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検索対象: ピーターパンの島
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1. ピーターパンの島

てき ほかの者たちは、心配して聞く。 いた 「どこが痛い。胸か : : : 」 「あんまり強く引っぱられたので : : : 」 いた かた ちょうしぜんてき 当人は肩のあたりをなでている。超自然的なものによる痛さでなく、現実 的なものだったのだ。部長は満足そうだった。 はんのうしめ 「上出来だ。さっきから、みな、さまざまな反応を示している。これだと、 こま げんだい もくさっ きっと大いに話題になるぞ。現代では、黙殺されるのがいちばん困るのだ。 すべて、きみのおかげだ。よくやってくれた」 きかくか かた そして、企画課の青年の肩をばんとたたき、部屋から出ていった。ほかの魔 のこ 者もつづく。あとに残った青年は、ディスプレイ業の男に言う。 いた 「あ、痛い : : : 」 むね まんぞく げんじっ

2. ピーターパンの島

男があいさっすると、主人が迎えた。 「よくきてくれた。あがって休んでくれ。これといったものはないがね」 しず 「ありすぎるぐらいじゃないか。緑、きれいな空気、小鳥の声、静かさ。一 杯の水だって、きっとおいしいにちがいない。都会から来ると、生きかえっ たような気分になるよ」 しんせんやさい 「まあ、酒でも飲んでくれ。新鮮な野菜や川魚ぐらいしかないが」 りようり・ 主人は自分で料理し、すすめてくれた。いい味だった。 酒を飲みながら、男は聞く。 「奥さんやお子さんは、どうしたんだい」 しゅうがく ほうじ 「家内は法事があって、実家へ出かけた。むすこは中学一年だが、修学旅行。屋 だから、きうはわたしひとりだ。酔「てさわ」でも」」ぞ。酒はたくさん〈 ある」 おく むか

3. ピーターパンの島

ねが どうしても、こうなってしまうのだ。この願いは手紙に書かれ、先生に渡 された。 こ一、も その手紙を読んだ先生は、子供たちが去ってから、電話をかけ、顔をゆが めながら、告げた。 「ああ、また例のように、お願いしなければなりませんな」 雪が降り、積もり、クリスマス・イプになった。雪の上にソリを走らせ、 こども やくそく 約束どおり、サンタクロースがお城に来た。ソリは子供たちが作っておいた、 ようせい 妖精やお化けの雪だるまのそばでとまった。 「ねえ、いっ連れてってくれるの」 かんせい と、みなは歓声をあげながら、口々に聞き、サンタクロースは、 むか 「あした迎えにきてくれるように、たのんであるよ」 と、やさしい声で答えた。その夜、城のなかは、ろうそくの灯と歌声で、 ねが しろ しろ あかり わた 181 ピーターパンの島

4. ピーターパンの島

ぞく 「すると、ばくの一族も、その時にやられたんでしようね。かたきを討つべ どうじようしん きなのかもしれないけど、その実感もないし、あなたを見てると、同情心が わいてくる。で、どうなさったのです」 うながされ、王女は話した。 なわば いったい 「のろいのカ、防ぎようのない悪い力をそなえたやつが、この一帯を縄張り しゅうかく にしてしまったの。収穫が三分の一になってしまい、だれも食うや食わずで、 お城にはほとんどとどけてくれない。あたしだって、いつまでもっか、わか らないの」 そう聞くと、ほってはおけない。 「よろしい、お助けしましよう。そいつは、どこにいるのです」 ろうじん 「湖にそってゆくと、林のなかに小屋がある。そこに住む老人なのよ。すご い魔力の主で、攻めていった者で成功したのはいない。手のつけようがない しろ まりよく ふせ せ せいこう

5. ピーターパンの島

「そう、おきめなのですね」 しん りくっ 「そうだ。理屈もなにもない。そう信じている。これだけは、じゃまをさせ ん。なにを言われてもね」 「けっこうです。そうでなくてはいけません」 しきうす それを聞きながら、男の意識は薄れていった。 つきそっていた女医は、主任担当医に言った。 「会話をお聞きになりましたね」 びでんりゅう 「ああ、微電流を音に再生してね」 いよく 「生きる意欲があります。わたしたちも、やりがいがありますね」 のうじゅうよう 「脳の重要部分が残っていた、おかげだよ。やつは運がいい ふく が進歩した時代だということも含めてね」 じよい のこ さいせい しゅにんたんとう ここまで医学 125 これからの出来事

