上野少年リ 後上野少 / 上野少 後上、 ひき面の残心 ひき小手の残心 打突の反動を利用して、自然なかたちで竹刀を胸元に引き寄せる。手の内 の締めを活かせば両手親指は自然と相手方向へと向く。これがいざ相手 が反撃してきた際への備えとなる 打突後、し、ち早く竹刀を斜め 45 度の角度へと持っていく。これは面の振り かぶりの角度と同じである ひき技は ク残心で決める 私自身がひき技でもっとも重視していす。剣道の技には横から打っ技は存在せ るのは残心です。ひき面、ひき小手、ひす、すべて上から下へと切り下ろすもの き胴とありますが、これらすべての技にでなければいけません。刃筋と残、いとは はそれぞれの残心があり、打突してから密接な関係にあり、刃筋正しく打っこと いかにすばやくこの残心を作り、適正なができれば正しい残心が取れますし、も 姿勢になるとともに次の攻撃に備えるかし正しい刃筋を通すことを難しいと感じ が重要なポイントとなります。 ている場合でも、正しい残心を意識すれ 出る技、ひく技問わす、有効打突と認めば正しい刃筋への矯正が期待できます ていただけるのは刃筋の通った技のみで ひき胴の残心 横から竹刀を当てるのではなく、手首をしつかりと返して上から下へと切り下 ろす。ひき小手と同じく、刃筋正しく打っことができていれば両手親指は自 然と相手方向を向く 2016.04 剣道日木 60
踏み込みなし 自分の体重が左足の拇指球 ( 親指の付け根のふくらんだ部分 ) に乗るようにバランスを整えて、指導者の叩く太鼓の音にあわせて前、後と移動する。 しつかりと体を移動させるために足はつま先から出していく。右足が床に着いた時には左足が浮き、左が床に着いている時には右足が浮くように意識する 技は左足で打つ ! 体重を乗せた左足をひきつけることができれば打突に強さと冴えが生まれる。「早 く強く」打っことを意識し過ぎると右手、右足に力が入り、結果的に技は軽くな り冴えが失われてしまう 早素振りの足さばき 安房高校の稽古には、あえて防具をつえているものも多いですが、そのイメー 次に左足が床に着けば右足か上がり、そ剣 けずに行なうメニューが数多くあります。ジが強いからか右足の踏み込みと打突との作用で相手後方へと抜けていく を同時にしょ一つとする人か多いとくに その代表的な例が足さばきの稽古です そんな剣道の基本的な重心の乗せ方、 古くからの教えにもあるとおり剣道「早く打ちたい」と思えば思うほど、右手体重移動を学ぶために私が効果的だと感 は手で打つのではなく足で打っことが重右足の動きを早くしようとする傾向にあじているのが早素振りなのですが、「竹刀 要です。しかし、例えば体育の授業で初ると感じます。 を振る」という動作に意識を向けてしま いがちで、足さばきの部分は見逃されや 心者の生徒を指導してみても、みな素振写真はあくまで瞬間を切り取ったもの りはできたとしても足さばきや踏み込みであり、それかすべてではありません。実すいポイント。そこで足さばきにのみ注 などか上手にできません。足か上手に機際の打突の動きをよく考えてみれば左足目したのがこの練習です 指導者の叩く太鼓のリスムに合わせて 能しなければ、上半身の動きにも大きなの力を利用して竹刀を振っています。構 影響を及ばします。足さばきはとても重えている時には両足が床に着いている状前後ろと跳躍します。太鼓のリスムは 要で、とても難しいものなのです 態そこから踏み込んでいく時に左足にはじめはゆっくりと。まずは体重が乗っ 剣道雑誌などに掲載される試合写真の体重が乗り右足が上がる。その後、右た状態をしつかりと確認させてスタート 中には右足で床を踏み込んだ瞬間をとら足で床を踏み込んだ時には左足が上がる。し、その後は徐々に早くしていきます。
特集②つばせり合いを制す 相手の技の起こりにひき面 ( 崩しにきた相手に対して ) つばぜり合いから、相手が体をさばいてひき技を出そうとする瞬間を察して、起こりを素早くひき面にとらえる 遠間、近間、一足一刀の間から出す技たところ : : : など、距離をとった場合とる瞬間を見極め、相手より先にひき技をてつねに自分が技を出せる体勢を整えて A 」はい、 つばぜり合いからの技は、相同じように考えれば、稽古のポイントが打つ。相手が足をひいた瞬間や、こちらおくことなども大切になってきます。そ の体を崩しにかかった瞬間などがそれにの点は、遠間、近間、一足一刀の間など、 手と身体が接近している場面から技を出見えてきます。 ここでポイントとするのは、相手の起当てはまりますが、そのためには、つば距離をとった攻防と考え方は一緒です。 すという点に難しさがあります。しかし、 技を出す機会は、相手が居着いたところ、こりをとらえるひき技です。つばぜり合せり合いの攻防で集中を切らさず、相手 いの攻防で、相手がひき技を出そうとすの心を読むことに努めること、先をかけ 相手が崩れたところ、相手が技を起こし 相手の技の起こりにひき面 ( 足をひいた相手に対して ) つばぜり合いから、相手が足をひき、ひき技を出そうとする瞬間を察して、起こりを素早くひき面にとらえる 技その③ ポイントその 3 技その④ 相手の心を読むことに努め、 相手の技の起こり頭をとらえる 57 剣道日木 2016.04
