っと前からの、 しいお客と保証してくれるでしよう」 「面白そうだな。で、費用は : 男が聞くと、青年はある金額を言った。その気になれば、払えないほどで ↓よよ ) 0 力し 「前金として半分。あとは、やってみてからでかまいません。効果がなかっ たら、前金もおかえしします」 しやこうてき 「どうしようかな。わたしのように社交的でないと、だまされた体験もない 人のよすぎる世間しらずなのだ」 「お考えになって、ご返事下さい。一週間後に、ここでお会いしましよう。 ひやく ひと飛躍のお役に立っと思います。お金のご用意を。また、その時にくわし い打ち合せを : : : 」 さぎ きたく そう言われ、男は帰宅した。さつばり見当がっかない。詐欺かもしれない。 ひょう きんカく ほしよう こうか たいけん 1 10
いでしよう。まだもなにも、ありませんよ」 「しかし、住んでいるだれもが会っているんですよ。夜の八時ごろに、階段 をあがって帰ってみたらいいと思いますよ」 「みなさん、そうおっしやる。そのご親切は、うれしいんですけどね。見え きたく ないものは、見えないんです。そんな時間に帰宅したこともあるんですが」 「おかしいなあ。ばくでさえ見てるのに」 「そんな気がしているだけなんじゃありませんか。見たと言ってもいいんで じこ すが、たかがそんなことで、自己をいつわるのもどうかと思うんです。見て きようせい ないんだから、しようがない。 ) しくら強制されても」 きようせい 「強制するわけじゃありませんよ。まあ、もう少し、ようすを見ましよう」 せっとく たしかに、説得でどうかなる問題ではないのだ。 ゅうれい その男がいつまでも幽霊を見ないままであることは、もう、マンション内 しんせつ かいだん 81 異端
あれくらいやらないと、本物らしくない」 れんちゅう 「そうじゃないんです。こちらで用意した連中をさしむかわせたら、あなた たいへん は、すでにやりあっていた。大変な手ちがいと、はらはらしながら見ていた のです。へたに助けたりしたら、計画も台なし。どうなることかと思ってい るうちに、あなたは、そいつらをやつつけてしまった」 「すると、あれは別口か」 よそ、つ 「そうなのです。あんなのが出現するなんて、予想もしなかった。こちらの せきにん 責任ではありませんが、働いたわけではなく、あとの半金はいただくわけに はいきません」 法 手 「となると、あれは、わたしの実力か : : : 」 れ 男はつぶやき考え込む。自分にそんな強さがあったとはと。青年はうなずあ 0 べつくち はたら しゆっげん
けいさっ ものでしよう。だけど、警察の立場はどうなるんです」 「あの人が寝ばけて、あるいはだれかがいたずらで、あなたの車のなかに投 きろくしよるい げ入れた。そんな記録書類が作られることになる」 そう聞いて、運転手は言った。 かんしゃ 「そうして下さい。感謝なんかいりません。あの人、わたしにとっては、お いりませ 他けですよ。会って口をきく気にも、なりません。謝礼のほうも、 きふ ん。どこかへ寄付して下さい。思い出すのも、気持ちが悪い」 「そうか。それでいいのか」 「それと、新聞にものらないようにして下さい。売名と思われちゃ、たまり きようみほんい ません。興味本位で書きたてられるのもいやだし、じつは礼金をもらったん じゃないかとかんぐられたりする。わたしは地道に働いていたいのです。わ かっていただけますね」 しゃれい はたら 102
じよう その小さいほうをもぎ取り、大きいほうはふたたび土に植えた。水で洗う ひじゅう と、黄金色の輝きがあらわれた。比重を調べてみると、どうやら純金。強い 酸にもとけないのだ。 「すごいものだ。金の卵をうむガチョウの話は読んだことがあるが、こんな 植物があるとはね」 なぜそうなるのかは、どうでもよかった。ゆっくり研究すればいい。 げんじっ きんせんてき かく、現実にそうなっているのだ。気分ばかりでなく、金銭的にもあくせく しないですむよう、サ 1 ビスがゆきとどいている。 「上の学校へ行くのはやめた。薬草の栽培を仕事としたい。案外、こういう しようらいせい 分野のほうが、将来性があると思う」 ゅうしゅうこん 少年がこう言うと、両親も、先生も、級友たちもふしぎがった。優秀で根 生もあり、ひとかどの人物になるにちがいないと見られていたのだ。 さん かがや たまご あんがい じゅんきん あら 156