6. ピーターパンの島

「岸まで、いっしょに行ってあげようか」 「いいよ。あとは、ばくたちだけでできるよ」 「じゃあ、これを持っていったら」 いりえ わか しず と、鉄砲やナイフが渡された。お別れの歌が終ると、静かな入江をポート が浜にむかった。一本のオ 1 ルに、 二、三人ずつつかまってこぐので、その 進み方はたどたどしかった。 こども さけ ポートが浜につくと、子供たちは叫び声をあげ、われ勝ちに森の中にかけ こんでいった。かん高いその声は、海の上を越えて、船員たちの耳にもとど じつけん 「実験の日はいつでしたつけ」 船員の一人は船長に聞いた。 てつばう わた こ 185 ピーターノヾンの島

7. ピーターパンの島

ふかきね くき 父は垣根にまつわって咲いているバラの花を何輪か切り、茎のトゲをもいで ぼ、つ から坊やに渡した。 「さあ、これを持っていくんだよ」 「一つ , ん」 そふ 杖をついた祖父と花を抱えた坊やの二人は、丘の道を下り、ふもとの小さ じぞう な森のそばにあるお地蔵さまにむかった。 そな ねが 「さあ、お花をちゃんと供えて、よくお願いするんだよ」 坊やは小さな手を合わせて、二、三回頭を下げた。 じぞう 「お地蔵さま。もう、こわい夢を見ないはうにして下さい」 と、うしろで祖父が言うのをまねして、同じように坊やは言い、 「もう今夜から、だいじようぶだね」 と、うれしそうにとびはねた。 わた さ カカ ゅめ なんりん おか 7 お地蔵さまのくれたクマ

8. ピーターパンの島

に いはじめたし、短距離ランナ 1 たるべく練習もした。身をまもり、逃げるた かんげい かち めだ。楽ではないが、 歓迎される場合もあることを考えると、やる価値はあ る。しだいに、 たくましくなっていった。 に 高原へ行きホテルで豪遊したが、つぎのホテルでは逃げそこない、がけの ふちから湖の水へ投げこまれた。水泳もやっておいてよかった。何回もひど みりよく ほうそくせい い目に会うが、やめられない。法則性のなさが魅力なのだ。 さいしょ 最初に行った大きなホテル。しばらくごぶさただったが、こんどはどうだ さっち に ものはためし ろう。相手の動きをすばやく察知し、だめなら逃げればいい。 だ。用心ぶかく出す。 「どうでしよう、このカードで」 係はそれを受け取って言った。 きげん 「カードですな。これはいけません。もう期限が切れています」 たんきより ごうゆう れんしゅう

9. ピーターパンの島

いつの日か父と同じく : なや せいかく いいかげんな生格ならともかく、まじめにみはじめたのだからことだ。 たいしよくきんせいめいほけんきん 父の退職金、生命保険金などが入ったので、当分は食うに困らない。青年は 会社へ出かけるのをやめ、家にとじこもって、ばんやりとテレビを眺めてい なが る。眺めているだけで、頭にはなにも残らない。 「むなしいなあ」 す そうつぶやくだけ。友人と会う気にもならない。ただ日が過ぎてゆく。こ じようたい ういう状態だと、一日がいやに長い。生きているのを、持てあましているよ うな気分。 ふうとうゆうそう そんな時、一通の封筒が郵送されてきた。差出人の名はない。あけてみる ざいしつ と、カ 1 ドが入っていた。クレジットカ 1 ドのような大きさだが、材質の正 体がっかめない。弾力があるが、かなり丈夫だ。ナイフの刃をへりに当てた だんりよく 0 のこ じよう さしだしにん こま なが

10. ピーターパンの島

まご じゅうじゅん むすめ 呼ばれて、娘が出てきた。孫なのかもしれない。感じがよく従順だった。 ろうじんよ むすめ 老人が酔いつぶれて眠った時、娘は青年をそとに連れ出し、そっとささやい わ」 「そんなに強いのかい、おじいさんは」 ふじみ 「そう、不死身なの。だから、勝てないのよ。むこうの丘の上に住む妖女が ついているうちはね。お願い。ここではおとなしくしてね。あなたのような かこに、死なれたくないの」 「そっちをやつつけるのが先決か。いろいろ教えてくれて、、ありがとう」 つぎの日、そこを出て、丘の上の家に行く。色つばい女が、にこやかに迎 えた。 「ここで手柄を立てようなんて、なさっちゃだめよ。命を捨てることになる てがら ねむ ねが おか おか よ、つじよ むか