二人 - みる会図書館


検索対象: ピーターパンの島
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1. ピーターパンの島

「それじゃあ、これから町まで行ってみようか」 「うん、ばく、アイスクリームが食べたいな」 さんば 二人は港町を散歩し、公園で休んだ。草花とハトの多い公園で、ひととき が過ぎた。 昼ちかく二人が丘の家に帰ってみると、父からの小包みがとどいていた。 「お父さんからだよ」 「なにが入っているのだろう」 ぼ、つ 坊やが開いた包みのなかからは、ポールが出てきた。そのボールは美しく ねいろ さいしよく 彩色され、なかには鈴が入れてあって、はずませるたびに美しい音色をひび かせた。父が外国の港で買って、送ってくれたのだ。その日、坊やは寝るま でそのボールで遊んでいた。 そふ つぎの朝、祖父は聞いた。 つつ おか こ、つつ 158

2. ピーターパンの島

「ああ、有名になりたいなあ」 はたら と地方から都会に出てきて働いている少年がつぶやく。それに対して、五 十歳ぐらいの学者が言った。 「なぜ、有名になりたいんだい」 さんば しゅうかん ここは公園のべンチ。散歩が習慣で、二人はいっしか顔みしりになってい 「なぜって、きっと楽しいにちがいないからさ。みんながばくに注目してく 有名

3. ピーターパンの島

「サインで、 ひつよう 「そんなもの、なさる必要はございません。カードをお見せになるだけで、 よろしいのでございます。どうぞ、ごゆっくりと : さいこ、つ さいこ、つ 最高の部屋、最高の食事。電話でたのめば、酒であろうと、マッサージで あろうと 、いたれりつくせりのサービス。しかし、二日もすると落ち着かな かんげい くなってくる。なぜ、こうも歓迎されるのか、わけがわからないからだ。 もど きざ きたく 帰宅し、これまでの生活に戻る。しかし、ホテルでの体験は頭のなかに刻 みついている。やがて、また行ってみたくなる。 「いっかはどうも。このカードだ」 たぶん先日と同じ係の男が、指をばちんと鳴らした。品のないしぐさだ。 同時に、近くにいたポ 1 イが二人、青年に襲いかかった。 やろう 「とんでもないカードを見せやがった。なまいきな野郎だ。ただですむと思 おそ たいけん 85 応対

4. ピーターパンの島

「どうだった。また、こわい夢を見たかい」 「夢は見たけど、こわい ,. とはなかったよ」 ゅめ 「どんな夢を見たんだい」 「お鼻の長いクマちゃんだよ。 んだ」 「よかったね」 祖父はほっとひと安心した。アイスクリームと父からの小包みとで、さび うす マ しさが少し薄らいだのだろうと思った。 ク れ そして、しばらく、二人の静かで平和な日がつづいた。 の ゅめ ま 「もう、このごろは、こわい夢を見なくなったのかい」 さ 蔵 「ああ、お鼻の長いクマちゃんの夢ばかりだよ。あれ、なんていう動物なの。お 絵本にも出ていないんだよ」 ゅめ ゅめ しず ゅめ っしょに遊んだんだけど、とてもかわいい こづっ

5. ピーターパンの島

「ねえ、おじいちゃん。また、こわい夢を見たんだよ」 まどべ 朝の日のあたる窓辺の椅子にかけている祖父に、坊やがいらいらした声で 一一一一口った。 「坂ゃ。夢なんてものはね、朝になればみんな消えていってしまうんだから、 5 そんなにこわがるんじゃないよ : まど 祖父は、坊やの頭をなでながら答えた。窓は、潮の香を含んだすがすがしお い風を迎え入れている。二人は港の近く、小高い丘の上にある家に住んでい お地蔵さまのくれたクマ じぞ、つ むか ゅめ ゅめ しおかおりふく おか ぼ、つ

