電話 - みる会図書館


検索対象: ピーターパンの島
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1. ピーターパンの島

星新一 ショートショート セレクション ビーターバンの島 二〇〇三年七月初版 二〇〇三年七月第一刷 作者星新一 画家和田誠 発行下向実 発行所株式会社理論社 東京都新宿区若松町十五ー六 営業電話〇三 ( 三二〇三 ) 五七九一 〇三 ( 三二〇三 ) 二四一三 出版電話〇三 ( 三二〇三 ) 二五七七 振替〇〇一九〇ー一ー九五七三六 編集大石好文制作工房 NDC913 B6 19cm 212D ISBN4 ー 652 ー 02091 ー 0 02003 Kay 「 0k0 Hoshi 年 Mak0t0 Wada Printed in Japan. 落丁・乱丁本はお取替えいたします。 URL http://www.rironsha.CO.jP

2. ピーターパンの島

電話のベルが、待ちかねていた博士の前で鳴った。 かれ おく ひく った 彼は、それに手をのばした。受話器の奥から、低い声が伝わってきた。 「もしもし、ご主人はおいでですか」 「ああ、わたしだが」 はかせ 「有名なエストレラ博士に、まちがいありませんか」 「いかにもエストレラだが、いったいどなたです」 ようけん 「それは申しあげられませんが、用件については、およそお察し下さったの 誘拐 ゅう 力し はかせ さ 144

3. ピーターパンの島

し力」 「それぐらい知っているよ。ただ言ってみたまでのことさ」 「こんな時代がくるとはなあ。むかしの人は、夢にも思わなかったことだろ 「むかしのことを話しはじめたら、きりがないし、無意味なことだ。やめて おこう。では、元気でな」 「言われなくても、病気になりようがないじゃないか。医療の進歩で、たい ていの病気はなおってしまう。いやおうなしに、元気で長生きしてしまう 「ただ言ってみたまでのことさ。じゃあ : : : 」 すがた 男は電話を切り、画面の友人の姿が消える。ロボットが話しかけてきた。 「退屈なさっておいでのようですね。ピアノでもひきましようか。それとも たいくっ ゅめ いりよう

4. ピーターパンの島

「なんだったら、ここに、しばらくいてごらんなさい。きのう話した、離れ か へいおん を借りてあげる。平穏そのもの。新聞もテレビもありませんがね」 きゅうよ、つ 「そうしてみるかな。そんなところで休養してみたい。仕事もにしくないか きゅうか ら、会社に電話して、休暇をとることにする」 男はそうした。しかし、二日目あたりから、なにかいらいらしはじめ、三 日目には、ねをあげた。 「もうだめだ。がまんができない。都会へ帰るよ。これ以上ここにいると、 気が変になりそうだ」 いじよう 男は、おばけ以上の異常さにみちた都会へと帰っていった。 いじよう いじよう いそが はな

5. ピーターパンの島

同じことなら、あいつよりもっとほかに : ばんのう 「そうそう、その調子ですよ。わたしの力は万能。どんな指名でもかまいま わす せんよ。名前を忘れていてもけっこう。たとえば、子の時にいじめられた ちょうさ だいしよう ことはありませんか。あの時の、がき大将、そうおっしゃれば、すぐに調査 「そうだな : ふかい 「乗り物のなかで、不快な目に会ったことはございませんか。あるはずです ふゆかい がねえ。名前を告げない、不愉快な電話や手紙についての体験でもいいので きかい すよ。この機会に、しかえしをなさったら。あの時のあれとおっしゃれば、 わたしのカで : ・・ : 」 「そうだなあ・・・・ : 」 ほんすじ 「だんだん、本筋に入ってきましたね」 っ ど たいけん 49 悪魔の椅子

