一週間 - みる会図書館


検索対象: 夜の山道で
135件見つかりました。

1. 夜の山道で

っと前からの、 しいお客と保証してくれるでしよう」 「面白そうだな。で、費用は : 男が聞くと、青年はある金額を言った。その気になれば、払えないほどで ↓よよ ) 0 力し 「前金として半分。あとは、やってみてからでかまいません。効果がなかっ たら、前金もおかえしします」 しやこうてき 「どうしようかな。わたしのように社交的でないと、だまされた体験もない 人のよすぎる世間しらずなのだ」 「お考えになって、ご返事下さい。一週間後に、ここでお会いしましよう。 ひやく ひと飛躍のお役に立っと思います。お金のご用意を。また、その時にくわし い打ち合せを : : : 」 さぎ きたく そう言われ、男は帰宅した。さつばり見当がっかない。詐欺かもしれない。 ひょう きんカく ほしよう こうか たいけん 1 10

2. 夜の山道で

動員します。それでだめだったら、どんな批判も甘んじて受けましよう」 「では、そのお言葉をたよりに」 ちりよう 治療が開始された。 一週間、十日、二週間とたっても、青年はやってこなかった。医者はつぶ 「ということは、あの青年も人なみな夢を見られるようになったということ たも だ。わたしの名声も保たれた : 満足げにひと息ついて、首をかしげる。 「 : : : しかし、なぜかな、このところ、ぜんぜん夢を見なくなったような気 がす - るが」 まんぞく ゅめ ひ ん あ ま ゅめ 150

3. 夜の山道で

ひとりの青年が医院へやってきて、医者に言った。 きおく 「一週間前の夜の十時ごろのことなんですけど、一時間ほどの記憶がばっか 第、、つは′、 りと抜けて、まったくの空白なんです。気になってなりません。で、ここの 先生は、そういった分野にくわしいとうかがって : : : 」 「一時間ぐらいなら、むこともないでしよう。うとうと眠ったのかもしれ ない。酒に酔ってそうなることもありますよ」 きおくりよく 「いえ、外出中のことですし、酔ってもいませんでした。ばくは記憶力のい ねむ 180

4. 夜の山道で

しかし、詐欺なら、もう少し手がこんでいてもよさそうだ。出まかせとは思 えない。ひょっとしたら、なにかうまいことになるかもしれない 一週間後、男は前金分を持って、そのバ 1 に行った。青年は先に来ていて、 男を迎えた。 いかがです」 「きめたよ。だから来たんだ。さあ、これが前金。それで、どんなことをや ってくれるのです」 金を受け取り、青年は話しはじめた。 はん 「ありふれた手法なんで、ご期待に反した気分になられるかもしれません。 しかし、それゆえに、うまくゆくのではないかと思うのです。あなたの場合な はね」 「つまり、ど一つい一つことなんだ」 むか しゅほう

5. 夜の山道で

いほうなんです。それに、なにか重大な約束をしたような気がして、落ち着 かないのです」 「会社づとめなんですか」 「大学に入ったばかりです」 けいやく 「契約のようなことへの心当りは」 へん 「ありません。だから変なのです」 「かなりおみのようですね。では、 ) しちおう、やってみますか」 さいみんぎやっこう す 医者はうなずき、青年を長椅子に横たえさせた。そして、催眠逆行をここ ろみた。 、刀」 「 : : : あなたは、いま、一週間前の夜の十時にいます。なにをしています じたく 「夜ふけの道を歩いて、自宅へ帰る途中です。人かげはありません」 なや とちゅう やくそく 1 体験

