ころ。前足を切断されたサンショウウオから、同じように足が再生してくる じようえい ところ。七分間ほどのその上映のあと、医者が言った。 おうよう かのう 「 : : : 植物やサンショウウオに可能なのだから、人間に応用できないはずが とくしゅ しげきざい ない。わたしはその研究にとりくみ、特殊ホルモンと刺激剤を開発した。そ れを使うのです。あなたの手は、もと通りに再生しますよ。事故の多い時代、 かんしゃ しんぞうかんぞう 多くの人に感謝されています。もっとも、心臓や肝臓をやられた場合は、手 のつけようがありませんが : 「手だったら、手のつけようがあるというわけですか。本当にうまくゆくの でしようか」 こんごう 「切断の部分に、その混合薬品の注射をします。一カ月後に、またおいで下 後 まんぞく けつか さい。こ満足いただける結果になっていましよう」 かんじゃ 医者はその手当てをし、マッサージのやり方など、注意を与えて患者をか せつだん せつだん ちゅうしゃ さいせし あた さいせい
かぎ その物件は焼けた船体とともに、限りなく飛び去ってしまうんですからね。 は それとも、宇宙の果てまで追っかけて、手に入れますかね。そのあげく、た とえ手に入っても何百年か先のことでしようね。いまさら、だれがどうさわ いでも、むだでしようよ」 けいじ 答えようのない刑事にむかって、男は笑いつづけながら、あざけった。 けいじ そのとき、机の上の電話が鳴り、刑事はそれに出た。 はんにん 「なになに、そうか。犯人はちゃんとっかまえたままだ。釈放はしないから だいじようぶ 大丈夫だ」 けいじ 話しおえた刑事は、男にむかって、笑いながらこう言った。 かぎ 「おまえはうまくやったつもりだろうが、そうばかりとは限らない。 ) しようこつけん でん うちゅうせんれんらく 電で宇宙船と連絡がっき、証拠物件が手に入った」 「や、失敗したのか。しかし、あのライタ 1 が点火しないはずは、ないのだ ぶつけんや 、っちゅう つくえ わら わら と しやくほ、フ む しま無 142
ありませんか。どうです、右足のほうを切断してみますか。うまくゆけば、 のうりつ そこからも手がはえてくるかもしれない。ますます能率があがりますよ」 「なんだと。そうなったら、まるでチンパンジーだ。いやだよ」 じようだん 「いや、冗談ですよ」 さいしゅじゅっ 医者は再手術をおこなった。それがすんだ時、ひとりの男がかけこんでき 「先生、たのみます。ぜひ : ・・ : 」 「それが仕事なのですから、やりますよ。しかし、見たところ、あなたは手 ふつう 足も普通、鼻も耳もある。歯も抜けてない」 「いえ、わたしじゃないんです。うちの会社の会長をなおしていただきたい のです」 ざいかい と、財界の実力者の名をあげた。 せつだん
「はい、なんでしよう」 いた 「腹が痛いんだ」 「それはいけませんね。どのへんがお痛みなのですか」 よ かふくぶ たいへんちりよう 「右寄りの下腹部だ。どうやら、大変な治療を受けているらしいな。そんな も、っちょうえん 時に手をわずらわしては申しわけないが、気になるのだ。盲腸炎、正しくは ちゅうすいえん 虫垂炎かな、そんなことはないだろうと思うけど。手おくれになっては、い しんさっ やだからな。診察してもらえないだろうか」 ちゅうすいえん 「なぜ、虫垂炎だと」 てきちしき しよくちゅうどく 「医学的な知識がないから、はっきりはわからない。しかし、食中毒ではな事 出 ふつう の いようだ。普通の痛み方とはちがうんだよ」 ・刀 れ 「ご、い配はいりません」 むせきにん しんさっ 「無責任なこと一一 = ロうなよ。診察した上でならともかく」