技その⑤ 相手の力を利用することで、 ポイントその 4 みずから打突の機会をつくる つばせり合いでは、相手の体勢が崩れと拳を合わせた時、上から下に押し込む れば、当然、ひき技を打つべき好機になりように力を加えれば、相手はそれに反発 ます。しかし、拳と拳で競った正しいっして手元を上げます。手元が上がった瞬 ばぜり合いから、腕力で強引に相手を崩間は、こちらがひき胴を打っチャンスに そうとすれば、こちらの体勢が崩れ、逆なります。面を狙うなら左右に揺さぶり に相手にひき技を打たれる可能性もありをかけ、小手なら前方に力を加え、相手 ます。無理や無謀な動作に走れば、反則が反発して手を伸ばした瞬間を狙います。 をとられる可能性も出てきます。 ひき技を打っ瞬間は、とっさに相手も防 そこで指導しているのが、正しいつば御の姿勢をとりますから、その防御の体 せり合いから打突の機会をつくるために、勢にどんなクセがあるかをあらかじめ観 相手の力を利用するということです。拳察しておくことも大事なポイントです。 左右に振ってひき面 つばぜり合いから竹刀で相手の体を横に振って、相手か受けの体勢をとろうとしたところにひき面を打つ。写真の場合は、表を受ける動作に対して裏から狙ったひき面 起こりをとらえるには、相手の動きをしつかり観察し、心を読むことに努める。なおかっ、ひき技全般に通 じることだが、相手がこちらのひき技に対してどのような防御姿勢をとるかを、あらかじめ把握しておくこと も大事。写真右の場合は左面、左胴、写真左の場合は右面、右小手、右胴が狙えることになる 2016.04 剣道日木 52
特集②つばぜり合いを制す つばぜり合いから相手の面を打ち、相手が反応して防御の体勢をとったところにひき胴を打ち込む。最初の面も右足を踏み、 リストをつかって力強く打っことで相手の反応を確実に呼び起こす。胴でひくときは、例によって相手に正対しながら斜め後方にさがる 技その〇 技その⑩ 面からひき胴のニ段技 1 爾からひき面のニ段技 つばぜり合いから、わずかに空いた相手の右胴を打ち、相手が横に竹刀を開いてこちらの竹刀を封じ込めようとするところを、手元を素早く返してひき面にとらえる。最初の胴も、 一本に決めるつもりで鋭く打っことで、相手の反応を確実に呼び起こすことができる。この技は、平成年に大分が国体少年の部で優勝した際、再三決まり技になったという 撮影協力 塩野海風 ( 別府大学 2 年・左 ) 水野秀章 ( 別府大学 1 年 ) 55 剣道日本 2016.04
かつぎ技やニ段技など、 試合で有効な虚を突くひき技を磨く 竹刀を振り上げてひき胴 竹刀を振り上げてひき逆用 技その⑨ 技その⑩ ポイントその 5 竹刀をかついでひき面 技その⑧ つばせり合いから間合をとって竹刀をかつぎ、相手が防御の体勢をとったところにひき面を打つ。 この技は、とくに小学生の大会で有効打突になるケースか多いという つばぜり合いから、機を見て自分の竹刀が天を突くように振り上げ、相手が防御姿勢をとったところにひき胴を打っ 同じようにつばせり合いから手元を大きく上げ、相手が防御姿勢をとったところに胴。瞬間的に相手の状態を見極め、 左胴が大きく空いているようなら逆胴 ( 左胴 ) を打ってさがる しかけ技のなかには、相手の虚を突い て打つかつぎ技もあります。つばせり合 いからかついで打つひき面は、とくに小日 学生の試合では有効打突になる確率の高剣 い技です。つばせり合いから足をひいて 竹刀をかつぎ、相手の防御をかいくぐっ て打突しますが、注意したいのは打突後 の体勢です。かついで打つひき面は、肩関 節をつかって竹刀を上から下に振り下ろ しますから、打突のあとにも、つ一度肩関 節を上に上げる動作には理がありません。 すなわち、この場合は打突姿勢をほば保 つように、腕を前に伸ばしたままさかる 方が理にかなっていると思います。技に よっては決め方も違ってくるということ です。 つばせり合いから竹刀を真上に振り上 げて虚を突く方法もあります。相手が面 を防 ) 」うと手元を上げた瞬間、ひき胴を 打ちます。 また、しかけ技で小手面や小手胴など の二段技があるように、つばせり合いか らの一一段技も試合では有効です。ますは 胴を打ち、相手の手元が上がった瞬間、ひ き面でさがるという技は、実際、平成 年の大分国体 ( 少年男子の部 ) で教え子 たちが優勝した時、再三有効打突にした 技でした。同じように、つばせり合いか ら面を打ち、相手の手元があがったとこ ろに打つひき胴も有効な一一段技として指 導しています。