式をひかえて、王は例の服の入った箱をあけて言う。 「どうだろう。式にこれを着るというのは」 わら 王女はにつこりと笑って答えた。 「悪くないけど、似合わないみたい。い まじゃ、はやらないんじゃないかし けっこん でんとう ら。やはり結婚式は、伝統にのっとってやるほうがいし ゝと思うわ」 にあ 140
いつ。へん と言いながら、男は考えた。こいつは、なぜこうも一変したのだろう。あ ふうんようそ りとあらゆる不運の要素をしよいこんでいたところへ、さらにマイナスのマ かわ スコットを手にした。そのとたん、すべてがプラスへと変った。トランプに どうよ、つげ . んしよう そんなルールの遊び方があるが、それと同様の現象がおこったのだろうか。 相手は一一 = ロう。 ぎやくもど 「もう逆戻りはしないだろう。なんだったら、あのマスコットをおかえしし ようか。ひとりでもうけているのも、どうかと思ってね : : : 」 かせつ こうなると、考え込まざるをえない。さっきの仮説のように、マイナスの マスコットかもしれない。しかし、プラスのマスコットかもしれないのだ。 すべての不運を押えつけるほどの強力な。 買ったあと、ちょっとしたいやなことがつづいた。しかし、それもこいっ しいことへつながるものだったのかも が川のそばでころがったのと同じく、 ふうんおさ こ 198
いじようふヤ」、つ れ以上、不幸な目に会わせたくない気になるはずだ : %J 、つりよう 羊に電気バリカンを当てようとしていた青年が、ふとその手を止め、同僚 に一一 = ロった。 どく 「どうも、気の毒なような気がしてならないなあ、こいつの毛を刈るのが」 「見学者たちが、いつもそう一言うな。毛を刈られた羊を見て、まあ寒そうと」 せいじようかんかく 「それが、正常な感覚なんだろう。寒そうじゃなくて、事実、羊にとって寒 どうよう いのじゃないかな。われわれが、毛糸のセータ 1 を着て暖かいと思うのと同様 「うん。そんな気がしてきた : ぎよせん 海の漁船の上で、乗り組んでいる者たちが、網にかかった魚たちを海にか あみ あたた 129 現象
う、がんばってね : ・・ : 」 「それが重荷になってきた」 「ああ。くりかえして言われると、責められているようだ。わたしには、い せいいつばい まが精一杯。これ以上、どうしようもないのだ」 「そうでしたか」 かいぜん 「な、きみのご好意も、改善の役に立たないのだ」 ふくぎよう せいかく 「立ちますよ。それを仕事としているのです。正確には、副業ですけどね。 アワン開発サービスというグル 1 プでやっているのです」 みよう 「妙な名だな」 そうだんじよ ひやっかじてんこうもく 「百科事典の項目、アからワンまで。つまり、よろず相談所です。だれもが の、つりよく 持っている、かくされたままの能力を引き出すのです。だまされたと思って、 依頼してみませんか。ばくのことは、このバーの人に聞いてみて下さい。ず いじよう
「それについては、あとで話す。ごらんのように、わたしはばっとしない外 りよう 見で、気も弱い。むかしからそうだ。そこで、料理学校へかよって、コック しやこうてき せいかく となった。これだと、社交的でない性格でもっとまると思ってね」 うでまえ 「それに関しては、いい腕前なのでしよう」 わら 青年が言うと、男は少し笑った。 「まあね。しかし、ロべただと、いい店に入れない。家から歩いて二十分ほ どの、大衆食堂へかよって仕事をしている。単調そのものだ。だから、たま に息抜きとして、少しはなれたこのバーに来て、ひとりで飲む。店の酒をご まかして飲んでも面白くないし、せまい家で飲むのもね : : : 」 「奥さんとうまくいっていない : 「そこだよ。あいつは、わたしのためと思って言ってるのだろう。もっとか りつば せいでね、この子に立派な人になってもらいましよう、広い家に移りましょ たいしゅうしよくどう かん たんちょう うつ 107 ありふれた手法