「あっ、そうか、そういううまい方法もあったんだな」 かんたん 「われわれも、どうかしているな。こんな簡単なことに、どうしてだれも気 がっかずにいたんだろう」 ぐんしゅう ちしき 群衆は口々に叫び、この新しく得た知識に目を輝かせ、顔をほてらせた。 なかには、手をたたきながら飛びはねる者さえあった。 おどろ 「まだ驚くのは早すぎるんだ : と、乗員はポケットのなかにあった、地球で手に入れてきたビールのセン たま ヌキ、ダイス、ピストルの弾丸などを手のひらにそろえて、そのほかのさら ふうしゅう じゅうみん に珍しい風習のかずかずの話にうつりたがった。しかし、ピル星の住民たち ようい のどよめきは、容易にしずまりそうにはなかった。 かんたん かわ だいに意味がわかってくるにつれ、感嘆の声は前にもましたどよめきに変っ ほ、つほ、つ かがや 円 4
つぶやいた。 こども 「お花のなかには、小さな子供がいるのよ」 とりよく それでも、両親はあきらめずに、あらゆる努力をつづけた。ウエンディが かいぶつ よ、っせい くらやみ 暗闇のなかに、妖精や怪物を見つけだしているらしいのに気がつくと、家じ くらやみ やわ ゅうを柔らかい光でみたした。ウエンディが頭から毛布をかぶって暗闇を作 もうふ り出すのに気がつくと、室内の温度をあげて、毛布を取りあげた。しかし、 と ふかのう くらやみかんぜん 彼女から暗闇を完全に取りあげてしまうことは不可能だった。まぶたを閉じ ることによって作るそれには、手のつけようがないのだから。 だか、どうしても手のつけようがないとわかった時、両親はついにあきら島 ン ぎむ め、ウエンディを特殊な学校に入れることにした。それは社会に対する義務→ タ ふせ こどもえいきようおよ でもあった。そのままにして、ほかの子供に影響が及ぶのを防がなければな らないのだ。 かのじよ とくしゅ もうふ
電話のベルが、待ちかねていた博士の前で鳴った。 かれ おく ひく った 彼は、それに手をのばした。受話器の奥から、低い声が伝わってきた。 「もしもし、ご主人はおいでですか」 「ああ、わたしだが」 はかせ 「有名なエストレラ博士に、まちがいありませんか」 「いかにもエストレラだが、いったいどなたです」 ようけん 「それは申しあげられませんが、用件については、およそお察し下さったの 誘拐 ゅう 力し はかせ さ 144
「そ一つい一つことで」ざいます」 「まさか」 「あるように、お思いでしようが : じたい もう、男はすっかり混乱した。事態を整理しようにも、手のつけようがな かった。 いた なにが、どうなっているんだ。頭が痛くなってきた」 「どのへんでございますか」 「左のこめかみのあたりだ」 「それでしたら・・・・ : 」 「その部分も失われているのか」 し」 心の混乱は、さらに激しいものとなった。嵐の海の舟のようだった。しか こんらん うしな はげ こんらん あらレ ふね に 2
男は目をあけ、あたりがどうなっているのか知ろうとした。しかし、ばん しようてん きんし やりとした明るさがあるだけ。焦点がさだまらないのだろうか。強度の近視 のはずはないのに。身を起こそうとしたが、カが入らない。 か 「だれか、手を貸してくれ」 すると、女性らしい声がした。 いしきもど 「意識が戻られたようですね。静かにしていなければ、いけません。あなた びみよう は、大きな事故にあったのです。きわめて微妙な手当てを受けているのです。 これからの出来事 じよせい 115 これからの出来事
えいきゅう を見る。あなたは気を失い、永久にそのままだ」 っ 「つまり、だれかの名を告げないと、わたしが死ぬことに : 「その通り、ご名答」 「なんという : ざんこく 残酷なことだと、男はぞっとした。だれかを殺さなければならない。たし あくま はっそう かに人間ばなれした発想だ。どうやら、本物の悪魔にまちがいないようだ。 男はつぶやく す 「 : : : ひどい立場に追いこまれた。これというのも、あんな椅子のアイデア を出した青年のおかげだ」 「では、それをご指名になりますか」 あくま と悪魔。男は暗いなかで手を振った。 ころ 「いやいや、そんなつもりはない。殺したいほど、うらんでいるわけではな うしな ころ