宝石の島 私の不満のこもった目に気づいたのか、隼人はそう言 いたような気がする。テントの入り口に腰を下ろして待 っておくことにした。テント内部に目を向けると、先ほ い訳をする。 どのリュックとそのそばに懐中電灯が転がっており、奥 「まあ二人中にいたら飛ばされることは無いだろ。安心 しろって。」 には大きめの毛布が一枚だけたたまずに放り投げられ そう言われ改めて今日は二人で寝るのだと感じた。おていた。口が開いたままのリュックからはカップヌード 互いの家に泊まりに言ったことは何度もあるが、隣の部ルのほかにもトランプやゲーム機が顔をのぞかせいる。 屋には親がいた。緊張している訳ではないと思うが、そここでトランプをするつもりなのか。 のことを考えると息がしづらくなるような気がした。 ふちに割りばしを載せた状態で私にカップヌードル 「夜食食おうぜ。お前何がいい ? 」 隼人はそういってテントの中においてあったリュッを差し出す。隼人は片手でカップヌードルのふちを掴む クを開けた。中は様々な種類のカップヌードルで一杯だように持っていた。じゃんけんのパーになるくらいにー った。 掌が開かれていた。 「何だよ早くとれよ」 「じゃあ私はシ 1 フード」 手を見られていることを少し嫌そうにしながらさら 「おけ」 すると隼人はガスポンべや小さな鍋を取り出して手にカップヌードルをつきだしてくる。 「ん、ありがとう」 際よく湯を沸かし、ふたを半分あけたカップヌ 1 ドルに 少し笑いそうになってしまったけど隼人には気づか 注いだ。確か隼人のお父さんは登山が趣味だって言って れ 0
宝石の島 陽の落ちた林道は予想より暗かった。スマホのライト「他の奴に見つかったらまずいだろ」 はやと 「こんなとこ隼人くらいしか来ないよ」 は足もとが照らせるほどで、とても走っては移動できな 「まあどうでもいいから早く来いよ」 かった。早足で道を進みながら時間を確認すると、決め ていた時間から分ほどが過ぎている。大抵のことは適そういうと隼人は道に乗り出していた体を翻し、木と 当なくせに時間には細かいんだよな。自分が悪いことは木の間へ戻っていく。 「え、こんなとこ入っていくの。これじゃ獣道とも呼べ わかっているが、なんとなく頭の中で文句を言ってしま ないよ」 住宅街からそれほど距離が離れていないにも関わら「道になってたらばれるじゃんか。グダグダ言うならお いていくぞ」 ず辺りはとても静かだった。葉が音の振動を打ち消して そうはいうも隼人は私に背を向けて待っている。隼人 いるのだろうか。聞こえるのは自分の息と砂を踏む音、 木々のすれあう音だけだった。さっきまで家族と会話しのシャツの裾をつかむと、私たちはゆっくりと歩きだ ていたはずなのに、今は世界にいるのが自分だけなんじした。木と木の感覚が狭く、左に行っては右にいってと いう具合に、ジグザグと私たちは進んでいった。隼人の ゃないかという気さえする。少しだけ足をはやめた。 ひょり 先導が無ければすでに三回は頭をぶつけてそうだな、と 「おい日依莉」 脇道から突然声がして、思わず持っていたスマ 1 トフ思った。 「つかお前遅刻。ちゃんと時間守れよ」 オンを落としかけた。 隼人はポケットから小さなライトを取り出してスイ ライトくらいつけてよ」 「びつくりした : 4