6. ピーターパンの島

星新一 ショートショート セレクション 和田誠絵 星新 ( 〒ト 0 セレクションの 短い物語の中に、現代 と未来のいくつもの顔 を鮮やかにとらえる co 童話。ショートショ 1 トの名手が明日の子 どもに示す新しい世界。 ねらわれた星 日頭の大きなロボット圓ピーターバンの島 2 宇宙のネロ 未来人の家 盗賊会社 3 ねむりウサギ日夜の山道で クリスマスイプの出来事 奇妙な旅行 9 さもないと Ⅱボタン星からの贈り物 番号をどうそ 重要な任務 宇宙の男たち

7. ピーターパンの島

るのだ。 そふ いくつもの船が静かに休んでいるその港に目をやりながら、祖父は言葉を つづけた。 「 : : : あと三月もすれば、お父さんの乗った船があの港に帰ってくるから、 おとなしく待っていなければいけないよ」 坊やの父は船員で、いまは遠い外国の港をまわっているのだった。そして、 そふまご 母は坊やを生むとまもなく死に、この家での生活は祖父と孫との二人だけで つづけられていた。 「だって、ばくはもう、こわい夢を見たくないんだよ。どうしたらいいの」 くら そふ だが祖父にはどうしたらいいのか考えっかなかった。父や母のいない暮し ゅめ のさびしさが、こわい夢を見させるのだろうとはわかっていても、だからと って、どうしようもないのだった。 みつき しず ゅめ 154

8. ピーターパンの島

「ますます、つ」一つかいし よし、取りにいこ一つ」 わたし 私たち二人は船体を出て、植物のしげみにむかったが、この時、予期しな ぼうがい かった妨害に出あった。 とっぜん、牙をむき出した犬たちがどこからともなくあらわれ、しだいに 数をましながら、私たちにむかってほえたてたのだ。 「これはいかん、早くもどろう」 「この星は、犬ばかりの星らしい」 に わたし 私たちは、あわてて船内に逃げこんだ。 ぶき しかし、武器をつんでこなかったので出るわけにもいかず、だからといっ と て、飛び立って餓死への旅にむかうのもいやだ。 ていあん その時、船内の犬たちがこう提案した。 こうレよう 「わたしたちに、まかせなさい。なんとか交渉してみますから」 わたし 199 サーカスの旅

9. ピーターパンの島

「また、こんばんも、きっと見るよ」 そふ 祖父が答えないので、坊やはからだを揺らせながら声を高くした。 「そうだね。どうしたらいいだろうね」 そふひく 祖父は低い声でつぶやき、首をかしげていたが、やがて言った。 じぞう 「ああ、それではお地蔵さまにおまいりにい こ一つかね」 ゅめ じぞう 「お地蔵さまにおまいりすれば、こわい夢を見なくなるの」 「そうだよ」 そふ 祖父は、こう答える以外になかった。 「じゃあ、すぐ行こうよ」 そふほね 坊やは、祖父の骨ばった手を引っぱった。 そな 「そうするかい。それならお供えする花を庭から持って行こうね」 そふ あさっゅ 祖父は花バサミをさがし、二人は朝露のまだ乾ききらない庭に下りた。祖 ルカし かわ 156

10. ピーターパンの島

ちゅうせん もくてきち 飛び立ち、つぎの目的地をめざして、静かに空間を進みつつある。 わたし 私は時計を見た。 「あ、そろそろ食事の時間ですよ」 「そうだな。お 1 、みんな食事だぞ」 さけ おう 大声で叫んだ団長の声に応じて、となりの船室から何匹もの犬たちが、か と わいらしい声でうれしそうになきながら、飛び出してきた。 わたし 私たち二人はこの犬たちに芸をしこみ、サーカス団を作ってほうばうの星 をまわっているのだ。 、つ わたし いじゅう かいたくじゅうじ 地球から移住してきて、星々で開拓に従事している人びとは、私たちの宇 宙船の来るのを待ちかねている。 犬たちと私たちは、ずっといっしょに旅をしているので、おたがいのあい むす だは地球上での人間どうしより、ずっと強い親しさで結ばれている。 と わたし だんちょう しず だん びき 196