のロポットはあたりをいじりまわし、ほっといたらドアをあけるポ めいあん タンを押しかねなし ) 。はらはらする思いだか、名案もすぐには浮かばない。 一人はがまんができなくなり、前後も考えずにそばにあったハンマ 1 を手 にし、ロポットをなぐりつけた。 「こいつ。しつかりしろ。目をさませ」 ハンマ 1 はロボットの顔に当った。だが、ロポットはこわれもせず、さら きようぼ、つ に狂暴にもならず、ふいにおとなしくなって答えた。 「はい。なにをいたしましようか」 ′、ちょう めいれい ′、ちょう はっきりした口調で、命令を待っ口調だ。 「もう大丈夫なんだろうな」 だいじようぶ お こうかい 212
〈 3 級ロポット。子守用。それ以外の役には適せず〉 かれ 理由はわかった。これではどうしようもなかったわけだ。彼らは、もう少 しましなのはないかと、つぎつぎと箱を調べていった。 ばんのう さいこ、つ 〈最高級ロポット。高度の仕事むき。万能。人間に近い機能〉 ついに見つけた。 「これだ。これだ。さあ、早く使おう」 ひょうじよう せいこ、つ 箱をあけ、スイッチを入れる。いかにも精巧そうな表情のロポットが立ち めいれい かれ あがった。彼らは急いで命令した。 ひつよう 「あの植物をしまっしてくれ。必要な道具や薬品はいちおうそろっている。 なんでも使っていい」 ロポットはゆっくりと答えた。 、なにか、ど一つ、しにと、 いうのですか」 し力し てき きのう 209 ねほけロボット
こくあらそじたい 「そんなに、のんびりしていては困るのだ。一刻を争う事態なのだ。早くや れ。おまえにはできるはずだ」 しかし、ロポットは植物などには見むきもせず、操縦室のほうへ歩いてい そうち った。そして、そのへんの装置をいじりはじめた。 ゅ ふきそく そのため、船体は揺れたり、不規則な回転をした。二人はあちこちにぶつ えきち きんぞく かる。植物もころがり、金属をとかす液が散り、危くてしようがない。 「おゝ、 やめろ」 と大声で命じても、ききめはない。 つばう、レジャ 1 ・ロボットは面白そうな声を出している。 だんなかわ ゅ 「これは旦那。変った趣向ですな。こんなに揺らせながら酒を飲むなんて。 よ 早く酔おうというわけですか : 子守口ポットはこんなことを言う。 しゅこ、つ こま あぶな そうじゅうしつ 210