6. 夜の山道で

「出ましたよ、夢のなかに。しかし、いっこうに面白くもない、地味な服の 中年男」 かいぜん 「少しは改善されたわけでしよう」 「どうですかね。そいつは、ただ、ばやっと突っ立ってるだけ。ばくの目が へんか さめるまでですよ。少しは、その、なにか、変化があっていいんじゃないで しようか。この一週間、ずっとそのままなんですよ」 あんじりようほう 「では、暗示療法を : ・・ : 」 「一つまくしし。しいんですけど」 「うまくいったでしよう」 またもやってきた青年に、医者が言った。 「どう答えたものでしようね。やつは、しゃべりはじめました」 ゅめ 144

7. 夜の山道で

ヾ、 ーテンがあいさっした。 ノ いそが 「いらっしゃい。お忙しいのでしよう」 「でもないよ。だけど、ここへ来るのは一週間ぶりかな」 「まあ順調ってとこですか」 むへんか へいぼん 「というより、無変化、平凡だね。つらくもないか、とくに楽しくもないと れんぞく いった日々の連続さ」 青年はつぶやくように言し ゝ、前におかれたグラスをあけた。その時、カウ ンターのとなりの席の男が声をかけてきた。 たいくつにちじよう 「退屈な日常というわけですな」 そっちを見ると、前にも会ったことがあるような、にこやかな中年の男。 ひょうじよう あいそのいい表情と口調だ。青年はうなずく。 「といったとこですね」 じゅんちょう せき 29 職業

8. 夜の山道で

「あのことだけどね、どうお思いに : 「なんのことですの」 ゅうれい 「あれよ、幽霊よ。まだ、すれちがったこと、ないんですか」 こう聞くと、相手は目を丸くした。 しん 「そんなもの、いるわけないじゃないの。見せてよ。そしたら、信じてあげ しゅじん そうだん るわ。だけど、大丈夫なの。ご主人とよくご相談になったらいいわよ」 「そうね」 それから一週間ぐらいして、その主婦があやまりに来た。 「このあいだ、ひどいことを言って、ごめんなさい。うちじゃあ、主人が先 いっしようふ に見たの。あたし、一笑に付したわ。だけど、そのつぎの日、あたしがすれ ちがったの。そこで、先日のおわびを言いに : とうぜん 「いいのよ。だれだって、体験するまでは、それが当然でしようね」 だいじようぶ たいけん しゅふ しゅじん

9. 夜の山道で

かった。では : 青年はそこを出て、帰宅した。 さかい その日を境に、青年は時たま考え込むようになった。思い出すたびに、ふ しゆっげん あくまかべ しぎでならなくなる。死んだ友人の出現、ネコ、悪魔、壁 : ・ 二週間ほどたち、がまんできなくなり、あのマンションを訪れてみた。し かし、もう男はいなかった。部屋そのものもなくなっていた。外国へ出発す るので、あのやり方で消してしまったのだろうか。 1 テンが迎えて言う。 ーへ寄る。 その足で、 「いらっしゃい」 「ねえ、 いっかの人だけど」 「どなたのことです」 「こないだとなりの席にいて、ばくを自宅に連れてって、奇術を見せてくれ きたく こ むか じたくっ き おとず 4

10. 夜の山道で

わか ちょうどお寺の前で、男は別れて門の中へと入っていった。少年の手には、 つぶ 小指の爪ぐらいの大きさの一粒のたねが残っていた。 家の庭のすみに、まいてみる。やがて芽を出し、葉がついた。八つ手のよ うな大きな葉っぱ。何枚かにふえるのを待ち、少年はその一枚をもいで、き ざみ、かげ干しにした。 その少しを、お湯に入れてみる。しかし、はたして大丈夫なのかどうか、た めらいを感じた。近所の犬に飲ませ、プタやニワトリを飼っている人のとこ がい ろへ行って、ひそかに飲ませた。何日かようすを見る。べつに害はないようだ。 少年は思い切って、自分で飲んでみた。すぐにではなかったが、少しずつ 幸福な気分になって一週間ほどっづいた。悪いものじゃない。 ) しつのまにか、 の しゅうかん ね それが習慣になった。 学校で友人に言われた。 のこ だいじようぶ