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検索対象: ピーターパンの島
27件見つかりました。

1. ピーターパンの島

めいれい るよう命令を下した。 すなはま 島は近づき、砂浜に寄せる白い波、こんもりとした森、島の中央にある小 高い山が、しだいにはっきりわかってきた。 すなはまにんぎよ 夜になると、あの砂浜に人魚があらわれ、月の光に歌声をひびかせるだろ まほ、つ っえ う。森の中の道は、長い杖をついた魔法使いのおばあさんが歩いているだろ うし、大きな樹の下には小人たちの家があるはずだ。 ほうせきほらあなおく ひみつ かくされた宝石は洞穴の奥にあるんだ。その秘密をさぐらなくては。とっ きけん きよじん ぜんあらわれる狼男に注意しないと危険だ。山の上には巨人が大きなダイ よ、っせい ヤを守って、がんばっているだろう。そのむこうには、妖精のお花畑が : 船は帆を下げ、進みをとめた。 「ボ 1 トをおろせ」 こども と船長が命じ、子供たちはそれに乗りこんだ。船員は声をかけた。 せんちょう おおかみおとこ 184

2. ピーターパンの島

男は目をあけ、あたりがどうなっているのか知ろうとした。しかし、ばん しようてん きんし やりとした明るさがあるだけ。焦点がさだまらないのだろうか。強度の近視 のはずはないのに。身を起こそうとしたが、カが入らない。 か 「だれか、手を貸してくれ」 すると、女性らしい声がした。 いしきもど 「意識が戻られたようですね。静かにしていなければ、いけません。あなた びみよう は、大きな事故にあったのです。きわめて微妙な手当てを受けているのです。 これからの出来事 じよせい 115 これからの出来事

3. ピーターパンの島

まったく、とんでもないことになったものだ。 し。冫し力なかった。船体から流す音楽にあわせて、団 だが、やらないわすこよ ) ゝ さかだ しき したが ちょうわたし 長と私とは、犬たちの指揮に従って、とんだりはねたり、逆立ちをしたり、 組打ちをしたり、くたくたになるまでつづけなければならなかった。 おおよろこ 一方、はじめて見るサーカスなるものに、原住犬たちは大喜びのようすだ った。きっと、こう話しあっているにちがいない くんれん 「これはすごい。あの二本足の大きな動物を、よくこれまでに訓練したもの だん 201 サーカスの旅

4. ピーターパンの島

れんらく 「あ、やっと連絡がとれた」 ずっとみつめつづけていた計器の針が、。 ひくりと動いたのに気がついて、 わたし かんけいしゃ 私は声をあげた。うしろに集まっている関係者たちも、 いっせいに緊張した。 うちゅうつうしん 、っちゅう じゅ ここは宇宙通信本部。ビルの屋上の大きなアンテナが、宇宙からの電波を受 しん 信しはじめたのだ。 「こちらは地球の本部。どうぞ」 わたし おんりよう 私はダイヤルをまわして、音量をあげながら言った。それに答えて、雑音 きんちょう 202

5. ピーターパンの島

こくさいかんけい きんばく 〈ニュースの時間です。まず国際関係。ど , 、の国のあいだにも、緊迫した状 たい さくじつはんざい けんすう 態はまったく見られません。つぎに国内ニュース。昨日の犯罪の発生件数は ゼロ : こうけい という声。壁の大きなテレビ画面には、美しい山や海の光景がうつってい る。ひとりの男が、ねそべってそれを眺めながら、つぶやく。 かわ 「変りばえしないなあ・・・・ : 」 せいじよう 室内はこころよい温度。さわやかなにおいの、清浄な空気が流れつづけて こんな時代か なか じよう

