聞い - みる会図書館


検索対象: 夜の山道で
148件見つかりました。

1. 夜の山道で

う、がんばってね : ・・ : 」 「それが重荷になってきた」 「ああ。くりかえして言われると、責められているようだ。わたしには、い せいいつばい まが精一杯。これ以上、どうしようもないのだ」 「そうでしたか」 かいぜん 「な、きみのご好意も、改善の役に立たないのだ」 ふくぎよう せいかく 「立ちますよ。それを仕事としているのです。正確には、副業ですけどね。 アワン開発サービスというグル 1 プでやっているのです」 みよう 「妙な名だな」 そうだんじよ ひやっかじてんこうもく 「百科事典の項目、アからワンまで。つまり、よろず相談所です。だれもが の、つりよく 持っている、かくされたままの能力を引き出すのです。だまされたと思って、 依頼してみませんか。ばくのことは、このバーの人に聞いてみて下さい。ず いじよう

2. 夜の山道で

わか ちょうどお寺の前で、男は別れて門の中へと入っていった。少年の手には、 つぶ 小指の爪ぐらいの大きさの一粒のたねが残っていた。 家の庭のすみに、まいてみる。やがて芽を出し、葉がついた。八つ手のよ うな大きな葉っぱ。何枚かにふえるのを待ち、少年はその一枚をもいで、き ざみ、かげ干しにした。 その少しを、お湯に入れてみる。しかし、はたして大丈夫なのかどうか、た めらいを感じた。近所の犬に飲ませ、プタやニワトリを飼っている人のとこ がい ろへ行って、ひそかに飲ませた。何日かようすを見る。べつに害はないようだ。 少年は思い切って、自分で飲んでみた。すぐにではなかったが、少しずつ 幸福な気分になって一週間ほどっづいた。悪いものじゃない。 ) しつのまにか、 の しゅうかん ね それが習慣になった。 学校で友人に言われた。 のこ だいじようぶ

3. 夜の山道で

「それで、わたしの車に : : : 」 じむしょ つか 「そうじゃないんだ。一日の疲れがどっと出て、店の事務所でうとうとした。 きたく タクシーへ乗って帰宅する夢を、見たそうだ。車が走り出し、ポケットの金 かくにん を確認しようと手を入れた時、目をさました。すると、前の机の上にあった 金が消えていた」 「そうでしたか」 しん わす 「当人は新聞で、忘れ物の記事を読んだらしい。信じてもらえるとは思えな いが、大金だし、万一ということもある。ものはためしと、申し出たという わけだ」 はんだん けいさっ 「警察は、どう判断しているんですか」 かれじたく 「そこなんだよ。彼の自宅が、あなたが聞いたという方向と、一致している。 ふ、つと、つ きんがく 新聞では金額をばかした記事だったが、それもびたり。さらに、封筒に書き ゅめ つくえ 100

4. 夜の山道で

もんく す 「売れば金になる。おまえの好きに使われても、わたしとしては文句もいえ オし」 「なにかお考えでも : 「あのへんの土地を買ってくれ。十歩四方ぐらしてしし しゅうい まつなえぎ しし力」 ろう。周囲に松の苗木を植えるのもゝゝよ のこ 「残った金は : 「この町の石材店にあずけておいてくれ」 し」 まっ 土地を買い、松を植えるのには、そう手間はかからなかった。しかし、こ もど れにどういう意味があるのだろう。都会へ戻って考えつづけたがわからず、 青年はふたたび出かけていって、石材店で聞いた。 「あの、いっかおあずけしたお金のことですけど」 そう高くはないだ 167 指示

5. 夜の山道で

しや、これは 「海のむこうから、攻めてくるって。まさか、とんでもない。 ) しつれい 失礼。王様なればこそのお考えでございます。やらせましよう。それぐらい よゅう なんせき の余裕はあるのです。で、何隻ぐらい」 まど 王は窓から港の漁船を指さして言う。 「あの五倍ぐらいのを、できるだけ多くだ。十隻ぐらいに落ち着くかな。 けんぞう をどれぐらいにするかが問題だな。航海も大切だが、船の建造そのものにも ぎじゅっ おうよう 意義がある。その技術は、土木や建築にも応用できるからな」 「まことに、 ごもっともです」 クーハルはおりていった。 いつもならレラン王は、部屋の中央にねそべり、とりとめもない空想にふ まど けるのだが、神の声を聞いたきようは、そうもしていられなかった。窓からラ 街を見おろす。 まち ぎよせん けんちく こうかい せき