ポイントその 2 変えなければならず、追い始める時間を しかけ技や応じ技など前に出る技でも旧 ひき技を出したあと、何よりも大事な古などで練ることが欠かせません。 もうひとつのポイントは、体さばきでワンテンポ遅らせることができます。そ打突後の体勢づくり ( 残心 ) は大事です ことは、相手のクあと打ちクを許さない の時、注意すべきことは、斜めにさがるが、それはひき技に関しても同じこと。打 ということです。そのために必要なのが、す。ひき面の場合はまっすぐさがらない ひき技を打ったあとのク打突をまとめるといけない場面もありますが、基本的にといっても、体の向きは必す相手に正対突をまとめる力が備われば、機会を見い カです。ポイントのひとつは足さばきは打突後は極力斜め後方にさがるようにさせておくということ。正対していれば、出したなら積極的にひき技をつかうこと で、相手が前に出る速度より、速く下が指導しています。斜めにさがれば、相手がたとえ追い込まれても、出小手を打つなができるはずです。 れるぐらいのク足づくりクを追い込み稽あと打ちを狙うにしても一度体の向きをど対応も可能になります。 ひき胴を打った直後、相手がすぐさま追い込んで面を放つ。岩本氏が高校指導に携わった当初は、こうしたみあと打ち。をとられるケースも多かったという。 その後、後ろにさがる足さはきを強化し、ひき足の速度を高めることも目指した ( ~ 当第お 相手のクあと打ちを許さない、 足さばき、体さばきを覚える
自分と相手とのつばが接している状態で上から押さえる。腕は柔らかく柔軟に保ち、竹刀はしつかりと立てておくこと。 竹刀をつねに相手の面部の範囲の中に収めておくことで終始打突のプレッシャーを相手に与えることができる つばとつばを押し当てた状態で、相手通った技を打っためには、自分と相手と を上から圧するようなイメージでプレツの間に打突できるだけの空間を確保しな シャーをかけています。腕は柔らかく備ければいけません。実の気位を保ったま えておき、つねにひき技を打てるようにまいかに打ち間を確保するのかが重要と 竹刀は立てた状態を保っておきます。 なるため、重心はやや前にかかっている つばせり合いは一見すると上半身の技ような感覚で備え、左足は動きやすいよ 術かとくに重要そうに見えますか、重要うに立ててべタ足にならないように気を なのは足の働きです。刃筋のしつかりつけています。 つばせり 合いの心得 上野少年果剣道”、 後援上野少年攜專婦ス 前に攻めて出る時には右足が攻め足となるが ( 写真右 ) 、つばぜり合いでは左足がその役割 を担う。左足でしつかりと攻める ( ひく ) ことで、そ の後の打突へとつながる ( 写真左 ) 2016.04 剣道日本 58
誘う 移 胴 气釼 60 つばせり合いからの技 2 上少年梁 上野タ物 野少年 つばぜり合いからわずかに右方向へと 胴の中央部分を狙うのではなく必ず右胴部分を狙うこ と。ひき胴の場合、結果的に竹刀が中央部分をとらえ 移動すると、相手の目にはこちらの面部 が空いたように映る。これにより、ひき面 てしまうことが多いが、それはあくまで結果的なこと。はじ めから中央部分を狙ってしまうと、相手と自分とのスピー が狙えるという心理を誘う。体を移動さ ドや動きの誤差などにより、胴が空振りしてしまい逆に せるのは、相手がフッと気を抜いた瞬間 面を打ち込まれる危険性が生じる を狙うとより効果的な誘いとなる 2 0 16.0 4 剣道日本 62 体移動を利用して相手のひき面を誘う。ひき面を狙おうとすれば 自然と手元が上がるので、ひき面よりもわずかに早く空いた胴部 に技を打ち込む
特集②つばせり合いを制す 拳で直接押さえつけるよ うにすると腕にムダなカ みが生じる 力が入りすぎて右腕を 突っ張ってしまえば瞬時 に技を繰り出すことがで きない 竹刀が倒れた状態から は打突のチャンスはな い。つねに技を狙えるよ うに相手の肩幅の範 囲内に自分の竹刀を収 めておくことが重要 相手の両肩を押さえつけるようなイメージでプレッシャーをか け、その圧力を相手つば元に集約させている 後方への左足の攻め ( ひき ) が広すぎれば自然と体勢も低くなり、 その後の体さばきが困難になってしまう 上後 59 剣道日本 2016.04