6. ピーターパンの島

星新一 ショートショート セレクション 和田誠絵 星新 ( 〒ト 0 セレクションの 短い物語の中に、現代 と未来のいくつもの顔 を鮮やかにとらえる co 童話。ショートショ 1 トの名手が明日の子 どもに示す新しい世界。 ねらわれた星 日頭の大きなロボット圓ピーターバンの島 2 宇宙のネロ 未来人の家 盗賊会社 3 ねむりウサギ日夜の山道で クリスマスイプの出来事 奇妙な旅行 9 さもないと Ⅱボタン星からの贈り物 番号をどうそ 重要な任務 宇宙の男たち

7. ピーターパンの島

まんさい へいたい 戦いに敗れた数名の兵隊が、幼い王子を抱いて森に逃げ込んできた。まだ ころ 満一歳にもならない。足手まといだし、つかまれば殺されるだろうし、育て みきあな るあてもない。そこで、大きな木の幹の穴のなかに置いてゆくことにした。 祈る思いで。 それにこたえて、森の精霊たちが王子を育てた。木は蜜やミルクのようなな ふじゅう えきぶんびつ 液を分泌し、食べ物に不自由させなかった。言葉を話す鳥がいて、相手にな った。いつの日か森のそとへ出た時、困らないようにと。 いの ある古風な物語 たたか こふう ゃぶ おさな こま みつ こ

8. ピーターパンの島

は ら、刃のほうが欠けてしまった。 「なんだ、これは」 せつめいしょ もっとも、これ 説明書も入っていないし、書かれている文字も読めない。 、もし、つ いんしよう は模様なのかもしれないが、意味を持っているような印象を受ける。古代の 文字を天才的なデザイナ 1 が近代化したら、こうもなろうか。 考えても、わかるわけがない。やはりクレジットカ 1 ドの一種だろう。青 年は外出し、大きなホテルへ行き、フロントでそれを見せて聞いた。 「このカードが通用しますか」 か 係はそれを見て、口調を変えた。 さいこ、つ 「これはこれは。よくぞ、おいで下さいました。最高の部屋へ、ご案内いた します。お食事は、館内のレストランでしたら、どこでもお好きなものを てき か かんない いっしゅ す あんない 4

9. ピーターパンの島

ふかんしよう 「じゃあ、お子さんは、毎日あんな目に会っているのですか。おばけ不感症 なんですか」 ひつようひん ふかんしよう 「不感症とはちがいます。むすこにとって、あれは必要品なんです」 、じじよう 「まさか。どういう事情なんです」 せつめい 男はふしぎがり、主人は説明した。 けんや ぞんじ いゼん 「じつは、わたしたち、ご存知のように、以前は都会の一軒家に住んでいた。 かいぞう ものお むす , 、が生まれ、物置きだったと , 、ろを改造し、その部屋にした。そこが、 のろわれた部屋だったわけです。わたしと家内は気がっかなかったが、むす ふつう まいばんかい こは毎晩、怪異とともにすごしていた。なれてしまい、それが普通だと感じ ながら育ったというわけです」 「なるほど」 いったい 「そのうち、その一帯がとりこわされ、大きなマンションが建った。その一 た 23 子供の部屋

10. ピーターパンの島

だんめん げんじゅうきんし いぜん れたことはなかった。ずっと以前から、そのようなことは厳重に禁止されて いたのだから。 「やれるだけのことは、やってみましようよ」 「ああ、おそらくだめかもしれないがね」 ろくカ と、両親はいちおう手をつくした。図書館から教育用の録画を借りてきて、 こ、つ′ : っ 壁の大きなスクリ 1 ンに映し出してみせるのだ。画面には植物の構造、花の じようちょ 断面などが、つぎつぎとあらわれた。そこには情緒などまったくなかったが、 てきせいかく 科学的な正確さはあった。 「ほら、これがお花だよ。よくごらん」 こども 「ね、お花のなかには、 小さな子供なんかいないでしよ」 ウエンディはそれを見ているのか、見ていないのか、長いまっ毛の下では 夢見るような目つきがつづいていた。そして、いちおう終ったとき、小さく ゅめ かべ うつ 170