6. 夜の山道で

麻薬とは。 ふみんしようなや 家に帰りつくと、時差ばけがきっかけとなってか、不眠症にまされるよ うになった。医者にかかったが、なかなかなおらない。 しゅうきようしん。ひ 男はもしかしたらと思い 、学生時代の友人で宗教や神秘の分野にくわしい やつをたずね、相談した。 「どうも、ろくなことがつづかない。 のせいだろうか」 「うむ、マイナスのマスコットか。話は聞いたことがある。対立国を弱める ため、そこの王へのおくり物にまぜるといった使い方をしたらしい。しかし、 だんげん これがそうかとなると、断言は : かくだいきよう 本を調べたが、似たような品の写真はのっていない。拡大鏡でのぞいたが 見たこともない文字。図形もなにを意味するのかわからない。 どうやら時の まやく じさ みよう こういう妙なものを買ってからだ。そ 1 引マイナス

7. 夜の山道で

しばらくして、公園での三人がバ 1 へやってきた。 「どうでした」 ひとりに聞かれ、青年はにつこり。 「うまくいったよ。あれが芝居と気がっかない。人がいいんだね。すっかり 実力と思い込んで、喜んで帰っていった。これから、毎日が張りのあるもの になるだろう」 よろこ ) 士事で 「いいことをしましたね。われわれ、人を喜ばせ、金をもらう。いしイ けいえいしゃへんしん 一一年後、男はコックから経営者に変身していた。住居も、しゃれたマンシ ョンに移った。 近所でもめごとがあると聞くと、出かけてゆく。たいてい、おさまる。な うつ こ よろこ じゅうきょ

8. 夜の山道で

女性インタビュアーが言った。 こくさいてき 「きようは、まだお若いのに国際的な画商としてご活躍の : : : 」 画面の下のほうに文字が流れ、名前、年齢、手がけている事業のあらまし せつめい じよせい の説明があった。女性の声がつづく。 たく こ、つヾかい 「郊外の、しゃれたお宅にお住まいです。あ、あれがそうです : : : 」 はで たてもの モダンでありながら、人目をひくような派手さがない、好ましい建物。ガ ふつう レージには車が二台。一台は普通ので、一台はスポ 1 ッカー 男はそれに目をこらした。 と、つじよう ごうか うつ 画面は豪華な室内へと移り、そのなかに、その人物が登場した。女性イン タビュアーが話しかける。 ひょうぼん かいさいちゅう びじゅってん 「いま開催中のヨーロッパ美術展。なかなかの評判ですね。よくあれだけ集 おどろ められたと、多くの人が驚いてますね」 じよせい わか ねんれい かつやく この 0 じよせい 0

9. 夜の山道で

こうきようようっぴんはかいざい れを目撃され、公共用物品破壊罪でさばかれることになったのだ。そういう ほうりっそんざい せいりつ べんかい 法律が存在し、花のひとっくらいという弁解は成立しない。 どうじよう みだ ぜんか 「同情はするが、放任しておいたら社会が乱れる。よって、前科のないこと ひこくにちじよう かんし じゅうぶんはんせい ぜんりよう と被告の日常を考慮し、とくに監視六カ月の刑とする。充分に反省し、善良 な市民としての心がまえが身につくだろう」 はんじ と言って、判事は木の槌で前の台をたたいた。青年は聞く。 「どういうことなのです」 めんきょていし ふきよか 「その期間、運転免許は停止、外国旅行も不許可。しかし、国内での行動は かんしいん 自由である。ただし、監視員によって外出がチェックされる。あの男がそれ をやる」 はんじ 員 判事が指さしたので、青年がふりかえると、法廷のすみにひとりの中年の視 監 ふくそう 男が立っていた。顔つきも服装も地味だった。 もくげき こ、つり・よ ほうにん っち ほ、ってい

10. 夜の山道で

都会に近い、医学研究所。 しゆっきん 出勤してきた三十歳ぐらいの所員は、机の上に両ひじをつき、手であごを ささえたままの姿勢をつづけていた。 うわやく 上役の部長が、声をかけた。 「おい、どうかしたのか。きようは、サルの頭部に電極を埋め込んでの実験 だろう。早くはじめないか」 「それが、その気にならないのです」 「わけがありそうだな」 「あいさつぐらいは、しときましよう」 もど ようき むすめ 娘たちはみな、からの容器を持ち、そろってもと来たほうへと戻っていっ しせい さい つくえ でんきよく こ じつけん に 3 現象