6. ピーターパンの島

少年は学者の家に電話してみたが、相手は留守だった。外国の研究所にま ねかれ、それに応じ、当分は帰国しないとのこと。 こ、つこく しゅうかんし 新聞にのっている、週刊誌の広告を見る。有名人に関する、いろいろな見 なら 出しが並んでいる。しかし、自分の名はなかった。もしかしたら、ある芸名 をつけて、それで有名になっているのかもしれない。だが、どんな芸名をつ けているのか、自分でもわからないのだ。 つぎの日曜日、少年はますます気になった。外出する。自分を指さして話 しあっている女の子たちに近づき、思いきって聞いた。 「あの、ばくはなんで有名なんですか」 「まあ、なんて面白いことをおっしやるの。そんなユ 1 モラスな面があるな んて、ちっとも知らなかったわ」 おう るす かん 75 有名

7. ピーターパンの島

したい、なんで、そんなことをしたのか。わたしにうらみでもあるなら、 ひきよう わたしに対しておこなったらどうなのだ。卑法な : はかせ 「いや、わたしには博士へのうらみなどありません。むしろ尊敬しているぐ らいです」 「では、どういうつもりなんだ。妻も悲しみのあまり、ねこんでしまった」 ひび この時、相手の声は気がかりらしい響きをおびた。 はかせけいさっとど 「まさか博士、警察に届けたのではないでしようね」 拐 とど 「いや、まだ届けてはない。万一の場合を考えて、もうしばらく電話のかか誘 こ 4AJ も きず るのを待っことにしていたところだ。だから、子供だけは傷つけないでく だけだったのに。さては、前からねらっていたのだな」 はかせ げんじつみと 「まあまあ、博士。じたばたしないで、科学者らしく現実を認めたらどうで つま そんけい

8. ピーターパンの島

「じつは、ばくの一週間の行動を調査してもらいたいのです」 じようだん 「ご冗談はいけません。そんなのは、はじめてです。ははあ、それで当方の しんよう 信用度を調べようというわけですな。困ります。そんなふざけたのは、お引 き受けできません」 しつもん ことわられてしまった。少年はむかしからの友人を訪れ、同じような質問 出したら、すべてぶちこわしになりかねない。あすになれば、薬のおかげで うまくゆくのだ。しかし、それにしても、自分は一週間、なにをやっている のだろう。 たんていじむしょ 少年はある探偵事務所に電話をかけ、自分の名を告げてから言った。 ひみつげんしゅ 「おたのみしたいことがあります。秘密厳守でやってくれますか」 「あ、あの有名なかたですね。なにも、わたくしどもにご依頼なさることな ちょうさ こま っ おとず 77 有名

9. ピーターパンの島

そうじ いる。となりの部屋では、ロポットが掃除をしていた。 げんそうてきしきさい 番組がかわり、画面の上で幻想的な色彩がゆれ動き、心をとろかすような 音楽が流れはじめる。男はしばらくそのムードを楽しんでいたが、スイッチ か お を切り替え、番号ボタンを押した。これはテレビ電話の画面にも使えるのだ。 すがた 呼び出し音がとぎれ、そこに友人の姿があらわれる。男は話しかけた。 かわ 「どうだい、なにか変ったことは : 「あるものか、ごらんの通りだ : す 友人もまたねそべっている。タバコを吸いながら、ロポットにマッサ 1 ジ をさせていた。 「一段とスマ 1 トになったようだな」 「ならざるをえないじゃないか。スマートさなら、きみのほうだって : : : 」 わら 友人は笑い、 つられて男も笑う。 いちだん わら

10. ピーターパンの島

ねが どうしても、こうなってしまうのだ。この願いは手紙に書かれ、先生に渡 された。 こ一、も その手紙を読んだ先生は、子供たちが去ってから、電話をかけ、顔をゆが めながら、告げた。 「ああ、また例のように、お願いしなければなりませんな」 雪が降り、積もり、クリスマス・イプになった。雪の上にソリを走らせ、 こども やくそく 約束どおり、サンタクロースがお城に来た。ソリは子供たちが作っておいた、 ようせい 妖精やお化けの雪だるまのそばでとまった。 「ねえ、いっ連れてってくれるの」 かんせい と、みなは歓声をあげながら、口々に聞き、サンタクロースは、 むか 「あした迎えにきてくれるように、たのんであるよ」 と、やさしい声で答えた。その夜、城のなかは、ろうそくの灯と歌声で、 ねが しろ しろ あかり わた 181 ピーターパンの島